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回想 旅立ちの試練
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「アーダン早く来いよ! 遅れたら約束通り置いて行くぞ!」
「待ってくれよノイス! もう少しだから待っていてくれ必ず、登りきるから!」
「あんまり慌てさせるなよ。あそこでこけたりしたらあいつは底まで転がり落ちてしまうぞ」
真昼の陽が天辺に昇ったその時刻に俺達三人が大声を出し合っていた。
坂の上からノイスの煽り立てる大声にアレクのそれを諫める声、そして坂の途中には運命に抗っているかのように叫ぶ俺の声。
どれも必死であり、どれも強い光の下では真実だった。
今日は彼ら二人の旅立ちの朝。
それは噂の勇者様のパーティーに参加する日であった。これはその旅の始まり。
「おい根性見せろよ! これから俺達は勇者様に実力や根性をアピールしなきゃいけないんだぞ!
だから俺は生半可な覚悟でないなら来るなと言ったぞ!」
ああ聞いたと俺は息苦しいせいで意識朦朧とするなかでこの心臓破りの坂道を走って登る。
ノイスとアレクは地元において一番と二番の戦士であり、魔王に挑む勇者様のパーティーに当然参加する。
本来二人だけであり三人目の予定は、ない。
いらないのである。だがここでそれに俺は挑んだ。
「なぁノイス。やっぱり帰らせた方がいいんじゃないのか? だってアーダンだぜ。
もしも万が一登りきって参加しても足手まといになるんじゃ俺達の立場も悪くなるわけだし」
アレクの小馬鹿にした声が坂の途中にいる俺に聞えるはずがないのに、どうしてか俺には伝わってきて聞いた途端に力が湧き勢いも増し、さらに闘志を燃やすようにして坂を登り出した。
絶対に帰らないと言葉はないが二人に伝わるほどの迫力。
「おっいいぞいいぞいいぞその調子だ! だけどよアレク。あそこまで頼まれたら男として断れないだろ」
そう俺は頼みに頼みまくった。彼は選ばれた戦士などではなく、ただの荷物持ち役。
二人が勇者様と合流したら荷物を渡してそのまま村に帰る。
それだけの存在であり、それで終わる存在。
その後の未来は予想できる。二人の帰還を待ちまた荷物を持つために出迎えるだろう。
俺は思う、だがそれでいいのか? と。俺はそれでいいのか?
そうやって己の人生に見切りをつけて……良いのか? だから俺は坂を登る決意をした。
「やらせてみせて無理だと思い知らせ自分で諦めさせる、か。
回りくどいな。俺だったらお前みたいな無慈悲なことをさせずに帰らせるんだがな」
アレクの言葉にノイスは首を振った。
「俺はそっちのほうが無慈悲だと思うぜ。簡単に見切りをつけてさ。
それなら俺はとことん限界に挑まさせて自分の力を自覚させるぜ。そこから始まる何かもあるはずだ」
「諦めたら新しい道が開ける、か。どうだかな。ほら見ろ転んで、くたばった。
お前の残酷さがこの事態を引き起こしたんだぜ。約束通り助けに行かずに見捨てろよな」
「おいアーダン立てよ!」
ノイスの大声は俺の耳に届くも地に屈した膝は容易には起き上がらない。
この最後の試練とも言える断崖絶壁を登らないといけないがもう力尽きようとしている。
ここまでは多くの若者は辿り着けるが、この先は特別なのだ。
それこそが俺達の地元における戦士の条件。
近年ではここまでで合格として上からロープを降ろしてみんなの協力でもって踏破という形にしている。
だがあの上にいる二人は独力で登りきり真の戦士という称号を授かり、そうであるからこそ勇者の元へ行く許可を得たのである。
だから俺が二人に付いていくためには同じことをする条件が出されるのは当然であり、覚悟をしていた。
なんとかここまでは来れた。
以前挑戦した際は半分まで進めなかった坂道をクリアし心臓と足の痛みを乗り越え、ここまで到達できた。
俺の心と体はあの時の挫折による痛みを覚えていてすぐに無理だと訴え続けているのか?
お前では駄目なんだと言っているのか?
あの二人のようにはなれないと痛みが伝えてきているようで。
だが俺はそのことについては当然だと認識している。
そんなことは分かっている。俺は子供の頃から分かっていた、と。
物心ついた頃からの冷厳なる序列は今も健在でありこのさき未来永劫に変わらない。
だが少しでも変わる時が来た。これはそのたった一度きりかもしれない。
無謀であってもその一度に、馬鹿にされ下に見られ続けてきたのだから、自分の限界に挑み賭けてみたくなった。だから俺は……とアーダンは崖に手を掛け登り出した
「おっ立ったぜしかも登り出したぜアレク! あいつは倒れていなかったぞ」
「マジかよ……チッ無茶しやがって。滑落して死んだらどうすんだよ」
上を見上げながら登る俺の眼に二人の男の顔が見えた。
ノイスの緊張している表情にアレクの心配気な表情。
それを見ると俺の身体に力が漲りだし、溢れ出すように叫んだ。
あと少しだと、二人の元に、あそこに辿り着けたらその先の勇者様の元へ。
そしてそこで俺は俺は……男に英雄になって、歴史に名を残す!
そうだも一歩だと、その手が崖の岩から天辺の平地に手が掛かり土を掴んだ瞬間に足下の岩が崩れ、それから全身が!
「おっと! あぶね!」
ノイスの大きな手が俺の右腕を掴んでいる。
「いくぜ、せーのっ!」
アレクが掛け声を出すといつの間にか握っていた俺の左腕を引っ張り上げた。
持ち上げられ、俺は崖の上で呆然としている。
それを見てやっと気づいたのかノイスは自分の行動を驚き、しきりに首を左右に振っている。
手を貸してしまったことに対して戸惑っており俺は言葉が出てこない。
「アーダン、不合格だな」
アレクの声に俺は全身が震え口は開くも言葉が出ない代わりかノイスが言った。
「そりゃないだろ!」
「人の手を借りずに自力で登りきるのが条件だったろ。ノイスはその禁を破った」
「そっそれはそうだが、それを言ったらお前だってそうだろ! まさか俺が手を貸したからその時点とでも!」
「いや、俺もほぼ同時に腕を掴んだからそういうことではない。俺達二人の違反行為だ」
「だったらなおさら」
「すまないアーダン、余計なことをしてしまって」
アレクが頭を下げるとノイスも遅れて一緒に頭を下げた。
「もう一度、登って貰えないか?」
そのアレクの言葉にノイスが驚くも俺は首を縦に振った。
「やる。そもそもあの時の俺は落ちていたんだ。助けてくれてありがとう。
なら、もう一度やるのが正しい。じゃあ降りるとするよ」
「是非そうして貰いたいが、なんとここにはロープが無い。
それともう時間もない。勇者様に早く会わなければならない。ノイス、そうだろ?」
「おっおお、そうだ時間が無いしロープもない……」
俺とアレクは黙ったままノイスの言葉の続きを待つ。
だからノイスはいつもというかよくこういうことがあるなと言われずとも自分で気づいた。
「俺が思うにだな、ここにもしもロープがありアーダンを降ろして再挑戦させても、今のように登りきれると容易に想像ができる。さっきのあの気迫を目の当りにしたからな。
よって、まぁ、もう一度やることもないと思われる。これは戦士ノイスの意見だ」
「うん、この戦士アレクも同意見だ。分かり切っていることをやるのは時間の無駄だ」
「いっ良いのか?」
「良いもなにもないだろ。俺達が見届けて認めたから、良いんだよ。じゃあ行こうぜ。
ほら荷物、頼んだぜ」
アレクとノイスから荷物を渡されるも、それは来る途中の時とは違う量であった。
殆ど均等な荷物の量。それを持ちながら歩き出す。
俺はその荷物の重さで自分は一つ何かを成し遂げた気持ちとなった。
暗闇の中で扉が開き、そしてそれは俺の微かな光ある未来へ進んでいく感覚の中にいた。
「待ってくれよノイス! もう少しだから待っていてくれ必ず、登りきるから!」
「あんまり慌てさせるなよ。あそこでこけたりしたらあいつは底まで転がり落ちてしまうぞ」
真昼の陽が天辺に昇ったその時刻に俺達三人が大声を出し合っていた。
坂の上からノイスの煽り立てる大声にアレクのそれを諫める声、そして坂の途中には運命に抗っているかのように叫ぶ俺の声。
どれも必死であり、どれも強い光の下では真実だった。
今日は彼ら二人の旅立ちの朝。
それは噂の勇者様のパーティーに参加する日であった。これはその旅の始まり。
「おい根性見せろよ! これから俺達は勇者様に実力や根性をアピールしなきゃいけないんだぞ!
だから俺は生半可な覚悟でないなら来るなと言ったぞ!」
ああ聞いたと俺は息苦しいせいで意識朦朧とするなかでこの心臓破りの坂道を走って登る。
ノイスとアレクは地元において一番と二番の戦士であり、魔王に挑む勇者様のパーティーに当然参加する。
本来二人だけであり三人目の予定は、ない。
いらないのである。だがここでそれに俺は挑んだ。
「なぁノイス。やっぱり帰らせた方がいいんじゃないのか? だってアーダンだぜ。
もしも万が一登りきって参加しても足手まといになるんじゃ俺達の立場も悪くなるわけだし」
アレクの小馬鹿にした声が坂の途中にいる俺に聞えるはずがないのに、どうしてか俺には伝わってきて聞いた途端に力が湧き勢いも増し、さらに闘志を燃やすようにして坂を登り出した。
絶対に帰らないと言葉はないが二人に伝わるほどの迫力。
「おっいいぞいいぞいいぞその調子だ! だけどよアレク。あそこまで頼まれたら男として断れないだろ」
そう俺は頼みに頼みまくった。彼は選ばれた戦士などではなく、ただの荷物持ち役。
二人が勇者様と合流したら荷物を渡してそのまま村に帰る。
それだけの存在であり、それで終わる存在。
その後の未来は予想できる。二人の帰還を待ちまた荷物を持つために出迎えるだろう。
俺は思う、だがそれでいいのか? と。俺はそれでいいのか?
そうやって己の人生に見切りをつけて……良いのか? だから俺は坂を登る決意をした。
「やらせてみせて無理だと思い知らせ自分で諦めさせる、か。
回りくどいな。俺だったらお前みたいな無慈悲なことをさせずに帰らせるんだがな」
アレクの言葉にノイスは首を振った。
「俺はそっちのほうが無慈悲だと思うぜ。簡単に見切りをつけてさ。
それなら俺はとことん限界に挑まさせて自分の力を自覚させるぜ。そこから始まる何かもあるはずだ」
「諦めたら新しい道が開ける、か。どうだかな。ほら見ろ転んで、くたばった。
お前の残酷さがこの事態を引き起こしたんだぜ。約束通り助けに行かずに見捨てろよな」
「おいアーダン立てよ!」
ノイスの大声は俺の耳に届くも地に屈した膝は容易には起き上がらない。
この最後の試練とも言える断崖絶壁を登らないといけないがもう力尽きようとしている。
ここまでは多くの若者は辿り着けるが、この先は特別なのだ。
それこそが俺達の地元における戦士の条件。
近年ではここまでで合格として上からロープを降ろしてみんなの協力でもって踏破という形にしている。
だがあの上にいる二人は独力で登りきり真の戦士という称号を授かり、そうであるからこそ勇者の元へ行く許可を得たのである。
だから俺が二人に付いていくためには同じことをする条件が出されるのは当然であり、覚悟をしていた。
なんとかここまでは来れた。
以前挑戦した際は半分まで進めなかった坂道をクリアし心臓と足の痛みを乗り越え、ここまで到達できた。
俺の心と体はあの時の挫折による痛みを覚えていてすぐに無理だと訴え続けているのか?
お前では駄目なんだと言っているのか?
あの二人のようにはなれないと痛みが伝えてきているようで。
だが俺はそのことについては当然だと認識している。
そんなことは分かっている。俺は子供の頃から分かっていた、と。
物心ついた頃からの冷厳なる序列は今も健在でありこのさき未来永劫に変わらない。
だが少しでも変わる時が来た。これはそのたった一度きりかもしれない。
無謀であってもその一度に、馬鹿にされ下に見られ続けてきたのだから、自分の限界に挑み賭けてみたくなった。だから俺は……とアーダンは崖に手を掛け登り出した
「おっ立ったぜしかも登り出したぜアレク! あいつは倒れていなかったぞ」
「マジかよ……チッ無茶しやがって。滑落して死んだらどうすんだよ」
上を見上げながら登る俺の眼に二人の男の顔が見えた。
ノイスの緊張している表情にアレクの心配気な表情。
それを見ると俺の身体に力が漲りだし、溢れ出すように叫んだ。
あと少しだと、二人の元に、あそこに辿り着けたらその先の勇者様の元へ。
そしてそこで俺は俺は……男に英雄になって、歴史に名を残す!
そうだも一歩だと、その手が崖の岩から天辺の平地に手が掛かり土を掴んだ瞬間に足下の岩が崩れ、それから全身が!
「おっと! あぶね!」
ノイスの大きな手が俺の右腕を掴んでいる。
「いくぜ、せーのっ!」
アレクが掛け声を出すといつの間にか握っていた俺の左腕を引っ張り上げた。
持ち上げられ、俺は崖の上で呆然としている。
それを見てやっと気づいたのかノイスは自分の行動を驚き、しきりに首を左右に振っている。
手を貸してしまったことに対して戸惑っており俺は言葉が出てこない。
「アーダン、不合格だな」
アレクの声に俺は全身が震え口は開くも言葉が出ない代わりかノイスが言った。
「そりゃないだろ!」
「人の手を借りずに自力で登りきるのが条件だったろ。ノイスはその禁を破った」
「そっそれはそうだが、それを言ったらお前だってそうだろ! まさか俺が手を貸したからその時点とでも!」
「いや、俺もほぼ同時に腕を掴んだからそういうことではない。俺達二人の違反行為だ」
「だったらなおさら」
「すまないアーダン、余計なことをしてしまって」
アレクが頭を下げるとノイスも遅れて一緒に頭を下げた。
「もう一度、登って貰えないか?」
そのアレクの言葉にノイスが驚くも俺は首を縦に振った。
「やる。そもそもあの時の俺は落ちていたんだ。助けてくれてありがとう。
なら、もう一度やるのが正しい。じゃあ降りるとするよ」
「是非そうして貰いたいが、なんとここにはロープが無い。
それともう時間もない。勇者様に早く会わなければならない。ノイス、そうだろ?」
「おっおお、そうだ時間が無いしロープもない……」
俺とアレクは黙ったままノイスの言葉の続きを待つ。
だからノイスはいつもというかよくこういうことがあるなと言われずとも自分で気づいた。
「俺が思うにだな、ここにもしもロープがありアーダンを降ろして再挑戦させても、今のように登りきれると容易に想像ができる。さっきのあの気迫を目の当りにしたからな。
よって、まぁ、もう一度やることもないと思われる。これは戦士ノイスの意見だ」
「うん、この戦士アレクも同意見だ。分かり切っていることをやるのは時間の無駄だ」
「いっ良いのか?」
「良いもなにもないだろ。俺達が見届けて認めたから、良いんだよ。じゃあ行こうぜ。
ほら荷物、頼んだぜ」
アレクとノイスから荷物を渡されるも、それは来る途中の時とは違う量であった。
殆ど均等な荷物の量。それを持ちながら歩き出す。
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