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二章
第68話 奴隷が龍に餌付けする
しおりを挟む星の番人とはこの世界唯一無二の存在。前任の白龍皇帝ガイアノスは約10億年前からこの星の頂点に君臨していた魔物の親玉。だから皇帝なのだ。
しかし、アウダムと喧嘩して殺されてしまった。
それから数年後、ガイアベルテが生まれる。どうやって生まれたのかはわからないが、ガイアノスと比べ、1万年しか生きていないガイアベルテは星の番人としてはまだ子供。それに、コミュ障で引きこもりだから生まれてから今まで全くこの世界の生物と関わっていない。ガチの陰キャだ。
「ゴロウ……大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。俺の方が強いから」
無限記憶書庫を開放し全魔法をコンプリートしてからまだ誰とも本気で戦っていない。一度やってみたかったんだ。それに俺の奴隷を殺すという言葉は聞き捨てならん。
【さぁやろうぜ!ガイアベルテ!】
【ゴロウ……ひどい……うそ、つき……バカ!】
【な、何故そうなる!?】
【まえ、いった……ともだち……って】
え?そんなこと言ったけ?
俺はこいつとの過去のやり取りを思い出す。
◆◆
「お前の魔石でゴロウズを作ったら凄そうだな」
いつかガイアベルテから魔石を取り出して最強のゴロウズ、ゴロウズ百式を作りたいな……。
【チン……ませき……すごい?】
「ああ、俺はこの世界に友達が一人もいないから暫くは仲良くしてやるけど……(そのうち殺して魔石を貰うから)」
【チン、も……ひとり】
こいつが魔物でも今の俺にとって貴重な話し相手だ。
言葉を理解し話す魔物は珍しいが存在する。竜種やデーモン種は知性が高く話し掛けてくる奴もいる。所詮魔物だから普通に狩っているが……。
しかし、ここまではっきり喋る魔物は今までにいなかった。
竜種、龍種は第二の月であるガイアストローから派生した系統で最強の魔物。
それにガイアベルテは星の番人、白龍人と「人」が付く。人に近い魔物なのかもな。
「これから、アストロイカにたまに来るから、そん時はよろしくな」
【うん……!】
◆◆
こんな感じの出会いがあって、それからはアストロイカに行ってもガイアベルテが話し掛けてくることはなかったけど、遠くから俺を見ていたり……。あ、たまに挨拶はされたな。うーん、でもそれくらいだ。
俺は只のでかい魔物としか見ていなかった。因みに「彼女」と表現するのはガイアベルテが女の声だからだ。
「とにかく!この子は俺の大切な子供だから手出しするなら戦うぞ!」
【チン…………、かえる】
「あ、あのっ!良かったら一緒に話そうよ!いいよね、ゴロウ?」
肩を落として帰ろうとする白龍にラウラが声を掛けた。
「ラウラに手を出さないなら俺は構わないが」
すると巨大な白龍のいかつい顔がパァーと明るくなった……ッ!!
◇
俺、ラウラ、ゴロウズ2体を囲うようにガイアベルテがとぐろを巻く。
「ボクはラウラ・デスフォルク。君はガイアベルテでいいの?」
【うん!】
「そっか♪ねぇゴロウ、昨日の夜、デザートで食べた果物をあげてもいい?あれボクの好物なんだ」
「種無し巨峰?別にいいけど、古代龍種は魔素を食べているから口に合わないかもしれないぞ?」
それに超巨大な口だ。家サイズの果物じゃないと口に入れても味なんてわからないだろう。
「凄く美味しいからあげてみたい!ガイアベルテ、果物食べる?美味しいよ!」
【チン……たべる】
食べるんかい……!
まぁ本人が食べるって言うならいいか……。
俺は異次元倉庫から大粒の巨峰を出てラウラに渡す。
彼女はそれを一粒もいで……自分の口に入れた。
え……?あげるんじゃないの?どういうこと?
「あ……、ご、ごめん。これ凄く好きだからつい一個食べちゃった!ほら、食べて」
そう言ってガイアベルテのデカい口に一粒放り込む。
ガイアベルテはそれをムニャムニャと咀嚼している。
ラウラは動物好きでゴロウズ牧場に行った時も率先して家畜に餌をあげていたんだよな。
猫とか犬を飼ったら喜ぶかも。
「どう?美味しい?」
【も、もっと……もっと……たべたい】
「いいよー。ほら♪」
もう一粒放り込む。するとガイアベルテの体がどんどん縮んでいく……!
で、人の形になった。
身長は160センチくらいだろいうか。白い肌で横腹や腕、膝から下は透明な白いウロコで覆われている。ショートヘアで青白い髪が頭から馬の|鬣〈たてがみ〉の様に尻まで生えて、尻の先には龍の尻尾が付いている。頭の上には白い珊瑚の様な角が二本。
服は着ていないから形の良い胸が露出している。
人に変身できるんかーい!?
「おいしい……チン……もっと……たべる」
黒竜族で勇者パーティーメンバー、ライデンもドクバックのギャングウルフ同様、黒竜に変身できた。……その逆だな。
「ひ、人になれるんだ……!ふふふっ、おもしろいね♪」
ラウラは変身に驚いたあと、苦笑した。
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