桜舞養鶏のマジカルエッグ~愛する妻を寝取られ仕事も失った男が魔女っ娘と田舎で養鶏農家を始める物語~

黒須

文字の大きさ
25 / 33

25 テレビに出ました

しおりを挟む



 俺はテレビを見ながら呆然とする。

「次の動画は本日、神奈川県横浜市のテーマパークで撮影されたものです」

 アナウンサーがそう言って動画が再生される。俺達がいた場所から少し離れたところで撮影されたものだ。マーイの顔にはモザイクがかかっている。

『うおおおお!』
『うそ!』
『ちょっ、あれ、見て!』
『人が飛んでる!』

 動画にはほうきに跨り空に浮いたマーイとそれを見上げ驚く人々が映っている。マーイを指差す人もいる。

『ええええ!?な、なんだよ。あれ!?』
『信じられない、あり得ないでしょ……』
『イベントかな?』
『あの人ずっと下見て、何か探してのかな?』
『外国人だよね?凄く綺麗な子……』

 ここでマーイの声が入った。

『リョウ! 綾いた!あそこ!』

 そう言って空に浮いたマーイは地上を指差す。

『誰か探してたのか?』
『リョウ? アヤ?』
『あ、降りてったよ』
『わー、何だったんだろうね』
『ママ、魔女だよ』
『うん、魔女みたいだったね。イベントショーかな?』

 ここでアナウンサーの声が入る。

「次は別の角度から撮影された動画です」

 建物の三階か四階の窓から撮影されたと思われる動画が映し出された。

『おいおいおいおいおいおい!』
『すっげー、いやいやいや、やー、えええ?』
『うおおおおおおお!すっげー!』
『動画撮ってる?』
『撮ってる撮ってる。なんだろうね、あれ?』
『何かで吊るしてる感じじゃないですね』
『ワイヤーとかないですよね?』
『あの子、落ちないのかな……、恐い……』
『滅茶苦茶美人だな』
『ちょっと、あなた』
『や、だってほら、女優とかより全然綺麗だろ』
『うーん……海外の芸能人?』

 またアナウンサーの声が入る。

「当局がテーマパークを取材をしたところ、催しやショーではないとのことでした。
 更に現場に居合わせた人に話を聞きくことができました」

 テレビ画面は家族連れを映す。お父さんが小さな子供を抱っこし隣にお母さんが立っている。家族の顔は写していない。

「いやー、ほんとに驚きました。皆が騒いで空を見たら箒《ほうき》に跨った女の子が浮いてて」
 と父親が語る。

「女性は何をされてたんですかね?」

「3人家族で来てたみたいで、迷子になった娘さんを探していたようですよ」
 と母親が答える。

「魔女さん、かっこよかった」
 と子供。

 画面はアナウンサーへ戻る。

「テーマパーク側は事件性はないと判断し警察等に被害届は出さないと取材で答えておりました。では次のニュースです」



 俺はスマホでYouTubeを開く。するとマーイの動画がたくさん見つかった。Twitterでも拡散されている。
 こっちは顔にモザイクが入っておらず、マーイが可愛いと絶賛されていた。

 俺が「撮らないで」と言っている動画もあった。【お父さん必死で草】とか【奥さんください】とか心無いコメントもあるが、【晒すのやめようぜ】と言ってくれてる人もいる。

 俺はニット帽を深くかぶりマスクをしていたから顔バレしていないが、マーイはもろに顔を出している。

 警察が動けば駐車場の防犯カメラに俺の車のナンバープレートが写っているから簡単に住所を特定されてしまうが、テーマパークが被害届けを出さないなら、警察が動くことはない。

 最悪のケースはマーイが警察に捕まることと彼女の不思議な力が世間に知られることだ。
 彼女は無国籍で在留資格を持っていない。捕まった場合どのような罪になるのかはわからないが、マーイを傷付けることにはなるだろう。

 爺ちゃん、婆ちゃん以外でマーイを知っているのは、遠藤さん、早乙女さん、篠田さん、伊達養鶏園の伊達社長、優香、長谷川の6人。念の為、口止めしとくか……。
 優香は法的に俺と関われない。それに奴の性格を考えると下手に刺激する方が逆効果だ。運に任せるしかない。

 そんなことを考えてると篠田さんからLINEが来た。

【桜沢さん、私を騙しましたね?】

【なんの話ですか!?】

【バツイチだけど、子供はいないって言ってたじゃないですか?】

 もう動画見たのか……。篠田さんに綾を引き取ったことは話していない。

【いや、嘘はついてませんよ。知り合いの子供を養子で引き取ったんです】

【本当ですか?】

【本当ですよ。またお酒飲んでるんですか?】

 篠田さんは農地を探すときにお世話になった人で、家購入では遠藤さんを紹介してくれたり、道の駅で卵を販売できるよう、観光協会を紹介してくれた。

 去年の12月、地元の青年会(農業や産業に携わる若者の集)に参加しようと誘ってくれて一緒に行ってお酒を飲んだりもした。

【飲んでますよ?悪いですか?】

【いや、悪くはないですけど、程々にしてくださいね。それとマーイのことは内密にお願いします】

【それは桜沢さん次第ですね】

【今度一杯奢ります】

【なら秘密にしときます】

 篠田さんは酒癖が悪い。根は優しいから、あのツンツンした性格と酒癖を直せばモテそうだけど。

 早乙女さんには今度さり気なく話すとして、伊達社長と遠藤さんは明日電話しよう。
 遠藤さんからは倉庫や農具を借りていて、あと2年はこの状態が続くから、たまに連絡を取ることがある。
 伊達社長には餌屋さんやひよこ屋さん、設備屋さんを紹介してもらった。そして養鶏でわからないことがあったら電話しろと言われているから、これからも付き合いは続く。


 あとはテレビ局が凸してこないとを願うばかりだ。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...