年に一度の旦那様

五十嵐

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97 フリカの人物像設定

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ノアの計らいにより部屋で休んでいることになっているレイチェル。ロイはマクレナン侯爵の命を受け、レイチェルに与えられた部屋を尋ねた。

部屋は前回と違う場所だが、客間であることには変わりない。レイチェルにはまだノアの妻としての部屋は与えられないということだ。そこにどういう理由、もしかしたら部屋を一から整えさせる等の気遣いがあるのかもしれないが、この現状はロイにもレイチェルにもありがたいことだった。
そしてロイはその部屋の扉をフリカとの取り決め通りノックする。二つ目と三つ目の間を意図的にずらし、周囲にはロイしかいないことを伝えたのだ。けれどフリカは念には念を入れ耳が遠い振りをし続けながら扉を開く、『ロイ、何の用だい?』と大きな声を出しながら。
フリカの演技は見事で、耳が遠いから話す声も大きいと周囲の誰もが納得するものだった。

「侯爵様が奥様を執務室へお連れするようにと」
「ん、何だい?」
「ですから、侯爵様が、奥様を」
「ロイ、扉の傍で少し待っていてちょうだい。フリカ、マクレナン侯爵様にお会いするから髪だけ整えて」

ロイの周辺に人がいないだけで、邸には多くの使用人がいる。フリカの大きな声は階下で掃除をするメイドや、廊下を歩く使用人に届いたことだろう。そして彼等は皆、フリカの声は大きい、それに対応する人の声も大きくなると思い込む。だから聴力の優れるロイが拾えるような小さな音がフリカから発せられるとは考えなくなるのだ。

「それで?」
「コリンス伯爵家をどうしたいか尋ねるとのこと」
「カルセナの話では未来がない家。尋ねるというよりは、どういう結末を迎えさせるか話すのだろうね」

フリカはロイの一言から、紙に考えられる侯爵の言葉を簡単にいくつか書いた。更に、最後に今はまだコリンス伯爵家の二人の子供がアーミテージ子爵家に渡らないようにしなければならないと書いた。
レイチェルは小さくうなずくと、大きな声で『髪を整えてくれてありがとう、フリカ。では、行ってくるわ』と伝えたのだった。
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