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第1巻 異世界でもギターしかなかった ~迷わずの森とバーウの村~
第13話「バーウの村とピーネの怒り」
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大鳥が縛った前髪の輪ゴムは、いつのまにか千切れていた。
縛っていた前髪が変な形で垂れ下がり、そして目には涙が垂れ下がる。
帰りを待ちわびていたピーネが、幸を見つけると文字通り飛びついてきた。
「幸!幸!
おかえり!!
どうだった!?
……!?
どうした幸!!!」
ピーネは幸の異変に気付いた。
垂れ下がった前髪が幸の表情を隠してはいるが、ピーネには分かる。
「なんで!?幸!!
何で泣いてる!?
誰かにいじめられたんか!?」
幸は暖かい羽で抱きしめられるが、悲しい気持ちから帰ってこれない。
「幸をいじめるやつは俺が絶対許さない!!
俺が殺して来る!!」
ピーネの怒りは頂点である。ピーネの目尻もぬれている。
もっとも愛しい人が泣かされたのだ。
幸はこの時、地獄になかったものを知る。
それは、自分のために本気で泣いて、本気で怒ってくれる存在だ。
「……。
俺が悪かったんだよ。
へっ、変なっ……、笑い方しちゃったんだ。
きっと俺のせいで気を悪くさせちゃったんだよ。」
完全に現実世界に居た時の気持ちに戻ってしまっていた。
ふさぎがちの目線に、おどおどとして、言葉につまり、きょどってしまっている。
そんな幸に、ピーネは目を「カッ」と見開き、肩を抱き叫ぶ。
「幸は悪くない!!!
幸の笑顔は俺を幸せにする!!
みんなを幸せにする!!!
幸はそんな気持ちになる必要は一つもない!!」
ピーネの言葉は少しずつ、幸の現実世界で作られてしまった大きな傷に、届いていく。
「俺は幸が大好きだ!
大好きなものをイジメるやつは全力で……。
全力で殺す……。」
そう言うやいなやピーネは飛び上がり村の中へ入って行く。
「……駄目だよ!
ピーネ駄目だ!!」
幸が口に出した時には既にピーネは飛んで村の柵を越えていた。
幸は急いで村の入り口まで走って行く。
…………。
……。
ピーネの飛ぶ速度は相当速い。
しかし、猛禽類の様に羽音は全くしない。
幸がいなくなってガヤガヤと村は活気づいていたのだが、「スタッ」と着地して突然現れた化け物に、悲鳴が生まれる。
「「キャー!!魔物よー!!」」
体格自体は幸とそんなに変わらないピーネ。
大きく羽を高く広げ、尻尾もピンと天へ立っている。
その威嚇のポーズは威圧感があり、恐怖の対象になる。
「ギャーウー!!
ギャウギャウ!!
ギャウー!!(誰が幸をイジメた!!出てこい!!かみ殺してやる!!)」
幸の力がない今、ピーネの言葉は人間には通らない。
「「「「「「なんだお前はー!!」」」」」」
悪ガキ6人組である。
「カイセ!!
警備兵呼んで来い!」
タックは、ただ茫然として立ち竦んでいる大人をよそに、すぐさま叫ぶ。
「なんだお前は!
今日は変な奴ばっかり来る日だなー!!」
自分に注意が向くようにピーネと同じように両手を広げ、大きな声でオーバーリアクションで叫ぶタック。
「ギャウギャウ!!
ギャウ!!(お前みたいな子供に幸が泣かされるはずない!)
ギャギャギャウ!!(幸を泣かした奴を呼んで来い!!)」
当然伝わるはずもない。
ピーネも、幸との出会いや、昔の友達のこともあり、人間のことは嫌いじゃない。
簡単に殺せるはずもなく、ましてやタックの様な子供に自分から襲い掛かる事もなく、膠着状態が続く。
騒ぎを聞きつけ、家の扉を閉めてほとんどの者が身を隠す。
残っているのは、悪ガキ達と、路地裏で演奏している3人くらいだろうか。
「魔物が出たんだってー!?」
カイセが呼びに行った警備兵が駆け付けた。
タックの前に踊りでた彼らは、俺たちに任せろと言わんばかりに戦闘態勢だ。
装備はミスリルの鎧と、兜。
そしてミスリルの剣を構えた兵隊が3人。
まさにミスリルのセットアップである。
ラスボス手前の村であるから、装備もいいものが売っている。
がその能力自体はたかだか警備兵。
迷わずの森で暮らしているピーネに敵うはずは当然ない。
戦闘が始まってしまったら人死には避けられない。
「……まっ待ってー!」
ヒーローは遅れて登場するのか、か細い声の主は、幸であった。
走って走って、なんとかピーネに追いついた幸が、構えるのはやはりギターである。
「ピーネ!
人は殺しちゃだめだ!
俺は大丈夫だから!!
ほら、聴いて?」
「F# G#m7~♪」
カントリーチックな、優しさに包まれそうなイントロを弾き出す幸。
小さい頃は神様を信じたり、サンタを信じたりしたものだ。
この曲はそう言う、小さい時の純粋な憧れや、子供の真っ白な感覚で目に写る全てを感じられる喜びを、思い出さしてくれる。
警備兵は初めて音楽を聴いたかの様な顔をして、自然と涙が溢れてくる。
悪ガキ達は投げようとしていた石を地面に放し、ただただ聞き入っている。
そしてピーネはと言うと目がハートで悶えていた。
「F# G#m7~♪」
盛り上げて盛り上げ切った本編からの、イントロと同じに収束するアウトロも美しい。
幸が一曲弾き切った時には、子供達はニコニコと庭駆け回り、警備兵は泣き崩れ、ピーネは幸の足元に抱き着き、丸くなっていた。
「ほら、今のうちだ!!」
幸はピーネの手を掴み立たせようとするが立たせれるわけがない。
「立って!
……走って!
ピーネ!
逃げるよ!」
幸の言葉に、ピーネはすぐ反応し立ち上がり、幸を抱きかかえた。
「走って!」の命令通り、ピーネは入り口まで目指して全力で走って行く。
幸のギターの魔力の一つ【心酔】は聞いた者で屈服したものに、命令を下せる魔法の力だ。
幸はそれを、知らずに発動していた。
ピーネは、脚力も相当に強く、泣き崩れている兵隊や子供が追って来れるものではなかった。
…………。
……。
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大鳥が縛った前髪の輪ゴムは、いつのまにか千切れていた。
縛っていた前髪が変な形で垂れ下がり、そして目には涙が垂れ下がる。
帰りを待ちわびていたピーネが、幸を見つけると文字通り飛びついてきた。
「幸!幸!
おかえり!!
どうだった!?
……!?
どうした幸!!!」
ピーネは幸の異変に気付いた。
垂れ下がった前髪が幸の表情を隠してはいるが、ピーネには分かる。
「なんで!?幸!!
何で泣いてる!?
誰かにいじめられたんか!?」
幸は暖かい羽で抱きしめられるが、悲しい気持ちから帰ってこれない。
「幸をいじめるやつは俺が絶対許さない!!
俺が殺して来る!!」
ピーネの怒りは頂点である。ピーネの目尻もぬれている。
もっとも愛しい人が泣かされたのだ。
幸はこの時、地獄になかったものを知る。
それは、自分のために本気で泣いて、本気で怒ってくれる存在だ。
「……。
俺が悪かったんだよ。
へっ、変なっ……、笑い方しちゃったんだ。
きっと俺のせいで気を悪くさせちゃったんだよ。」
完全に現実世界に居た時の気持ちに戻ってしまっていた。
ふさぎがちの目線に、おどおどとして、言葉につまり、きょどってしまっている。
そんな幸に、ピーネは目を「カッ」と見開き、肩を抱き叫ぶ。
「幸は悪くない!!!
幸の笑顔は俺を幸せにする!!
みんなを幸せにする!!!
幸はそんな気持ちになる必要は一つもない!!」
ピーネの言葉は少しずつ、幸の現実世界で作られてしまった大きな傷に、届いていく。
「俺は幸が大好きだ!
大好きなものをイジメるやつは全力で……。
全力で殺す……。」
そう言うやいなやピーネは飛び上がり村の中へ入って行く。
「……駄目だよ!
ピーネ駄目だ!!」
幸が口に出した時には既にピーネは飛んで村の柵を越えていた。
幸は急いで村の入り口まで走って行く。
…………。
……。
ピーネの飛ぶ速度は相当速い。
しかし、猛禽類の様に羽音は全くしない。
幸がいなくなってガヤガヤと村は活気づいていたのだが、「スタッ」と着地して突然現れた化け物に、悲鳴が生まれる。
「「キャー!!魔物よー!!」」
体格自体は幸とそんなに変わらないピーネ。
大きく羽を高く広げ、尻尾もピンと天へ立っている。
その威嚇のポーズは威圧感があり、恐怖の対象になる。
「ギャーウー!!
ギャウギャウ!!
ギャウー!!(誰が幸をイジメた!!出てこい!!かみ殺してやる!!)」
幸の力がない今、ピーネの言葉は人間には通らない。
「「「「「「なんだお前はー!!」」」」」」
悪ガキ6人組である。
「カイセ!!
警備兵呼んで来い!」
タックは、ただ茫然として立ち竦んでいる大人をよそに、すぐさま叫ぶ。
「なんだお前は!
今日は変な奴ばっかり来る日だなー!!」
自分に注意が向くようにピーネと同じように両手を広げ、大きな声でオーバーリアクションで叫ぶタック。
「ギャウギャウ!!
ギャウ!!(お前みたいな子供に幸が泣かされるはずない!)
ギャギャギャウ!!(幸を泣かした奴を呼んで来い!!)」
当然伝わるはずもない。
ピーネも、幸との出会いや、昔の友達のこともあり、人間のことは嫌いじゃない。
簡単に殺せるはずもなく、ましてやタックの様な子供に自分から襲い掛かる事もなく、膠着状態が続く。
騒ぎを聞きつけ、家の扉を閉めてほとんどの者が身を隠す。
残っているのは、悪ガキ達と、路地裏で演奏している3人くらいだろうか。
「魔物が出たんだってー!?」
カイセが呼びに行った警備兵が駆け付けた。
タックの前に踊りでた彼らは、俺たちに任せろと言わんばかりに戦闘態勢だ。
装備はミスリルの鎧と、兜。
そしてミスリルの剣を構えた兵隊が3人。
まさにミスリルのセットアップである。
ラスボス手前の村であるから、装備もいいものが売っている。
がその能力自体はたかだか警備兵。
迷わずの森で暮らしているピーネに敵うはずは当然ない。
戦闘が始まってしまったら人死には避けられない。
「……まっ待ってー!」
ヒーローは遅れて登場するのか、か細い声の主は、幸であった。
走って走って、なんとかピーネに追いついた幸が、構えるのはやはりギターである。
「ピーネ!
人は殺しちゃだめだ!
俺は大丈夫だから!!
ほら、聴いて?」
「F# G#m7~♪」
カントリーチックな、優しさに包まれそうなイントロを弾き出す幸。
小さい頃は神様を信じたり、サンタを信じたりしたものだ。
この曲はそう言う、小さい時の純粋な憧れや、子供の真っ白な感覚で目に写る全てを感じられる喜びを、思い出さしてくれる。
警備兵は初めて音楽を聴いたかの様な顔をして、自然と涙が溢れてくる。
悪ガキ達は投げようとしていた石を地面に放し、ただただ聞き入っている。
そしてピーネはと言うと目がハートで悶えていた。
「F# G#m7~♪」
盛り上げて盛り上げ切った本編からの、イントロと同じに収束するアウトロも美しい。
幸が一曲弾き切った時には、子供達はニコニコと庭駆け回り、警備兵は泣き崩れ、ピーネは幸の足元に抱き着き、丸くなっていた。
「ほら、今のうちだ!!」
幸はピーネの手を掴み立たせようとするが立たせれるわけがない。
「立って!
……走って!
ピーネ!
逃げるよ!」
幸の言葉に、ピーネはすぐ反応し立ち上がり、幸を抱きかかえた。
「走って!」の命令通り、ピーネは入り口まで目指して全力で走って行く。
幸のギターの魔力の一つ【心酔】は聞いた者で屈服したものに、命令を下せる魔法の力だ。
幸はそれを、知らずに発動していた。
ピーネは、脚力も相当に強く、泣き崩れている兵隊や子供が追って来れるものではなかった。
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