勇者パーティーの賢者、女奴隷を買って無人島でスローライフする

黒須

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一章

第54話 奴隷に竜の締め方を教える

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 ヴォグマン領にて。
 ウィスタシアの父アルベルトを助けた翌日――。

 ヴォグマン領を占領、実効支配していたドクバック配下の将校や文官、兵士等が一斉に捕縛された。ドクバック領から派遣されていた者達だ。

 捕縛者は総勢500名を超え、それら全員に奴隷紋を貼り順次、事情聴取を行っていった。

 奴隷紋の催眠効果で嘘や黙秘できない彼らの自白で、如何に残虐非道な行為が行われたのかが白日の下に晒される。

 彼等はヴォグマン領、領民に破滅的な重税を課し、異を唱える者は死刑、奴隷落ち、シベリアン送りと暴虐の限りを尽くしていたのだ。

 その日、先ず初めに占領軍の将校を務めていたヒルラック・ドクバックが斬首刑になった。
 2メートルを越す大男から首が落ち、その頭と骸はドクバック領への宣戦布告に使われる。
 彼は大六天魔卿ピストン・ドクバックの弟だ。

 将校を筆頭に罪人は次々に死刑、シベリアン送り、奴隷落ちと裁きが下っていった。

 今後、事情聴取で名前が出て現在ドクバック領に在住している罪人や、今回も含め捕まえた犯罪者の家族、子供まで全てヴォグマンは捕らえるつもりでいる。

 罪のない女、子供は奴隷紋で事情聴取をした後、解放してやって欲しい。俺はアルベルトにそう提案して、彼は話をのんだ。
 俺は奴隷紋を解除できる。

 この日、並行してヴォグマン領にある100を超える町や村、集落の長が集められた。
 長達を動員したのはゴロウズ。転移魔法で各地域の代表者をヴォグマン城に連れて来た。

 そこでゴロウの食料分配と今後の農業政策が伝えられた。

 その後、ゴロウズ30体は各町や村々に別れる。
 ゴロウズ達は町長や村長等、代表者と協力して、その地域の民衆を集め農地開発を開始した。



「ムサシさーん、ムサシさーん……、ムーサーシーさーーーん!!」

 俺の名前はゴロウズ零式ver.3、型番0634。
 凡庸型‐零式の634体目に製造された個体である。
 ゴロウズには他に特殊任務型‐壱式や戦闘特化型‐参式などがあり、零式以外はカラーバリエーションも様々だ。

 ゴロウズはゴロウの分身。故にゴロウ本体でもある。
 俺達は無限記憶書庫アカシックレコードで全ての情報――、経験や技術、思考思想を共有している。

 遠くで俺をムサシと呼ぶ牛族の若い娘はこの村の村長だ。
 ドクバック配下の騎士に処刑されてしまった前村長の娘で白黒ホルスタインカラーの髪と頭の角と巨乳が特徴的である。


「モォー!ムサシさん聞こえています!?」

「聞こえているよ」

「これから村の皆と朝食なのですが、ムサシさんってご飯は食べるんですか?」

 この子を城に連れていった時、ゴロウズが30体いるのを見て、俺の固有名を伝えたら型番の0634からムサシと呼ぶようになってしまった。

「俺はこの頭の魔石に充填された魔力で動いているから食事はいらないよ。そろそろ魔力が切れそうだな……、新しい顔に変えるか」

 俺は頭に乗っているボーリング玉サイズの赤い魔石を外す。

「きゃっ!ムサシさんの顔、取れちゃった!!」

 使用済み魔石を異次元倉庫にしまって、代わりにゴロウが魔力充填した魔石を取り出して頭に嵌める。

「アンパン〇ンみたいだろう?」

「モォー!なんですそれ!?死んじゃったかと思いましたよ!ビックリするからやめてください!」

「俺は暫くこの村にいる。そのうち慣れるさ。ところで食量は足りているか?」

 俺が提供した食料と各村や町が保有してる食料で次の収穫まで乗り切りたいのだが、それなりに人口が多いからな……。
 それにヴォグマン領の民はこれまでの重税で餓死者も出ているくらいで皆やせ細っている。

「今のところは……ただ体を動かす仕事をするのでお肉も食べたいのですが、森の生き物はここ数年で狩り尽くしてしまって……でも、食料があるだけで有難いですよ!ムサシさんのおかげです!」

 と嬉しそうに微笑む村長。

 穀物や野菜だけでは脂肪が付かないから力が出ないか。
 この子もおっぱいは大きいけど手足は細いし。

 これから鶏を飼う予定だけど卵は食用ではなく繁殖用にしたい。鶏糞を肥料にするから鶏を食べるにしても卵を産まなくなる3、4歳ってとこか……、まだまだ先だ。
 それに鶏にも動物性たんぱく質を食べさせる必要がある。餌に肉が必要だ。まぁこれは昆虫でもいいけど……。

 うーむ、困ったなぁ。


◆◆◆

 南国の島にて。

 海で遊ぶ子供達全員を俺の近くに転移させた。
 何が起こるかわからない。近くにいてもらった方が安全だ。

「「「「「 えええええええ!? 」」」」」

 皆海で遊んでたのにいきなり空に移動したから驚いている。

「そそそそ空を飛んでますぅううう!」
「ボク、急にどうして!?」
「ウィスタシア、どうしてパンツ穿いてないの?」
「フォン……これは……その……」
「ゴロウ、ココノん、ヤドカニ捕まえたの!」
「ニャーも捕まえた!」
「ゴロウ様、これはいったい……!?」

「皆、海面にデカいのが出て来るけど俺と一緒にいれば安全だからな」

 俺がそう言っていると、奴らが次々に海面に顔を出す。
 黒いワニのような見た目で金色の目玉に黒い縦長の瞳孔。30メートルから60メートル級までいる。横幅もデカいから島だと言われても納得できる大きさだ。

「信じられない……。なんて大きさなの……おそろしいわね」
「ゴロウ殿、あの怪物はなんですか……?」
「お姉ちゃん、あれってドラゴンだよね……?」
「ああ、初めて見た。ドラゴンか、おそろしい。こんなにも畏怖の念を抱くとはな」
「大き過ぎますわね……」

 海面に浮上したノースオーシャンドラゴン30体がこちらを睨んでいる。
 そして俺に物凄い殺気を向けてくる。俺のことを脅威だと判断したのだろう。

「何かしてくるな」

 奴等の体内魔力が凝縮していく。
 すると30体のドラゴンが一斉に巨大な口を開いた。

「ドラゴンブレスだ!」

 アイスブレス――、全てを凍てつかせる絶対零度の氷魔法攻撃。

「「「「「「「ギギギャャルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル!!」」」」」」」

 ドラゴンが同時に放った圧倒的破壊力と殺意が込められたアイスブレスが俺達に向かっている!

「第六位階、防御結界!」

 俺達の周りに展開した球体型の防御結界でアイスブレスをやり過ごす。
 この結界は温度すら通さないから結界内は寒くもない。

 アイスブレスに耐えていると。

「早く逃げないと、死んじゃうわよ」
「ニャーこわいよ……早く逃げよ」
「アッチもこわい……でも逃げられるの?」
「ゴロウさん、シャルもこわいよ。大丈夫なの?」
「あたし、夢でも見てるのかな……」
「問題ないだろう。こんな桁外れの恐ろしい攻撃を防ぐとはな。流石ゴロウだ」(パンツ穿いていない)

 俺は皆に言う。

「俺と一緒にいれば何が起きても大丈夫だから安心してくれ。それよりこれはチャンスだ。あれを全部捕まえよう!」

「「「「「 えええええええ!? 」」」」」

「これからあの魚を締めるけどちょっとグロいからな……」

 するとモモが。

「あのぉーゴロウさん、あれって……魚なんですか?」

 ん?そう言えばドラゴンだっけ。

「まぁ魚みたいなもんだろう。締めるところ、見たい子いる?」

 俺にとってはドラゴンもサンマも変わらない。
 ドラゴンというか日本にいるカナヘビってトカゲを捕まえる感覚だ。

「ボク、見たい!」ラウラ
「わたくしも見たいですわ」アストレナ
「私にも見せてくれないか」ウィスタシア

「ウィスタシアは先ずパンツを穿こうな。じゃぁ他の子は海の家で待っていてくれ。直ぐ戻るから」

 アイスブレスが切れたタイミングで自分と三人とドラゴン30体をセブンランド大陸、第一ランド島の平地へ転移させた。
 アイアンアントに食い尽くされた草木の無い石と砂の大地である。

 急に海から陸地に移動したからノースオーシャンドラゴンは驚いているようだ。

「魚を締めるときは先ず頭に打撃を与えて脳震とうさせるんだ。脳天締めっていうんだけど。こんな風にやるんだ」

 俺は30の巨大な岩を宇宙に転移させ重力魔法で操って落下させる。

 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴンッッッ!
 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴンッッッ!
 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴンッッッ!
 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴンッッッ!
 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴンッッッ!

 宇宙から飛来した30個の隕石が次々にドラゴンの頭に直撃していく。
 隕石が落ちる度に地震が起きて大地が揺れる。
 衝撃に地盤が耐え切れずドラゴンの頭の下にクレーターができる。
 頭蓋骨が割れた個体もいるようだがこの段階では全部生きている。

「「「……」」」

 三人は呆然としているな……。

「次は血抜きを行う。これも身を美味しくいただくための大事な工程なんだ」

 俺は再び転移魔法を発動させ近くの海の沖へ移動した。

 大きな船くらあるドラゴン達は虫の息でピクピクしながら白い腹を上に向けて海にプカプカ浮いている。
 俺は探知魔法で心臓と動脈の位置を確認する。次に強力な風魔法で動脈を斬るように切れ込みを入れていった。
 まだ動いている心臓の圧で切り口から噴水のように血が噴き出し海面が真っ赤に染まっていく。

「海水に浸けて血抜きすると塩分の浸透圧で血が良く抜ける」

「「「……」」」

 三人とも呆然としてる……。ちょっとグロかったかな??
 この段階で、出血多量により全てのドラゴンが絶命した。

「最後に転移魔法で魔石だけ取り出して、これで下処理は完成だな」

 空に浮かぶ俺達の周りに大玉転がしの玉くらいある巨大な紺色の魔石が30個現れた。

「ちょっとドラゴン食べてみようか?」

「「「 えっ!? 」」」

 俺は転移魔法で背中の肉を1キロ程抜き取ると、空の上で人数分、包丁で薄くスライスする。次に炎魔法で軽く焼く。最後に塩コショウを振って完成。

「試しに食べてみて。美味しいかな……?」

「「「い、いただきます!」」」

「これは……なかなか美味しいですわね」
「うん、ボク嫌いじゃないよ」
「臭みや癖がなくて食べやすいな」

「うん。普通に美味いな」

 牛や豚、鶏の方が食べ慣れているから、それよりは劣っているように感じるが。

 うちで食べる分はこの1キロで十分だな。
 肉より魔石を入手できたのが大きい。
 これで肆式、巨人ゴロウズを作れそうだ。

 残りはヴォグマン領に送ってやろう。
 肉は異次元倉庫に保管しておけば腐らないから、これだけあれば数カ月分の食料になる。
 あの牛娘の村長も喜ぶだろう。

 俺はヴォグマン領に30体いるゴロウズに1頭ずつドラゴンを送った。







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