おばあちゃん

ゴーヤーチャンプルー

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おばあちゃん

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小さい頃、俺は両親が共働きだったせいで、よくおばあちゃんの家に預けられていたらしい。

「らしい」というのは、あまり記憶がないからだ。

アルバムを見ると、おばあちゃんに抱っこされて笑っている写真が何枚もある。

母さんも、「あんた、おばあちゃんが大好きだったのよ」と言っていた。

けれど、俺が小学生になる前におばあちゃんは亡くなった。

だから、俺の中におばあちゃんの思い出はぼんやりとしか残っていない。


——それから数年。


俺は中学生になった。

部活帰りの夕暮れ時、いつもの道を歩いていると、ふとした違和感を覚えた。

前を歩くおばあさんが、やけに馴染みのある後ろ姿をしていたのだ。


「……おばあちゃん?」


無意識に声をかけると、おばあさんは振り向いた。

優しい目元、少ししわのある笑顔。

懐かしさが込み上げてきた。

「大きくなったねぇ」

そう言って頭を撫でてくれた手の感触は、驚くほど温かかった。

それから俺は、毎日のようにおばあちゃんに会った。

学校の帰り道、公園のベンチ、神社の境内。

おばあちゃんはいつもどこかで待っていて、俺の話を聞いてくれた。

「学校は楽しいかい?」

「勉強は大変だけど、頑張ってるよ」

「好きな子はできたかい?」

「そ、そんなのいないよ!」

話していると、不思議と心が落ち着いた。

本当に、大好きだったおばあちゃんが帰ってきてくれたみたいで——俺は嬉しかった。

——ある日。

家の片付けをしていたら、古いアルバムが出てきた。

懐かしくなって、おばあちゃんの写真を探す。

「あれ……?」

ページをめくる手が止まる。

写真に写るおばあちゃんは、俺が毎日会っている”おばあちゃん”とは違う人だった。

背筋がゾッと冷える。

アルバムを何度見返しても、俺の知っている”おばあちゃん”の顔は、どこにもなかった。

「……どうしたんだい?」

背後から聞こえた、優しい声。

振り向くと、そこにはいつものおばあちゃんが立っていた。

——いや、“おばあちゃん”だと思っていた何かが。

「おばあちゃん……だよね?」

絞り出すように聞くと、おばあちゃんはゆっくりと微笑んだ。

「……何を言っているんだい?」

次の瞬間、ふっと目の前が暗くなる。

気がつくと、俺はいつもの帰り道に立っていた。

あたりを見回しても、おばあちゃんの姿はなかった。

それ以来、俺はおばあちゃんに会っていない。

でも——今でも、夕暮れ時の帰り道、誰かがそばを歩いている気がする。
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