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11 もふもふ枠
しおりを挟む訳の分からないうちに放り投げられて、とにかくがむしゃらに羽ばたいていたことは記憶にある。
しかし、それからの事はまったく覚えていない。気が付いたら学園の庭園にいて目の前には茶色い毛色のどでかいオオカミが鎮座していた。
はっはっはっと短く呼吸をして、口をあけっぱなしにしているその様子に僕は一瞬面食らったが、空を見れば朝焼けに白んできている。
どうやらあのまま自分の屋敷にもたどり着けずに行き倒れになったらしい。
そうして意識を失っている間に、変身はとけてやっと自我を取り戻すことができた。
そして目の前にいるオオカミ。彼はきっと朝方の散歩でもしている最中なんだろう。
この人はいつでも神出鬼没だ。その設定は僕が関わってもまったく変わっていないのだろう。
「……バルトロメウス。……もしよければなんだけどウェントワースのお屋敷まで運んでいってくれたりとか……しない?」
「ワンッ」
「え、どっち?」
僕がそうお願いすると彼は大きな声で返事をする。
しかし、返答の意味は分からない。聞き返すと、チカッと光って、光の中からは輝くような笑顔がうつくしいケモミミを携えたイケメンが登場する。
「……もちろん、構わないぞっ! でもそれにしてもなんでこんなところで寝てるんだ? ニコラス! 人間には分厚い毛皮がないんだから風邪を引くだろ?」
「うん。……なんでっていうか、なんて言ったらいいんだか……はぁ、なんかすごい腕も痛いし、風邪もひきそう」
「とりあえず掴まれ! 何か災難に巻き込まれたのか?」
「そんなとこ……あ~、まずいよ。こんな時間に帰るなんて、姉さまが……」
「ニコラスは相変わらず、メロディに難儀してるんだな!」
朝から元気すぎる彼は、獣人だけあって大柄であり僕の事を軽く持ち上げてとことこと運んでくれる。
本来だったら、こんなことをお願いすることすら恐れおい立場の人間なのだが、今日ばかりはそうも言っていられないし、攻略対象の中でもバルトロメウスはグレンの次に仲がいい。
といっても変な仲の良さではなく、珍しく姉さまにもそれなりに友好的に接してくれるいい人だ。
「それはまぁ、おおむねいつもと変わら無いんだけど、今日の事はまた別件。長年の謎が解けたのはいいけど、結局なんのあてにもならなかったなぁ」
「ニコラスはいつもそんな顔ばかりしているなっ。あまりにも解決が難しい事なら、人を頼るのも一つの手だ!」
「……」
「君は少々背負い込みすぎだ! 屋敷に戻ったらゆっくり休めよ」
「……うん?」
バルトロメウスは校門の方へと歩いていき学園の外へと出る。
歩きながらも窘めるように言われて、そういえばそんなことを最近別の人にも言われていたような気がするが、一体誰だったか。
それにそう言われたとしても、姉さまの事を誰かがどうにかしてくれるわけじゃない、僕らが一蓮托生だということは変わりようがない。
「良し、それじゃあちょっと走るぞ! ちゃんと捕まってろよ」
「え、ゆ、ゆっくりで……ワヒッ」
それだけ言ってバルトロメウスは、僕を横抱きにしたまま姿勢を低くしてじりっと音を立てて片足をひく、彼は獣人で人間の何倍も基礎体力がある種族だ。
走る速度だって人間基準ではない。止めようと制止したその瞬間にはギュンと加速して、僕は酷い風圧に首の骨が折れるかと思った。
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