気まぐれの遼 二年A組

hakusuya

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エレベーターで出会った双子の兄妹

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 帰る前に図書室に寄る。週に三度は寄っていた。
 たまに白砂しらさごに遭ってその美貌を少しの間間近で鑑賞するのを趣味にしていた。長く話をするつもりはない。見ているだけで良いのだ。
 白砂は好きな顔をしていた。しかしその日、白砂の姿はなかった。書庫に人影は少ない。南米文学の書棚をうろついていたら、コルタサルの「石蹴り遊び」が目にとまった。
 上下巻ではなく、一冊になった箱本だ。作家名は「コルターサル」になっている。いつか読もうと思っていたもので、手に取ってみた。
 小さな字がびっしりと詰まった、上下二段に段組された本で、はじめに読み方が二通りあると記載されている。はじめから読んで全体の三分の二あたりで終了する読み方。指示された章をその通りに順に読んでいく読み方だ。読み方の違いで別の物語が浮き上がってくる手法なのだろうか。噂には聞いていたがなかなか興味深い。
「しかし、それにしても字が小さいな」
 さすがに一気に読むと目が疲れるかもしれないと遼は思った。そしていつもするように図書貸出カードを確認する。
 思ったより多くの名が記されていて、白砂の名も五年くらい前にあった。借りていこう、と遼は思った。
 マンションまで帰ってきた。エレベーターに乗ったら目的階につく前に止まった。小学校低学年の子供が二人乗ってきた。上の階に行くようだ。
 マンションの住人が途中階から乗ってきて上の階に行くのに出くわすのは滅多になかった。子供は男女二人でしかも良く似ていた。女の子の方が好奇心をあらわにして遼の顔を見上げた。遼はにっと笑みを浮かべた。
「今日はお姉ちゃんはいないの?」女の子が話しかけてきた。
 男の子も遼の方を見た。
「ん?  お姉ちゃん?」
「ふたごの……」
「妹かもしれないだろ」男の子が女の子に言った。
「ああ」と遼は合点した。何度かエレベーターで一緒になったのだろう。星が一緒だと他人の顔は見ないので記憶に残らないのだ。
「帰りは別々なんだ」
「そうなの?」女の子は目を丸くした。
「ふーちゃんとこもそうだろ」男の子は女の子に言った。
「あそこはバラバラだね」女の子は楽しそうに笑った。
「君たちもふたごなのか?」
「うん、ボクが兄ちゃんだよ」
「えらそうに」女の子は頬を膨らませた。
「妹を大切にするんだよ」遼は兄の方に言った。
「ん?」と兄。
「お兄ちゃん、ありがとね」妹は満面の笑みを浮かべた。
 遼の階に着いたので遼は降りた。
「バイバーイ」ふたごが手を振って見送った。
 このマンションの住人は多い。エレベーターで出くわすのはほんの一部だ。御堂藤学園に通う生徒もいると星から聞いた。いずれそれらにも出くわすのだろう。
 しかし子供を相手にするように喋ることはないだろうと遼は思った。
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