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心を失った戦場の英雄

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「終わり。」
そう呟く彼の周りには積み上がった死体しかない。
今までに彼は何度も転生してきたがいつも弱者で、殺される運命だった。
今世こんかい、彼は皇子だった。
彼には凄まじい量の賞賛の言葉が向けられた。
そんな彼が5歳の時にもらったのはスキルではなく力だった。
圧倒的な力。
代々皇帝家に受け継がれてきた最強の力。
神をも殺すと言われている。
それは本来明け方にしか使えないはずだった。
でも彼はその力をいつでも使えた。
本来なら存在する代償もなしに。
それは帝国にとって凄まじい偉業となった。
すぐさま帝国は戦争を開戦した。
彼は凄まじい勢いで戦功を上げた。
そうして称賛の言葉が飛ぶ。
それと同時に戦争で死んでいくものたちの顔もとてつもない数見てきた。
彼は頭がよかった。
いくら強くても威張らず褒められても自惚れずにいた。
それは次期皇帝として素晴らしいことだったかも知れない。
だが、そんな彼には心などなかった。
とうの昔に失っていた。
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