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18 夏祭り
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ついに夏祭りの当日がやってきた!3日前程、お母さんにいきなり「夏祭りの日お父さんと2人で出掛けることなって」と話され絶句してしまった。
ラブコメか⁈と思うほどの桜城にとっての都合の良さに絶望したかけたが、口論になって思わず貞操帯なんて大きな声で言ってしまい俺や桜城の両親に聞かれるのは困るので良かったかもしれないと思い直した。
あの日桜城が帰って1人になると深い後悔と猛省に襲われた。
股間にあんな物つけられても目覚めないってどんだけ眠りが深いんだよ!普段からなかなか起きれず注意されていたが聞き流していた。
貞操帯を装着したのは朝っぽかったしその注意をきちんと聞いていれば気がつけたかもしれない…。俺のばか…。
もうすぐ約束の時間だ。桜城との連絡手段が一つもないため浴衣姿でひたすらソワソワしている。
橘に連絡すると言う手段もあるが今回の事に巻き込みたくない。混雑しているトイレに行きたくないからトイレも行っとこ。
ちなみに貞操帯をつけられているため外のトイレでは個室に入るしかなく大変面倒だ。家でもぜっっったいに見られないように必死である。
持ち物の確認をしているとチャイムがなり玄関へ駆けつけた。
扉を開けると桜城の浴衣姿が真っ先に目に入ったがなんと言うか…キラキラしていて訳もわからず一度扉を閉めた。桜城好きならバッタバタと倒れそうなビジュアルだ。
「もう時間だけど」
桜城が扉をグイッと掴み開くと俺の裾を引っ張ってきた。
「分かってるって。…その、今日うち、お母さんもお父さんもいない…」
「…分かった」
詳しいことは何も言っていないが桜城は全て理解したという様な顔をして頷いた。
「つーか、夏祭り行って何すんだよ?」
「…考えてなかった」
「え?お前のいうスリルを感じるならちょっと歩いて帰ってきたらいいんじゃ…いや」
そういえば両親に頼まれたことを忘れていた、頼まれたことは断れないがちなのが俺だ。
「花火の写真撮ってきて欲しいって言われて、出来ればでいいよって言われたけど」
「俺も言われた」
「お前も?じゃあその時間まで待つしかないな…」
強制ではないのだが2両親から頼まれてしまったら無碍にしずらい。
桜城のほわほわした感じのお母さんが心から言っているところを想像したら頼まれごとをぞんざいに扱う事ができない。
2人の下駄の足音とハンディーファンの音が響き、俺たちの間には相変わらず沈黙が広がる。
わざわざ話しかけようとは思わないし、桜城となら仲良くする必要も無いため別に気まずいとも思わない。
それから静寂に包まれたまま15分くらい歩き続けると会場に辿り着き周りもザワザワしてきた。
家族、友達同士で来ている者や恋人同士で手を繋ぎながら訪れている者もいる。それにいちゃいちゃしてる奴も多くないか?
なんて考えながら混雑している中を歩いていたら肩がぶつかってしまった。
「大丈夫?」
よろけそうになっていたら桜城がそっと俺を支えて人が少ない方へ連れて行った。
「人多いし、なんか陽の空気に圧倒されたっていうか…」
「…よく分からないけど俺も騒がしいの苦手だから。適当に買って人が少ないここら辺でゆっくりするのはどう?」
「そうだな」
屋台の方へ向かうと美味しそうな食べ物が並んでいて先程まで陽のオーラにやられていた事さえ忘れて涎をこぼしていた。
「うわ、チョコバナナ!わたあめもあるし、いちご飴もあんじゃん!たこ焼きも食いたいし、焼きそば」
「お前、落ち着きなよ」
「へ?そんな俺興奮してる?」
「してる、お前すぐ迷いそうだからあんまり1人で進まないで」
「お、おぅ。分かった」
「信頼できないからお前の帯握っとくよ」
「あっ!射的の景品ゲーム機だ!フィギュアもあるし、ソフトも⁈」
「はぁ…いいよ、行きたいとこ行きなよ」
「じゃあまずは焼きそば食ってからデザートでいちご飴と綿飴もだな。でそのあと射的!」
「っ!急に進むな」
そんな調子で俺が食べたいものを中心にぐいぐい回って行き、その結果桜城は物理的にも振り回されて度々注意されたが気にせず突き進んだ結果人気がないところに座ると桜城は息が切れていた。
普段は振り回されてばっかりだからこのくらい許されて当然だよな。
取り敢えず焼きそばとたこ焼きを買い半々にする事にした。座って膝に開けたプラスチックのパックを広げる。
「うわ、焼きそばうっま」
「い゛っ」
屋台独特の焼きそばに舌鼓を打っていると横から桜城の物とは思えない野太い声が聞こえてきた。
顔を見ると端正な顔を限界まで歪めて口に手をやっていた。
どうやら口に入れたたこ焼きが想像以上に熱かった様で、口から出す訳にもいかず悶絶していた。
「はははっ」
王子様として有名な桜城のらしくない姿を見て思わず笑ってしまった。
桜城と接していて笑ったのは初めてじゃないだろうか。笑った後自分で驚いたのだが、それ以上に桜城がリスの様にたこ焼きをほっぺに入れたまま目を丸くしていた。
桜城にまで驚かれると急激に恥ずかしくなって目を逸らしたまま焼きそばをかき込んだ。
「これ、熱いから気をつけて」
「うん、今のでよく分かった、気をつけるわ。あっ焼きそばも上手いから食って」
お互いに交換しながら食べ進めていく。こうしていると普通に友達みたいじゃないか?
花火を見るまで時間を消費するために仕方なくだから、決して気を許してるとかではなくて。
桜城はどう思ってるのだろうかと横目で見るもゆっくりとたこ焼きを口に運んでいるだけで感情は読み取れなかった。
「よし食べ終わったしいちご飴とわたあめ行くぞ!お前はここで休んでてもらって大丈夫だけど」
「俺の経験上、お前絶対迷うから着いてくよ」
「別にこれくらい大丈夫だけどな…」
「本気で言ってる?」
デザートを食べに行こうと貰ったお小遣いを確認していたらいきなり突風が吹き浴衣の裾が舞い上がった。
俺は咄嗟に股間周辺を押さえてしまい、スカートを押さえる女子の様になってしまった。ハッ…これがスリルだっていうのか?
パンツを履いているから貞操帯は見えないはずなのに咄嗟に手で覆い隠そうとしてしまった。
そうだよ、普通に夏祭りを満喫していたがずっと貞操帯をつけているんだった。
誰もそのことを知らないと言うのに意識した途端恥ずかしくなり体温が上がる。
ゆっくりと視線を桜城に向けると嘲る様にヘラヘラと笑っていて桜城の尻に向け…体が硬くて脚が上がらないためふくらはぎあたりに軽くキックした。威力は弱く全く効いていないが。
「どう?スリルは」
「は?なんのことだか…?それよりい、いちご飴買いに行くから」
耳元で囁いてくる桜城を突き飛ばしていちご飴とわたあめを購入すると人が多すぎて自分がどこにいるかわからなくなってしまった。
人混みに体を押され自分の意思に反して動かざるおえない。
えっとスーパーボールの方面から来たから…辿ってきた道を脳内で確認していると袖を強く引っ張られた。
「ほら、言ったでしょ」
呆れた様に言う桜城の顔を見て少しホッとしてしまった。
「こっち来て」
「うん」
引っ張られて先程の人気のないところまで到着すると何故か説教された。
「探すの大変だったから。もう、1人で行かない事」
「は、はい…」
何、素直に俺も言ってるんだかと思うが俺が悪い部分もあるのでこう言う他なかった。
「俺わたあめ持っとくよ」
「あ、え、…ありがとう」
桜城に気が利く対応をされると調子が狂ってしまう。
俺の中では桜城は失礼で意地悪な事ばっかりしてくる奴だから。っていちご飴美味過ぎだろ!
「いちご飴外はカリカリしてて甘くてめっちゃうまい!………桜城もいる?」
「は?」
「わたあめ持たせて悪いし」
「…いや、いいよ。美味しいならお前が食べた方がいいでしょ」
「じゃあ、わたあめちょっとあげる」
「いや…」
「正直お腹いっぱいになってきて…食べてくれたら助かるなぁなんて…」
「そういうこと?まぁ、それならちょっと頂くよ」
「さんきゅ」
話していたら桜城が少し目を見張った気がしたんだが、なんか変な食べ方でもしていただろうか。
桜城がわたあめの塊から少しちぎって口に含んでいる。
いちご飴も個数が多くこんなにお腹一杯になると思っておらず完全な誤算だった。
正直桜城のおかげで助かったと言っても過言ではない。
なんとか桜城に少し食べてもらい完食する事ができ、一息ついていると急に桜城方面から口元を殴られた様な衝撃が襲った。
「え?何⁈」
驚いて桜城を見るとどうやらウェットティッシュで俺の口元を拭いてくれていた様だ。いや、結構痛かったぞ⁈有難いが荒過ぎないか?
「いちご飴の飴で口裂け女みたいになってる」
「え、まじ⁈」
スマホで急いで確認すると拭かれなかった方の口が赤くベタベタになっていた。
やり方は荒いもののまた気の利く桜城の登場だ、調子が狂うって言うかペースが乱れるって言うか…。
頭をぽりぽりと掻きながらそのウェットティッシュを受け取って反対側の頬を拭いていると周りがザワザワとし始めた。
時間を確認し周りの言葉を聞くとどうやら、もうすぐ花火が始まる様だった。
「ここからじゃ人が多くて見えないだろうから少し距離は遠くなるけど通ってきた橋に移動しよう」
「分かった」
少し離れた位置にある橋に移動する事になった。実は俺の近所でやっているこの夏祭り、及び花火大会はかなり規模が大きいのだ。
桜城と並んで移動していると沢山の人、主に女性が桜城を二度見する視線をたくさん感じ、じりじりと劣等感に火がつく。
「お前の横で歩くの嫌だ…」
「何?」
「みんなお前見てから俺見てがっかりした顔してる気がする」
「自意識過剰じゃない?」
「いや、実際に数人そう言う人がいたんだよ…。別に相応の反応だって分かってるけど。横の奴不細工だってがっかり顔、しっかり伝わってるからな…」
桜城を見て振り向いたきた人達に対して恨み節で愚痴を言う。
「まぁ、そんな事一番俺がよく分かってんだけどさ…」
目の大きさはきっと桜城の2分の1くらいだし、鼻筋だって…いや、やめよう。
自分で自分を傷つけて悲しくなるだけだ。自分の容姿について考えて意気消沈していると桜城が俺の顔を覗き込む様にじっと見ていた。
「な、何?」
「そんな事ないでしょ」
戸惑っている所にさらに困惑する様なことを言われこんがらがってしまった。
桜城は言い終わると前を向いていつも通り無表情に歩いていた。
劣等感のあまりイケメン様の余裕の上から発言かぁ?と一瞬怒りそうになったが、素直に思った事を言っただけかもしれないと考え直した。
「そんな事ない」って何に対してなのだろう、俺が卑下した事に対してなのか?つまりは容姿を肯定されたってことか…?ふーん…、ふぅーん、そっか。
内心ほくそ笑みかけた時ヒューと花火特有の空に上がっていく音が聞こえ視線を移したら、目前にに大きな花火が鮮やかに広がった。
濃紺の空に花が咲く様に光を放つ花火は絢爛華麗だった。2人とも無言で空に広がる花火に釘付けになっていた。
「あっ!」
花火に圧倒され肝心の写真を撮る事を忘れており急いでスマホを取り出した。
綺麗な写真を撮ろうとしてもタイミングは悪かったりブレたりでなかなか上手く撮れず諦めて連写していたらうるさいと横から苦情が入った。
「だって上手く撮れねぇんだもん」
チラッと桜城のスマホを見ると画面いっぱいに綺麗な花火が収められていた。
「お前、写真撮んの上手っ」
「…貸して、俺が撮るから」
「お、おう」
俺の写真の下手さに、見かねた桜城が俺のスマホを手に取ると画面をタップしておそらく設定をいじりながら花火が上がるタイミングで見事にシャッターを押し、何枚か写真を撮るとスマホを返された。
スワイプして写真を見るとどれの写真も鮮やかで両親も喜んでくれるだろう。
「うわーきれい…ありがとう」
「え…あ、うん」
キレの悪い桜城の反応に若干頭を捻りつつ、ついでに動画も撮ろうとスマホを構えていると最初はあまり人がいなかったこの橋にもたくさん人が集まってきて人波に押されるとよろけてしまった。
「最後まで花火見たい?このままだと帰り道すごい混雑しそうなんだけど…」
「いや、もう十分見れたし満足。…か、帰ろう」
「うん」
一足早く人混みから抜けるとすっかり暗くなった夜道を2人で歩いた。目的地は俺の家だ、言わなくても分かっている。
家が近づくにつれ気持ちは落ち着かなくなり鼓動は鳴り止まなくなっておかしくなりそうだ。本日のメインディッシュはこれからなのだ。
自宅に着くとごくりと唾を飲み込み鍵を鍵穴に差し込んだ。
ラブコメか⁈と思うほどの桜城にとっての都合の良さに絶望したかけたが、口論になって思わず貞操帯なんて大きな声で言ってしまい俺や桜城の両親に聞かれるのは困るので良かったかもしれないと思い直した。
あの日桜城が帰って1人になると深い後悔と猛省に襲われた。
股間にあんな物つけられても目覚めないってどんだけ眠りが深いんだよ!普段からなかなか起きれず注意されていたが聞き流していた。
貞操帯を装着したのは朝っぽかったしその注意をきちんと聞いていれば気がつけたかもしれない…。俺のばか…。
もうすぐ約束の時間だ。桜城との連絡手段が一つもないため浴衣姿でひたすらソワソワしている。
橘に連絡すると言う手段もあるが今回の事に巻き込みたくない。混雑しているトイレに行きたくないからトイレも行っとこ。
ちなみに貞操帯をつけられているため外のトイレでは個室に入るしかなく大変面倒だ。家でもぜっっったいに見られないように必死である。
持ち物の確認をしているとチャイムがなり玄関へ駆けつけた。
扉を開けると桜城の浴衣姿が真っ先に目に入ったがなんと言うか…キラキラしていて訳もわからず一度扉を閉めた。桜城好きならバッタバタと倒れそうなビジュアルだ。
「もう時間だけど」
桜城が扉をグイッと掴み開くと俺の裾を引っ張ってきた。
「分かってるって。…その、今日うち、お母さんもお父さんもいない…」
「…分かった」
詳しいことは何も言っていないが桜城は全て理解したという様な顔をして頷いた。
「つーか、夏祭り行って何すんだよ?」
「…考えてなかった」
「え?お前のいうスリルを感じるならちょっと歩いて帰ってきたらいいんじゃ…いや」
そういえば両親に頼まれたことを忘れていた、頼まれたことは断れないがちなのが俺だ。
「花火の写真撮ってきて欲しいって言われて、出来ればでいいよって言われたけど」
「俺も言われた」
「お前も?じゃあその時間まで待つしかないな…」
強制ではないのだが2両親から頼まれてしまったら無碍にしずらい。
桜城のほわほわした感じのお母さんが心から言っているところを想像したら頼まれごとをぞんざいに扱う事ができない。
2人の下駄の足音とハンディーファンの音が響き、俺たちの間には相変わらず沈黙が広がる。
わざわざ話しかけようとは思わないし、桜城となら仲良くする必要も無いため別に気まずいとも思わない。
それから静寂に包まれたまま15分くらい歩き続けると会場に辿り着き周りもザワザワしてきた。
家族、友達同士で来ている者や恋人同士で手を繋ぎながら訪れている者もいる。それにいちゃいちゃしてる奴も多くないか?
なんて考えながら混雑している中を歩いていたら肩がぶつかってしまった。
「大丈夫?」
よろけそうになっていたら桜城がそっと俺を支えて人が少ない方へ連れて行った。
「人多いし、なんか陽の空気に圧倒されたっていうか…」
「…よく分からないけど俺も騒がしいの苦手だから。適当に買って人が少ないここら辺でゆっくりするのはどう?」
「そうだな」
屋台の方へ向かうと美味しそうな食べ物が並んでいて先程まで陽のオーラにやられていた事さえ忘れて涎をこぼしていた。
「うわ、チョコバナナ!わたあめもあるし、いちご飴もあんじゃん!たこ焼きも食いたいし、焼きそば」
「お前、落ち着きなよ」
「へ?そんな俺興奮してる?」
「してる、お前すぐ迷いそうだからあんまり1人で進まないで」
「お、おぅ。分かった」
「信頼できないからお前の帯握っとくよ」
「あっ!射的の景品ゲーム機だ!フィギュアもあるし、ソフトも⁈」
「はぁ…いいよ、行きたいとこ行きなよ」
「じゃあまずは焼きそば食ってからデザートでいちご飴と綿飴もだな。でそのあと射的!」
「っ!急に進むな」
そんな調子で俺が食べたいものを中心にぐいぐい回って行き、その結果桜城は物理的にも振り回されて度々注意されたが気にせず突き進んだ結果人気がないところに座ると桜城は息が切れていた。
普段は振り回されてばっかりだからこのくらい許されて当然だよな。
取り敢えず焼きそばとたこ焼きを買い半々にする事にした。座って膝に開けたプラスチックのパックを広げる。
「うわ、焼きそばうっま」
「い゛っ」
屋台独特の焼きそばに舌鼓を打っていると横から桜城の物とは思えない野太い声が聞こえてきた。
顔を見ると端正な顔を限界まで歪めて口に手をやっていた。
どうやら口に入れたたこ焼きが想像以上に熱かった様で、口から出す訳にもいかず悶絶していた。
「はははっ」
王子様として有名な桜城のらしくない姿を見て思わず笑ってしまった。
桜城と接していて笑ったのは初めてじゃないだろうか。笑った後自分で驚いたのだが、それ以上に桜城がリスの様にたこ焼きをほっぺに入れたまま目を丸くしていた。
桜城にまで驚かれると急激に恥ずかしくなって目を逸らしたまま焼きそばをかき込んだ。
「これ、熱いから気をつけて」
「うん、今のでよく分かった、気をつけるわ。あっ焼きそばも上手いから食って」
お互いに交換しながら食べ進めていく。こうしていると普通に友達みたいじゃないか?
花火を見るまで時間を消費するために仕方なくだから、決して気を許してるとかではなくて。
桜城はどう思ってるのだろうかと横目で見るもゆっくりとたこ焼きを口に運んでいるだけで感情は読み取れなかった。
「よし食べ終わったしいちご飴とわたあめ行くぞ!お前はここで休んでてもらって大丈夫だけど」
「俺の経験上、お前絶対迷うから着いてくよ」
「別にこれくらい大丈夫だけどな…」
「本気で言ってる?」
デザートを食べに行こうと貰ったお小遣いを確認していたらいきなり突風が吹き浴衣の裾が舞い上がった。
俺は咄嗟に股間周辺を押さえてしまい、スカートを押さえる女子の様になってしまった。ハッ…これがスリルだっていうのか?
パンツを履いているから貞操帯は見えないはずなのに咄嗟に手で覆い隠そうとしてしまった。
そうだよ、普通に夏祭りを満喫していたがずっと貞操帯をつけているんだった。
誰もそのことを知らないと言うのに意識した途端恥ずかしくなり体温が上がる。
ゆっくりと視線を桜城に向けると嘲る様にヘラヘラと笑っていて桜城の尻に向け…体が硬くて脚が上がらないためふくらはぎあたりに軽くキックした。威力は弱く全く効いていないが。
「どう?スリルは」
「は?なんのことだか…?それよりい、いちご飴買いに行くから」
耳元で囁いてくる桜城を突き飛ばしていちご飴とわたあめを購入すると人が多すぎて自分がどこにいるかわからなくなってしまった。
人混みに体を押され自分の意思に反して動かざるおえない。
えっとスーパーボールの方面から来たから…辿ってきた道を脳内で確認していると袖を強く引っ張られた。
「ほら、言ったでしょ」
呆れた様に言う桜城の顔を見て少しホッとしてしまった。
「こっち来て」
「うん」
引っ張られて先程の人気のないところまで到着すると何故か説教された。
「探すの大変だったから。もう、1人で行かない事」
「は、はい…」
何、素直に俺も言ってるんだかと思うが俺が悪い部分もあるのでこう言う他なかった。
「俺わたあめ持っとくよ」
「あ、え、…ありがとう」
桜城に気が利く対応をされると調子が狂ってしまう。
俺の中では桜城は失礼で意地悪な事ばっかりしてくる奴だから。っていちご飴美味過ぎだろ!
「いちご飴外はカリカリしてて甘くてめっちゃうまい!………桜城もいる?」
「は?」
「わたあめ持たせて悪いし」
「…いや、いいよ。美味しいならお前が食べた方がいいでしょ」
「じゃあ、わたあめちょっとあげる」
「いや…」
「正直お腹いっぱいになってきて…食べてくれたら助かるなぁなんて…」
「そういうこと?まぁ、それならちょっと頂くよ」
「さんきゅ」
話していたら桜城が少し目を見張った気がしたんだが、なんか変な食べ方でもしていただろうか。
桜城がわたあめの塊から少しちぎって口に含んでいる。
いちご飴も個数が多くこんなにお腹一杯になると思っておらず完全な誤算だった。
正直桜城のおかげで助かったと言っても過言ではない。
なんとか桜城に少し食べてもらい完食する事ができ、一息ついていると急に桜城方面から口元を殴られた様な衝撃が襲った。
「え?何⁈」
驚いて桜城を見るとどうやらウェットティッシュで俺の口元を拭いてくれていた様だ。いや、結構痛かったぞ⁈有難いが荒過ぎないか?
「いちご飴の飴で口裂け女みたいになってる」
「え、まじ⁈」
スマホで急いで確認すると拭かれなかった方の口が赤くベタベタになっていた。
やり方は荒いもののまた気の利く桜城の登場だ、調子が狂うって言うかペースが乱れるって言うか…。
頭をぽりぽりと掻きながらそのウェットティッシュを受け取って反対側の頬を拭いていると周りがザワザワとし始めた。
時間を確認し周りの言葉を聞くとどうやら、もうすぐ花火が始まる様だった。
「ここからじゃ人が多くて見えないだろうから少し距離は遠くなるけど通ってきた橋に移動しよう」
「分かった」
少し離れた位置にある橋に移動する事になった。実は俺の近所でやっているこの夏祭り、及び花火大会はかなり規模が大きいのだ。
桜城と並んで移動していると沢山の人、主に女性が桜城を二度見する視線をたくさん感じ、じりじりと劣等感に火がつく。
「お前の横で歩くの嫌だ…」
「何?」
「みんなお前見てから俺見てがっかりした顔してる気がする」
「自意識過剰じゃない?」
「いや、実際に数人そう言う人がいたんだよ…。別に相応の反応だって分かってるけど。横の奴不細工だってがっかり顔、しっかり伝わってるからな…」
桜城を見て振り向いたきた人達に対して恨み節で愚痴を言う。
「まぁ、そんな事一番俺がよく分かってんだけどさ…」
目の大きさはきっと桜城の2分の1くらいだし、鼻筋だって…いや、やめよう。
自分で自分を傷つけて悲しくなるだけだ。自分の容姿について考えて意気消沈していると桜城が俺の顔を覗き込む様にじっと見ていた。
「な、何?」
「そんな事ないでしょ」
戸惑っている所にさらに困惑する様なことを言われこんがらがってしまった。
桜城は言い終わると前を向いていつも通り無表情に歩いていた。
劣等感のあまりイケメン様の余裕の上から発言かぁ?と一瞬怒りそうになったが、素直に思った事を言っただけかもしれないと考え直した。
「そんな事ない」って何に対してなのだろう、俺が卑下した事に対してなのか?つまりは容姿を肯定されたってことか…?ふーん…、ふぅーん、そっか。
内心ほくそ笑みかけた時ヒューと花火特有の空に上がっていく音が聞こえ視線を移したら、目前にに大きな花火が鮮やかに広がった。
濃紺の空に花が咲く様に光を放つ花火は絢爛華麗だった。2人とも無言で空に広がる花火に釘付けになっていた。
「あっ!」
花火に圧倒され肝心の写真を撮る事を忘れており急いでスマホを取り出した。
綺麗な写真を撮ろうとしてもタイミングは悪かったりブレたりでなかなか上手く撮れず諦めて連写していたらうるさいと横から苦情が入った。
「だって上手く撮れねぇんだもん」
チラッと桜城のスマホを見ると画面いっぱいに綺麗な花火が収められていた。
「お前、写真撮んの上手っ」
「…貸して、俺が撮るから」
「お、おう」
俺の写真の下手さに、見かねた桜城が俺のスマホを手に取ると画面をタップしておそらく設定をいじりながら花火が上がるタイミングで見事にシャッターを押し、何枚か写真を撮るとスマホを返された。
スワイプして写真を見るとどれの写真も鮮やかで両親も喜んでくれるだろう。
「うわーきれい…ありがとう」
「え…あ、うん」
キレの悪い桜城の反応に若干頭を捻りつつ、ついでに動画も撮ろうとスマホを構えていると最初はあまり人がいなかったこの橋にもたくさん人が集まってきて人波に押されるとよろけてしまった。
「最後まで花火見たい?このままだと帰り道すごい混雑しそうなんだけど…」
「いや、もう十分見れたし満足。…か、帰ろう」
「うん」
一足早く人混みから抜けるとすっかり暗くなった夜道を2人で歩いた。目的地は俺の家だ、言わなくても分かっている。
家が近づくにつれ気持ちは落ち着かなくなり鼓動は鳴り止まなくなっておかしくなりそうだ。本日のメインディッシュはこれからなのだ。
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