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転生・蘇る大帝
プロローグ
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煌びやかな装飾に彩られた一室。窓から射し込む夕陽が美しく、またどこか悲しげに見える。その訳は部屋の中心に置かれた巨大のベッドを囲み大勢の人にある。皆悲壮な表情を浮かべ、涙を流すものをいる。
巨大なベッドに寝そべっているのは一人の老人。誰がどう見ても、死の直前であるとわかるほどの死相を浮かべている。
かつての老人から発せられる武威は微塵を感じられず、かつての彼を知るものならば驚きの余り失神してしまうほどであろう。にもかかわらず、老人の顔はひどく穏やかなものであった。
「……皆のものよ、大儀であった。良くぞここまで余に仕えてきた」
「もったいなきお言葉」
老人から掠れるように発せられた言葉に、涙を堪えなら一人の男が答える。
「……これで終われる……余の生涯にいっぺんの悔い……いや、あった……どうしようもなく、後悔したことが」
「…………」
「……クラウディアよ……余は立派にやれたかだろうか」
「陛下は誰もが諦めた偉業を成し遂げました。クライディア王妃殿下もきっとお喜びになられているでしょう」
「で、あるか……いや、あれを、殺したのは余だ……そんなはずはなかろう」
「父上! そんなことはありません! 母上は!」
「アレクシウスよ……もう良い、良いのだ……これで全てが終わる……長かった」
そう言っている老人の目元から一滴の涙が溢れる。嬉し泣きか、悲し泣きか、それを知るものはいない。老人自身が一番戸惑っているから。
「涙か……そんなものがまだ余の中にあったのか……ふっはっはっは……ごっほごっほ」
「……」
「さて、皆のものよ……余の治世はこれにて幕を閉じる……これより、新たの時代の幕開けだ……この国を、世界を、頼んだぞ」
「「「はっ!」」」
皆の返事に満足したのか、老人から小さく笑みが溢れる。自分にできることは、もう何もない。そう思わせる笑みであった。老人は周りを見渡し、老人は頷く。そして天井に向き直し、虚空に手を伸ばす。
「クラウディア……余は……俺は……」
それが最後の言葉となった。力尽きた老人の腕は重力に従い、床に引きずり下される。部屋に残されたのは大勢のすすり泣き声と、変わらず差し込む夕陽だけであった。
◆
大統歴12年
陽帝 アレクサンダリア1世 崩御
その知らせは瞬く間に大陸全土に広がり、国中は愁傷に包まれた。多くの者が悲しみ、嘆いた。悦ぶものもいたが、それはほんのわずか。
陽帝・アレクサンダリア・フォン・シュヴァイツァー1世の功績は数えるのも億劫なほどであったが、その中でも、かの大帝の代名詞となる偉大な業績がある。
ーー大陸統一
この一言に尽きる。乱世の世をわずか一代で平定し、人々に安寧を与えた。この後もアレクサンダリアの名を冠する皇帝が現れるが、いずれも愚帝として名を残すこととなる。海外出征、既存の制度改変、軍部改革など、いずれもアレクサンドリア1世の功績を上回るための行動である。
しかし、尽く失敗に終わる。それらの皇帝が無能であった訳では決してない。安寧の世では、寧ろ名君として名を残したであろう。そんな彼らにとっての悲劇はアレクサンダリアの名を冠したこと。
それだけ、アレクサンダリア1世が行動は無謀であり、成し遂げたことが偉大であったといえる。
後の人々は、その唯一無二の功績を称えて彼をこう呼ぶ。
ーー大統帝と
◆
闘技場。そう称するにふさわしい円形の建造物。涼しげな青で統一された客席を埋め尽くさんとするほど大勢の観客が、集まっていた。闘技場の中央には二人の男がいた。いや、男というには余りにも幼い子供たちであった。
良く見えれば、客席を埋め尽くす観客も皆幼い顔立ちであることがわかる。そして、彼らが同じ服装であることも。そんな彼らは、一言も発することなく、闘技場の中央に視線を向けていた。その視線には怒り、侮蔑、嘲笑などが含まれる。
闘技場の中央にいる二人だが、一人は真っ赤な真紅色の髪を靡かせた美少年である。あと五年もすれば、顔立ちに精悍さが生まれ、立派な青年となるであろう。
もう一人の少年は、黒髪である。地に突き伏せているため、顔立ちまではわからないが、その体型は大きかった。主に、横幅が。
「二度とレスティナに手出すな! 分かったか、この豚野郎が!」
赤髪の少年が吐き捨てるようにそう言うと、速やかに退場した。残されたのは黒髪の少年のみである。赤髪の少年の退場とともに、観客席の静寂が破られた。
「ざまあ見ろ!」
「ダッサ! いつもの威勢はどうした!」
「学園の恥! いや、皇国の恥!」
「学園から消えろ!」
地に突き伏せる黒髪の少年に対して次々と罵声を浴びせる。とても貴族の子弟とは思えないほどの言葉遣いで、罵倒していく。今までの鬱憤をはらすかのように。
しかし、その罵倒せれている本人といえば、ただただ混乱していた。
(……どこだ、ここは? 俺はどうなった……なぜ罵られている。わからん……いや、わかる、けどわからん。記憶はあるが、これは?)
自分の記憶は存在する。しかし、同時にもう一人の記憶もまたこの身に宿った。そのことに少年は酷く混乱した。いや、もはや少年と呼べるかどうか、すら不明だ。彼の意識は限りなくもう一人の記憶に寄せられていた。
大統帝・アレクサンダリア1世としての記憶が、意識が豚と呼ばれている少年に宿った。その余りにも膨大な情報量により、彼は気を失うこととなる。
大統歴 1028年 5月
歴史は再び動きだそうとしていた。
ーーーーー
あとがき
皆さん初めまして。そして、お邪魔します。
鴉真似と申します。
名前に鴉が入っていますが、どちらかというと鳩の方が好きです。
さて、拙作『Re:征服者』をお読みいただき、ありがとうございます!
少しでも『面白い』『続きが読みたい』と思っていただけたら、お気に入り登録のほどよろしくお願いします!
PS. 作者は基本、章のプロローグと最終話にしか出没しませんが、たまに重要な話でちょこっと顔を出します。
巨大なベッドに寝そべっているのは一人の老人。誰がどう見ても、死の直前であるとわかるほどの死相を浮かべている。
かつての老人から発せられる武威は微塵を感じられず、かつての彼を知るものならば驚きの余り失神してしまうほどであろう。にもかかわらず、老人の顔はひどく穏やかなものであった。
「……皆のものよ、大儀であった。良くぞここまで余に仕えてきた」
「もったいなきお言葉」
老人から掠れるように発せられた言葉に、涙を堪えなら一人の男が答える。
「……これで終われる……余の生涯にいっぺんの悔い……いや、あった……どうしようもなく、後悔したことが」
「…………」
「……クラウディアよ……余は立派にやれたかだろうか」
「陛下は誰もが諦めた偉業を成し遂げました。クライディア王妃殿下もきっとお喜びになられているでしょう」
「で、あるか……いや、あれを、殺したのは余だ……そんなはずはなかろう」
「父上! そんなことはありません! 母上は!」
「アレクシウスよ……もう良い、良いのだ……これで全てが終わる……長かった」
そう言っている老人の目元から一滴の涙が溢れる。嬉し泣きか、悲し泣きか、それを知るものはいない。老人自身が一番戸惑っているから。
「涙か……そんなものがまだ余の中にあったのか……ふっはっはっは……ごっほごっほ」
「……」
「さて、皆のものよ……余の治世はこれにて幕を閉じる……これより、新たの時代の幕開けだ……この国を、世界を、頼んだぞ」
「「「はっ!」」」
皆の返事に満足したのか、老人から小さく笑みが溢れる。自分にできることは、もう何もない。そう思わせる笑みであった。老人は周りを見渡し、老人は頷く。そして天井に向き直し、虚空に手を伸ばす。
「クラウディア……余は……俺は……」
それが最後の言葉となった。力尽きた老人の腕は重力に従い、床に引きずり下される。部屋に残されたのは大勢のすすり泣き声と、変わらず差し込む夕陽だけであった。
◆
大統歴12年
陽帝 アレクサンダリア1世 崩御
その知らせは瞬く間に大陸全土に広がり、国中は愁傷に包まれた。多くの者が悲しみ、嘆いた。悦ぶものもいたが、それはほんのわずか。
陽帝・アレクサンダリア・フォン・シュヴァイツァー1世の功績は数えるのも億劫なほどであったが、その中でも、かの大帝の代名詞となる偉大な業績がある。
ーー大陸統一
この一言に尽きる。乱世の世をわずか一代で平定し、人々に安寧を与えた。この後もアレクサンダリアの名を冠する皇帝が現れるが、いずれも愚帝として名を残すこととなる。海外出征、既存の制度改変、軍部改革など、いずれもアレクサンドリア1世の功績を上回るための行動である。
しかし、尽く失敗に終わる。それらの皇帝が無能であった訳では決してない。安寧の世では、寧ろ名君として名を残したであろう。そんな彼らにとっての悲劇はアレクサンダリアの名を冠したこと。
それだけ、アレクサンダリア1世が行動は無謀であり、成し遂げたことが偉大であったといえる。
後の人々は、その唯一無二の功績を称えて彼をこう呼ぶ。
ーー大統帝と
◆
闘技場。そう称するにふさわしい円形の建造物。涼しげな青で統一された客席を埋め尽くさんとするほど大勢の観客が、集まっていた。闘技場の中央には二人の男がいた。いや、男というには余りにも幼い子供たちであった。
良く見えれば、客席を埋め尽くす観客も皆幼い顔立ちであることがわかる。そして、彼らが同じ服装であることも。そんな彼らは、一言も発することなく、闘技場の中央に視線を向けていた。その視線には怒り、侮蔑、嘲笑などが含まれる。
闘技場の中央にいる二人だが、一人は真っ赤な真紅色の髪を靡かせた美少年である。あと五年もすれば、顔立ちに精悍さが生まれ、立派な青年となるであろう。
もう一人の少年は、黒髪である。地に突き伏せているため、顔立ちまではわからないが、その体型は大きかった。主に、横幅が。
「二度とレスティナに手出すな! 分かったか、この豚野郎が!」
赤髪の少年が吐き捨てるようにそう言うと、速やかに退場した。残されたのは黒髪の少年のみである。赤髪の少年の退場とともに、観客席の静寂が破られた。
「ざまあ見ろ!」
「ダッサ! いつもの威勢はどうした!」
「学園の恥! いや、皇国の恥!」
「学園から消えろ!」
地に突き伏せる黒髪の少年に対して次々と罵声を浴びせる。とても貴族の子弟とは思えないほどの言葉遣いで、罵倒していく。今までの鬱憤をはらすかのように。
しかし、その罵倒せれている本人といえば、ただただ混乱していた。
(……どこだ、ここは? 俺はどうなった……なぜ罵られている。わからん……いや、わかる、けどわからん。記憶はあるが、これは?)
自分の記憶は存在する。しかし、同時にもう一人の記憶もまたこの身に宿った。そのことに少年は酷く混乱した。いや、もはや少年と呼べるかどうか、すら不明だ。彼の意識は限りなくもう一人の記憶に寄せられていた。
大統帝・アレクサンダリア1世としての記憶が、意識が豚と呼ばれている少年に宿った。その余りにも膨大な情報量により、彼は気を失うこととなる。
大統歴 1028年 5月
歴史は再び動きだそうとしていた。
ーーーーー
あとがき
皆さん初めまして。そして、お邪魔します。
鴉真似と申します。
名前に鴉が入っていますが、どちらかというと鳩の方が好きです。
さて、拙作『Re:征服者』をお読みいただき、ありがとうございます!
少しでも『面白い』『続きが読みたい』と思っていただけたら、お気に入り登録のほどよろしくお願いします!
PS. 作者は基本、章のプロローグと最終話にしか出没しませんが、たまに重要な話でちょこっと顔を出します。
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