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23 結婚準備
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侯爵はロイの意見を鵜呑みにしたりはしない。ロイへの確認後、少し間をおいてからノアにも婚約者との仲を確認した。
子供の頃から侯爵に仕えているロイは、そうすることなど見越してノアとも事前に口裏合わせをし更なる手を打っていた。
「婚約者とは仲良くやっているのだろうな」
「はい。最近では表情が随分柔らかくなりました。特にカフェへ連れ出した時などは嬉しそうにしてくれます」
「そうか」
カフェでの表情など見たことはないが、ノアはロイとの打ち合わせ通りの言葉を発した。ロイが言った通り外出を共にしていることと、一緒にいる時にレイチェルが嬉しそうにしていることを強調する為に。
しかしロイがノアにそう言うことをアドバイスしたのには勿論理由がある。侯爵が深読みすることを予想したのだ。
後妻達から嫌がらせを受け暮らしていたレイチェルの過去を知る侯爵ならば、ノアの言葉をそのままに受け取らないと。レイチェルが家から出れることを喜んでいるのではないかと勘繰ると読んでいた。
「予算から毎回贈り物をしているようだな」
「はい、高価なものではありませんが渡すと喜んでくれます」
「そうか。伯爵令嬢は中身を見て喜んでいるんだな」
「中身ですか?」
「ああ、包みを開けた瞬間の女の表情は毎回よく見ておくといい。演技なのかどうかを」
「彼女はわたしからの贈り物自体に喜んでくれているようです。そういう表情をいつも見せてくれます。贈り物は荷物にならないよういつも迎えに行った時に渡すもので、開けずに包みを大切そうに執事に渡していますし。もしかしたら夜にでも部屋で喜びのあまり包みをずっと見ているかもしれません」
「そうか」
それから数日後だった、ロイが伯爵家へ侯爵からのレイチェルの花嫁修行に関する書状を届けたのは。
書状が伯爵家に到着してから一週間後、急なことにもかかわらずレイチェルは嫁入り前の勉強をする為に侯爵家へ移り住むこととなった。半年後には結婚式を挙げるのだから、ちょうど良い頃合いだろうということで。
伯爵家からは短期間で都合がつかなかったと一人の侍女も寄越すことはなかったが、そんなことは侯爵もロイも言い訳に過ぎないと承知の上だった。寧ろ、侯爵家内に他所の家の者が入り込まないことを喜んだ。
レイチェル付きの侍女はメイドが一人格上げされ対応することとなった。勿論レイチェルの荷物をしまう時には点検は欠かさない。品物の質、真新しさは特に。
そして全てが侯爵へ報告される。
嫁入りということで、新しい物が多いのは頷ける。しかし、いずれ侯爵夫人になるレイチェルへの質としては些かいただけないものばかりだった。こちらは適当に間に合わせたであろうことがこういうところから窺えるのであった。
「宝飾品は、どういう物を持たされてきたのだ?」
「はい。ワンピースに付ける程度のブローチと髪飾りくらいです。それもどちらも銀細工。宝飾品と言うには小さ過ぎる石が髪飾りに付いているだけでした」
「そうか。こちらでそれなりに見えるよう整えないといけないな」
「はい」
「レイチェルは早めに家から出れた上に、身支度も万全に整えて貰えるのだ、我が侯爵家に誠心誠意努める妻になるだろう」
侯爵は伯爵家を何年後くらいに掌中に収めるべきか考えた。レイチェルに使う金は最終的には伯爵家が担うべきなのだから。持ちかけた共同事業だっていずれは侯爵家の取り分を更に増やす予定でいる。伯爵家は程々に生かされればいいだけの家なのだ。無くしてしまったら、何も生まなくなってしまうので。
持参金なしという一見親切そうな申し出が、どれだけ危険だったかはいつか気付くだろう。否、あの伯爵では無理かもしれないと侯爵は思った。それはそれで一生知らぬが幸せかとも。
子供の頃から侯爵に仕えているロイは、そうすることなど見越してノアとも事前に口裏合わせをし更なる手を打っていた。
「婚約者とは仲良くやっているのだろうな」
「はい。最近では表情が随分柔らかくなりました。特にカフェへ連れ出した時などは嬉しそうにしてくれます」
「そうか」
カフェでの表情など見たことはないが、ノアはロイとの打ち合わせ通りの言葉を発した。ロイが言った通り外出を共にしていることと、一緒にいる時にレイチェルが嬉しそうにしていることを強調する為に。
しかしロイがノアにそう言うことをアドバイスしたのには勿論理由がある。侯爵が深読みすることを予想したのだ。
後妻達から嫌がらせを受け暮らしていたレイチェルの過去を知る侯爵ならば、ノアの言葉をそのままに受け取らないと。レイチェルが家から出れることを喜んでいるのではないかと勘繰ると読んでいた。
「予算から毎回贈り物をしているようだな」
「はい、高価なものではありませんが渡すと喜んでくれます」
「そうか。伯爵令嬢は中身を見て喜んでいるんだな」
「中身ですか?」
「ああ、包みを開けた瞬間の女の表情は毎回よく見ておくといい。演技なのかどうかを」
「彼女はわたしからの贈り物自体に喜んでくれているようです。そういう表情をいつも見せてくれます。贈り物は荷物にならないよういつも迎えに行った時に渡すもので、開けずに包みを大切そうに執事に渡していますし。もしかしたら夜にでも部屋で喜びのあまり包みをずっと見ているかもしれません」
「そうか」
それから数日後だった、ロイが伯爵家へ侯爵からのレイチェルの花嫁修行に関する書状を届けたのは。
書状が伯爵家に到着してから一週間後、急なことにもかかわらずレイチェルは嫁入り前の勉強をする為に侯爵家へ移り住むこととなった。半年後には結婚式を挙げるのだから、ちょうど良い頃合いだろうということで。
伯爵家からは短期間で都合がつかなかったと一人の侍女も寄越すことはなかったが、そんなことは侯爵もロイも言い訳に過ぎないと承知の上だった。寧ろ、侯爵家内に他所の家の者が入り込まないことを喜んだ。
レイチェル付きの侍女はメイドが一人格上げされ対応することとなった。勿論レイチェルの荷物をしまう時には点検は欠かさない。品物の質、真新しさは特に。
そして全てが侯爵へ報告される。
嫁入りということで、新しい物が多いのは頷ける。しかし、いずれ侯爵夫人になるレイチェルへの質としては些かいただけないものばかりだった。こちらは適当に間に合わせたであろうことがこういうところから窺えるのであった。
「宝飾品は、どういう物を持たされてきたのだ?」
「はい。ワンピースに付ける程度のブローチと髪飾りくらいです。それもどちらも銀細工。宝飾品と言うには小さ過ぎる石が髪飾りに付いているだけでした」
「そうか。こちらでそれなりに見えるよう整えないといけないな」
「はい」
「レイチェルは早めに家から出れた上に、身支度も万全に整えて貰えるのだ、我が侯爵家に誠心誠意努める妻になるだろう」
侯爵は伯爵家を何年後くらいに掌中に収めるべきか考えた。レイチェルに使う金は最終的には伯爵家が担うべきなのだから。持ちかけた共同事業だっていずれは侯爵家の取り分を更に増やす予定でいる。伯爵家は程々に生かされればいいだけの家なのだ。無くしてしまったら、何も生まなくなってしまうので。
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