12 / 48
12 報酬
しおりを挟む
考えれば考えるほど、考えは暗くなっていき、今いるこの場所も今でも逃れられない鳥かごのなかだと思ったあの時の気持ちがよみがえってくる。
少しは日の当たる優しい場所かもしれない。けれど、どこにいても変わらないものというのはある。
「……でも今はここにいます。あの場所からは逃げ出してこられたけれど、本質は何も変わらないのかも」
つぶやくように言う。
決してこの屋敷が嫌いではない、むしろ好きだしずっとここにいたいと思う。
でもアイリスがなにかを変えられるわけでも出来るわけでもない。ここがいつか暗い場所になった時アイリスは、結局どこにも飛び立てない。
そう思う。だから酷く、自分は無力だと思うのだ。
「…………」
しかし、言ってしまってからアイリスは、ふと目の前のレナルドの事を思い出した。
自分の考えに浸って、駄目駄目で何もできない鳥かごの中の勘違い女だと言ってしまった。
これではここまで良くしてくれている彼に、ここにいることですら辛くて望まない事態で、どこかで自由になりたいと思っているみたいだ。
それはひどく無礼なことで、アイリスには行く当ても、いきたい場所もない。ただ自己否定に浸っていただけだ。良くない事をしてしまった。
言葉を失って何も返さないレナルドの顔をみられなくて、アイリスは俯いて床の大理石をみつめていた。
しかし、ふいに視界の中に手が伸びてきて、今日は正装ではないので手袋はしていない彼の手がアイリスの手に触れて、優しくつなぐ。
その手のひらはアイリスの手よりもずっと大きくて、はたから見ている分にはそんなに彼を男らしいとか、強そうだと思わないのに、手の大きさが違うのを感じるととても現実味を帯びてそう感じた。
それからどういう意図かと視線をあげると、レナルドもアイリスを覗き込もうとしていた様子でばっちりと目が合って、彼の藍色の優しい瞳の中を覗き込んだ。
そこには一切の、嫌悪も苛立ちも含まれていなくて、ただ励ますようにやっぱり優しく笑った。
「アイリス、アイリスはすごいよ。とてもちゃんとしてる。君はただ今まで結果が伴わなかっただけで、努力をしてきたんだと思う」
握られた手が暖かくて指先からじんと温められていくようだった。
「だから今回だって役に立ってくれた。鼻につく物言いをする人だったし、焦って帰っていくところが見れて、正直俺は痛快だったよ」
「……でも、それはやってもやらなくても変わらない事だったと思います。私は何もできていない」
「じゃあ、ボルジャー侯爵の密輸がばれて捕らえられたら、君は今回それからダンヴァーズ公爵家を守ったって事になる?」
レナルドは、アイリスに例え話で聞いてきた。
しかしそんな可能性はあまり高くないし、ありえないとまではいかないが今まで見逃されていたものが突然、罪になるだなんて思えなかった。
「それは、その通りだけど。その可能性はとても低いと思う」
「そうじゃなくて、告発すればいいし、やれば君は報われる。できないことないと思うよ。俺、王家に貸しがあるし」
それは、その間違いを正すために彼が直接訴えてくれるという事だろうか。
そう考えて、同じようにアイリスが間違いを正そうとしたから死んでしまった父と母の事を思いだして「それも駄目です!」と大きな声を出して彼の手を強く握った。
「そ、それをしたら、ボルジャー侯爵に命を狙われるかもしれません、刺客を送られたり、何か、恐ろしい事になるかも」
「……」
「レナルド様に何か危険があってからでは遅いんです。何も言わなければ良かったと後悔するのはとても耐えられない、そうなるくらいなら、私はずっと何も言いませんし、しませんし、小さくまとまっていますから」
勢いに任せてアイリスは必至にレナルドに訴えかけた。彼までいなくなったらアイリスはとてもじゃないが生きていける気がしない。
少なくとも実家にはもう戻りたくない。
そう考えると血の気が引いて、唇が震えた。
そんな様子のアイリスに、レナルドは、落ち着くようにアイリスの肩に手を添えた。
そしてそれでもアイリスが握った手は離さずに、じっと目を見て、アイリスに言い聞かせるように言った。
「……俺は一応、魔法も持っているし、騎士の家系の出だからそう簡単に死なないよ。それにさ、アイリス。報復が怖いのはわかるけど、そもそも良くない事をした人が一番悪いと俺は思う」
アイリスの頭の中ではすぐさま、そういう事ではなく、死んでからでは遅いのだと思うが、報復の話はその通りで決して間違ってはいない。
「それに相手も人間だから、殺しに来るなら殺せばいいし、悪い事をした人間なんだから殺しても誰にも文句は言われないよ。
まぁ、何が言いたいかっていうと俺は死なないし、殺されるぐらいだったらちゃんと殺すから、アイリスは安心して良いよ。
君が正しい、そう思えるように君がその自信を取り戻せるように、はっきりさせてこようかな」
彼はそう、にっこり笑って平然と言ったのだった。
そしてアイリスの脳裏には、ちらりと血濡れの公爵という二つ名と、革命阻止の二つの事柄が思い浮かんだ。
革命の阻止には大義名分があり、阻止したと彼が言いきったということは告発して、処罰したその一番の功労者だ。
つまりはアイリスと違って、悪事を阻止して何も失わず得ることができた人。
そんな人が死なないと言っているのだから、たしかに死なないという言葉には説得力があった。
それに、まったくもってその姿勢がおごりなんかではなく本当に彼は死なないのだろうと、その芯の強そうな瞳を見ていて腑に落ちて納得してしまった。
「……」
けれどもそれにしたって物騒だ。
普通は殺されそうになったって、正しい事をしていることを主張するべきで、殺そうとしてきたからには殺してもいいだなんていう発想にはならないと思う。
それは、もしかして彼が王都という色々な思惑が渦巻く場所で騎士をやっていたが故の価値観なのだろうか。
とにかくアイリスにはわからないけれども、彼がアイリスを思いやって、そこまで言うぐらい正しいと思ってくれていることはわかった。
「わ、わかりました。でもこ、今回は。やらなくてもいいと思います」
「え、どうして? 遠慮することないんだよ、アイリス」
「いえ、たしかに嫌味な人でしたけど、いずれ来るべき時に、きっと自ら破滅すると思います、隣国から買っていたという証拠は消せないですし、でも」
途中まで言ってからアイリスは言葉を切って、レナルドの手をきちっと握って、くっと顔をあげて胸を張った。
さすがにここまで言われて、彼が行動を起こしてくれるといったのに、くよくよしているような自分ではいたくない。
「胸を張ります。胸を張って、今日は頑張ってボルジャー侯爵家の魔の手から我が家を守った思います」
「……」
「わ、私は、レナルド様に褒められて、背中を押してもらえるぐらい正しく努力したときちんと誇ります……から、あの、どうか、一人で行かないでもらいませんか」
アイリスは、言葉で言った通りに胸を張って宣言した。けれども最後の最後で本音が出てしまって、ついそうこぼした。
だって死なないと言ってくれたとしても、心配なことには変わりはなく、彼がどんな矜持を持っていてアイリスよりも殺伐とした場所で生きていて強かろうとも、心配だ。
不安になるのはまだ苦しい。だから今日はこれで手を打ってほしいとお願いするように、上目遣いでレナルドを見た。
すると彼は、キョトンとしてから楽しそうに笑って、ぽんぽんとアイリスの頭を撫でた。
「そんな風に言われると、どこにも行けないかな。……かわいい」
「で、では、そういう事で、良いですね。これからもこの屋敷を支えられるために精進します」
頭の上から声が降ってきて、アイリスは恥ずかしくなってしまって手を放してそろそろ屋敷の中へと戻ろうとした。
しかし、手は放しても、レナルドはこの話を早々に終わらせるつもりはなく「じゃあ、最後に一ついい?」とアイリスに問いかけた。
「……なんですか?」
「今日の君は頑張ってくれたし、君も自分の頑張りを認めたわけだから、なんでも、欲しいものでもやりたいことでも君の要望を叶えたいんだ」
「要望……ですか」
「うん。功労者には報酬があって然るべきだよね、それに俺も君がどんな要望をするのか気になるし、考えておいてね」
このダンヴァーズ公爵邸にいる以上は貢献することなど当たり前なので、報酬など必要ない。
けれども自分を認めるといった以上はもらわないと言い張るわけにもいかない。
「……」
返答に困ったが、アイリスは先程自分で宣言したのだ。
自分はちゃんと今日役に立ったと思っていると。
報酬を拒否して、それを早々に否定するわけにもいかずに「わかりました、考えておきます」と返答して二人は、やっと部屋の中に戻ってそれぞれ長ったらしいお金の話をして疲れた体を癒すのだった。
少しは日の当たる優しい場所かもしれない。けれど、どこにいても変わらないものというのはある。
「……でも今はここにいます。あの場所からは逃げ出してこられたけれど、本質は何も変わらないのかも」
つぶやくように言う。
決してこの屋敷が嫌いではない、むしろ好きだしずっとここにいたいと思う。
でもアイリスがなにかを変えられるわけでも出来るわけでもない。ここがいつか暗い場所になった時アイリスは、結局どこにも飛び立てない。
そう思う。だから酷く、自分は無力だと思うのだ。
「…………」
しかし、言ってしまってからアイリスは、ふと目の前のレナルドの事を思い出した。
自分の考えに浸って、駄目駄目で何もできない鳥かごの中の勘違い女だと言ってしまった。
これではここまで良くしてくれている彼に、ここにいることですら辛くて望まない事態で、どこかで自由になりたいと思っているみたいだ。
それはひどく無礼なことで、アイリスには行く当ても、いきたい場所もない。ただ自己否定に浸っていただけだ。良くない事をしてしまった。
言葉を失って何も返さないレナルドの顔をみられなくて、アイリスは俯いて床の大理石をみつめていた。
しかし、ふいに視界の中に手が伸びてきて、今日は正装ではないので手袋はしていない彼の手がアイリスの手に触れて、優しくつなぐ。
その手のひらはアイリスの手よりもずっと大きくて、はたから見ている分にはそんなに彼を男らしいとか、強そうだと思わないのに、手の大きさが違うのを感じるととても現実味を帯びてそう感じた。
それからどういう意図かと視線をあげると、レナルドもアイリスを覗き込もうとしていた様子でばっちりと目が合って、彼の藍色の優しい瞳の中を覗き込んだ。
そこには一切の、嫌悪も苛立ちも含まれていなくて、ただ励ますようにやっぱり優しく笑った。
「アイリス、アイリスはすごいよ。とてもちゃんとしてる。君はただ今まで結果が伴わなかっただけで、努力をしてきたんだと思う」
握られた手が暖かくて指先からじんと温められていくようだった。
「だから今回だって役に立ってくれた。鼻につく物言いをする人だったし、焦って帰っていくところが見れて、正直俺は痛快だったよ」
「……でも、それはやってもやらなくても変わらない事だったと思います。私は何もできていない」
「じゃあ、ボルジャー侯爵の密輸がばれて捕らえられたら、君は今回それからダンヴァーズ公爵家を守ったって事になる?」
レナルドは、アイリスに例え話で聞いてきた。
しかしそんな可能性はあまり高くないし、ありえないとまではいかないが今まで見逃されていたものが突然、罪になるだなんて思えなかった。
「それは、その通りだけど。その可能性はとても低いと思う」
「そうじゃなくて、告発すればいいし、やれば君は報われる。できないことないと思うよ。俺、王家に貸しがあるし」
それは、その間違いを正すために彼が直接訴えてくれるという事だろうか。
そう考えて、同じようにアイリスが間違いを正そうとしたから死んでしまった父と母の事を思いだして「それも駄目です!」と大きな声を出して彼の手を強く握った。
「そ、それをしたら、ボルジャー侯爵に命を狙われるかもしれません、刺客を送られたり、何か、恐ろしい事になるかも」
「……」
「レナルド様に何か危険があってからでは遅いんです。何も言わなければ良かったと後悔するのはとても耐えられない、そうなるくらいなら、私はずっと何も言いませんし、しませんし、小さくまとまっていますから」
勢いに任せてアイリスは必至にレナルドに訴えかけた。彼までいなくなったらアイリスはとてもじゃないが生きていける気がしない。
少なくとも実家にはもう戻りたくない。
そう考えると血の気が引いて、唇が震えた。
そんな様子のアイリスに、レナルドは、落ち着くようにアイリスの肩に手を添えた。
そしてそれでもアイリスが握った手は離さずに、じっと目を見て、アイリスに言い聞かせるように言った。
「……俺は一応、魔法も持っているし、騎士の家系の出だからそう簡単に死なないよ。それにさ、アイリス。報復が怖いのはわかるけど、そもそも良くない事をした人が一番悪いと俺は思う」
アイリスの頭の中ではすぐさま、そういう事ではなく、死んでからでは遅いのだと思うが、報復の話はその通りで決して間違ってはいない。
「それに相手も人間だから、殺しに来るなら殺せばいいし、悪い事をした人間なんだから殺しても誰にも文句は言われないよ。
まぁ、何が言いたいかっていうと俺は死なないし、殺されるぐらいだったらちゃんと殺すから、アイリスは安心して良いよ。
君が正しい、そう思えるように君がその自信を取り戻せるように、はっきりさせてこようかな」
彼はそう、にっこり笑って平然と言ったのだった。
そしてアイリスの脳裏には、ちらりと血濡れの公爵という二つ名と、革命阻止の二つの事柄が思い浮かんだ。
革命の阻止には大義名分があり、阻止したと彼が言いきったということは告発して、処罰したその一番の功労者だ。
つまりはアイリスと違って、悪事を阻止して何も失わず得ることができた人。
そんな人が死なないと言っているのだから、たしかに死なないという言葉には説得力があった。
それに、まったくもってその姿勢がおごりなんかではなく本当に彼は死なないのだろうと、その芯の強そうな瞳を見ていて腑に落ちて納得してしまった。
「……」
けれどもそれにしたって物騒だ。
普通は殺されそうになったって、正しい事をしていることを主張するべきで、殺そうとしてきたからには殺してもいいだなんていう発想にはならないと思う。
それは、もしかして彼が王都という色々な思惑が渦巻く場所で騎士をやっていたが故の価値観なのだろうか。
とにかくアイリスにはわからないけれども、彼がアイリスを思いやって、そこまで言うぐらい正しいと思ってくれていることはわかった。
「わ、わかりました。でもこ、今回は。やらなくてもいいと思います」
「え、どうして? 遠慮することないんだよ、アイリス」
「いえ、たしかに嫌味な人でしたけど、いずれ来るべき時に、きっと自ら破滅すると思います、隣国から買っていたという証拠は消せないですし、でも」
途中まで言ってからアイリスは言葉を切って、レナルドの手をきちっと握って、くっと顔をあげて胸を張った。
さすがにここまで言われて、彼が行動を起こしてくれるといったのに、くよくよしているような自分ではいたくない。
「胸を張ります。胸を張って、今日は頑張ってボルジャー侯爵家の魔の手から我が家を守った思います」
「……」
「わ、私は、レナルド様に褒められて、背中を押してもらえるぐらい正しく努力したときちんと誇ります……から、あの、どうか、一人で行かないでもらいませんか」
アイリスは、言葉で言った通りに胸を張って宣言した。けれども最後の最後で本音が出てしまって、ついそうこぼした。
だって死なないと言ってくれたとしても、心配なことには変わりはなく、彼がどんな矜持を持っていてアイリスよりも殺伐とした場所で生きていて強かろうとも、心配だ。
不安になるのはまだ苦しい。だから今日はこれで手を打ってほしいとお願いするように、上目遣いでレナルドを見た。
すると彼は、キョトンとしてから楽しそうに笑って、ぽんぽんとアイリスの頭を撫でた。
「そんな風に言われると、どこにも行けないかな。……かわいい」
「で、では、そういう事で、良いですね。これからもこの屋敷を支えられるために精進します」
頭の上から声が降ってきて、アイリスは恥ずかしくなってしまって手を放してそろそろ屋敷の中へと戻ろうとした。
しかし、手は放しても、レナルドはこの話を早々に終わらせるつもりはなく「じゃあ、最後に一ついい?」とアイリスに問いかけた。
「……なんですか?」
「今日の君は頑張ってくれたし、君も自分の頑張りを認めたわけだから、なんでも、欲しいものでもやりたいことでも君の要望を叶えたいんだ」
「要望……ですか」
「うん。功労者には報酬があって然るべきだよね、それに俺も君がどんな要望をするのか気になるし、考えておいてね」
このダンヴァーズ公爵邸にいる以上は貢献することなど当たり前なので、報酬など必要ない。
けれども自分を認めるといった以上はもらわないと言い張るわけにもいかない。
「……」
返答に困ったが、アイリスは先程自分で宣言したのだ。
自分はちゃんと今日役に立ったと思っていると。
報酬を拒否して、それを早々に否定するわけにもいかずに「わかりました、考えておきます」と返答して二人は、やっと部屋の中に戻ってそれぞれ長ったらしいお金の話をして疲れた体を癒すのだった。
655
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる