タロットダイバー

夏沢誠

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曲馬団

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 男は扇形列のカードから五、六枚のカードを抜き取ると、それを星鏡の前に並べた。
「これが、曲馬団です」
 左から一枚目のカードには、大きなミドリムシのようなものが道を歩いていた。二枚目にはそれが細胞分裂し、二個のアメーバのようになったものがいる。三枚目はアメーバの触手が手足と頭のように伸びているものがビーカーの中に三個いる。四枚目はドロドロになった人間のようなものが四体、地面を這っている。五枚目は巨大な頭に尖った耳、細長い手足に長い爪をした異形の生き物たち五匹が街の中をうろついている。六枚目は燕尾服にシルクハットをかぶりステッキを握ったカイゼル髭の男と、風船のように太ったクラウン、着飾った男の子と女の子、黒いマントのようなドレスに真赤な口紅を塗った青白い女、赤ん坊の六人が描かれていた。
 星鏡はその六人がジッと憎しみと嫉妬のこもった目でこちらをみつめているような気がし、そこから、人間になりたい、お前と入れ替わってやる、という激しい欲望を感じた。と、別のところからも同じ憎しみと欲望の念を感じた。見ると、ホムンクルスのうつろな目と目があった。
「彼らは人間ではない、動物や魑魅すだまでもない。ただの、もの、としかいいようがない。何もないところから沸いて出てきたものたちです」
 もの……。そう呟いて星鏡はもう一度、カーニバルの六番を見つめた。
「ああ、忘れていました。最近、このスートに一人の人間が加わっております」と男は言うと扇形に並べたカードから一枚のカードを抜きだし、それを星鏡の前にかざして見せた。
 そのカードには先のカードの六人に銀髪のもじゃもじゃ頭の初老の太った女性が描き加えられていた。女性は棒のように硬直して立っていた。歯はガタガタと震え、その顔は青ざめていた。その見開かれた眼の先にはピストルで彼女を狙っているシルクハットに黒服のカイゼル髭の男がいた。
シルクハットの男は何か危険なショーをこれから観客の前で披露しようとしているのか。絵を眺めていると、脳裏にサーカスの口上が聞こえてくるような気がした。
女性の顔に目を凝らすと、星鏡はハッと息をのんだ。すると赤い男がこう言うのが聞こえてきた。
「おわかりに」
 星鏡は驚きで声を発することができなかった。
「どうやら、この女性に見覚えがあるようですな。そうです。この絵の中の女性は…」

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