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1話 気付くと草w 最初はまさかの草転生!

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何だろここ、頭がぼんやりする。
お風呂の中でのんびりするように身体が温かくふわふわして、暗いのか明るいのか瞼を開けてるのかも分からない不思議な場所。
意識がぼんやりして深く思考することができない、そんな不思議な場所で更に不思議な羅列を見た。
 不思議な文字がズラーっと並ぶ。
見たことのない文字なのに名前や数など、何て書いてあるのかなぜか読める不思議なそれ。
上から見ていき下に行くと更にズラズラとどこまでも載っている一覧。終わりがあるのかも分からない。
名前の横の数字は、なぜか下にいくほどどんどん小さくなっていく。
なんなんだろう?
よく分からなくてもっと考えたいのに、思考がふわふわして覚束ない。
深く考えることもなくその中の一つを選ぶと画面が切り替わる。
左側に名前やステータス、右側に姿が映る。必要ポイントは50p、そう書いてある。
よく分からないままぼんやりとそれを選択する。しっかりと選んだわけじゃない。ただ何となく。

そのまま意識が薄れていって……









「嘘だろ俺!! なぜこれを選んだ!!!」


気付くとポカポカ暖かくて目を開くも周囲がよく見えない。
何だか深い眠りから目覚めたような…段々と意識がハッキリしていき今までとの違いを自覚して慌てる。
いやおかしいだろこれ、なんで見えないんだ!?
別に全く見えないわけじゃない。けれど目を開けば当たり前に見えていた景色が何もない。
なぜかこっちは明るくてこっちは暗いとかしか分からないようになっている。

何で何で!? 目を負傷した!?

目を触ろうとして動かないことに気付いた。慌てて手足をバタつかせるがどれも動かない。

えっ、俺寝たきりになっちゃったの!?

あたふたと混乱したまま暴れていて、ふと思い出した。不思議な場所のこと。
そこで選んだ何かを。そしてあれも思い出した。異世界転移や転生。
そしてそういった話しによくある…
「ステータス」
声を出したつもりなのに声が出なくて、でも目の前にステータスが表示された。

あのときと同じく見たことのない文字なのになぜか分かるそれ。
左側に名前やステータス、右側に姿が映る。
その姿が草だった。
草w


「いや草w …ちゃうねん! なんやこれもっとあったやろ!!」


ほんとになぜこれを選んだ俺! 今の俺の姿は地面からひょっこり顔を出した新芽。まだ小さい3cmほどの草だった。
これもう終わった。
数ある異世界ものを読んできたが草転生とか終わった。
だってどの主人公も草転生したら苦労していたもん! だって草って動けないんだもん!!
しかも俺は新芽、誰が転生したいんじゃ!!
草だから目がなくて周囲の明るさしか分からず、口もないから声が出なかったわけだ。動けないのも手足がない、むしろ地面に進出してるから。

おい、そんな転生誰がしたいんじゃ!!

ふざけんなよ! あんな意識朦朧な状態で選ばせるとかクソか!! 転生なんだからもっとちゃんと選ばせろ!!
ふざけんなふざけんなふざけんな!!

わめき散らすこともできず、頭の中でボロクソ騒いで疲れて寝た。









いや、草w

よくあの状況で寝れたな俺。いや草転生してから意識保ってられる時間が短いというか何というか…
草転生発覚から3日経った。
今の俺の姿は1mほどに成長。いや早くね?
茎が真っ直ぐ伸びて天辺で葉が3枚広がってそれぞれに筒みたいのがついてる。
この筒が下に器状になってて中に液体が入ってて、はい。どう見ても食虫植物です。ありがとうございます。
ってか虫なんて食いたくねーんですけど。俺前世人間ぞ。多分。
いや~前世っていっても薄ぼんやりとしてて男女どっちだったのか人種とかも分かんないんだけど。
ラノベ知識とかあるしオタクだったのは確かだろう。ってかこういう知識は出てくるのに親兄弟とかさっぱり。
酷くない?
むしろ家族を思って辛くならないように消されたのか?

…まぁ虫食う人間もいるし前世で俺も食ってたかもしんねーけど。いやでも虫食いたくないんだよなぁ~
言ってるそばから虫食ってるけども。だって勝手に器の消化液の中入ってくんだもん。不可抗力不可抗力。
味はしない。だって俺草ですしw 味覚もないとか草転生終わってる。


【名前】未登録 【転生ポイント】412p
【種族】食虫植物c群 
【能力値】Lv6 HP18/22 MP3/7
【祝福】ポイント転生
【スキル】光合成 消化液生成


これが俺のステータスなわけだけど、これさ、攻撃力とか細かいパラメーター教えてくれないんだよ。
俺って強いのか弱いのかさっぱりなんだけど。植物だし弱いんだろうけどさぁ~HPMPもクソ低いし。
これ何もしなくてもHP変動するから怖いんだよ。
最初新芽だったとき5しかなくてそのくせすぐ減って増えてするし。見てるだけでハラハラする。
多分生きてるだけで時間でHP減る。んで光合成とか水分吸収すると回復する。
今虫食って全快したけど、はいもう1減った。
これ油断してるとあっという間に死ぬよ。めちゃ怖なんだけど(汗)

【祝福】ってとこにポイント転生ってあるから、多分俺が今回転生できたのはこれのお陰だろう。
次また死んでもあの不思議空間でポイント使って転生できるんだろうけど絶対とはいえないし。
試す度胸はねーです。はい。
そういえば目が明るさしか見えないのに何で虫食ったか分かるかというと、ポイントが入ってくるからです。
『キルポイント獲得1』って無機質な声が聞こえるんだよ。これ怖いよマジで。
だって誰も(多分)いないのに声聞こえるんだよ。男なのか女なのかも分からん機械みたいな合成音声っぽいの。
知らない言語の、でも文字と一緒でなぜか意味が分かる。
怖い。頭変になりそう……いや、もう変なのかも。
だってこんな所に一人で動けなくて光しか感じなくて手足動かないからじっとしてるしかできなくて声も出ないし音も聞こえない…って振動で何か近くにいるとかは分かるけど痛みも感じないし振動だけで触られてれば分かるけど温度感じないし誰かと触れ合う温もりも感じなくてずっと一人でずっと寂しくてでも話すことができないから会話することもできなくてずっと一人でずっと…ずっと……









あれから何日経ったのかな?
暇なんだよ植物転生。することないし早く別の種族になりたい(切実に)
1日経つごとに『生存ポイント獲得5』って無機質な声が聞こえるんだけど。生きるだけでポイント獲得とか優しいよな。
でもすぐにそのポイント使えないって酷くない? 多分死ななきゃ使えないんだろう。でも死ぬこともできない。
手足ないから自決できないし、勝手に光合成しちゃうし虫入ってくるし水吸収しちゃうし早く転生したい。
何が楽しくて植物転生なんてあるんだよ、植物に転生したって何の価値もない。
見てる方だって少しも楽しくないだろこんな何の代わり映えもしない人生、植物生とか響きがもうふざけてるw


ブチブチブチ…

「ん?」

変な音と変な感覚がして目が覚めた。ステータスを見るとHPがすごい勢いで減ってる。

「は? は? 何これ」

訳も分からないまま俺の食虫植物生活は幕を閉じた。









「何に転生しますか?」


いつもの無機質な声が聞こえ目覚めた。
暗いのか明るいのか瞼を開けてるのかも分からない不思議な場所。
そこに今俺はいる。


「やったーー!! ようやく転生! 次はまともな生物に生まれ変わるぞ!!」


自分の存在すら覚束ない空間ながら嬉しさに飛び回る。いや、実際体があるのかも分かんないけど。
見えないんだよここだと自分の身体が。ブチブチ聞こえたし体は草食動物にでも食われて魂だけなのかも知れない。死んだわけだし。
暫く騒いで落ち着き一覧を見る。
上の方にはドラゴンだったり鎧着た巨人だったりなんか強そうなのがズラズラ並ぶ。
ゲームだとボスとして出てきそうな大物ばっかだな。
ポイントは0の桁が多過ぎて数えたくもない。もちろんそれらは選べなくて名前も黒表示。
そこからようやく選べる白表示に変わるまで大分時間がかかった。
俺が植物転生して獲得したポイントは815ある。
そのポイントで転生できる生物は全体の2割ほどしかいない。それでも膨大な量だが。
ここにはこの世界の全ての生物が載っているのだろうか?
そんなことを思うほど沢山の生物が書かれていた。
4足の狼のような獣や派手な鳥、2足歩行で人形に近いのはリザードマンのような生物だけみたいだ。
人間にはなれないのかと人を探すと検索が開いたので押す。何か知らんが思った通りに操作できるんだよね、これ便利。
そこに表示されたのは巨人っぽいのやエルフや獣人ぽいの、妖精みたいなちっこいのもいるがどれも高い。
一番安い人種族で2000pだ。厳しい…パラメータークソなのにな。
俺が買える一番高い奴の半分くらいしかないのに。
ん? ってかここだとパラメーター見えるのか。見えるって言っても攻撃力星1つとか曖昧な感じで細かい数値までは分からんけど。
最弱が星1で最高が星5だから一番上にいたのはみんな5ばっかで、今いる安いのは星1、2つばかりだ。
なんで転生すると見えなくなるんだ? よく分からんが。考えたところで答えもないしまた無心で見始めた。
そうして色々見ているとさっきまでの俺を見付けた。


「この食虫植物ポイント安くなってる」


50pの間に挟まれた前回の食虫植物だが、必要ポイントが5になってる。
これはポイント順に並んでるからつまり

「一度転生すると次からは安く転生できるってことか」

これはいいことに気付いた。
頑張ってポイントを貯めて強い種族になりポイントを稼いで…そうやっていけばやがて最強になることも可能!!
…って


「いや、最強になってどうすんだ。別に俺ツエーーってしたいわけでもないし。ぶっちゃけ俺は何になりたい??」


これだけ候補があると何になりたいのか自分でも分からなくなってきた。
別に人間になりたかったわけでもない。前世人間だったからむしろ他の生物になった方が楽しそうだし…
考えていると自由に歩けるようになりたかったことを思い出した。
植物のときはその場から一切動けなかった。だから自由に駆け回りたい。


「うん。ならこれだな!」


俺は鷹のようなそれでいて鮮やかなオレンジの鳥を選んだ。
鳥獣t群橙色系 300pの鮮やかな鳥を。
その瞬間意識が薄れていく。
鳥になって自由に飛び回るんだ! そんなことを意識を失うまで考えていた。
俺は忘れていたんだ。世の中弱肉強食だという当たり前なことを。









鳥に転生してすぐ卵から孵って親からご飯をもらう。
自由に羽ばたくことを夢みてきっしょい虫も無心で食べた。
そして俺が生まれて3日目。兄弟達と丸まって寝ていると突然、温もりの一つが消えた。
寒くなって目を開けるとそこにいたのは大蛇。
一つしかない木のうろにあるこの巣の入り口から顔を覗かせている緑の大蛇。ヤバい。
そいつの細い体にボコりと膨らんだものが喉元から下へ下へとゆっくり下りていく。そこに多分俺の兄弟がいるんだろう。
蛇が舌をチロチロ出す。
まだ兄弟は俺以外に1匹いる。俺が蛇を見詰めたままゆっくり後退ると、1匹になってようやく異変に気付いたのろまな兄弟が「ピーピー」騒ぎ出す。
ビュッと目にも止まらぬ速さでそいつを蛇が食った。
ヤバいあの速度、まだ生まれて3日目の雛がどうこうできる気がしない。

蛇と目と目が合う。

くる!! 
バッと横に避けるがあっさり丸呑みにされた。
しかし本当に大変なのはここからだった。狭い通路に押し込められ上手く動けないままじわりじわりと胃へ運ばれる。
圧迫される痛みと息ができない苦しさに驚く。食虫植物のときは痛みなんて感じなかったから油断してた。
胃に入ったのかぬるつく液体に触れるとジュウ~っという音と激しい痛みを感じて悲鳴を上げ暴れる。
このときの俺は知らなかったが、消化液を作れる俺は耐性をもっているせいで普通より消化されるまで時間がかかった。
しかし、幸いなのかその前に窒息で死んだが。




またあの不思議な空間で思った。
痛覚のある生物辛過ぎ…と。なので俺は沢山ある候補の中から無機物を選んだ。
これなら痛覚ないやろと。そんな単純な理由で。

250pを使って埴輪になった。
人物埴輪s群250pという、なぜか埴輪はにわに。

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