7 / 30
1-1 爆誕☆ロリっ子JCプロデューサー
7. こんなはずじゃなかったかい?
しおりを挟む長い格闘の末、ベランダでピーチク喧しいロリJCの捕獲に成功。
俺は「変なことを言わない」すばるんは「ちゃんとパーカーを着る」という紳士協定を結ぶことで、騒動は解決へと向かったのであった。
ゴールデンウィーク初日から俺はJC相手にいったい何をやっているんだろう。ミュージシャンとして大切なモノを今日一日で沢山失っている気がする。
「ホントちっこいな……」
それからもう数時間ほどSNSでフォロー祭りと動画投稿を続け、そろそろ晩飯の用意でもしようかというところ。
一日中パソコンに向かいっぱなしで疲れていたのか、すばるんは気付かぬ間にクークーと鼻息を立ててベッドで寝てしまった。
「んぅっ……んん……むふふふっ……先行シノザキユーマ……後攻、R推定……ぶちかませ~……っ」
「ごめんラップはマジで興味無い」
寝言の癖が強い。
骨の髄までサブカル一色だ。
(マジでどうすっかな……)
成果が出ていないことは一旦置いておいて。この半日ですばるんから頂いた指南は、確かに俺の活動に足りないモノばかりだった。
ただ良い曲を作るだけでは駄目。しっかりとマーケティング戦略を立てて、どうすれば大勢の人から注目を集められるか考える。
何かと旧態依然としたミュージシャン像に憑りつかれている俺には、どれもこれも新鮮で画期的なアイデアだった。こればかりは認めなければならない。
(にしても一週間はなぁ)
部屋の片隅に鎮座する小型のキャリーケース。家には連絡済みと言っていたから、万が一にも誘拐を疑われる可能性は無いだろうが。
泊まり掛けで推しているアーティストのプロデュースをするという発想は勿論のこと、行動力がバグってるんだよな。中学生のエネルギーって恐ろしい。
「……本当に好きなんだな。俺の音楽が」
あまりに幸せそうに涎を垂らすものだから、ついつい頭に手が伸びてしまって。短く切り揃えられた美しい黒髪を撫で下ろすと、すばるんはくすぐったそうに微笑むのであった。
こんなに小さい女の子が、俺の音楽を必要としている。俺の音楽に希望を見出している……ダラけてる場合じゃねえわ。プロデューサー気取りはウザいけど。
ずっと自己満足のためにやって来た音楽。でも……誰か一人のために歌ってみるってのも、案外悪くねえのかもしれねえなあ。
「んっ」
スマホに着信が。
誰だろう。ナオヤ辺りかな。
「ういっす」
『ユーマくーん。今日の夜空いてますー?』
「……あぁ、なんだ玲奈か。お疲れさん。ライブどうだった?」
『いやぁ~それはもう色々とありまして……奢りって言ったらどうします?』
「打ち上げに部外者誘うなよ」
『いやいや。ただの飲みのお誘いです』
「あっそ」
音楽仲間では数少ない女性アーティストである玲奈からの連絡だ。またライブの愚痴を聞かされる羽目になるんだろうな。まぁ奢りなら、良いか。いつものことだ。
「八宮?」
『いつものとこで待ってまーす!』
「あいよ。ナオヤは?」
『断られましたー』
「うわ、サシかよ」
『ちょっと、なんですかその連れない反応は! 今をときめくスーパーアイドル玲奈ちゃんの誘いをなんだと思ってるんですかァ!?』
「迷惑メール」
通話を切る。
到着するまでブロックしとこ。
「すばるん、ちょっと用事出来たわ」
「んぅっ……ユーマさん……?」
「終電くらいで帰るから、適当にコンフレでも食ってくれ。金あるなら近くのコンビニでも良いし。風呂も自由に使って良いから」
「分かりまひたぁ……っ」
まだちょっと寝惚けてるな。
まぁおおよそは伝わっているだろう。
……ここで「俺のいないうちに帰れ」とか言い出さなかった辺り、俺ってホントに芯が無いよな……そもそもロックミュージシャン向いてない気がする……。
****
「ういっ、カンパイ」
「さっきのハイテンションどこ行った」
「いやぁ、まだライブのスイッチ入ってたっていうか……別にユーマくん相手にぶりっ子する必要無いし……」
先日ナオヤと飲んだ店の同じ席。ビールジョッキ(大)を秒速で飲み干し煙草に火を付ける、長い黒髪をポニーテールで纏めた小柄な女。
名前は相原玲奈。俺と同い年で、同じく八宮周辺を拠点に活動する女性シンガー。嘘みたいな話だが、さっき電話で話していた奴と同一人物である。
「仮にもアイドル路線で売ってんだから顔くらい隠せってお前……」
「アぁン? 玲奈の素性なんてこの街の全員とっくに知ってんスよ。今更取り繕ったって無駄ですぅー」
煙草片手に靴を脱いで、ソファーテーブルの上で胡坐を搔く21歳児。小学生みたいなダサいミニスカートの奥に覗く黒のスパッツ。もう気にしない。慣れた。
元々はシンガーソングライターを志し田舎から上京してきたという、俺と限りなく似たような経歴を持つ彼女。ナオヤと同様、八宮waveでのイベントをきっかけに仲良くなった数年来の友人だ。
が、卓越したギターの腕前とは裏腹に知名度が一向に伸びず。一年ほど前、何の前触れもなくアイドル路線へ転身。
ナオヤら友人を搔き集めバックバンドを拵え、現在は「ReNA」という芸名で活動中。どこぞのプロ野球球団に怒られそうなネーミングだ。
お淑やかな弾き語り中心のスタイルからポップロックへの路線変更は見事に成功。まだまだ無名アイドルの域こそ出ないが、ここ半年ほど着実に知名度と客足を伸ばしている。
「で、何があったんだよ」
「本番10分前にギターがバックレやがったんスよぉ! なんの連絡もなく忽然と! 失踪っスよ失踪!」
「マジで? 本番どうしたんだよ」
「いやもう代役とか不可能なんで、普通に玲奈が自分で弾きました。偶々今日のセトリが一人でやってた頃のアレンジばっかだったんで……マジ最悪っス」
えぇー。ケータさん飛んじゃったんだ。まぁナオヤの知り合いってだけで無理やり加入させられた人だからなぁ……。
「いやでもっ、それじゃ意味が無いんスよ! 玲奈のビジュアルとステージングを最大限に生かすため、命より大事なギターを捨てッ! やっとの思いで辿り着いたこの境地を! おのれ小山田ァァァ゛ァーー゛ーーッ゛ッ!!」
「うるっせえな静かにしろッ!」
半狂乱の玲奈に店中の注目が集まる。だからサシ飲みは嫌だったんだ。あとで謝るのも介抱するのも全部オレなんだよ。クソめ。
追加注文の大ジョッキを無理やり流し込みなんとか場を収める。アルコール量が一定基準に達すると一気にテンションが下がるのだ。最終的にゲロるから対処療法としては最悪の類である。
「落ち着いたか」
「ういっ、すんません…………はぁー……でまぁ、そーゆーわけなんすけどぉー……ユーマくん、ウチでギター弾く気無いっスか?」
やっぱりそういう話になるのか。
何回同じ話されて何回断るんだよ。
「偶にサポート入るくらいなら良いけどよ。恐怖政治で尻に敷かれるのは勘弁だぜ」
「えっ。玲奈ってそんなおっかない?」
「打ち上げでコーヘイくんギターでタコ殴りにした奴がなに言ってんだよ」
「いやぁ、あれはロクに練習来ないで「この程度の曲なら5分で覚えて叩けるっすぅ!」とか言って案の定やらかしたのがそもそも原因なんでぇ」
「この一年でナオヤ以外何人入れ替わってんだよ……仲介のたびに友達減らしてるアイツの気持ちにもなれって」
「反省しまぁ~す」
玲奈の音楽性、ライブパフォーマンスは俺も認めるところだが、とにかくミスに厳しい体罰上等のスタイルが信条で、サポートメンバーがすぐに逃げ出してしまうのだ。誰も傷害罪で玲奈を訴えないのが心底不思議である……。
「ったく、なーんで売れるために必死になってる玲奈が外野からどうこう言われなきゃいけないんスかねぇーっ……本気でやってない奴に限って近道とか裏技ばっか探して、自分の実力不足を棚に上げて、ホント腐ってるっス。ねっ、ユーマくん」
「同意を求められても……」
「そーゆー意味で、まぁメッチャ上から目線スけど。やっとユーマくんも分かって来たんだなって。Stand By You、めっちゃ評判良いじゃないスか」
「ゴミみてぇな曲だけどな」
「粗大ごみで結構! 汚い壁の落書きでも端っこにバンクシーって書いとけば勝手に値段が付くわけです! これが世界の真理っ!」
誰よりも結果とセールスに拘り、プライドを殴り捨てアイドル路線を確立した玲奈だからこその発言だ。
そうだよなぁ。すばるんは「誰も俺の魅力に気付いていないだけ」みたいなことを言っていたけれど……発見されたところで金になるかはまた別の問題なんだよな。
「いやまぁ、玲奈も苦手っすよあーいうラブソング。でも良いじゃないスか。夢と理想は心を膨らませるだけで、空腹は満たしてくれないんスよ」
「それっぽいこと言いやがって」
「元々そっちの畑なんでぇ」
朝昼のコーンフレークが流し込んだビールの濁流に呑まれ、胃のなかを荒らしているようだ。いつまで経っても注文したつまみが来ない。とっくに底は尽いている。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!
みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!
杉藤千夏はツンデレ少女である。
そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。
千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。
徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い!
※他サイトにも投稿しています。
※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」
「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」
「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる