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21 イミテーション
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ノアが宝飾店で購入した商品は二つ。行き先はアナベルとナタリア。そして、ロイが手にした商品も二つだった。しかも二つとも事前に依頼したもの。
伯爵家へ訪問する前に寄る宝飾店は決まっていた。何故なら請求伝票のことがあったからだ。当然、理由を伝えられたノアは頷いた、自分にとって都合がいいのだから。
そしてノアはロイから事前に聞いた予算の8割くらいを愛人二人の贈り物に使用した。残りの2割はどうでもいいレイチェル用。しかし、その2割をロイは更に分けたのだ。9割と1割に。内訳は、9割で小さいけれど質の良い石を使用したネックレス。1割で見栄えの良いイミテーションのネックレスを用意するよう。しかも出来れば重みのあるものでと。
話に乗ることにしたレイチェルに、ロイは小さなネックレスを差し出した。
「小さいから目立たないと思う」
「お見通しなのね」
「さっきも見たしね」
伯爵邸に到着後、ノアがレイチェルに差し出した包みは執事が預かるという体で取り上げていた。ロイの事前の読み通りに。
「面白いことを教えてあげるよ。ノア様が君に渡したのはイミテーションだ。あの執事が取り上げて誰に渡そうと惜しくもない。でも、これは小さいけどそれなりに価値がある。残念ながら僕の金で買ったものでないからね」
「まあ、あなた横領したの?」
「まさか。これは本来君の正当な権利の一部だよ。婚約者用の予算から出てるから。搾取されたのは君だ。君の予算は愛人に流れている。そして、そのことを謝るべきなのは僕なんだ。そうするように唆したのは僕だから」
「だけど、それを含めて話したってことは何か理由があるんでしょう、わたしの策士なお友達さん。ねえ、あなた、そうしていたということは、わたしがこの話に乗るって思っていたのね」
「策士だから、どこへ転んでもいいようにしていただけだよ」
「ふふ、そういうことにしておきましょう」
「それで、このネックレスなんだけど、現金化したい時はいつでも宝飾店へ持っていくといい。どこの店でも直ぐに買い取って貰える金額だから、現金を用意する為に待たされることはないはずだ」
「分かった。見つからないように持っておくわ。でも、あなたの計画に乗った以上その時は来ないんじゃないかしら」
「君の気持ちが変わった時の保険にして」
「至れり尽くせりの計画ね」
「友人だから」
ロイはその後計画の全容をレイチェルに話した。
「上手くいくかしら?」
「たぶん。駄目でも、君に大きな被害はないから安心して。常に次期侯爵夫人としての立場はあるはずだから」
「そうね。しかも、友人の傍にもいれそうだわ。次期侯爵夫人という身分より、ノア様より、友人がいてくれるというのが、わたしには一番良いことだもの」
伯爵家へ訪問する前に寄る宝飾店は決まっていた。何故なら請求伝票のことがあったからだ。当然、理由を伝えられたノアは頷いた、自分にとって都合がいいのだから。
そしてノアはロイから事前に聞いた予算の8割くらいを愛人二人の贈り物に使用した。残りの2割はどうでもいいレイチェル用。しかし、その2割をロイは更に分けたのだ。9割と1割に。内訳は、9割で小さいけれど質の良い石を使用したネックレス。1割で見栄えの良いイミテーションのネックレスを用意するよう。しかも出来れば重みのあるものでと。
話に乗ることにしたレイチェルに、ロイは小さなネックレスを差し出した。
「小さいから目立たないと思う」
「お見通しなのね」
「さっきも見たしね」
伯爵邸に到着後、ノアがレイチェルに差し出した包みは執事が預かるという体で取り上げていた。ロイの事前の読み通りに。
「面白いことを教えてあげるよ。ノア様が君に渡したのはイミテーションだ。あの執事が取り上げて誰に渡そうと惜しくもない。でも、これは小さいけどそれなりに価値がある。残念ながら僕の金で買ったものでないからね」
「まあ、あなた横領したの?」
「まさか。これは本来君の正当な権利の一部だよ。婚約者用の予算から出てるから。搾取されたのは君だ。君の予算は愛人に流れている。そして、そのことを謝るべきなのは僕なんだ。そうするように唆したのは僕だから」
「だけど、それを含めて話したってことは何か理由があるんでしょう、わたしの策士なお友達さん。ねえ、あなた、そうしていたということは、わたしがこの話に乗るって思っていたのね」
「策士だから、どこへ転んでもいいようにしていただけだよ」
「ふふ、そういうことにしておきましょう」
「それで、このネックレスなんだけど、現金化したい時はいつでも宝飾店へ持っていくといい。どこの店でも直ぐに買い取って貰える金額だから、現金を用意する為に待たされることはないはずだ」
「分かった。見つからないように持っておくわ。でも、あなたの計画に乗った以上その時は来ないんじゃないかしら」
「君の気持ちが変わった時の保険にして」
「至れり尽くせりの計画ね」
「友人だから」
ロイはその後計画の全容をレイチェルに話した。
「上手くいくかしら?」
「たぶん。駄目でも、君に大きな被害はないから安心して。常に次期侯爵夫人としての立場はあるはずだから」
「そうね。しかも、友人の傍にもいれそうだわ。次期侯爵夫人という身分より、ノア様より、友人がいてくれるというのが、わたしには一番良いことだもの」
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