気持ち悪い令嬢

ありのある

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ヤナギヤの物欲

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最初に、どうしてこうなったのか説明しておきましょう。
まず、ヤナギヤの強欲さを侮っておりました。
どうしても私からの贈り物が欲しい、じゃないとここから動かない、と言うヤナギヤへの殺意をおさえながら、雑貨屋で一番安いペンダントの支払いをし、振り向いた時にはもう、あの女は居ませんでした。
この時、あの女が何をしていたかというと、少し顔の良い青年に声をかけられて、ふらふらとついていったらしいのです。

私はすぐさま闇魔法の追尾機能を駆使し、あの女を追いかけました。
闇の魔力は停泊していた船へと向かい、その奥の貨物室へ滑り込んでいきました。中から悲鳴が聞こえたので、鍵を壊し、扉を開けると、闇の魔力に胸を貫かれて絶命した少し顔の良い男と、怯えているヤナギヤが居ました。

「ファ、ファルメン」
「あら、良かったですね。あなたの正面にその方がいて。じゃなければ、あなたがこうなっていましたよ」
「えっ、嘘だよね?」
「さあ、どうでしょうか」

腹が立っていたので、闇の魔力に殺意を込めていたのは事実です。それをヤナギヤに追尾させるようにしていたのも事実。けれど、怖がらせるだけで、一応寸止めに設定はしていました。少し顔の良い男は、運悪く死んでしまいましたが。

「あなた、何をしていたのですか?こんな少し顔が良いだけの男にホイホイついて行くなんて」
「え!……し、嫉妬?拗ねてる?」

指一本くらいなら良いかしら、と思ってしまいました。これはアレンの体アレンの体、と心の中で唱えながら耐え切ります。

「この人に、もっと凄い宝石のついたペンダントがあるって言われたから」
「あら、そうだったのですね。まあ、そんなことだろうとは思っていました。でしたら、私が購入したこのペンダントは捨てても良いということですね?」

購入したペンダントを床に投げ捨て、足で踏み潰すと、パキリという音と共に安物の石が砕けてバラバラになりました。
ヤナギヤが、悲鳴に近い叫び声をあげたので、急いでその口を塞ぎます。

「大きな声を出さないでください。良いですか?もしまた大きな声を出したら、永遠に叫べなくしますよ」

こくん、と頷いたので、手を放してあげます。
けれど、遅かったようで、船員たちが集まってきました。
少し顔の良い青年の死体とヤナギヤを担ぎ、急いで樽が積んである荷物の裏に隠れて、彼らが居なくなるまでやり過ごします。
彼らが居なくなってから、ゆっくりと緊張を解きました。

「な、何?あの人たち」
「そもそも、おかしいと思わなかったのですか?この船に来た時点で」
「わ、分からないけど、この人から私を性的にみている様子は感じられなかったし、大丈夫かなと思って」

性的に見られることに怯えすぎて、他にも様々な危険があることを抜けているようです。

「この船の船体に、アカシャ家の紋が入っているのを見ました。アカシャ家といえば、裏稼業で人身売買を行っている穢れた家。私が駆けつけるのが遅ければ、あなたこのまま異国の地に連れて行かれ、売られてましたよ」
「ま、まさか、あの男の人、私を売るために……?」
「そうでしょうね」

ヤナギヤは今更怖気付き、顔を青くしていました。

「あなたはどこに売られようと、どうでも良いですが、アレンを巻き込まないでくださいね」

怒りに任せたヤナギヤが、再び叫びそうな大口を開いたので、沈黙の魔法を付与して黙らせました。







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