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一難去ったらまた一難……? 5

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 決心を決めていると、二人で話をしていた、サディアスとヴィンスがこちらに向く。

「……いいか、三人とも、クレアの固有魔法は暫くの間、ヴィンスの補助を受けて、治癒魔法の性能が上がるものだとブレンダにも、クラスメイトにもそれとなく説明しておく」
「先生にも?」
「ああ、そもそも、報告義務は無いからな。クレアはそれでも体調が悪いので一週間休みを取る。ヴィンスはそれに付き添う。その間に教師には、クラスメイト達のケアに務めてもらい、クレアは……そうだな、来週の頭から登校、いいな」
「はーい」
「わかりました!」
「了解です」

 じゃあ、解散、とサディアスはパンと手を打つ。
 三人は、教室へと戻っていき、私達は二人だけになって、ヴィンスが隣へと座った。

 二人きりになると妙な沈黙ができる。今まで、ヴィンスといて、沈黙を苦痛に感じた事は無かったが、思ってみれば騒動があってからゆっくりと話すことは無かったように思う。

 ……でも、これといって話し合う内容も無いしなぁ。

 だって、私はすべて伝えるべきことを伝えた。ヴィンスが自由だということをこれでもかと言うほど、示したつもりだ。そしてヴィンスは、きっと、自分の考えで動いている。

 そのすべてを把握したいとは思わない。ただ予定のすり合わせや、何か大きな行動をする時には、事前に話をしておいて欲しいとは思うが、強制する権利もなければ道理もない。

 ……そもそもヴィンスは、私っていう人間に付き従う義理もないしね。……よし!

「ヴィンス、この後は貴方はどうする?しばらく学校には行けないけど、予定はありそう?」
「……」

 ヴィンスは、少し眉を下げて微笑む、それから逡巡の後に口を開く。

「クレアは何かありますか?」
「……私は……エリアル先生の所に行ってくるよ。一応、意思表示はしておくつもり」
「なんと仰られるのですか?」
「うーん……とね。ローレンスとの約束があるから、先生とクラリスとは……その……あまり友好的な関係にはなれないかもって」

 思ったままを口に出す。
 先生たちが提案してきていた話は、割と良い話だったようには思う。エリアル先生は私にバッチをくれると言っていたし、クラリスはきっと色々な事を知っていて、私に助言をしてくれるし悪い子じゃない。協力すれば、この世界で生きていくうえで、とてもプラスになる事を教えてくれるだろうとも思った。

 でも……私はヴィンスの自由の方を望んだ。その結果対立してしまうのならしょうがない事だと思う。

「…………一人で、会いに行かれるつもりですか?」
「うん?そうだよ」

 紅茶を飲みつつ返事をする。なんだか、ヴィンスは怪訝な表情だ。

「お相手の都合の悪い報告をしに行くのに、おひとりで……ですか」
「うん」

 コクンと頷くとヴィンスは、目を伏せる。
 手土産のひとつでも持って行った方がいいという話だろうか。まぁ、確かにいきなりお邪魔するのだから、そのぐらいの配慮は必要だろう。それに今の時間、授業で不在という可能性もあるし、その場合は後日かな。

「クレア……少し、私と話をしませんか」
「いいよ、相談事?」
「相談事というか……疑問です」

 彼はそう言って私を見据える。何やら真剣な雰囲気を感じて、私もきちんとヴィンスの方へと体を向けた。

「クレア」
「うん」
「我々の関係は……今後一体どのようになっていくのか、貴方様は考えておりますでしょうか」
「関係……」
「そうです。貴方様は、模擬戦での私の行動を言葉を、責めることも、問い詰めることもせず、さも当たり前のように私に接していらっしゃいますが、私に自由意志を与えた結果があのような惨劇です」
「うん」

 別にヴィンスのせいだとかはまったく考えていなかったが否定をせずに彼の言葉を聞く。

「それで貴方様は良いのですか?クレアは、結局、実際、私にどうあって欲しいのですか?」
「…………」

 実際ということは、これからは友達として一緒に登校したり、おしゃべりするのがいい関係だよねとか、もしくは、例えば協力者のようであって欲しいとかだろうか。

 うーんと頭を捻ってみる。

 でも、そんな事を言われたって、分からない、こんな関係の人間は今までいたことは無いんだ。強いて言うなら、というかこの騒動が落ち着くまで意図的に思わないように考えないようにしていたのだが……。

「言わない」

 家族のようでありたい。

 おこがましい願いであるのは重々承知だ、でも出来るだけ近い距離でそばにいて欲しい。

 ……貴方が仕えていてくれていた時と同じに、一番、私を知っている人であってほしい。でもこれは、せっかく、ヴィンスが自立しようと考えている今、口に出すべきでは無いことだ。

 だって、本当は寂しい。いなくても一人で生活可能だとか、色々示していたつもりだが、こちらに来てからの成り行きのすべてを知っている彼がこれからも傍で、話を聞いて、意見を言って、共に行動してくれればどれほど、心強いかと思う。

「…………それは、また、貴方様の私の為の事ですか」
「うーん……どうだろう」
「クレア、私の模擬戦での行動、どう思われましたか?」
「……ちょっと、ずるいかなって思った」

 助けて、と言ってしまった。



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