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危うし! (カウンタークルー 泊留美佳)
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何だか怪しい雰囲気になってきたと留美佳は感じ始めていた。西章則の話にずっと耳を傾け、彼と少し話し込んでいたと思っていたら、伊堂寺つばさの存在感がすっかり消え失せていたのだ。
気がつくとつばさは床に坐り込んだままの状態で、西のベッドに体をあずけて眠っていた。起きて欲しいと思ったが、西はそれに気づかないのか、すっかり冗舌になっていた。
「ひとりで一日中部屋に籠もっていると、パソコンくらいしかすることがないんだ」と西の話は続いていた。「こうしてインターネットで記事を読んだりして、何か身近に起こったことがないかと探している。僕たちの事件もはじめは報道されていたみたいだが、今はすっかり過去の出来事になってしまったよ」
西はノートパソコンを立ち上げ、いくつか操作を施した後、留美佳に見えるよう画面の位置を変えた。
「瀧本さんを呼び出すには、こういうことをするしかなかったんだ」
西が留美佳に見せたかったのは、これなのか。留美佳は目を瞠った。
再生された画像は、QSの職員用トイレで、そこに金髪の女性が下着を下ろして便座に坐りこむ様子が写っていた。
「きゃ!」と留美佳は小さな悲鳴をあげ、口を覆った。
「綺麗なお尻だろう? こういうのを見てつい魔が差したんだよ。これって僕が悪いのかなあ。違うよね、彼女が綺麗だからだよね」
その時になって留美佳は、西の様子がおかしいことに気づいた。彼の目はすっかり据わっている。別に酒に酔ったわけでもないのに、西はすでに留美佳が知っている西ではなかった。
「君に見せたいものがもう一つあるんだ」
西は留美佳の顔をじっと覗き込むように見て言った。
「な、何ですか?」
さすがに留美佳もその時になって、嫌な予感を感じ始めていた。あづさの盗撮画像があるということは、他にもその餌食になっている人がいるかもしれない。それが自分ではないという保証がどこにあるというのか。
案の定、西が次に再生したのは、紛れもなく留美佳自身の映像だった。同じくトイレの便座に坐る自分の後姿。あまりの恥ずかしさに留美佳は真っ赤になった。
「君のお尻もかわいいよ。君ももっと自信を持つべきだね、こんなに可愛いんだから」
西は馴れ馴れしく留美佳の頬に触れ、いい子いい子をするように頭を撫でた。
ぞっとする感覚。体が思うように動けない。まさに蛇に睨まれた蛙だ。留美佳は御木本英司に奪われた日のことを思い出した。
「君が好きなんだよ、だから、僕といいことをしようよ」
留美佳は携帯を思い出した。あれさえ手にすれば……。
しかし携帯を入れたバッグは、不運なことに伊堂寺つばさの体の向こう側にあった。つばさを飛び越えなければ手にすることができない。まさかこの大事な時につばさが眠ってしまうとは思わなかった。眠った? 留美佳はあづさの事件のときも御木本英司が途中で眠ってしまったらしいことを思い出した。睡眠薬を使うのは西の常套手段のようだ。
どうにかつばさに起きてもらうしかない。そう考え、「伊堂寺さん!」とどうにか大声を出した留美佳の腕は西によって掴まれていた。
両手に手錠がかけられた。
「な、何するんですか。やめてください!」
精一杯強がったが、声が裏返っている。手錠は長い紐でベッドの脚の部分に固定されていて、ベッドの上に寝かされると身動き一つできなかった。
「まだしたことないんだろう? いいことしようよ……」
西の臭い息が顔に吹きかかり、胸を乱暴にもまれた。
「い、痛いです、やめてください」
英司や松原とは全く異なり、西の手は力が入りすぎて乱暴なだけだった。相手を思いやる気持ちはこれっぽっちもなかった。
ああ、自分はまたしても犯されるのかと留美佳は思った。涙が溢れる。こんな頭のいかれた小太りの男を受け入れるくらいなら英司の方が断然良かった。しかし不運は重なるものだ。その時留美佳はワインレッドのプリントTシャツにふんわりとした白のスカートという簡単な服装だった。シャツは簡単に捲られるし、スカートも同様だった。あっというまに胸も下腹部もエアコンの効いたひんやりとした空気を感じた。
カメラを片手に西が近寄る。
「さあ、よく見せておくれ」と西がブラに手を触れ、ずらそうと動かす。しかしなかなかうまくいかなくて、焦っていた。「思ったとおりの巨乳だね。ブラジャーがしっかり張り付いて動きやしない。ホックを外さなきゃ」
西が背中を向けさせようとするので、留美佳は抵抗して仰向けを保とうとした。
「おとなしく言うことを聞け!」
突然西が切れたように叫んだ。
恐怖で身がすくみ、言われるように横を向いた。どうしてこう自分は言いなりになってしまうのか。弱い自分が情けなかった。
「どうやったら外れるんだ?」
西はホックが外せなくてイライラしているようだ。女の体を触るのも初めてなのかもしれない。
しまいには諦めて、違う行動をとることに決めたようだった。
「仕方ない、下からやるか」
その言葉の意味を悟った留美佳は慌てて叫んだ。
「いや、やめて、いやあ!」
その言葉が西をますます喜ばせることはわかってはいたが、つい口をついて出たのだ。
西がショーツに両手をかけた。
留美佳は思い切り目をつぶった。
西の両手に力が入り、ショーツが下へずれ始めた瞬間、部屋のドアが大きな音をたてて開け放たれた。
「やめろ、西! もうおしまいだ!」
気がつくとつばさは床に坐り込んだままの状態で、西のベッドに体をあずけて眠っていた。起きて欲しいと思ったが、西はそれに気づかないのか、すっかり冗舌になっていた。
「ひとりで一日中部屋に籠もっていると、パソコンくらいしかすることがないんだ」と西の話は続いていた。「こうしてインターネットで記事を読んだりして、何か身近に起こったことがないかと探している。僕たちの事件もはじめは報道されていたみたいだが、今はすっかり過去の出来事になってしまったよ」
西はノートパソコンを立ち上げ、いくつか操作を施した後、留美佳に見えるよう画面の位置を変えた。
「瀧本さんを呼び出すには、こういうことをするしかなかったんだ」
西が留美佳に見せたかったのは、これなのか。留美佳は目を瞠った。
再生された画像は、QSの職員用トイレで、そこに金髪の女性が下着を下ろして便座に坐りこむ様子が写っていた。
「きゃ!」と留美佳は小さな悲鳴をあげ、口を覆った。
「綺麗なお尻だろう? こういうのを見てつい魔が差したんだよ。これって僕が悪いのかなあ。違うよね、彼女が綺麗だからだよね」
その時になって留美佳は、西の様子がおかしいことに気づいた。彼の目はすっかり据わっている。別に酒に酔ったわけでもないのに、西はすでに留美佳が知っている西ではなかった。
「君に見せたいものがもう一つあるんだ」
西は留美佳の顔をじっと覗き込むように見て言った。
「な、何ですか?」
さすがに留美佳もその時になって、嫌な予感を感じ始めていた。あづさの盗撮画像があるということは、他にもその餌食になっている人がいるかもしれない。それが自分ではないという保証がどこにあるというのか。
案の定、西が次に再生したのは、紛れもなく留美佳自身の映像だった。同じくトイレの便座に坐る自分の後姿。あまりの恥ずかしさに留美佳は真っ赤になった。
「君のお尻もかわいいよ。君ももっと自信を持つべきだね、こんなに可愛いんだから」
西は馴れ馴れしく留美佳の頬に触れ、いい子いい子をするように頭を撫でた。
ぞっとする感覚。体が思うように動けない。まさに蛇に睨まれた蛙だ。留美佳は御木本英司に奪われた日のことを思い出した。
「君が好きなんだよ、だから、僕といいことをしようよ」
留美佳は携帯を思い出した。あれさえ手にすれば……。
しかし携帯を入れたバッグは、不運なことに伊堂寺つばさの体の向こう側にあった。つばさを飛び越えなければ手にすることができない。まさかこの大事な時につばさが眠ってしまうとは思わなかった。眠った? 留美佳はあづさの事件のときも御木本英司が途中で眠ってしまったらしいことを思い出した。睡眠薬を使うのは西の常套手段のようだ。
どうにかつばさに起きてもらうしかない。そう考え、「伊堂寺さん!」とどうにか大声を出した留美佳の腕は西によって掴まれていた。
両手に手錠がかけられた。
「な、何するんですか。やめてください!」
精一杯強がったが、声が裏返っている。手錠は長い紐でベッドの脚の部分に固定されていて、ベッドの上に寝かされると身動き一つできなかった。
「まだしたことないんだろう? いいことしようよ……」
西の臭い息が顔に吹きかかり、胸を乱暴にもまれた。
「い、痛いです、やめてください」
英司や松原とは全く異なり、西の手は力が入りすぎて乱暴なだけだった。相手を思いやる気持ちはこれっぽっちもなかった。
ああ、自分はまたしても犯されるのかと留美佳は思った。涙が溢れる。こんな頭のいかれた小太りの男を受け入れるくらいなら英司の方が断然良かった。しかし不運は重なるものだ。その時留美佳はワインレッドのプリントTシャツにふんわりとした白のスカートという簡単な服装だった。シャツは簡単に捲られるし、スカートも同様だった。あっというまに胸も下腹部もエアコンの効いたひんやりとした空気を感じた。
カメラを片手に西が近寄る。
「さあ、よく見せておくれ」と西がブラに手を触れ、ずらそうと動かす。しかしなかなかうまくいかなくて、焦っていた。「思ったとおりの巨乳だね。ブラジャーがしっかり張り付いて動きやしない。ホックを外さなきゃ」
西が背中を向けさせようとするので、留美佳は抵抗して仰向けを保とうとした。
「おとなしく言うことを聞け!」
突然西が切れたように叫んだ。
恐怖で身がすくみ、言われるように横を向いた。どうしてこう自分は言いなりになってしまうのか。弱い自分が情けなかった。
「どうやったら外れるんだ?」
西はホックが外せなくてイライラしているようだ。女の体を触るのも初めてなのかもしれない。
しまいには諦めて、違う行動をとることに決めたようだった。
「仕方ない、下からやるか」
その言葉の意味を悟った留美佳は慌てて叫んだ。
「いや、やめて、いやあ!」
その言葉が西をますます喜ばせることはわかってはいたが、つい口をついて出たのだ。
西がショーツに両手をかけた。
留美佳は思い切り目をつぶった。
西の両手に力が入り、ショーツが下へずれ始めた瞬間、部屋のドアが大きな音をたてて開け放たれた。
「やめろ、西! もうおしまいだ!」
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