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20 篠田さんと酒を飲む、クリスマスプレゼント

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 クリスマスも間近の今日、農地中間管理機構の篠田さんに誘われて地元の農業青年会に参加してきた。今回は交流会で情報交換や人脈作りがメインになる。

 俺が養鶏を始める農地から車で30分くらいの場所に道の駅があり、そこの担当さんが来ていたので篠田さんに紹介してもらった。担当さんと色々話しをして道の駅に卵を置けることになった。地元特産コーナーの一角に並べ良いそうだ。
 自分で配達して、道の駅のバーコードを貼りながら自分で陳列する。売れ残った卵は持って帰り処分する。売り上げの70%を還元してくれる。という仕組みらしい。
 卵の販売が始まるのは来年の11月を予定しているから、販売が始まったらまた連絡して欲しいと名刺を頂いた。

 それと、篠田さんから同じ町で豆腐工場を経営している若い社長、吹田ふきたさんを紹介してもらった。吹田さんは二代目で歳は31歳。会社は家族経営で地元のスーパーや八百屋に豆腐を卸しているらしい。

 豆腐を作る際に〈おから〉という豆乳の搾りかすが出るのだが、養鶏をやるならもらってくれないかという話だった。昔は地元の養鶏農家さんが引き取ってくれていたが、その養鶏農家さん数年前に廃業して、今は有料でおからを捨てているとのこと。処分にお金が掛かるから無料で俺が引き取ってくれるなら助かるわけだ。
 おからは鶏の餌になるからもちろん快諾した。こちらも無料の餌が手に入るのは有難い。

 卵の販売が始まったら、吹田さんが豆腐を卸しているスーパーなんかに話をしてくれるそうで、金額が合えば俺も卸すことができると思うと言っていた。





 青年会の打ち上げは居酒屋で俺は篠田さんの隣に座る。
 彼女と仕事やプライベートなど色々な話しをした。23歳の俺がバツイチだと聞いて驚いていた。マーイと付き合っていると思っていたらしく彼女は居候であることを説明した。

 そして酒が進むに連れて篠田さんは酔っぱらっていく。
 因みに俺は車で来ていたから飲んでいない。これから1時間掛けて爺ちゃんの家に帰らないといからな。

 篠田さんはスーツ姿、スリムで高身長、仕事ができそうなキリっとした顔で25歳独身、彼氏なしである。
 普段はツンツンしていて毒を吐く彼女が酒に酔ってグダグダになっている。

「桜沢しゃ~ん、今何時れすか?」

「もうすぐ10時なのでそろそろお開きだと思います」

「もうそんな時間れすかぁ?桜沢しゃんはこの後どうするんれすか?」

「普通に帰りますけど?」

「えぇ~、つまらな~い」

 いや、俺に何を期待しているんだ。
 うーん、でも一人で帰すのは危なそうだな……。俺より二個、歳上でしっかりしてそうだけど女性だし。

「俺、車で来てて飲んでないから、家まで送りましょうか?」

「え?いいんですか?」

「ついでなので全然大丈夫ですよ」

「……お願いします」

 家まで送ることになった。篠田さんは駅二つ目のマンションで一人暮らしをしている。
 帰りの車でも世間話で盛り上がった。彼女は意外にも四国出身らしい。親戚の家と大学が茨城でそのままこっちで就職したのだとか。

 マンションの前に車を停めて。

「明日休みならうちに泊まっていきます?飲み相手が欲しいです」

「いや、俺一応男ですよ?」

「桜沢さん、無害そうだから……あ、えっと、真面目だから大丈夫ですよね?」

 何故言い直す?
 確かに離婚してからの俺は牙を抜かれた狼。毎日マーイと風呂に入ってるけど何もしてないしな。
 たぶん泊まっても篠田さんが迫って来ない限り何もしないと思う。ってあれ?迫ってくる積りなのか?この人、酒癖悪いしな……。

 まぁでもやめておこう。明日は12月24日で綾とクリスマスプレゼントを買いに行く。それに……マーイが俺の帰りを待っているかもしれない。

「まぁ何もしないとは思いますが……明日予定あるので今日は帰りますよ。今度また飲みに行きましょう」

 笑顔でそう言うと篠田さんは少し機嫌を悪くした。

「つまらない人ですね。では今度絶対に誘ってくださいねっ」

 そう言って車を降りる。
 俺は窓を開けて。

「篠田さん、今日はありがとうございました。おやすみなさい」

「安全運転で帰ってくださいね。ふふふ」

 こうして俺達は別れた。
 家に帰ると12時だと言うのにマーイはテレビを見て起きていた。俺がいないと眠れないと言っていた。





 翌日、綾と二人でクリスマスプレゼントを買いに来た。
 綾は顔がアンパンのヒーローが好きで、人形やら玩具を爺ちゃんから買ってもらってたくさん持っている。その中でも骨の人が好きで、今日は骨の人の縫いぐるみを欲しがった。

「こえ」

「これいっぱい持ってるし、オレンジとか、青の女の子の方がいいんじゃない?」

「こえ!こえ、ほしいの」

「そっか、そっか、じゃぁこれにしよう」

 お会計を済ませ、綾に気付かれないようにプレゼント用にラッピングしてもらった。
 車に向かう途中、隣をよちよち歩きする綾が。

「パパ、ぬいぐるみはぁ?」

「綾がいい子にしてたら、明日の朝、サンタさんが届けてくれるって」

「こえ、こえなぁにぃ?」

 綾は俺が持ってる紙袋を指差した。中には骨の人の縫いぐるみが入ってる。

「これはパパのだよ」

「ふーん、……サンタさん、くゆのぉ?」

「うん。サンタさんくるよ。綾がいい子にしてたらプレゼント持って来てくれるよ。……いい子にできるかな?」

「うん」

 どうやら信じたようだ。今はこれで騙せるが来年からはもっと巧妙に隠さないとサンタさんを信じる純粋な心を失ってしまう。





 その夜は家でささやかなクリスマスパーティーをやった。食事の最後に婆ちゃんとマーイが作ったショートケーキを食べた。売り物かっていうくらい完成度が高くて味も最高に美味かった。

 夜、綾が寝た後、俺はマーイにプレゼントを渡す。この前、仕事帰りに一人で買いに行ったのだ。

「気に入るかわからないけど……、開けてみて」

「これ、なぁーに?」

「マーイにあげる」

 マーイは包装を破いて中身の小さな箱を開けた。
 箱の中にはネックレスが入っていた。桜の花びらようなハート型のトップが付いた細いネックレス。

「かわいいね!マーイつけるの?」

「うん、良かったらでいいんだけど……」

「マーイつける、嬉しい!えへへへへ」

 それから俺はマーイの首にネックレスをつけてあげた。彼女は笑って喜んでくれた。


 翌朝、起きると頭の上にプレゼントが置いてあって綾は大喜びした。

「パパ、サンタさん、きたお!」

「うん。来たね。サンタさんすごいね。綾がいい子にしてたから持って来てくれたんだね」

「サンタさん、しゅっごいねぇ~」

 めっちゃ可愛いな。綾は何歳までサンタさんを信じるのだろうか。












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