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第三章 悪魔の儀式
第16話 優里の秘密
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「初めて見たのは、幼稚園の頃・・・」
ぽつりぽつりと、優里は話し始めた。
わたしがこっちへ引っ越してきたのは、小学校2年生の春休み。おとうさんがおじいちゃんの仕事を継ぐことになって、おとうさんの故郷に帰ってきたの。
それまでは、都会でマンション暮らしをしてた。古い6階建てのマンションで、うちの部屋は4階にあったんだけど、周りもビルとか高速道路に囲まれてて昼間でも電気をつけないといけないくらい薄暗い部屋だった。
4歳のときだったかな。ある日、わたし熱を出して寝込んでいたの。
昼間部屋で寝ていたら、どん、どんって足音が聞こえてきた。
その日おとうさんは仕事に出かけていたし、おかあさんも買い物に行くって出かけたばかりで家には誰もいないはずだった。
でもおかあさんがもう帰ってきたのかなって思って目を開けたら、足下に大きな目をした傘のおばけがいたの。
傘の真ん中に目がついた、一本足のおばけ。それが跳びながら、どんどんわたしに近づいてきて────
でも、気づいたらおかあさんに体を揺すられて目が覚めた。目が覚めたとき、わたしはベランダで横になってた。ベランダに出た覚えなんてなかったんだけど。
それで、わたしおかあさんからすごく怒られた。二度と勝手にベランダに出ちゃいけないって。おばけの話をしても、信じてもらえなかった。
とにかく、わたしが初めて妖怪を見たのがそのとき。
それからは角を生やした鬼の小人とか、目のついたウニのおばけとかのっぺらぼうの女の子とか、あちこちで色んな妖怪を見るようになった。
でも、誰にもその話はしなかった。しちゃいけないんだって思ってた。
最初の頃は怖かったけど、でもいつからか妖怪たちとも少しずつ話をするようになって、仲良くなった。
誰も見ていないところで、妖怪と遊ぶようになったんだ。だから幼稚園でも小学校に上がっても、わたしは友達ができなかったけど別に寂しくなかった。
でも、こっちへ引っ越してきてからは妖怪を見なくなった。どこにも出てくれなくなったの。
夜中にこっそり家を抜け出して神社とか墓地とか行ってみたりもしたけど、どこにもいなかった。
学校では転校生っていうことで最初はみんなも話しかけてくれたけど、でも元々わたし暗かったしやっぱり友達はできなかった。
それで、段々いじめられるようになって・・・。
でもみんなに無視されるようになったりしても、クリス君や紗奈ちゃんは変わらずわたしと話をしてくれて、遠足でも同じ班になってくれたりして、それでわたしはすごく救われたの。
クリス君も紗奈ちゃんも覚えてないかもしれないけど・・・。
でも5年生になったときに三人とも別々のクラスになっちゃって、それでまたわたしみんなから無視されるようになった。
それからわたし・・・その・・・悪魔召喚に興味を持ち始めたの。
悪魔を召喚しようと思ったわけじゃないんだけど、引っ越してくる前に遊んでた妖怪とかを呼ぶことができないかなと思って・・・。
それで本やインターネットで召喚の仕方について調べたりしていたら、ある日家の近くで車に轢かれた猫の死骸をたまたま見つけたんだ。
悪魔を召喚するには動物の血と肉が必要だって書いてあったから、ちょうどいいと思って・・・死骸をビニール袋に入れて持って帰った。
その日の夜中、公園まで行って本に書いてあった通り地面に棒で魔法陣を書いて、猫の死骸を置いて悪魔召喚をやってみた。
興味本位だったけど、でも本当に出てくるって信じてた。
そうしたら、本当に現れたの。3つの目を持つ、翼の生えた猫のおばけみたいな悪魔が。
悪魔は、自分のことを“グサイン”って名乗った。
グサインはさっきクリス君がやったみたいに、頭の中に直接語りかけてきた。
わたしも、グサインと話すときは声に出さずに頭で話しかけた。実際、それで会話ができたんだ。そうして、グサインはわたしの唯一の友達になった。
グサインは人の姿にも変身できるしサイズも変えられたから、小人の女の子に変身してもらって、わたしはグサインといつも一緒に行動した。
グサインはわたし以外の人には見えないって言っていたけど、出かけるときは念のため服の下に隠してた。
それからしばらくして────6年生の冬に────グサインは何かひとつ望みを叶えてくれるって言うから、わたし中学から変わりたいって言ったの。
そうしたらその次の日、おとうさんから知り合いが理事長をやっている中高一貫の女子中学へ行きなさいって突然言われたの。それからは、とんとん拍子に今の学校へ進学が決まったんだ。
もちろん受験はしたよ。でも受験勉強なんてしてなかったのに、試験問題の答えがどんどん頭に浮かんできて、試験中スラスラと解答できた。
でもその受験が終わった日、グサインはわたしの前からいなくなっちゃった。何も言わずに、突然。
最初はショックだったけど、でもきっとグサインはわたしの望みを叶えてくれたんだなって思った。
それから、わたしは本当に変われたの。友達もできたし、自分に自信が持てるようになった。
だから、グサインは自分のことを悪魔だと言っていたけど、悪魔だとしても今のわたしがあるのはグサインのおかげなんだ。
ぽつりぽつりと、優里は話し始めた。
わたしがこっちへ引っ越してきたのは、小学校2年生の春休み。おとうさんがおじいちゃんの仕事を継ぐことになって、おとうさんの故郷に帰ってきたの。
それまでは、都会でマンション暮らしをしてた。古い6階建てのマンションで、うちの部屋は4階にあったんだけど、周りもビルとか高速道路に囲まれてて昼間でも電気をつけないといけないくらい薄暗い部屋だった。
4歳のときだったかな。ある日、わたし熱を出して寝込んでいたの。
昼間部屋で寝ていたら、どん、どんって足音が聞こえてきた。
その日おとうさんは仕事に出かけていたし、おかあさんも買い物に行くって出かけたばかりで家には誰もいないはずだった。
でもおかあさんがもう帰ってきたのかなって思って目を開けたら、足下に大きな目をした傘のおばけがいたの。
傘の真ん中に目がついた、一本足のおばけ。それが跳びながら、どんどんわたしに近づいてきて────
でも、気づいたらおかあさんに体を揺すられて目が覚めた。目が覚めたとき、わたしはベランダで横になってた。ベランダに出た覚えなんてなかったんだけど。
それで、わたしおかあさんからすごく怒られた。二度と勝手にベランダに出ちゃいけないって。おばけの話をしても、信じてもらえなかった。
とにかく、わたしが初めて妖怪を見たのがそのとき。
それからは角を生やした鬼の小人とか、目のついたウニのおばけとかのっぺらぼうの女の子とか、あちこちで色んな妖怪を見るようになった。
でも、誰にもその話はしなかった。しちゃいけないんだって思ってた。
最初の頃は怖かったけど、でもいつからか妖怪たちとも少しずつ話をするようになって、仲良くなった。
誰も見ていないところで、妖怪と遊ぶようになったんだ。だから幼稚園でも小学校に上がっても、わたしは友達ができなかったけど別に寂しくなかった。
でも、こっちへ引っ越してきてからは妖怪を見なくなった。どこにも出てくれなくなったの。
夜中にこっそり家を抜け出して神社とか墓地とか行ってみたりもしたけど、どこにもいなかった。
学校では転校生っていうことで最初はみんなも話しかけてくれたけど、でも元々わたし暗かったしやっぱり友達はできなかった。
それで、段々いじめられるようになって・・・。
でもみんなに無視されるようになったりしても、クリス君や紗奈ちゃんは変わらずわたしと話をしてくれて、遠足でも同じ班になってくれたりして、それでわたしはすごく救われたの。
クリス君も紗奈ちゃんも覚えてないかもしれないけど・・・。
でも5年生になったときに三人とも別々のクラスになっちゃって、それでまたわたしみんなから無視されるようになった。
それからわたし・・・その・・・悪魔召喚に興味を持ち始めたの。
悪魔を召喚しようと思ったわけじゃないんだけど、引っ越してくる前に遊んでた妖怪とかを呼ぶことができないかなと思って・・・。
それで本やインターネットで召喚の仕方について調べたりしていたら、ある日家の近くで車に轢かれた猫の死骸をたまたま見つけたんだ。
悪魔を召喚するには動物の血と肉が必要だって書いてあったから、ちょうどいいと思って・・・死骸をビニール袋に入れて持って帰った。
その日の夜中、公園まで行って本に書いてあった通り地面に棒で魔法陣を書いて、猫の死骸を置いて悪魔召喚をやってみた。
興味本位だったけど、でも本当に出てくるって信じてた。
そうしたら、本当に現れたの。3つの目を持つ、翼の生えた猫のおばけみたいな悪魔が。
悪魔は、自分のことを“グサイン”って名乗った。
グサインはさっきクリス君がやったみたいに、頭の中に直接語りかけてきた。
わたしも、グサインと話すときは声に出さずに頭で話しかけた。実際、それで会話ができたんだ。そうして、グサインはわたしの唯一の友達になった。
グサインは人の姿にも変身できるしサイズも変えられたから、小人の女の子に変身してもらって、わたしはグサインといつも一緒に行動した。
グサインはわたし以外の人には見えないって言っていたけど、出かけるときは念のため服の下に隠してた。
それからしばらくして────6年生の冬に────グサインは何かひとつ望みを叶えてくれるって言うから、わたし中学から変わりたいって言ったの。
そうしたらその次の日、おとうさんから知り合いが理事長をやっている中高一貫の女子中学へ行きなさいって突然言われたの。それからは、とんとん拍子に今の学校へ進学が決まったんだ。
もちろん受験はしたよ。でも受験勉強なんてしてなかったのに、試験問題の答えがどんどん頭に浮かんできて、試験中スラスラと解答できた。
でもその受験が終わった日、グサインはわたしの前からいなくなっちゃった。何も言わずに、突然。
最初はショックだったけど、でもきっとグサインはわたしの望みを叶えてくれたんだなって思った。
それから、わたしは本当に変われたの。友達もできたし、自分に自信が持てるようになった。
だから、グサインは自分のことを悪魔だと言っていたけど、悪魔だとしても今のわたしがあるのはグサインのおかげなんだ。
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