壊れて、笑って、生きていく④──これ以上ない刺激に狂う

nana

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ふつうに戻れないこと、知ってるくせに。

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駅のホームで、
電車を待ちながら、
私はスマホを握りしめていた。

顔は、笑っていなかった。

心の中で、
何度も自分を責めた。

「なんでできへんかったんやろ」
「なんで、壊される勇気、出されへんかったんやろ」

あのとき、
あと少し踏み出せたら、
私はもっと笑われて、
もっと無様で、
もっと“生きた”はずやったのに。

電車が滑り込んでくる。
ぼんやりと、それを眺めた。

乗り込んでも、
座っても、
心はずっとぐらぐら揺れていた。

思わず、検索を始めた。

「即興パフォーマンス 素人参加」
「人前で芸をする イベント」
「羞恥プレイ 体験」

スクロールしても、
スクロールしても、
満たされるものは見つからなかった。

でも、止まらなかった。

ナナは、
もう知ってしまったからだ。

「ふつうの自分」には、
もう戻れないってことを。

笑われるために、
いじられるために、
裸にされるために、
存在を捧げること。

それが、
今の私の唯一の“実感”だったことを。

ふつうの女の子みたいに、
友達と笑い合って、
恋愛して、
仕事して。

そんな生き方に、
戻れるわけがないって、
とうにわかっていた。

でも、
それでも、
私は少しだけ泣きそうだった。

電車の窓に映る自分は、
どこか、
幽霊みたいにぼやけていた。

ポケットの中で、スマホが震えた。

一瞬、
主からかと思った。

でも、違った。
ただの、ニュース通知。

がっくり肩を落としながら、
私はまたスマホを開いた。

そして、
震える指で検索を続けた。

「羞恥心 捨てる 方法」
「壊れたい 女」
「見世物になりたい 方法」

バカみたいな検索履歴。
でも、
これが今の私だった。

家に帰るころには、
私はぼんやりと、
一つの結論にたどり着いていた。

「次は、
 もっと、ちゃんと晒される場所を探そ。」

ふつうの知り合いに中途半端に見せるんじゃない。
もっと、
もっと、
赤裸々で、
無様で、
逃げ場のないところで。

ちゃんと“ナナ”を、
晒しきれる場所を。

心が静かに燃えていた。

自分で自分に課した宿題みたいに。

「ふつうになんか、戻らん。」

自分にだけ聞こえる声で、
小さくそう呟いた。

そして、
またスマホを握り直した。

次のステージを探すために。
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