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俺と目が合うと、二人して元気よく挨拶をしてくれる。
俺はそれに返すように、軽く会釈した。
そのやり取りを聞いて、さらに心の中でモヤっとする何かを感じるが、そんなことはどうでもよかった。
「今日はよろしくお願いします!」
「こちらこそ!よろしくね」
笑顔を見ると、先程までの嫌な気持ちも少し和らいだ気がした。
しかし、それと同時に、さっきまで感じていた不安感が再び押し寄せてきた。ーーもし、この子達にまで嫌われたら……? そう考えるだけで恐ろしかった。
そして、同時に、誓ったあの日を思い出した。
俺の心はまた闇に染まりかけていた。
そんなことを思いながら馬車に乗り込むと、隣に乗る。
向かい側に座る乗り込んだのを確認して、御者が手綱を引くと、ゆっくりと馬車が進み始めた。
それからしばらくすると、緊張していたのか、口を開いた。
「私、まだ魔法を使ったことがないんです。だから、早く使ってみたいです……」
そう言うと、目を輝かせながら窓の外を見た。
俺もつられて外を見ると、そこには広大な大地が広がっていた。
雲ひとつない空には太陽が照っており、風は心地良く吹き、鳥たちが空を飛んでいた。
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