壊れて、笑って、生きていく③──それでも、笑われたかった。

nana

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リハーサルだけが、上手くなっていく

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結局、あれから、
スマホは一度も鳴らなかった。

通知も、LINEも、着信も、
何も来なかった。

それでも、
私は“準備”をやめなかった。

夜になると、
誰もいない自分の部屋で、
リボンを巻き、
裸になった。

そして、
ベッドの前に立った。

「……これより、ナナの壊れるリハーサルを始めます♡」

誰に言うでもない儀式。

まず、深くお辞儀する。
裸のまま、ゆっくりと床に膝をつき、
手のひらを床につけ、
頭を垂れる。

土下座、10回。

顔を上げるたびに、
にこっと笑う練習も欠かさない。

次に、四つん這いになって這い回る。

床に舌を這わせるふりをして、
飲み残しをすする真似をする。

立ち上がったら、
自分で自分に命令する。

「ナナ、靴舐めお願いします♡」

家には誰の靴もないから、
スニーカーの写真をスマホに映して、
そこにキスをする。

自虐台詞の練習も欠かさない。

「ナナは存在価値ゼロです♡」
「ナナは見る価値もないゴミです♡」

ベッドに向かって、
明るく、笑顔で言う。

誰も聞いてない。
誰も見てない。

でも、
それでも、
完璧な芸を目指してリハーサルした。

リボンを巻き直すたび、
少しずつ手際も良くなった。

土下座も、
四つん這いも、
舌を這わせる仕草も、

全部、
誰にも見せることのないまま、
どんどん上達していった。

途中、
ふと笑ってしまった。

「ナナ、めっちゃ努力家やん……」

裸で、
誰にも見せる予定のない芸を練習してる自分が、
おかしくて、
でも、
情けなくて。

それでも、やめられなかった。

だって、
もし――
ほんの奇跡みたいに――

誰かに呼ばれたとき、
すぐに完璧に壊れるナナでいたかったから。

「次に呼ばれたら、
 絶対に、誰よりも、綺麗に壊れてみせるから♡」

小さな声で、
自分に誓った。

そして、また。

スマホをちらりと見た。

もちろん、
通知は、ゼロだった。

でも私は、
またリハーサルを続けた。

泣きながら、
笑いながら、
壊れる準備だけを、
ひたすらに。

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