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【外伝】隠しダンジョン
妖精の森 1
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※ゲームをノベライズしたような小説ですので、隠しダンジョンが存在します※
イベント発生条件:
メネ・ウロスをクリア後、コルヴァ東側の森のある座標に行く。
時折、耳にする噂話。この世界のどこかに、妖精が暮らす森があるという。かれらは町に住む妖精とは相容れず、人の住む場所には近寄らないそうだ。
北方の国コルヴァには、東西ふたつの森がある。ライカ達が東側の森を探索していると、こういう場でよく感じるのと違うざわめきが気になった。最も旅の経歴が長いヴァルの頭には、噂がよぎる。なんとなく、獣でも魔物でもない何かがいるように思った。
「そういや、ここって幻覚系の魔物が出るんだよな」
「あ。私も前に遭ったなあ、猫っぽいやつ。他にもいるの?」
「本体は見てねえが、ぐるぐる同じ所を歩かされた。引き返せばすんなり帰れたから、魔物以外に何かいるのかも……例えば、妖精とか」
ヴァルの読みにライカは納得の表情だが、他の皆は意外そうだ。首を傾げる者もいる。
「妖精って、町の工房で細工師とかやってる? どうして森にいるんだい」
「染め物の材料集めをする姿なら、神殿の記録にあった気がするぞ」
キョウネとセルが口々に言うのは、住居が町にある、いわゆる町妖精のことだ。ヴァルはくすりと笑って肩をすくめた。
「妖精だけの集まりで暮らす場所が、どこかにあるって噂なんだよ。あくまで噂、だけどな」
人里を離れれば魔物が増える。体の小さな妖精達が、果たして無事に暮らせるのだろうか。言葉の裏にはそんな疑問が見えた。
(私達とは違った力があるのかな? でないと、森で暮らすのは大変だもの)
コリトの暮らしと重ねあわせて、ユニマが考えこんだ時、不自然な風が吹いた。
「ひゃっ」
彼女の髪を揺らした「それ」は、悲鳴が終わらないうちにライカの短い後ろ髪も掠める。ユニマと自分の立ち位置から風の動きを予測して、ライカは空中に左手を伸ばした。が、何も捕まえることはできない。代わりに尖ったものが指を傷つけていた。
「う~ん、何者だろうね?」
血がにじんだ親指をなめてから広げた掌には、小さな小さな笛がある。
「あれれ、こういうの取っちゃうつもりなかったんだけど……まだ近くにいるかな」
「じゃあ、どういうつもりなんですかっ! 脅かさないでほしいです!」
聞き慣れない声がして、皆の目線は一カ所に集まった。
(さっきまでは、見えなかった。どうなっている?)
セルが顔をしかめるのは、半分は目の前に現れた者の声が甲高いせいだ。手の上にすっぽり収まるほどの身長から考えると当然だが、どうにも耳が痛い。笛の持ち主は、透き通った羽を素早く動かして空中に浮かぶ人だった。羽と体の大きさ、尖った耳の他は人間と大差ない。弓を構えているものの、つがえる矢は菓子を食べるピックほどだ。
「いたいた、妖精さん? 私達もびっくりしたんだよ、お互い様でしょ」
妖精の剣幕と比べたら大人しいが、ライカも頬を膨らませている。
「妖精って呼ばないで!」
「よく分かんないけど……これは返すから、脅かしたわけを教えてよ」
「ふん!」
差し出された掌の笛をひったくると、妖精はまた姿を消した。そして何も言わずに、気配は茂みの向こうに遠のいて行く。
「何だったんだ、今のは。見た所、町の妖精と変わらないぞ」
「さあ? でも悪気はなさそう」
ライカは茂みに目を凝らしながら、ついさっきの情景を思い浮かべる。笛を取る時、妖精はライカの指の傷に気付き、しまったという顔をした。あちらも、怪我をさせるつもりはなかったのかもしれない。
「飛んで行ったのは向こうだな。どうする、追いかけてみるか?」
ヴァルが顎で指す茂みに、皆の目線が集中する。
「まあ……何か、煮え切らねえよな」
トラメの態度は曖昧だ。妖精の言う事は気になるが、追われては困るように感じられた。どんな芸当か、姿を隠して暮らしているようでもある。
「妖精って呼ぶな、ってのは気になるけどねぇ……ヴァル、あんたが一番追っかけたいんだろ?」
「冒険大好き知りたがり兄貴だもんね。すぐ見つけたらラッキー! ってことで、少し探してみようか?」
キョウネとライカの言葉に、セルが小さく溜め息をつく。パーティの年長者として道を示すことの多いヴァルも、好奇心には勝てないらしい。
(もとより、彼は冒険者だからな。あの意味深長な台詞を聞けば、惹かれもするか)
「おー、ばれてる。実は前々から、妖精の町を探してみたくてさ。悪ぃけど付き合ってくれな」
浮かべる笑みは普段より幼く、無邪気な少年を思わせた。この好奇心に任せて、各地を旅して来たのだろう。
茂みを分けて、そっと森の奥に入って行く。魔物に対して出遅れてはまずいが、各々の武器は収めて歩いた。妖精達がピリピリしているせいか、空気がしんと静まり返って風が止んでいる。物音に気を配れば不意打ちを食らうこともないだろう。
「────」
小鳥が揺らした葉の擦れ。自分達の靴が土を踏む。あとは静かで、しん、と音がするようだ。そこに微かな揺らぎを聞き取り、キョウネの歩みが瞬間止まる。
(近くにいる。が、敵意は無しか。ここはひとつ、向こうから声がかかるまで黙っておこうかね)
やがて他の皆も違和感を持って周囲を見たり、首を傾げたりしたが、キョウネと同じく何も言わなかった。
「まだ進むの?」
「帰らないの?」
「命があるうちに引き返せばいいのに」
聞こえ始めたのは高音のざわめき。四方八方から囁かれるそれは、妖精のものと知らなければさぞ不気味だろう。ライカ達は立ち止まり、各々の死角を補うようにあちこちを向いた。
「ねえ、帰ったほうがいいよ」
「ほらほら、こわーい魔物が来るよ」
「みんな、やめて!」
ひとりが声を張り上げると、不穏なざわめきは止んだ。木の葉の間から、先程の妖精が姿を表す。今は、笛を細長い鞄に入れている。それを手に持つことで姿を隠しているのかもしれない。
「あなたたち、何をしにここへ来たんです?」
緊張感を持った妖精に、まずライカは名乗ってから話し始めた。
イベント発生条件:
メネ・ウロスをクリア後、コルヴァ東側の森のある座標に行く。
時折、耳にする噂話。この世界のどこかに、妖精が暮らす森があるという。かれらは町に住む妖精とは相容れず、人の住む場所には近寄らないそうだ。
北方の国コルヴァには、東西ふたつの森がある。ライカ達が東側の森を探索していると、こういう場でよく感じるのと違うざわめきが気になった。最も旅の経歴が長いヴァルの頭には、噂がよぎる。なんとなく、獣でも魔物でもない何かがいるように思った。
「そういや、ここって幻覚系の魔物が出るんだよな」
「あ。私も前に遭ったなあ、猫っぽいやつ。他にもいるの?」
「本体は見てねえが、ぐるぐる同じ所を歩かされた。引き返せばすんなり帰れたから、魔物以外に何かいるのかも……例えば、妖精とか」
ヴァルの読みにライカは納得の表情だが、他の皆は意外そうだ。首を傾げる者もいる。
「妖精って、町の工房で細工師とかやってる? どうして森にいるんだい」
「染め物の材料集めをする姿なら、神殿の記録にあった気がするぞ」
キョウネとセルが口々に言うのは、住居が町にある、いわゆる町妖精のことだ。ヴァルはくすりと笑って肩をすくめた。
「妖精だけの集まりで暮らす場所が、どこかにあるって噂なんだよ。あくまで噂、だけどな」
人里を離れれば魔物が増える。体の小さな妖精達が、果たして無事に暮らせるのだろうか。言葉の裏にはそんな疑問が見えた。
(私達とは違った力があるのかな? でないと、森で暮らすのは大変だもの)
コリトの暮らしと重ねあわせて、ユニマが考えこんだ時、不自然な風が吹いた。
「ひゃっ」
彼女の髪を揺らした「それ」は、悲鳴が終わらないうちにライカの短い後ろ髪も掠める。ユニマと自分の立ち位置から風の動きを予測して、ライカは空中に左手を伸ばした。が、何も捕まえることはできない。代わりに尖ったものが指を傷つけていた。
「う~ん、何者だろうね?」
血がにじんだ親指をなめてから広げた掌には、小さな小さな笛がある。
「あれれ、こういうの取っちゃうつもりなかったんだけど……まだ近くにいるかな」
「じゃあ、どういうつもりなんですかっ! 脅かさないでほしいです!」
聞き慣れない声がして、皆の目線は一カ所に集まった。
(さっきまでは、見えなかった。どうなっている?)
セルが顔をしかめるのは、半分は目の前に現れた者の声が甲高いせいだ。手の上にすっぽり収まるほどの身長から考えると当然だが、どうにも耳が痛い。笛の持ち主は、透き通った羽を素早く動かして空中に浮かぶ人だった。羽と体の大きさ、尖った耳の他は人間と大差ない。弓を構えているものの、つがえる矢は菓子を食べるピックほどだ。
「いたいた、妖精さん? 私達もびっくりしたんだよ、お互い様でしょ」
妖精の剣幕と比べたら大人しいが、ライカも頬を膨らませている。
「妖精って呼ばないで!」
「よく分かんないけど……これは返すから、脅かしたわけを教えてよ」
「ふん!」
差し出された掌の笛をひったくると、妖精はまた姿を消した。そして何も言わずに、気配は茂みの向こうに遠のいて行く。
「何だったんだ、今のは。見た所、町の妖精と変わらないぞ」
「さあ? でも悪気はなさそう」
ライカは茂みに目を凝らしながら、ついさっきの情景を思い浮かべる。笛を取る時、妖精はライカの指の傷に気付き、しまったという顔をした。あちらも、怪我をさせるつもりはなかったのかもしれない。
「飛んで行ったのは向こうだな。どうする、追いかけてみるか?」
ヴァルが顎で指す茂みに、皆の目線が集中する。
「まあ……何か、煮え切らねえよな」
トラメの態度は曖昧だ。妖精の言う事は気になるが、追われては困るように感じられた。どんな芸当か、姿を隠して暮らしているようでもある。
「妖精って呼ぶな、ってのは気になるけどねぇ……ヴァル、あんたが一番追っかけたいんだろ?」
「冒険大好き知りたがり兄貴だもんね。すぐ見つけたらラッキー! ってことで、少し探してみようか?」
キョウネとライカの言葉に、セルが小さく溜め息をつく。パーティの年長者として道を示すことの多いヴァルも、好奇心には勝てないらしい。
(もとより、彼は冒険者だからな。あの意味深長な台詞を聞けば、惹かれもするか)
「おー、ばれてる。実は前々から、妖精の町を探してみたくてさ。悪ぃけど付き合ってくれな」
浮かべる笑みは普段より幼く、無邪気な少年を思わせた。この好奇心に任せて、各地を旅して来たのだろう。
茂みを分けて、そっと森の奥に入って行く。魔物に対して出遅れてはまずいが、各々の武器は収めて歩いた。妖精達がピリピリしているせいか、空気がしんと静まり返って風が止んでいる。物音に気を配れば不意打ちを食らうこともないだろう。
「────」
小鳥が揺らした葉の擦れ。自分達の靴が土を踏む。あとは静かで、しん、と音がするようだ。そこに微かな揺らぎを聞き取り、キョウネの歩みが瞬間止まる。
(近くにいる。が、敵意は無しか。ここはひとつ、向こうから声がかかるまで黙っておこうかね)
やがて他の皆も違和感を持って周囲を見たり、首を傾げたりしたが、キョウネと同じく何も言わなかった。
「まだ進むの?」
「帰らないの?」
「命があるうちに引き返せばいいのに」
聞こえ始めたのは高音のざわめき。四方八方から囁かれるそれは、妖精のものと知らなければさぞ不気味だろう。ライカ達は立ち止まり、各々の死角を補うようにあちこちを向いた。
「ねえ、帰ったほうがいいよ」
「ほらほら、こわーい魔物が来るよ」
「みんな、やめて!」
ひとりが声を張り上げると、不穏なざわめきは止んだ。木の葉の間から、先程の妖精が姿を表す。今は、笛を細長い鞄に入れている。それを手に持つことで姿を隠しているのかもしれない。
「あなたたち、何をしにここへ来たんです?」
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#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
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