2 / 14
マスカレードの女
第1話─侵入
しおりを挟む
念入りに確認した。
私はイスカー王国の名門貴族フレディ家の一人娘クリス、21歳。
今日は招待状によって招かれてオールドキャニオン22番地の館にいくのよ。
よし! 何も問題はない。
そうして私は招待状に同封してあった金の刺繍入りのマスクを顔にしっかりと固定して、同じくマスクをして館の入り口に立っている門番のところへあるいていった。
「私、今宵仮面舞踏会に招かれたイェーネと申しますわ」
私が丁寧にお辞儀しながら言うと、
「確かにお招きいたしました。
どうぞ、お入りください。」
と丁寧に答えて、門番の男は館の大きな扉を音をたてないようにゆっくりと開けて通してくれた。
やっぱりこの仮面で判別してるみたいね。なんて簡単な任務なのかしら。
門番に怪しまれないようしっかりとお辞儀をして中へと入っていくと、何十何百もの仮面に正体を包んだ人間が一面を古代都市ベータポリスを象徴とする壁画で埋め尽くされたホールに集まっていた。
どの人も華やかなドレスや立派なタキシードを身に纏っていていかにもレディースアンドジェントルマンといった具合だ。
私は任務を遂行するべく全体が見渡せる螺旋階段の中段の遊び場まで行き、これまた仮面を被ったウェイターから一杯のグラスを受け取った。
チェリー、ポートワイン、藁、代わる代わる主張する閉じた印象の香り、ロマネコンティね。
悪くないじゃない。
仮面舞踏会では全ての人が身分や立場を忘れて一夜を楽しむなどと言われているけど、使用人まではさすがに難しいよね。
そもそもクリスがお嬢様だから私がここに来れたんだし。
やっぱりそんなのは上流階級のおじ様たちの綺麗ごっ
世界がゆっくりと回っていく。
いや、私が回っているのか。
どうやら私は階段にヒールの足を取られたらしい。
あぁ、盛大にやらかしちゃったな。
そう諦めかけたその時、私の体はよりたくましい体に抱き留められた。
「よそ見しながら階段を降りるのは危ないですよ、可愛いお嬢さん」
顔を上げると、そこには整った顔立ちの青年がいた。
マスクを付けていてもわかる。
「イケメン…」
「どうもありがとう」
ニッコリと笑顔で返されてようやく事態に気がついた。
こ、声に出てた?
すっかり顔を赤くして私はボソボソと呟いた。
「お、おろしてください」
「おや、これはすまないね」
そう言って彼は軽々と持ち上げていた私を降ろしてくれた。
「どうもありがとうございました」
「どういたしまして。僕はウェイソン。 君は?」
「はじめまして。 私はイェーネと申しますわ。」
私は何とか取り乱した様子を隠し平然を装って、あらかじめ用意していた仮面舞踏会用の偽名を名乗った。
「はじめまして。 仮面舞踏会は初めてかい?」
「どうしてですか?」
「顔をみなくても分かる。 そうとう可愛いね、イェーネ。 こんなに可愛い子初めてみたよ」
「なっ!?」
みるみる顔が赤くなっていくのがわかる。 はぁ、せっかくなおってたのに!
俯いて初めて思い出した。私はワインがたっぷりと入ったグラスを持っていたのだ。
嫌な予感がして、恐る恐るウェイソンの服を見ると…
「ご、ごめんなさい! その、大事な服を汚してしまって」
「大丈夫さ、着替えは持っているから」
そう陽気に答えるウェイソンにさすがの私もなんで持ってるの?とは聞けなかった。
「俺は着替えてくるから、もう転ぶなよ」
ウェイソンは笑いながら口早にそう言うと、階段の上の方へと駆けていった。
このときはまだ、ウェイソンの仮面にも金の刺繍が入っている事に気付いていなかった。
私はイスカー王国の名門貴族フレディ家の一人娘クリス、21歳。
今日は招待状によって招かれてオールドキャニオン22番地の館にいくのよ。
よし! 何も問題はない。
そうして私は招待状に同封してあった金の刺繍入りのマスクを顔にしっかりと固定して、同じくマスクをして館の入り口に立っている門番のところへあるいていった。
「私、今宵仮面舞踏会に招かれたイェーネと申しますわ」
私が丁寧にお辞儀しながら言うと、
「確かにお招きいたしました。
どうぞ、お入りください。」
と丁寧に答えて、門番の男は館の大きな扉を音をたてないようにゆっくりと開けて通してくれた。
やっぱりこの仮面で判別してるみたいね。なんて簡単な任務なのかしら。
門番に怪しまれないようしっかりとお辞儀をして中へと入っていくと、何十何百もの仮面に正体を包んだ人間が一面を古代都市ベータポリスを象徴とする壁画で埋め尽くされたホールに集まっていた。
どの人も華やかなドレスや立派なタキシードを身に纏っていていかにもレディースアンドジェントルマンといった具合だ。
私は任務を遂行するべく全体が見渡せる螺旋階段の中段の遊び場まで行き、これまた仮面を被ったウェイターから一杯のグラスを受け取った。
チェリー、ポートワイン、藁、代わる代わる主張する閉じた印象の香り、ロマネコンティね。
悪くないじゃない。
仮面舞踏会では全ての人が身分や立場を忘れて一夜を楽しむなどと言われているけど、使用人まではさすがに難しいよね。
そもそもクリスがお嬢様だから私がここに来れたんだし。
やっぱりそんなのは上流階級のおじ様たちの綺麗ごっ
世界がゆっくりと回っていく。
いや、私が回っているのか。
どうやら私は階段にヒールの足を取られたらしい。
あぁ、盛大にやらかしちゃったな。
そう諦めかけたその時、私の体はよりたくましい体に抱き留められた。
「よそ見しながら階段を降りるのは危ないですよ、可愛いお嬢さん」
顔を上げると、そこには整った顔立ちの青年がいた。
マスクを付けていてもわかる。
「イケメン…」
「どうもありがとう」
ニッコリと笑顔で返されてようやく事態に気がついた。
こ、声に出てた?
すっかり顔を赤くして私はボソボソと呟いた。
「お、おろしてください」
「おや、これはすまないね」
そう言って彼は軽々と持ち上げていた私を降ろしてくれた。
「どうもありがとうございました」
「どういたしまして。僕はウェイソン。 君は?」
「はじめまして。 私はイェーネと申しますわ。」
私は何とか取り乱した様子を隠し平然を装って、あらかじめ用意していた仮面舞踏会用の偽名を名乗った。
「はじめまして。 仮面舞踏会は初めてかい?」
「どうしてですか?」
「顔をみなくても分かる。 そうとう可愛いね、イェーネ。 こんなに可愛い子初めてみたよ」
「なっ!?」
みるみる顔が赤くなっていくのがわかる。 はぁ、せっかくなおってたのに!
俯いて初めて思い出した。私はワインがたっぷりと入ったグラスを持っていたのだ。
嫌な予感がして、恐る恐るウェイソンの服を見ると…
「ご、ごめんなさい! その、大事な服を汚してしまって」
「大丈夫さ、着替えは持っているから」
そう陽気に答えるウェイソンにさすがの私もなんで持ってるの?とは聞けなかった。
「俺は着替えてくるから、もう転ぶなよ」
ウェイソンは笑いながら口早にそう言うと、階段の上の方へと駆けていった。
このときはまだ、ウェイソンの仮面にも金の刺繍が入っている事に気付いていなかった。
5
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
生きるために逃げだした。幸せになりたい。
白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。
2020/9/19 第一章終了
続きが書け次第また連載再開します。
2021/2/14 第二章開幕
2021/2/28 完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる