売れないミュージシャンなんだけど、追っかけのロリが「昔の曲の方が好きだった」とか言ってプロデューサー気取ってくる

平山安芸

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1-1 爆誕☆ロリっ子JCプロデューサー

7. こんなはずじゃなかったかい?

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 長い格闘の末、ベランダでピーチク喧しいロリJCの捕獲に成功。
 俺は「変なことを言わない」すばるんは「ちゃんとパーカーを着る」という紳士協定を結ぶことで、騒動は解決へと向かったのであった。

 ゴールデンウィーク初日から俺はJC相手にいったい何をやっているんだろう。ミュージシャンとして大切なモノを今日一日で沢山失っている気がする。


「ホントちっこいな……」

 それからもう数時間ほどSNSでフォロー祭りと動画投稿を続け、そろそろ晩飯の用意でもしようかというところ。
 一日中パソコンに向かいっぱなしで疲れていたのか、すばるんは気付かぬ間にクークーと鼻息を立ててベッドで寝てしまった。


「んぅっ……んん……むふふふっ……先行シノザキユーマ……後攻、R推定……ぶちかませ~……っ」
「ごめんラップはマジで興味無い」

 寝言の癖が強い。
 骨の髄までサブカル一色だ。


(マジでどうすっかな……)

 成果が出ていないことは一旦置いておいて。この半日ですばるんから頂いた指南は、確かに俺の活動に足りないモノばかりだった。

 ただ良い曲を作るだけでは駄目。しっかりとマーケティング戦略を立てて、どうすれば大勢の人から注目を集められるか考える。

 何かと旧態依然としたミュージシャン像に憑りつかれている俺には、どれもこれも新鮮で画期的なアイデアだった。こればかりは認めなければならない。


(にしても一週間はなぁ)

 部屋の片隅に鎮座する小型のキャリーケース。家には連絡済みと言っていたから、万が一にも誘拐を疑われる可能性は無いだろうが。

 泊まり掛けで推しているアーティストのプロデュースをするという発想は勿論のこと、行動力がバグってるんだよな。中学生のエネルギーって恐ろしい。


「……本当に好きなんだな。俺の音楽が」

 あまりに幸せそうに涎を垂らすものだから、ついつい頭に手が伸びてしまって。短く切り揃えられた美しい黒髪を撫で下ろすと、すばるんはくすぐったそうに微笑むのであった。

 こんなに小さい女の子が、俺の音楽を必要としている。俺の音楽に希望を見出している……ダラけてる場合じゃねえわ。プロデューサー気取りはウザいけど。

 ずっと自己満足のためにやって来た音楽。でも……誰か一人のために歌ってみるってのも、案外悪くねえのかもしれねえなあ。


「んっ」

 スマホに着信が。
 誰だろう。ナオヤ辺りかな。


「ういっす」
『ユーマくーん。今日の夜空いてますー?』
「……あぁ、なんだ玲奈レナか。お疲れさん。ライブどうだった?」
『いやぁ~それはもう色々とありまして……奢りって言ったらどうします?』
「打ち上げに部外者誘うなよ」
『いやいや。ただの飲みのお誘いです』
「あっそ」

 音楽仲間では数少ない女性アーティストである玲奈からの連絡だ。またライブの愚痴を聞かされる羽目になるんだろうな。まぁ奢りなら、良いか。いつものことだ。


「八宮?」
『いつものとこで待ってまーす!』
「あいよ。ナオヤは?」
『断られましたー』
「うわ、サシかよ」
『ちょっと、なんですかその連れない反応は! 今をときめくスーパーアイドル玲奈ちゃんの誘いをなんだと思ってるんですかァ!?』
「迷惑メール」

 通話を切る。
 到着するまでブロックしとこ。


「すばるん、ちょっと用事出来たわ」
「んぅっ……ユーマさん……?」
「終電くらいで帰るから、適当にコンフレでも食ってくれ。金あるなら近くのコンビニでも良いし。風呂も自由に使って良いから」
「分かりまひたぁ……っ」

 まだちょっと寝惚けてるな。
 まぁおおよそは伝わっているだろう。

 ……ここで「俺のいないうちに帰れ」とか言い出さなかった辺り、俺ってホントに芯が無いよな……そもそもロックミュージシャン向いてない気がする……。



****



「ういっ、カンパイ」
「さっきのハイテンションどこ行った」
「いやぁ、まだライブのスイッチ入ってたっていうか……別にユーマくん相手にぶりっ子する必要無いし……」

 先日ナオヤと飲んだ店の同じ席。ビールジョッキ(大)を秒速で飲み干し煙草に火を付ける、長い黒髪をポニーテールで纏めた小柄な女。
 名前は相原玲奈アイハラレナ。俺と同い年で、同じく八宮周辺を拠点に活動する女性シンガー。嘘みたいな話だが、さっき電話で話していた奴と同一人物である。

 
「仮にもアイドル路線で売ってんだから顔くらい隠せってお前……」
「アぁン? 玲奈の素性なんてこの街の全員とっくに知ってんスよ。今更取り繕ったって無駄ですぅー」

 煙草片手に靴を脱いで、ソファーテーブルの上で胡坐を搔く21歳児。小学生みたいなダサいミニスカートの奥に覗く黒のスパッツ。もう気にしない。慣れた。


 元々はシンガーソングライターを志し田舎から上京してきたという、俺と限りなく似たような経歴を持つ彼女。ナオヤと同様、八宮waveでのイベントをきっかけに仲良くなった数年来の友人だ。

 が、卓越したギターの腕前とは裏腹に知名度が一向に伸びず。一年ほど前、何の前触れもなくアイドル路線へ転身。
 ナオヤら友人を搔き集めバックバンドを拵え、現在は「ReNA」という芸名で活動中。どこぞのプロ野球球団に怒られそうなネーミングだ。

 お淑やかな弾き語り中心のスタイルからポップロックへの路線変更は見事に成功。まだまだ無名アイドルの域こそ出ないが、ここ半年ほど着実に知名度と客足を伸ばしている。


「で、何があったんだよ」
「本番10分前にギターがバックレやがったんスよぉ! なんの連絡もなく忽然と! 失踪っスよ失踪!」
「マジで? 本番どうしたんだよ」
「いやもう代役とか不可能なんで、普通に玲奈が自分で弾きました。偶々今日のセトリが一人でやってた頃のアレンジばっかだったんで……マジ最悪っス」

 えぇー。ケータさん飛んじゃったんだ。まぁナオヤの知り合いってだけで無理やり加入させられた人だからなぁ……。


「いやでもっ、それじゃ意味が無いんスよ! 玲奈のビジュアルとステージングを最大限に生かすため、命より大事なギターを捨てッ! やっとの思いで辿り着いたこの境地を! おのれ小山田ァァァ゛ァーー゛ーーッ゛ッ!!」
「うるっせえな静かにしろッ!」

 半狂乱の玲奈に店中の注目が集まる。だからサシ飲みは嫌だったんだ。あとで謝るのも介抱するのも全部オレなんだよ。クソめ。

 追加注文の大ジョッキを無理やり流し込みなんとか場を収める。アルコール量が一定基準に達すると一気にテンションが下がるのだ。最終的にゲロるから対処療法としては最悪の類である。


「落ち着いたか」
「ういっ、すんません…………はぁー……でまぁ、そーゆーわけなんすけどぉー……ユーマくん、ウチでギター弾く気無いっスか?」

 やっぱりそういう話になるのか。
 何回同じ話されて何回断るんだよ。


「偶にサポート入るくらいなら良いけどよ。恐怖政治で尻に敷かれるのは勘弁だぜ」
「えっ。玲奈ってそんなおっかない?」
「打ち上げでコーヘイくんギターでタコ殴りにした奴がなに言ってんだよ」
「いやぁ、あれはロクに練習来ないで「この程度の曲なら5分で覚えて叩けるっすぅ!」とか言って案の定やらかしたのがそもそも原因なんでぇ」
「この一年でナオヤ以外何人入れ替わってんだよ……仲介のたびに友達減らしてるアイツの気持ちにもなれって」
「反省しまぁ~す」

 玲奈の音楽性、ライブパフォーマンスは俺も認めるところだが、とにかくミスに厳しい体罰上等のスタイルが信条で、サポートメンバーがすぐに逃げ出してしまうのだ。誰も傷害罪で玲奈を訴えないのが心底不思議である……。


「ったく、なーんで売れるために必死になってる玲奈が外野からどうこう言われなきゃいけないんスかねぇーっ……本気でやってない奴に限って近道とか裏技ばっか探して、自分の実力不足を棚に上げて、ホント腐ってるっス。ねっ、ユーマくん」
「同意を求められても……」
「そーゆー意味で、まぁメッチャ上から目線スけど。やっとユーマくんも分かって来たんだなって。Stand By You、めっちゃ評判良いじゃないスか」
「ゴミみてぇな曲だけどな」
「粗大ごみで結構! 汚い壁の落書きでも端っこにバンクシーって書いとけば勝手に値段が付くわけです! これが世界の真理っ!」

 誰よりも結果とセールスに拘り、プライドを殴り捨てアイドル路線を確立した玲奈だからこその発言だ。

 そうだよなぁ。すばるんは「誰も俺の魅力に気付いていないだけ」みたいなことを言っていたけれど……発見されたところで金になるかはまた別の問題なんだよな。


「いやまぁ、玲奈も苦手っすよあーいうラブソング。でも良いじゃないスか。夢と理想は心を膨らませるだけで、空腹は満たしてくれないんスよ」
「それっぽいこと言いやがって」
「元々そっちの畑なんでぇ」

 朝昼のコーンフレークが流し込んだビールの濁流に呑まれ、胃のなかを荒らしているようだ。いつまで経っても注文したつまみが来ない。とっくに底は尽いている。

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