瓶詰め女装

ベルガモット

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屋上ミセス


彼女に連れられ、売り場から外れた人通りが全くない階段を上っていく。
誰にも防犯カメラからも発見されず、
最上階の扉に易々たどり着き、なんの迷いもなく彼女はドアノブを回し開けた。
「古いから鍵も壊れているの」
一介のお客が何故そんな事を知っているのかは疑問だが、
困惑している私の腕を引き、青空の下へ連れ出された。


地方のデパート。
当時の活気は郊外型のショッピングモールに奪われ、
徒歩圏内の地元住民が利用するだけとなり、
数店舗のテナントと食料品を扱う、
外観に対して、ちっぽけな中身となっている。
その三階フロア全体は、
洋服はもちろん、寝具やインテリア、謎の雑貨まで扱う、
そこそこの品質に低価格といった、ローカルな衣料量販店となっている。
利用客が少なく安いとなると、女性下着を求めるには最適だ。

白黒のチェックのシャツにビジネスパンツ、
もちろん中身は白い上下の女性下着。
今回は若干胸を作っている。
ウイッグと帽子・マスクは欠かせない。
金曜の昼前。
秋の三連休の初日だけあって、寂しいデパートに訪れる人は少ない。
買い物カートを押す高齢者とすれ違うが、特に反応は見られない。
女装がどうのこうのよりも、気にもされてないのだろう。
誰にも気にもされず階段を上り三階に着く。
階段は続いているが、立ち入り禁止とカラーコーンが置かれていた。
改めて売り場を見渡す。
目の前のワゴンに、マスクやら消毒液など昨今の情勢を表す品が特売されている。
また、円状のラックハンガーにセール品の被服が掛けられている。
お客もまばらで、やはり高齢者が多い。
商品と商品の間を回り、目的の売り場を探す。


どの衣料品店でもみられるように、
中央通路を境目に男物と女物が分かれている。
まず目に入ったのが、
量販店向けの大量生産品の靴下のワゴンからのストッキング類。
目新しくはないのでスルーし、さらに進むとパンティが陳列され始める。
美尻や骨盤矯正など機能性を謳っているのが多く、
若者よりは中高年に向けている事が伺える。
機能はともかく、フルバックに近いデザインには魅かれ、
足を止め目の前の紺のフルバックを手に取ってみる。
しっかりとしたフロントとバックは、
男が着用しても男性器が安定し、不安なく着用できる。
案の定、価格もワンコイン以下なので二点購入する事にする。
赤や緑など明るいカラーが欲しかったのだが、
紺や黒などお馴染みのカラーしかなく、
似たようなフルバックがまた増える事になる。
とりあえずの目的は果たしたので、他になにかないか捜索してみると、
売り場の端にこれまたワゴンに、
ショーツいわゆるローライズタイプのパンティが投げ売りの状態になっていた。
種類こそ豊富だが、見るからに生地が安っぽく使い捨て感と価格が、
まさに百円ショップと同レベル。
Lサイズも青緑色と色鮮やかな品もあったけど、
ローライズタイプは収まりが不安定で好みではないので見るだけとした。
商品棚の間に入って行く。
こだわりがある人向けのワンランク上のインナーがあり、
一人のミセスが商品に目を向けている。
迷惑にならないよう素早く後ろを通り過ぎと、
TバックやGストリングと呼ばれる、セクシーなコーナーになり、
まったく興味がないので、これまた通過する。
小さな疑問の声が後方から聞こえた――

気になる物を見つけた。
体型をカバーする補正下着と呼ばれるミセス向けの肌着を発見した。
興味本位でラックを探ってみると、ベージュのボディスーツがあった。
自分で言うのもアレだけど、細身の体型なので特に補正は必要ないけど、
女性下着としての興味と魅力がおおいにある。
ボディスーツの特徴である、股のホックに触れると官能的な刺激が走る。
陰部を締めつけ、用がある時に解放する。
それがどんな時か、想像するだけでも快感である。
「ねぇ、あなた――」
背後から声が掛かる。

妄想に入り過ぎ、人の気配にまったく気づかなかった。
ゆっくりと振り向くと、先程のミセスが真顔でこちらを見ている。
不審な行動はしていないのだが、やはり不審者に見えるのだろう。
騒がれる前に、ボディスーツを戻し足早に去るとする――
「あっ、ちょっと待って――」
慌て引き止める感じに、いよいよ焦る――
次の一歩が出る前に、ミセスの行動が早く手首を掴まれた。
非運にも掴まれた手にはフルバックを持っており、
二人同時に視線が向き、なんとも気まずい空気が流れる。
視界の隅に店員の姿が見える、こちらには気づいてはいない様だが、
ここで振り払ったら、ますます状況は悪くなるだろう。
「あっ、ごめん」
咄嗟の行動だったのか、言葉と共にミセスの握力が緩んだ。
おもわずミセスの顔を見ると、
いたずらっぽい表情に少し笑みが浮かんでいる。
また、年齢も三十半ばと同世代と思われ、
薄ピンクのニットにぴっちりのデニムという服装。
「女装の人?」
首を傾げながらも、直球な質問が飛んできた。
不審と云う感じは一切なく、好奇心が前面に出ている。
声を出さずに、首を縦に振り肯定する。
「やっぱり、そうなんだ」
分かりやすく、顔が華やかになり、一歩詰めて来た。
動揺する私に構わず、さらに顔を近づけ囁いた――


『この後、時間ある? よかったら、ちょっと遊ばない?』
見ず知らずのミセスの甘い囁きに、何の根拠もなく言われるがままに、
フラフラと着いて行った結果、雲一つない青空が広がるデパートの屋上に居る。
水先案内人のミセスは、大きな排気口付近で手招きをしている。
きょろきょろと周囲を確認しながら近づいて行くと、なんとなく要領を得た。
排気口が壁となり周囲から死角になっている。
つまり、なにか秘め事をするには最適なスペースと云うわけだ。
ミセスが、なぜ知っているのかは、考えない事にした。
「安心して、なにもないわ」
私の心中を察するように、
ほどよい高さの配管に座るミセスがラフに言う。
「誰も来ないから、イケナイ事をするにはイイところよ」
ドキリ――キレイなウィンクなんて始めて受け取った。
こんな時どんな反応をすればいいのか、
経験は少しも無く、かと言って上手い気転も利かせられない。
「なぁに、そんなウブみたいな反応」
クスクスと女子高生がするような笑い方だけど、
齢不相応とは感じられず、むしろ不思議と好感が生まれた。
その緩んだ感情が無意識に表情に出たのだろう、
ミセスとの間の空気が柔らかくなる。
「ふーん、いつもそんな感じなの?
 もっと可愛い服とか着ないの?」
上から下までジロジロと見たミセスが不思議な表情で言う。
「あなた、骨格細身だから女性服も意外とイケるよ。
 それに、インナーから可愛くなきゃね」
ミセスはナイロン製のエコバックから、
紺のフルバックと鮮やかな水色のスタンダードタイプのショーツを取り出す。
紺のフルバックは私が購入予定だったもので、
水色ショーツはミセスに話しかけられた後、
ガールズの下着売り場で選び、
ミセスのカゴの中の商品と何故か一緒に会計をした。
フルバック代として財布から千円札1枚を抜くと、
その様子を見たミセスは首を横に振った。
「あっ、いいよ。 これは私の奢り――
 だからさ、ちょっとコレ履いてみてよ」
いたずらっぽく笑い、胸の高さで水色ショーツを広げた。
とんでもない事を平気で言うミセスに、思わず声が出た。
「あの、どういう……」
「あ~、やっぱり声は男か~」
ミセスの少し残念そうな声色に、俯いてしまう。
「ごめん、ごめん。 今のはあたしが悪かった」
慌てて近寄り、謝罪と共に顔を覗き込んできた。
その顔は、眉を寄せ本気の表情をしていた。
「まぁ、ちょっと話を聞いてよ――」
その顔は、眉を寄せ本気の表情をしていたので顔を上げ肯くと、
ミセスはパッと笑顔が広がった。
「ありがとう――
 女装子さんって云えばイイのかな、ちょっと興味があるの。
 こんな町に居るとは思わないじゃん」
友達相手の様に楽し気に話すミセス、少なくとも悪い人ではなさそう。
こんな所に連れて来たのも、女装者と話しているのを他の誰か――
知り合いにでも見られたくはないだろう。
「だから、アナタを見かけて思わず声をかけたの。
 まぁ、イマイチだったら話しかけてないけどね」
それは悦んでイイのだろうか。
「でさ、中身も気になるんだよね」
ニヤニヤと水色ショーツを空中でヒラヒラと舞い踊らせる。
そのミセスのニヤケ顔を見て、胸がザラりとする――

「誰かに見られたいんじゃないの?」
それはもう女性特有の勘としか言えない、
ミセスの瞳は、すべてを見透かしてる。
「大丈夫、誰にも言わないし、ここだけ、ね」
甘い猫なで声が、理性を鈍らせ判断を迷わす――
女性下着姿を誰かに見られたい、できなら若い女性に――
そんな秘めたる想いが騒ぎ出す。
ズボンに腕が伸びベルトに手がかかる――ミセスの。
「じっとして――」
いつの間にか接近され耳元に囁き、私の股間の前にしゃがむミセス。
カチャカチャとバックルを起用に外し見上げる――悪魔的な笑顔。
「おちんちん、大きくなっていない?」
こんな状況で性的興奮が起きない筈もなく、
またミセスの男性器の表現も熱流が駆け巡る。
膨らんだ股間に視線を熱く注ぎ、ミセスが興奮と共に驚きはしゃぐ。
フルバックを履いた時の位置が悪く、
勃起した男性器がフルバックから大きくはみ出ているのが、
感覚として分かる。
男性性器をフルバックにちゃんと納めるという、
私的ルールからして、今の状態は納得しない状態となる。
なので反射的に股間を手で隠す。
「なぁに、見られたくない、恥ずかしい?」
首を傾げ不思議そうに見てくるミセス。
子どもをあやす口調が、またいじらしく熱量が増加する。
「その――はみ出てて……」
「えっ、なになに、見たい!」
ミセスは子どもの様に、
オモチャを目の前にして目を輝かせワクワクしている。
私の手を掴みパンパンになった股間を再び露にさせ、
不自然に左に伸びる男性器を観察する。
「あは、中どうなっているの?」
笑いながら見上げるミセスは、
もう我慢ならない様子でパンツに手をかけ下ろそうとしている。
「いいでしょ――」
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