エヴァ・モレア〜諜報員のレクイエム〜

五十峯 凛

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マスカレードの女

第11話─決闘

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ペドロが突き出したナイフはヤコブの体に突き刺さる直前で、止まっていた。

間一髪だ。

「まったく、仮面舞踏会に武器の類は厳禁のはずですよ?」

背後からの一撃を止められたことでペドロは驚愕している。

しかし、ペドロも完全に余裕というわけではなかった。

ナイフの刃の部分を握り、ギリギリで止めたものの、右手からは勢いよく血が噴き出している。

鼓膜が破れて音が聞こえなかったこともあって、ペドロが紙を取り出すときにナイフを隠し持っていることに気づいていなかったら、さすがのヤコブでも無事では済まなかっただろう。

驚きで体が硬直していたペドロは我に返り、後ろに飛び退った。

ヤコブは口を使ってシャツを裂き、右手にキツく巻き付けて、構えを取る。

二人は3歩ほどの間合いで睨み合う。

先に動いたのはペドロだった。

逆手に持ったナイフを中段に突きつけてくる。

明らかに武道に心得のある動きだ。

ヤコブはギリギリでそれを避けて、伸びきった腕をつかもうとした。

しかし、ペドロはそれを読んでいて、その体勢のまま蹴りを繰り出す。

ヤコブは後ろに跳躍して蹴りを避ける。

ヤコブは腹部に鋭い痛みを感じた。

腹のシャツは一筋の切れ込みが入っていて血が流れている。

ギリギリで避けたつもりだったが、腹の皮一枚切られた様だ。

ヤコブは久々の強敵に思わず笑みがあふれる。

「久々だ。 この感覚ッ クハッ」

奇妙な笑い方をしているのは自分でもよくわかっている。

しかし、5年ぶりだこの感覚は。

自分の領域単語テリトリーではなく相手の領域単語フィールドで戦うなんて!

「何を笑っている。 貴様は今から死ぬのだぞ!」

そう言って、再びヤコブに向かってペドロは加速する。

「あぁ、ありがとう」

ヤコブは涙を流しながら、ペドロの突進に合わせるように拳を腹に叩き込む。

「感動したよ」

ペドロは腹をおさえて崩れ落ちた。
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