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徐々に素が出る東雲桂羅
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東矢泉月や神々廻璃乃ら群れない女子がついて来ない可能性を篠塚は心配したが、彼女らも同行した。
香月兄妹や東雲桂羅、そしてその兄姉を見た渋谷は「濃いメンバーだな」と言ったが歓迎していることは間違いなかった。
神々廻は何か吹っ切れたように渋谷に向かって「村椿さんも誘ったら?」と言い、何人増えてもたいして変わらないとか皆が言うので村椿にも誘いの連絡が行った。
小早川の双子がちょこまか動いて良い味を出していた。
この二人がいるから皆ついていくのだと篠塚は思った。
ボウリング場で四つのレーンを借りた。総勢十八名。
村椿麗菜が現地で合流したのだが、人数がやたら増えていたのでたいそう驚いていた。「何よ、この団体さん」と渋谷にまとわりついていた。
グループ分けは双子が一人ずつ入るグループが五人、それ以外が四人になるようくじ引きでなされた。
篠塚は東雲、神々廻、栗原と一緒になった。奇しくも球技大会決勝であたったメンバーだ。これにはさすがに皆顔を見合わせた。
東雲が全くの初心者だったので、靴やボールの選び方からみんなで教えることになった。
「私も久しぶりだがな」とか言いながら神々廻は面倒見がよかった。
「本当に全然やったことなかったの?」栗原が訊いた。
その巨体から見下ろされる形になって東雲は身をすくませた。
「ずっと寮生活をしていたし、家にも帰らなかったから外で遊ぶことはなかった」
「囚人のような生活だね」栗原が溜め息を放った。
「それが当たり前だと思っているとそうでもない」東雲は答えた。
その東雲の一投目は七本だった。素直に真っ直ぐ転がした。
勢いは女子にしてはかなりある方だ。八ポンドの軽い球であることを考えてもやはり握力はあると思われた。
栗原が八本、篠塚が七本という中、神々廻がいきなりストライクを出した。
「璃乃は何でも上手いな」栗原が感心している。
「今の何? カーブしたように見えたけど」東雲が興味を示した。
「先頭のピンに真っ直ぐ当てても十本全部は倒れないんだ。だから少し斜めから当てる。そのためのカーブだ」
ほとんど表情を変えないが神々廻が得意気に語っていることは篠塚にも栗原にもわかった。
「恭平とか和泉の投げるところを見たら良い」渋谷と高原がお手本になると神々廻は教えた。
右隣のレーンに渋谷がいた。高原もいて、村椿、樋笠に小早川玲音という五人だ。
双子の一人が入っているとはいえ錚々たるメンバーだと篠塚は思う。高得点者が集まっている。
「ここにおいてあるボールはあまり曲がらないんだけど、あいつらは上手いから曲げるよな」栗原が言った。
渋谷はパワーもあるから勢いでガンガン倒した。高原は技巧派でスペアを確実にとる。村椿は初心者に近かったが、覚えるのが速く、器用にこなしていた。
「真っ直ぐに転がす場合は、先頭のピンの少し右に当てる感じで投げると良い」神々廻が言った。
「なるほど、確かに」東雲は頷いた。
わずかに右にずれた方がストライクになることを東雲は身をもって理解したようだ。
「にしても正確に転がすねえ」栗原が感心している。篠塚もそう思った。
カーブがかけられないとはいえ、思い通りに転がすのはもって生まれた才能と言えよう。
「体の軸が安定している。足腰が強いんだ」神々廻の解説が入った。「そしてあの握力」
三人は感心した。
「スペアがとれないと点は増えないのね」東雲が残念そうに洩らした。
意外と得点がのびない。両端にピンが残るケースが多いからだ。
「スペアをとれるようにするには片側にピンが残るようにするしかない。とはいっても、はじめからストライクを狙わないなんて私の性格に合わない」
そう言って東雲は得点よりもストライクを狙い続けた。
「泉月に似ているかと思ったけど、違うな、彼女」神々廻が言った。篠塚は頷いた。
四人のグループだったこともあり、五人のグループよりも先に一ゲーム終わってしまった。またグループ分けをやり直すのでしばらく待機だ。
結果は神々廻が百七十点、栗原が百五十二点、篠塚は百四十六点。東雲は百二点だった。
「初めてで、女子百二点なら良いんじゃない」篠塚は褒めたつもりだ。
「そんなものなの?」東雲はわずかに首をかしげた。そんな東雲の表情は新鮮でもある。
しかし二つ隣のレーンにいた東矢泉月が百六十点出したと聞くと東雲の目がつり上がった。
「東雲さん、泉月に対抗心あるよね」篠塚は何気なく訊いた。
ひと息ついていた栗原と神々廻も耳をすます。
「いろいろ勝負してるからね」
「ん、勝負?」
「夕食当番とか」
「「「は?」」」
篠塚たちは耳を疑った。
「泉月は帰りがいちばん遅いから夕食の用意ができず、朝食専門になるのはわかるけれど、それでも土日くらい夕食を作っても良いと思う。それを言ったら『私に勝てたらね』なんて言うのよ」
「そんなこと言うんだ……」栗原は信じられない顔をした。確かに篠塚も想像できなかった。
「もしや球技大会の時も何かかけていたのか?」神々廻が訊いた。
「あの時も夕食当番。負けた私は泉月に頼まれた日は無条件で夕食を用意している」
「あの球技大会決勝にそんな隠された勝負があったとは」神々廻は呆れていた。
「俺、思うんだけど」篠塚はおもむろに語りかけた。「東雲さん、いつも不利な勝負させられてない? あの球技大会決勝だって、東雲さんと泉月の個人対決は決して負けてなかったと思うよ。チームの総合力で負けたけど」
「は? そうなの?」
「あなた、天然だな。それじゃ泉月に勝てないぞ」神々廻は身も蓋もない言い方をした。
「ボウリングの点数で勝負しちゃダメだよ。経験値に差もあるのだし」栗原が噛んでふくめるように言った。
東雲は口を閉ざし、頬を膨らませた。
「可愛いな、東雲桂羅」神々廻が笑った。
香月兄妹や東雲桂羅、そしてその兄姉を見た渋谷は「濃いメンバーだな」と言ったが歓迎していることは間違いなかった。
神々廻は何か吹っ切れたように渋谷に向かって「村椿さんも誘ったら?」と言い、何人増えてもたいして変わらないとか皆が言うので村椿にも誘いの連絡が行った。
小早川の双子がちょこまか動いて良い味を出していた。
この二人がいるから皆ついていくのだと篠塚は思った。
ボウリング場で四つのレーンを借りた。総勢十八名。
村椿麗菜が現地で合流したのだが、人数がやたら増えていたのでたいそう驚いていた。「何よ、この団体さん」と渋谷にまとわりついていた。
グループ分けは双子が一人ずつ入るグループが五人、それ以外が四人になるようくじ引きでなされた。
篠塚は東雲、神々廻、栗原と一緒になった。奇しくも球技大会決勝であたったメンバーだ。これにはさすがに皆顔を見合わせた。
東雲が全くの初心者だったので、靴やボールの選び方からみんなで教えることになった。
「私も久しぶりだがな」とか言いながら神々廻は面倒見がよかった。
「本当に全然やったことなかったの?」栗原が訊いた。
その巨体から見下ろされる形になって東雲は身をすくませた。
「ずっと寮生活をしていたし、家にも帰らなかったから外で遊ぶことはなかった」
「囚人のような生活だね」栗原が溜め息を放った。
「それが当たり前だと思っているとそうでもない」東雲は答えた。
その東雲の一投目は七本だった。素直に真っ直ぐ転がした。
勢いは女子にしてはかなりある方だ。八ポンドの軽い球であることを考えてもやはり握力はあると思われた。
栗原が八本、篠塚が七本という中、神々廻がいきなりストライクを出した。
「璃乃は何でも上手いな」栗原が感心している。
「今の何? カーブしたように見えたけど」東雲が興味を示した。
「先頭のピンに真っ直ぐ当てても十本全部は倒れないんだ。だから少し斜めから当てる。そのためのカーブだ」
ほとんど表情を変えないが神々廻が得意気に語っていることは篠塚にも栗原にもわかった。
「恭平とか和泉の投げるところを見たら良い」渋谷と高原がお手本になると神々廻は教えた。
右隣のレーンに渋谷がいた。高原もいて、村椿、樋笠に小早川玲音という五人だ。
双子の一人が入っているとはいえ錚々たるメンバーだと篠塚は思う。高得点者が集まっている。
「ここにおいてあるボールはあまり曲がらないんだけど、あいつらは上手いから曲げるよな」栗原が言った。
渋谷はパワーもあるから勢いでガンガン倒した。高原は技巧派でスペアを確実にとる。村椿は初心者に近かったが、覚えるのが速く、器用にこなしていた。
「真っ直ぐに転がす場合は、先頭のピンの少し右に当てる感じで投げると良い」神々廻が言った。
「なるほど、確かに」東雲は頷いた。
わずかに右にずれた方がストライクになることを東雲は身をもって理解したようだ。
「にしても正確に転がすねえ」栗原が感心している。篠塚もそう思った。
カーブがかけられないとはいえ、思い通りに転がすのはもって生まれた才能と言えよう。
「体の軸が安定している。足腰が強いんだ」神々廻の解説が入った。「そしてあの握力」
三人は感心した。
「スペアがとれないと点は増えないのね」東雲が残念そうに洩らした。
意外と得点がのびない。両端にピンが残るケースが多いからだ。
「スペアをとれるようにするには片側にピンが残るようにするしかない。とはいっても、はじめからストライクを狙わないなんて私の性格に合わない」
そう言って東雲は得点よりもストライクを狙い続けた。
「泉月に似ているかと思ったけど、違うな、彼女」神々廻が言った。篠塚は頷いた。
四人のグループだったこともあり、五人のグループよりも先に一ゲーム終わってしまった。またグループ分けをやり直すのでしばらく待機だ。
結果は神々廻が百七十点、栗原が百五十二点、篠塚は百四十六点。東雲は百二点だった。
「初めてで、女子百二点なら良いんじゃない」篠塚は褒めたつもりだ。
「そんなものなの?」東雲はわずかに首をかしげた。そんな東雲の表情は新鮮でもある。
しかし二つ隣のレーンにいた東矢泉月が百六十点出したと聞くと東雲の目がつり上がった。
「東雲さん、泉月に対抗心あるよね」篠塚は何気なく訊いた。
ひと息ついていた栗原と神々廻も耳をすます。
「いろいろ勝負してるからね」
「ん、勝負?」
「夕食当番とか」
「「「は?」」」
篠塚たちは耳を疑った。
「泉月は帰りがいちばん遅いから夕食の用意ができず、朝食専門になるのはわかるけれど、それでも土日くらい夕食を作っても良いと思う。それを言ったら『私に勝てたらね』なんて言うのよ」
「そんなこと言うんだ……」栗原は信じられない顔をした。確かに篠塚も想像できなかった。
「もしや球技大会の時も何かかけていたのか?」神々廻が訊いた。
「あの時も夕食当番。負けた私は泉月に頼まれた日は無条件で夕食を用意している」
「あの球技大会決勝にそんな隠された勝負があったとは」神々廻は呆れていた。
「俺、思うんだけど」篠塚はおもむろに語りかけた。「東雲さん、いつも不利な勝負させられてない? あの球技大会決勝だって、東雲さんと泉月の個人対決は決して負けてなかったと思うよ。チームの総合力で負けたけど」
「は? そうなの?」
「あなた、天然だな。それじゃ泉月に勝てないぞ」神々廻は身も蓋もない言い方をした。
「ボウリングの点数で勝負しちゃダメだよ。経験値に差もあるのだし」栗原が噛んでふくめるように言った。
東雲は口を閉ざし、頬を膨らませた。
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