泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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養育

帰宅

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新しい的がすぐに用意されたが、授業の時間はそんなに残っていなかったので、私は指導をするというよりも、簡単なアドバイスをする事にした。

「魔力の練り過ぎよ。もっと軽く撃ってみて」
「あなたの場合は直線に飛ばすのは難しそうね。山なりに飛ばすイメージをしてみて」
「撃つのが早いわ。少し溜めてから撃ってみて」

魔力の操作が雑な子が多いから基礎からやり直した方が良いと思うけど、今は現状で威力と精度を上げる事にした。

皆私の言う事をよく聞いてくれ、的当てが上達していった。

「よし、今日はそこまで」

クラウスの合図で授業は終了。
私達は教室に戻る。

「ハルさんありがとう。お陰で苦手だった的当てが出来る様になったよ!」
「俺も!貫通は出来ないけど凹ませる事が出来たよ!」

皆に喜ばれた。

「お前……実力を隠していたのかよ?」

さっきの少年だ。彼だけは私のアドバイスを受けようとはしなかった。

「的当てのルールが分からなかっただけよ。最初はみんなの真似をしただけだったから」
「ちっ……今に俺だって……」

そう言い残して教室から出て行ってしまった。

なんだか悪い事をしてしまったかしら。

彼が教室から出て行ったのは拗ねて出て行った訳ではない。これで今日の授業は終わりらしい。

初等教育なんて根を詰めてやるべきではないからこれくらいのボリュームでいいのだろう。

ただ、帰る生徒は半分くらいで、もう半分は教室に残って勉強をしている。

残っているのは授業で理解が追いついていなかった生徒達。どうやら座学の復習をしている様だ。

さっきの授業でクラウスが難しい言い回しをしていた所が何箇所かあったのだけど、多分そこで引っ掛かっているのだろう。

「私の独学で良ければ教えようか?」

近くの席のセシリアに声を掛ける。

「いいの……?」
「ええ。あまり時間は取れないけど、それでも良いなら。みんなもどう?」

他の生徒に聞いてみたらそれぞれ集まって来た。

「それではやりましょう。どこが分からないの?」
「ええと……」

私が予想していた所ばかり質問された。
やっぱりこの子達には難しいのね。分かりやすい言葉に言い換えて説明していくと簡単に理解してくれた。

賢い子ばかりだわ。

「ごめんなさい、そろそろ行かないと」
「うん、教えてくれてありがとう!」
「すごく分かりやすかったよ」

皆と挨拶を交わして教室を後にする。

幼児学校の方へ行くと、既に馬車が止まって待っていた。

「ごめんなさい、待った?」
『いえ、少しの間だけですよ』

カナエが答えてくれる。

「おかーさんおかえりー!」
「ただいま芽依」

馬車に乗り込むと芽依が私に抱き付いてきた。優しく頭を撫でてやる。

「学校どうだった?」
「うん!すっごくたのしーよ!」
「そう、良かったわ」
「えっとね!……」

馬車が走り出す。家に着くまでの間芽依は興奮した様子で今日あった事を話してくれる。私はそれを聞いて微笑ましく思った。

クラスの子達も純真な子ばかりなのだろう。芽依の明るさも手伝って、すぐに打ち解けていったのだと分かった。

屋敷に着いて、従者とギョクリュウにお礼を言ってから中に入る。

お風呂を頂いて違うドレスに着替える。
夕食は私達家族だけで、芽依にはジョゼットのマナー指導が入りながらだったけど楽しく済ませる事ができた。

夜、カナエとジョゼットから芽依について報告をしてもらう。

二人とも、芽依の行動や周りとの接し方について特に問題はないと言っている。

「メイ様は本当に今までこういった暮らしをして来られなかったのですか?一度言った事はすぐに理解して、作法を守りながら楽しくしておられました。普通の子はマナーを意識するあまり緊張するものです」
「それは芽依の個性ね。あの子は何をするのも楽しいみたいだから」

ジョゼットはいつも無表情で、付かず離れずの距離にいるけど、本当に良く見てくれていた。

「今日はありがとう。明日もよろしくお願いします」

ジョゼットにお礼を言って、今日は別れた。
寝室に戻ると芽依ははしゃぎ過ぎたのか、もう眠っていた。

明日ももっと楽しい事があるでしょう。
健やかに育つ我が娘を優しく撫でながら私も眠りについた。
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