ナナはなぜ壊れたのか③——少女が、少女を脱ぎ捨てるまで

nana

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第83話 「命令に生きる、私だけの居場所」

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彼とのルールが始まってから、
私は、
別の生き方を手に入れた気がしていた。

朝、
スマホに連絡を入れる。

「これから学校行きます。」

放課後、
誰と会うか、
どこへ行くか、
必ず報告する。

約束通り、
スカートだけを履く。

小さなことだった。

でも、
私のすべてだった。

命令に従うたびに、
私は、
確かに生きていると感じた。

この感覚は、
これまでのどんな”恋”でも得られなかったものだった。

思い返す。

初めての恋。
無邪気な笑顔。
温かい手。

でも、
心は満たされなかった。

体を重ねても、
心は遠かった。

優しさだけでは、
私は満たされなかった。

寂しさを埋めるために、
夜ごと自分を慰めた。

見られたいと妄想しながら、
ひとりで震えた。

誰にも愛されず、
誰にも支配されないまま、
ただ漂っていた。

そんな私を、
初めて”掴んで”くれたのが──彼だった。

優しくもなく、
甘くもなく。

ただ、
命令する。

ただ、
支配する。

それだけで、
私は、
初めて誰かのものになれた気がした。

「ナナは、俺のもん。」

そう言われたとき、
私は、
心の底からほっとした。

自分の存在を、
誰かに丸ごと預ける。

自分ではもう、
何も決めなくていい。

誰に会うか、
何を着るか、
何を話すか。

全部、彼に委ねる。

──これが、私の生き方なんや。

私は、
心のどこかで、
ずっとこういう生き方を求めていたのかもしれない。

自分で自分を守りきれなかった。
自分を好きになれなかった。

だから、
誰かに支配されることで、
初めて安心できた。

小さな命令に従うたびに、
私は、
自分を好きになれた。

自分が、
ここにいていいと思えた。

支配されることで、
私は私を取り戻していた。

ナナという存在は、
ようやく、
自分自身の輪郭を持った。

彼の命令に従って生きること。

それが、
私にとっての自由だった。

それが、
私にとっての救いだった。

──だから私は、今日も報告を送る。

「帰宅しました。スカートも履いてます。」

画面を見ながら、
私は、
自然と微笑んだ。

服従することは、
苦しみじゃなかった。

むしろ、
誰にも愛されなかった私にとって、
最高の贈り物だった。

──つづく。
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