エヴァ・モレア〜諜報員のレクイエム〜

五十峯 凛

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マスカレードの女

第3話─会合Ⅱ

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まだ踊るには早い時間帯だ。 

ベリンジャー警部は優雅にお茶を楽しんでいた。

いや、本人も張り切っているのだから、ここはバヌ・ブレディと呼ぶことにしよう。

ブレディが付き人とお茶をしている所に一人の男が近づいてきた。

「やぁ、はじめまして。 僕はピータークリスプと言うんだ。 ピーターと呼んでくれ」

本来なら仮面舞踏会とは見ず知らずの他人とのコミュニケーションを楽しむことも一つの楽しみ方だが、ブレディは付き人との楽しいお茶が邪魔されてよく思っていないようだ。

ほら、その証拠に彼の右手には食べかけのクッキーが粉々になっている。

「君のような人間を厚かましいと言うのだろうな」 

「…」

「バヌ・ブレディだ」

嫌味を言いながらも、名乗ることからも彼がバヌ・ブレディという名を気に入っているのがよくわかる。

「ブレディ君、よろしく」

差し出された左手にブレディも、左手で返した。

ついでに付き人とも握手を交わすピーターをブレディはじろりと睨んだ。

「仮面舞踏会は楽しいかい?」

「楽しかった」

暗にお前がいるから楽しくなくなったと強調するも、ピーターは痛くも痒くもなさそうだ。

「ところで、君の左後ろ、距離50歩分離れた所に私たちの事を見つめている人がいるのに気づいているかい?」

振り向こうとするブレディを抑えて小さな声でピーターは続けた。

「先刻から、私も別の人に監視されていてね。 いや、君も仲間だと思い声をかけたのだよ」

私は気づいていましたよとでも言わんばかりに付き人は誇らしげに胸を張っているが、ブレディ君…君の洞察力の無さには涙を禁じ得えないね。

「ほら、拭き給え」

「何の話だ!」

ブレディはピーターが差し出したハンカチを振り払った。

「いいか、よく聞け俺は誰かに見られようと気にしない。 だが、弟子もとなると話が違うな」

「それによく見ろ! 近づいてきてるぞ!」

ピーターは大胆にも指でさすブレディに呆気にとられた。

しかし、ブレディの言う通り確かに奴は近づいてきていた。

「ケリを付けるぞ」

そう言ってブレディは腕をまくりながら自分からも近づいていく。

仕方なしに二人も後に続いた。

白のタキシードを立派に着こなしたその男はブレディにこう言った。

「最上階のホールへとお二人方をお呼びするよう仰せつかっております。 よろしければ、ご同行ねがえますか?」

丁寧な口調にブレディは勢いを削がれ

「おぅ」

と何とも情けない返事をした。

「いや、ちょっと待てこっちは三人だ」

数も数えられんのかと睨みつけるブレディ。

「いえ、仰せつかっているのは貴方とそちらの方だけですので」

その男はピーターの事を指しながらいった。

「では、行きましょう」

そう言って歩みだす男についていくピーター。

「ちょっ、おい」

「なんだ? 来ないのか?」

ピーターに言われても噛み付くような反論ができない。

「僕はここでお茶でもしてますよ」

そう付き人がいったこともあって、

「悪いな、すぐ終わらせてくる」

二人の後をブレディは追いかけていった。

二人が最上階の一室に到着すると、案内した男は何処かへ行ってしまった。

部屋の中にはすでに7人人物がいた。

全員が押し黙って険しい顔をしていた。

只者ではない雰囲気が全員からにじみ出ている。

ピーターとブレディ空いている席にすわった。

9人の仮面には皆例外なく金の刺繍が施してあった。
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