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12話 ギルドマスターの慧眼に感服です
「ギルド長、カイトさんは大丈夫でしょうか?」
検査担当の職員、ハンナが心配そうに尋ねてくる。
「あぁ、あの依頼書のこと? 彼の実力なら平気だし、心配ないよ。僕も大切なハンターに無理をさせるつもりはないからね」
「そうですか……よかった」
ほっと肩から力を抜いて、笑顔を浮かべている。そういえばハンナはカイトが命の恩人だと言っていたな。きっと誰よりも今日の結果に納得して喜んでいるのだろう。
以前ハンナに聞いた話とすり合わせると、その時はまだ、リュカオンとの融合前のはずだ。
つまり、カイトは魔獣王の力がなくとも、誰かを救うことができる英雄だ。
ミリオンパーティーの詳細な報告を聞けば、誰かがフォローしているのは明白だった。
彼らの実力には見合わない依頼を、こなせていたのだから。
それを本人たちに悟られることなく、5年も続けた。パーティーランクを、Sランクまで引き上げたのはカイトだ。今日の話を聞いて確信できた。
自分を抑える我慢強さと、周囲にはり巡らす危険察知能力、そしてメンバーたちの動きを常に把握して、的確なフォローをさりげなくする空間把握能力とマルチタスク能力。
これは紛れもない、カイト自身の強さだ。
最初からできていなかったとしても、仲間のために努力して身につけた能力だ。
基礎能力が高くても、できないヤツはそこら中にいる。それこそ、SSSランクハンターの僕でさえ、ここまでできるかわからない。
「ほぼリュカオンのおかげなんて……自分の強みをわかってないんだな」
「カイトさんですか?」
「あぁ、もったいないと思ってね。次のハンターカードを渡す時にでも、教えるつもりだよ」
「是非そうしてください!! カイトさんには、これからもっともっと、幸せになってもらいたいんです!!」
ハンナは握り拳を作りながら、熱く語っている。
「ハハハ、任せてくれ。ただ……彼のためにも、リュカオンの件はここだけの話にしてくれ。これは命令だ」
「承知しました!」
「それじゃぁ、次のカイトのハンターカードは黒で用意してくれるかな?」
「……っ! は、はいっ! すぐ用意して参ります!!」
そうして、鼻息が荒いまま、ハンナはカイトの新しいハンターカードの準備にむかった。
ひとりになった執務室で、僕は5年前のスタンピードを思い出していた。
あの時、一斉に魔獣たちが引き上げる前に聞いた、狼の鳴き声。あれこそが、カイトであり、魔獣王リュカオンだった。狼の声を聞いた魔獣の動きが止まり、即死レベルの一撃を逃れることができたのだ。
高ランクのハンターならわかる。あの狼の声は、ただの魔獣の声ではなかった。
そして、伝説の魔獣王リュカオンの封印が、解かれてしまった痕跡もあった。あれから、魔獣王の行方をずっと追っていたのだ。
「こんな所にいたとはね……盲点だった」
だからカイトの気配が、まるで別のものになっていたのだと、今更だけど納得する。
ギルド本部や国王への報告は、彼が戻ってきてからにしよう。それまでに、どのように報告するか決めなければ。
カイトが危険視されないように調整しなければならない。
僕もまたあの魔物の大暴走で、カイトに命を救われたひとりなのだから。僕は命の恩人に、出来るかぎりの恩を返すと決意した————
検査担当の職員、ハンナが心配そうに尋ねてくる。
「あぁ、あの依頼書のこと? 彼の実力なら平気だし、心配ないよ。僕も大切なハンターに無理をさせるつもりはないからね」
「そうですか……よかった」
ほっと肩から力を抜いて、笑顔を浮かべている。そういえばハンナはカイトが命の恩人だと言っていたな。きっと誰よりも今日の結果に納得して喜んでいるのだろう。
以前ハンナに聞いた話とすり合わせると、その時はまだ、リュカオンとの融合前のはずだ。
つまり、カイトは魔獣王の力がなくとも、誰かを救うことができる英雄だ。
ミリオンパーティーの詳細な報告を聞けば、誰かがフォローしているのは明白だった。
彼らの実力には見合わない依頼を、こなせていたのだから。
それを本人たちに悟られることなく、5年も続けた。パーティーランクを、Sランクまで引き上げたのはカイトだ。今日の話を聞いて確信できた。
自分を抑える我慢強さと、周囲にはり巡らす危険察知能力、そしてメンバーたちの動きを常に把握して、的確なフォローをさりげなくする空間把握能力とマルチタスク能力。
これは紛れもない、カイト自身の強さだ。
最初からできていなかったとしても、仲間のために努力して身につけた能力だ。
基礎能力が高くても、できないヤツはそこら中にいる。それこそ、SSSランクハンターの僕でさえ、ここまでできるかわからない。
「ほぼリュカオンのおかげなんて……自分の強みをわかってないんだな」
「カイトさんですか?」
「あぁ、もったいないと思ってね。次のハンターカードを渡す時にでも、教えるつもりだよ」
「是非そうしてください!! カイトさんには、これからもっともっと、幸せになってもらいたいんです!!」
ハンナは握り拳を作りながら、熱く語っている。
「ハハハ、任せてくれ。ただ……彼のためにも、リュカオンの件はここだけの話にしてくれ。これは命令だ」
「承知しました!」
「それじゃぁ、次のカイトのハンターカードは黒で用意してくれるかな?」
「……っ! は、はいっ! すぐ用意して参ります!!」
そうして、鼻息が荒いまま、ハンナはカイトの新しいハンターカードの準備にむかった。
ひとりになった執務室で、僕は5年前のスタンピードを思い出していた。
あの時、一斉に魔獣たちが引き上げる前に聞いた、狼の鳴き声。あれこそが、カイトであり、魔獣王リュカオンだった。狼の声を聞いた魔獣の動きが止まり、即死レベルの一撃を逃れることができたのだ。
高ランクのハンターならわかる。あの狼の声は、ただの魔獣の声ではなかった。
そして、伝説の魔獣王リュカオンの封印が、解かれてしまった痕跡もあった。あれから、魔獣王の行方をずっと追っていたのだ。
「こんな所にいたとはね……盲点だった」
だからカイトの気配が、まるで別のものになっていたのだと、今更だけど納得する。
ギルド本部や国王への報告は、彼が戻ってきてからにしよう。それまでに、どのように報告するか決めなければ。
カイトが危険視されないように調整しなければならない。
僕もまたあの魔物の大暴走で、カイトに命を救われたひとりなのだから。僕は命の恩人に、出来るかぎりの恩を返すと決意した————
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