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願いと約束2―2
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「急に呼んでしまってご免なさいね。よく眠れたかしら?アルフレッドからは問題無さそうと聞いたのだけど…」
侍女が持つ中が仕切り別に紅茶の茶葉のサンプルが入った木箱を覗きながら、レナから声を掛けられたアルメリア。
結局、場所はレナが時折使っている通称ノワールサロンと名付けられた別室。
主にレナが一人でその日の飲み物を嗜む為か、限られた友人を招いた時に使用している場所らしい。
マドレーヌに付き添われ部屋に入って早々、レナに言われるが継、アルメリアはベルベット調のチェスターフィールドソファに腰掛けた。
その後は、レナの指示でマドレーヌは退室し、レナの侍女達が次々に甘いお菓子を運んで来た。
テーブルの上には魅力的な甘いお菓子が並ぶ。
アルメリアにはこれも初めての食べ物だが、色鮮やかで美しい造形は興味をそそられた。
「…朝食?を頂いた後で……丁度、マドレーヌさんにレナさんが起きているか聞いた所だったので、大丈夫です。」
「あら、そうだったの?良かったわ。」
アルメリアに振り返ったレナは、明るい笑顔を見せながら返事をする。
飲みたい紅茶はあるかしら?とレナはアルメリアに木箱を見せるようにするが、紅茶の種類も違いも分からず選べないアルメリアは瞬きを繰り返した。
固まってしまったアルメリアに、レナは「じゃあ、パルフィュメにして置きましょう」と二種類の茶葉を選んで侍女に伝えていた。
紅茶を用意する為、一礼して侍女達が部屋を出て行った。
「さて、と」
目の前に並べられた甘いお菓子の中、キラキラと目を輝かせながらどれを食べようか選ぶレナに、アルメリアもどんな味がするのだろうと、自分の近くにあった艶のあるコロンとした真っ赤な果実を見詰めた。
(………確かこれは苺…という実だったはず)
アルメリアは真っ赤な実が苺だと知っていた。
友達だった妖精が、季節になると小さな体で実を抱え飛んでいる姿をよく見ていた。
―――そういえば彼女は無事かしら?…
同じ人魚の森に暮らす友達の妖精の事が心配になった。
「それはフレジエよ。食べてみる?」
苺を見詰め過ぎていたのか、レナの声に現実へ戻されるようにハッとした。
「フレジエ…」
「えぇ、ジェノワーズ生地に苺とクリームを挟んだケーキの事なの。」
クリームはバタークリーム、クレームパティシエール、ムースリーヌクリームなど様々なバリエーションがあるけれどと続けるレナ。
その説明を聞いていると、侍女達がティーセットと手に戻って来た。
戻って来た侍女達に、フレジエを切ってアルメリアへ出すよう言うレナ。
アルメリアの前には、正方形に切られた美しいフレジエと、琥珀色の紅茶が注がれたカップが置かれた。
レナの前には、暗い森のチョコレートケーキが置かれた。
レナのカップを置き終わると、侍女達は「後程、参ります」とレナに言い、再度部屋を出た。
アルメリアはレナと二人きりになった。
「頂きましょう!」
暗い森のチョコレートケーキに嬉々としてフォークを挿すレナをジッとアルメリアは見ていた。
見様見真似で、添えられてたフォークを手に取る。
(…ケーキ…というのは初めてだけど、これは美味しそう。)
初めての食べ物にずっと警戒心を持ち続けていたアルメリアだが、二度の食事や紅茶を口にしてきた事で、フレジエを前にいつの間にか好奇心の方が勝っていた。
フォークをサクッと上に載るいくつかの苺の一つに挿し入れると、意を決してパクっと口に放り込むアルメリア。
一噛みすれば、口一杯に甘酸っぱさが広かった。
同時に二重の瞳を見開いた。
(!!……美味しい!…これはこの実にハマった気持ちが分かるわ)
苺の美味しさに舌鼓するアルメリア。
苺を飲み込んで、下にある真っ白なクリームとスポンジ生地にフォークを入れようか迷った。
「アルメリア」
エイッとフォークを入れようとした時、暗い森のチョコレートケーキを上品に食べていたレナに呼ばれ、首を上げた。
「私が起きているかとさっき言っていたけれど、何か用があったのではなくて?」
「あ……いえ、用と言うか…」
「?」
「レナさんは、竜の飼育をされてるとアルフレッドさんが言ってました。」
「…そうね、その通りよ。」
「所有者…と言いますか、飼っている者が竜の世話をするのではないんですか?」
アルメリアの目を見ながら、紅茶を一口飲むとレナはアルメリアの言いたい事が分かったように頷いた。
「勿論、兄様が飼っている双頭の竜やカイスは兄様が世話をしてるわ。私が飼育してるのは、飼い主が決まってない竜達。主にミニ竜の餌やりとかになるわね。」
複数の竜を、いくら子供の竜と言えど、女性であるレナ一人で世話をしているのかと思うと、アルメリアは理解が出来なかった。
レナは何でも無いかのようにミニ竜と言うが、アルメリアには小さくても大きくても竜は竜である。
「……一人で?」
アルメリアの眉間には、本人も気付かない内に皺が寄っていた。
「そうね。………んー…」
少し険しい表情になったアルメリアを見ていたレナだが、何か少し考えるように視線を外し、テーブルを見たかと思うと首を上げた。
「……本当はあまり言わない方が良いのかもしれないけど、アルメリアだから良いわ。」
そう言うと、一拍置いてレナは口を開く。
アルメリアは何を言い出すのかと、ゴクリと唾液を飲み込んだ。
「本来なら、竜使いと竜は主従とはちょっと違うけど、友情に近いものを結ぶわ。魔力の共鳴というのかしら?……兄様もそう。でも私は魔力が強過ぎるからか、生まれつきそれが出来無いのよ。」
アルメリアはてっきり、レナも大人の竜を所有していると思っていた。
「私の自身の所有する竜が全くいない訳じゃないけれど、私のミニ竜は兄様や他の竜使いのように魔力を結んでない。ミニ竜が私に懐いて、側にいるのよ。」
「レナさんがさっき言った、複数の竜はレナさんのじゃ無いとすると……」
「えぇ、まだ竜使いになったばかりの者や竜を所有したいけど決まった竜がいない者に、うちで飼育してる竜と波長が合えば相手の元に行くわね。……まぁ大体は幼い時に家族からプレゼントされる事が多いと思うのだけど。」
―――竜はペットとは違う、所謂相棒みたいなものだから…とレナは付け足した。
その言葉を聞きながら、アルメリアは取り敢えず頷いた。
レナの話しによれば、執事のアルフレッドもメイド長のクレマンティーヌも自身の竜を所有しているらしい。
但し、女性の場合は必ずしも竜を所有してるとは限らないと。
自分と違う竜族の話を一度では上手く理解出来無かった。
それでも何となく回らない頭で理解しようとする。
先程、フォークを差した生クリームがその継だった事に気付いたアルメリアは、徐ろにフォークを持ち上げ口に運んでみた。
(………!!!!)
滑らかな舌触りと、優しい甘さが口一杯に広がった。
パーッと心躍るような、一瞬にして頬が落ちそうな幸せな気分がアルメリア包んだ。
(―――こんな美味しいものがあるなんて……)
アルメリアの眉間から皺が消えていた。
「フレジエ、気に入ったかしら?…口角にクリームが付いているわよアルメリア」
生クリームに感動し表情が変わった事は、レナにも気付かれた。
レナは腕をアルメリアの方へ伸ばした。
布巾で口角を拭われたアルメリアは、恥ずかしくなって頬を染めた。
侍女が持つ中が仕切り別に紅茶の茶葉のサンプルが入った木箱を覗きながら、レナから声を掛けられたアルメリア。
結局、場所はレナが時折使っている通称ノワールサロンと名付けられた別室。
主にレナが一人でその日の飲み物を嗜む為か、限られた友人を招いた時に使用している場所らしい。
マドレーヌに付き添われ部屋に入って早々、レナに言われるが継、アルメリアはベルベット調のチェスターフィールドソファに腰掛けた。
その後は、レナの指示でマドレーヌは退室し、レナの侍女達が次々に甘いお菓子を運んで来た。
テーブルの上には魅力的な甘いお菓子が並ぶ。
アルメリアにはこれも初めての食べ物だが、色鮮やかで美しい造形は興味をそそられた。
「…朝食?を頂いた後で……丁度、マドレーヌさんにレナさんが起きているか聞いた所だったので、大丈夫です。」
「あら、そうだったの?良かったわ。」
アルメリアに振り返ったレナは、明るい笑顔を見せながら返事をする。
飲みたい紅茶はあるかしら?とレナはアルメリアに木箱を見せるようにするが、紅茶の種類も違いも分からず選べないアルメリアは瞬きを繰り返した。
固まってしまったアルメリアに、レナは「じゃあ、パルフィュメにして置きましょう」と二種類の茶葉を選んで侍女に伝えていた。
紅茶を用意する為、一礼して侍女達が部屋を出て行った。
「さて、と」
目の前に並べられた甘いお菓子の中、キラキラと目を輝かせながらどれを食べようか選ぶレナに、アルメリアもどんな味がするのだろうと、自分の近くにあった艶のあるコロンとした真っ赤な果実を見詰めた。
(………確かこれは苺…という実だったはず)
アルメリアは真っ赤な実が苺だと知っていた。
友達だった妖精が、季節になると小さな体で実を抱え飛んでいる姿をよく見ていた。
―――そういえば彼女は無事かしら?…
同じ人魚の森に暮らす友達の妖精の事が心配になった。
「それはフレジエよ。食べてみる?」
苺を見詰め過ぎていたのか、レナの声に現実へ戻されるようにハッとした。
「フレジエ…」
「えぇ、ジェノワーズ生地に苺とクリームを挟んだケーキの事なの。」
クリームはバタークリーム、クレームパティシエール、ムースリーヌクリームなど様々なバリエーションがあるけれどと続けるレナ。
その説明を聞いていると、侍女達がティーセットと手に戻って来た。
戻って来た侍女達に、フレジエを切ってアルメリアへ出すよう言うレナ。
アルメリアの前には、正方形に切られた美しいフレジエと、琥珀色の紅茶が注がれたカップが置かれた。
レナの前には、暗い森のチョコレートケーキが置かれた。
レナのカップを置き終わると、侍女達は「後程、参ります」とレナに言い、再度部屋を出た。
アルメリアはレナと二人きりになった。
「頂きましょう!」
暗い森のチョコレートケーキに嬉々としてフォークを挿すレナをジッとアルメリアは見ていた。
見様見真似で、添えられてたフォークを手に取る。
(…ケーキ…というのは初めてだけど、これは美味しそう。)
初めての食べ物にずっと警戒心を持ち続けていたアルメリアだが、二度の食事や紅茶を口にしてきた事で、フレジエを前にいつの間にか好奇心の方が勝っていた。
フォークをサクッと上に載るいくつかの苺の一つに挿し入れると、意を決してパクっと口に放り込むアルメリア。
一噛みすれば、口一杯に甘酸っぱさが広かった。
同時に二重の瞳を見開いた。
(!!……美味しい!…これはこの実にハマった気持ちが分かるわ)
苺の美味しさに舌鼓するアルメリア。
苺を飲み込んで、下にある真っ白なクリームとスポンジ生地にフォークを入れようか迷った。
「アルメリア」
エイッとフォークを入れようとした時、暗い森のチョコレートケーキを上品に食べていたレナに呼ばれ、首を上げた。
「私が起きているかとさっき言っていたけれど、何か用があったのではなくて?」
「あ……いえ、用と言うか…」
「?」
「レナさんは、竜の飼育をされてるとアルフレッドさんが言ってました。」
「…そうね、その通りよ。」
「所有者…と言いますか、飼っている者が竜の世話をするのではないんですか?」
アルメリアの目を見ながら、紅茶を一口飲むとレナはアルメリアの言いたい事が分かったように頷いた。
「勿論、兄様が飼っている双頭の竜やカイスは兄様が世話をしてるわ。私が飼育してるのは、飼い主が決まってない竜達。主にミニ竜の餌やりとかになるわね。」
複数の竜を、いくら子供の竜と言えど、女性であるレナ一人で世話をしているのかと思うと、アルメリアは理解が出来なかった。
レナは何でも無いかのようにミニ竜と言うが、アルメリアには小さくても大きくても竜は竜である。
「……一人で?」
アルメリアの眉間には、本人も気付かない内に皺が寄っていた。
「そうね。………んー…」
少し険しい表情になったアルメリアを見ていたレナだが、何か少し考えるように視線を外し、テーブルを見たかと思うと首を上げた。
「……本当はあまり言わない方が良いのかもしれないけど、アルメリアだから良いわ。」
そう言うと、一拍置いてレナは口を開く。
アルメリアは何を言い出すのかと、ゴクリと唾液を飲み込んだ。
「本来なら、竜使いと竜は主従とはちょっと違うけど、友情に近いものを結ぶわ。魔力の共鳴というのかしら?……兄様もそう。でも私は魔力が強過ぎるからか、生まれつきそれが出来無いのよ。」
アルメリアはてっきり、レナも大人の竜を所有していると思っていた。
「私の自身の所有する竜が全くいない訳じゃないけれど、私のミニ竜は兄様や他の竜使いのように魔力を結んでない。ミニ竜が私に懐いて、側にいるのよ。」
「レナさんがさっき言った、複数の竜はレナさんのじゃ無いとすると……」
「えぇ、まだ竜使いになったばかりの者や竜を所有したいけど決まった竜がいない者に、うちで飼育してる竜と波長が合えば相手の元に行くわね。……まぁ大体は幼い時に家族からプレゼントされる事が多いと思うのだけど。」
―――竜はペットとは違う、所謂相棒みたいなものだから…とレナは付け足した。
その言葉を聞きながら、アルメリアは取り敢えず頷いた。
レナの話しによれば、執事のアルフレッドもメイド長のクレマンティーヌも自身の竜を所有しているらしい。
但し、女性の場合は必ずしも竜を所有してるとは限らないと。
自分と違う竜族の話を一度では上手く理解出来無かった。
それでも何となく回らない頭で理解しようとする。
先程、フォークを差した生クリームがその継だった事に気付いたアルメリアは、徐ろにフォークを持ち上げ口に運んでみた。
(………!!!!)
滑らかな舌触りと、優しい甘さが口一杯に広がった。
パーッと心躍るような、一瞬にして頬が落ちそうな幸せな気分がアルメリア包んだ。
(―――こんな美味しいものがあるなんて……)
アルメリアの眉間から皺が消えていた。
「フレジエ、気に入ったかしら?…口角にクリームが付いているわよアルメリア」
生クリームに感動し表情が変わった事は、レナにも気付かれた。
レナは腕をアルメリアの方へ伸ばした。
布巾で口角を拭われたアルメリアは、恥ずかしくなって頬を染めた。
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