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第66話 「好きって、こんなもんなんかな」
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付き合い始めて、
数日が過ぎた。
朝、教室で顔を合わせる。
廊下ですれ違うときに小さく手を振る。
放課後、
ちょっとだけ一緒に帰る。
特別なことなんて、何もなかった。
私たちは、
友達だった頃と、
何ひとつ変わらなかった。
周りが「いい感じやん」と囃し立てると、
彼は、
はにかみながら笑った。
私は、
つられるように笑った。
嬉しくないわけじゃない。
でも、
心の奥で、
小さな違和感が膨らんでいた。
──これが、好きってことなんかな。
ふたりで歩く帰り道。
彼が何気なく話す他愛ない話。
それを聞きながら、
私は、
どこか上の空だった。
ふと、
誰かの視線を感じる。
それは、
クラスメートかもしれないし、
知らない誰かかもしれない。
私は、
そちらに無意識に意識を向けてしまう自分に気づいた。
──見られていたい。
そんな欲望が、
また胸の奥から湧き上がってきた。
彼に向けるはずの意識が、
別の場所へ、
ふらふらと流れていく。
彼は、
優しかった。
私に無理をさせることもない。
重たく縛りつけようとすることもない。
でも、
その優しさが、
逆に、
私をどこか物足りなくさせた。
もっと、
ぐちゃぐちゃにされたい。
もっと、
心をかき乱されたい。
そんな、
どこにも向けられない欲望だけが、
私の中で静かに膨らんでいった。
彼と一緒にいるとき。
みんなと笑い合うとき。
私は、
自分の心が、
少しずつ、
空っぽになっていくのを感じた。
優しくされても、
好きと言われても。
どこか、
自分が透明になっていくような感覚。
それが、
怖かった。
私は、
まだ誰のものにもなれていなかった。
ただ、
誰かの隣に立って、
ただ、
そこにいただけだった。
──つづく。
数日が過ぎた。
朝、教室で顔を合わせる。
廊下ですれ違うときに小さく手を振る。
放課後、
ちょっとだけ一緒に帰る。
特別なことなんて、何もなかった。
私たちは、
友達だった頃と、
何ひとつ変わらなかった。
周りが「いい感じやん」と囃し立てると、
彼は、
はにかみながら笑った。
私は、
つられるように笑った。
嬉しくないわけじゃない。
でも、
心の奥で、
小さな違和感が膨らんでいた。
──これが、好きってことなんかな。
ふたりで歩く帰り道。
彼が何気なく話す他愛ない話。
それを聞きながら、
私は、
どこか上の空だった。
ふと、
誰かの視線を感じる。
それは、
クラスメートかもしれないし、
知らない誰かかもしれない。
私は、
そちらに無意識に意識を向けてしまう自分に気づいた。
──見られていたい。
そんな欲望が、
また胸の奥から湧き上がってきた。
彼に向けるはずの意識が、
別の場所へ、
ふらふらと流れていく。
彼は、
優しかった。
私に無理をさせることもない。
重たく縛りつけようとすることもない。
でも、
その優しさが、
逆に、
私をどこか物足りなくさせた。
もっと、
ぐちゃぐちゃにされたい。
もっと、
心をかき乱されたい。
そんな、
どこにも向けられない欲望だけが、
私の中で静かに膨らんでいった。
彼と一緒にいるとき。
みんなと笑い合うとき。
私は、
自分の心が、
少しずつ、
空っぽになっていくのを感じた。
優しくされても、
好きと言われても。
どこか、
自分が透明になっていくような感覚。
それが、
怖かった。
私は、
まだ誰のものにもなれていなかった。
ただ、
誰かの隣に立って、
ただ、
そこにいただけだった。
──つづく。
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