桃太郎の木

裕雨(ゆう)

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桃太郎の木

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 昔々あるところにお爺さんとお婆さんが二人で寂しく暮らしていました。
 とある日にお爺さんが隣の家を訪ねると、そこには桃太郎と呼ばれる子供がおりました。そこでお爺さんは訪ねました。

「その子はどうしたんじゃ?」

「家のお婆さんが川で洗濯をしておる時に大きな桃を見つけたんじゃ。それを帰って割って見ればこの通りじゃ」

 そう言って教えてくれました。
 お爺さんはそれを羨ましく思って、すぐさま家に戻りお婆さんに知らせました。すると、お婆さんは鋭い口調でお爺さんに言いました。

「あんたその桃とやらを手に入れて来て頂戴」

 お爺さんは自分たちにも子供が欲しいと思っていたので、すぐさま川へと向かいました。しかし、川に着いても一向に桃は流れて来ません。困ったお爺さんはこのまま帰ってはお婆さんに怒られると思い、川上へと上って見ることにしました。
 しばらくすると大きな桃の成る巨大な木が見えてきました。お爺さんはこれだと思って急いで駆け寄ると、木の幹をつたってよじ登り、一番大きな桃を木から引きちぎりました。それを大事そうに抱えて急いで山を下って行きました。

 お婆さんのところに戻ると、桃を台所に置いて井戸へ手を洗いに行きました。早く子供を見たいお婆さんは、お爺さんが帰って来るのを待ちきれずに大きなナタのような包丁を取り出すと、ザクッと桃の半分程まで包丁を入れてしまいました。そこで丁度手を洗い終えて帰って来たお爺さんそれを目にすると、叫声をあげて言いました。

「お婆さん切りすぎじゃあ!!」

 お婆さんはびっくりして桃から包丁を引き抜くと、包丁は赤い液体でべっとりと染まり、桃の切れ目から滴るように赤い液体が流れ出しました。お爺さんは悲しみに暮れながらも庭に穴を掘り、そこに赤く染まった大きな桃を埋めてお墓を作りました。
 そして数日経つとそこから芽が出て、一年経てばあっという間に巨大な木となりました。そして月日が経つごとに実がなり、それが大きくなって行きました。びっくりしたお爺さんはまた桃を切って見ることにしました。
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