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21話 ライオネル様の本気がハンパないですわ!!①
しおりを挟む「ライオネル様、あのっ、自分で降りますわっ!」
「ダメだ、昨日はステップでつまづきそうになっただろう? 僕だってハーミリアを抱き抱えるくらいはできるから、安心して」
「ひぇぇぇっ!」
ライオネル様の爽やかな柑橘系の香りが、ふわりとわたくしを包み込む。スラッとして見えるのに、意外と逞しい腕に抱えられて、馬車の前に優しく降ろされた。
誰か助けて欲しい。
ライオネル様の本気がハンパなくて、わたくしの心臓が持ちそうにない。これは確実に十年は寿命が縮まっているに違いない。
だって! あのライオネル様に! お姫様抱っこされて! 馬車から降ろされたのよ——!!
「ふふっ、照れているハーミリアもかわいらしいな」
「ライオネル様、お願いですからそんなこと言わないでぇ……」
このわたくしが動揺しまくって、まともに顔を上げられない。
ここは天国なのかと思うほど毎日が満たされ幸せなのだけれども、今までとのギャップが激しくてわたくしのオリハルコン並のメンタルでも衝撃が大きいのだ。
ドリカさんの件があってから一週間経つが、日々甘さを増していくライオネル様に、登校中の生徒はざわめいている。
「ライオネル様、き、今日のは少しやりすぎではありませんか?」
「そんなことない。これでもまだ牽制が足りないくらいだ。本当にハーミリアは自分の魅力がわかっていないんだね」
「わたくしのことを想ってくださるのは、ライオネル様くらいですから安心してくださいませ」
「……まあ、これくらいの方が余計な心配がなくていいか」
「え?」
「なんでもない。では教室へ行こう」
ライオネル様の本気は、登校中だけではなかった。
授業中もわたくしと何度も何度も目が合うし、隣の席でピッタリ寄り添ってくる。なんなら着替えとトイレ以外はほんの数分も離れることはない。
わたくしがクラスを変わっても、先生も周りの生徒もなにも言わない。というか、ライオネル様以外と、まだ口も聞いていない。
チラチラと視線は感じている。でもペアを組むような授業の時は相手は当然ライオネル様だし、わたくしたちの学年では男女別の授業もないので、話す機会がないのだ。
だけど、ライオネル様はふたつ上の学年にいらっしゃる王太子殿下の側近としての役割もあるはずだ。今まで本当にずっと一緒にいるけれど、そちらは問題ないのかとランチの時間に尋ねた。
「ライオネル様、王太子殿下のそばにいなくてもよろしいのですか?」
「ああ、問題ない。イヤーカフ型の通信機を用意したから、それで必要に応じてやり取りしている」
イヤーカフ型と聞いて、なにか引っかかった。
そうだ、わたくしのお見舞いに来てくれた時につけていたアクセサリーだ。怒涛の展開が続いていて聞きそびれていた。
「もしかして、わたくしのお見舞いの時につけていたのは通信機でしたの!?」
「ああ、これがどうかしたのか?」
「わたくしてっきり他の女生徒からのプレゼントのアクセサリーだと思っていましたわ」
すっかり勘違いして、ライオネル様に忍び寄る女生徒の影に醜く嫉妬したのだ。
「えっ……それはない! 断じてない! 僕がハーミリア以外の女性からアクセサリーをもらって、しかもそれを堂々とつけるなんてありえないっ!!」
ライオネル様は青くなりながらも、必死に誤解だと弁解している。その様子はわたくしが一番だと言われているみたいで、嬉しくなってしまう。
「そうですの? では、もうヤキモチを焼いたりしませんわ」
「待ってくれ、ヤキモチとはなんだ?」
「……わたくしがそばにいないと、すぐにライオネル様は女性に言い寄られるのではと嫉妬したのですわ」
「そっ……! それとこれは別ではないか!?」
今度は頬を染めながら、ライオネル様が食いさがってくる。
「なにが別なのですか?」
「他の女性からプレゼントをもらったりはしないが、ヤキモチは焼いてほしい……」
ライオネル様のかわいい申し出に、わたくしが驚いた。ヤキモチなんて焼かれたら嫌なのかと思っていたのだ。
「まあ、ヤキモチを焼いてもわたくしを嫌いになりませんの?」
「嫌いになどなるわけがない。ヤキモチを焼いてくれるほど、ハーミリアが僕のことを想ってくれているのだと思うと、嬉しい……」
「それでは、これから遠慮なくヤキモチを焼きますわっ!!」
そうして今日も平和にランチタイムが終ろうとしていたが、ふと気付いたことがあった。
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