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養育
卒業
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「あーもう、悔しい~」
「メイ様、淑女が脚をその様にバタバタと……」
「ははは……本当に悔しそうだね」
パーティの帰り道、馬車の中は賑やかだった。
「だって、ロイドおじさんってば『私の癖を知ってたお陰で勝てた』なんて言うんだよ?師匠ならそこも教えてくれないとだよ?」
決勝戦、芽依はロイドを追い詰めていた。互いに消耗した中で繰り出したのは一番得意な技。
しかしロイドは芽依のその技に弱点があるのを知っていた。技に入るほんの僅かな動作でタイミングとどこを狙っているかを見抜き、見事なカウンターで芽依を負かした。
「それが実践剣術の恐ろしい所だぞ」
御者台からロイドの声が聞こえる。
「何が実践よ。ただのズルじゃない!」
「芽依、試合だからそう言えるけど、これが本当の命のやり取りだったら文句は言えないわよね?」
「う……そうだけど」
「ロイドに剣術指南をお願いしたのはより実践的な戦闘技術を身に付けたいからだったのよね?」
芽依はあの襲撃事件以降、更に武術の鍛錬にのめり込んでいった。一年目の大会の後、芽依は『実際に戦える様になりたい』と言い出して、護衛に雇われていたロイドから剣術を学ぶ事になった。
「いやしかしあれが無ければ負けていたのは俺の方だ。メイは本当に強くなった」
ロイドは笑いながら言っているが、芽依は国一番の剣士を負かす程の実力を付けたと言う事だ。
もうそろそろ頃合いかも知れない。
「芽依、帰ったら話があります」
「お母さん?」
「説教ではないわ。大切な話よ」
「うん……」
何の話があるのだろうと不安そうな顔をしている芽依。私は芽依に微笑み掛けて何も言わなかった。
屋敷に戻り自室に芽依と颯太、カナエにも来てもらった。
この数年で芽依とは別々の部屋で暮らす事にしていた。いつまでも母親離れ出来ないのは良くないから。
「芽依、今日の剣術大会凄かったわ」
「うん、ありがとうお母さん。でもまだまだだよ」
「あなたはロイドに負けない位の実力を身に付けたわね。剣術に限らず、何でもありの模擬戦ではロイドに圧勝だったもの」
芽依は剣術以外にも格闘術、槍術、弓術を修めていた。魔法の訓練も私と欠かさずにやって来た。
剣術一辺倒のロイドに勝ち目がある訳もなかった。
「学校での成績もトップ。もう教える事が無いって先生達も褒めていたわ」
「えへへ」
照れ笑いをする芽依。こう言うところはまだまだ子供だ。
「学校を卒業して、次のステップに行こうと思うのだけど、芽依はどう思う?」
「卒業!うん、卒業したい!」
「芽依は何になりたいの?」
「冒険者!」
即答だった。
ロイドに指南を頼んだ時点で大凡こうなるとは予想していた。
「分かりました。それからもう一つ、こちらの方が大切な話よ」
「何?お母さん」
「あなたは人間なの。この国ではなく人間の国に住みなさい」
「……え?」
キョトンとして聞いてくる芽依。
「あなたはいずれ人間の社会に戻そうと決めていたの。私達とは暮らせない」
「何で……?」
「私達とは寿命が違いすぎるのよ。あなたの限られた時間を、より良い形で過ごさせてあげたい」
「お母さんは私の事を嫌いなの……?」
芽依は目を伏せて聞いてくる。その声は震えていた。
「違うわ。芽依のこと大好きよ。愛してるからあなたには幸せになってもらいたいの」
「そんなの勝手だよ!私はお母さんとソータお兄ちゃんとカナエちゃんと……カクカミとメトとヤトとギョクリュウとトコヤミと……ずっと一緒にいたいのに!ずっと一緒ならそれだけでいいのに……!」
ポロポロと涙を溢しながら叫ぶ芽依。
「芽依、聞いて」
「イヤ!そんな事を言うお母さんは大嫌い!」
芽依は部屋を飛び出して行ってしまった。
「母さん、芽依にはまだ早かったんじゃないかな?」
「そうね……少し焦りすぎたかしら」
あの子の気持ちも考えずに身勝手な事を言ってしまった。
「メイ様、淑女が脚をその様にバタバタと……」
「ははは……本当に悔しそうだね」
パーティの帰り道、馬車の中は賑やかだった。
「だって、ロイドおじさんってば『私の癖を知ってたお陰で勝てた』なんて言うんだよ?師匠ならそこも教えてくれないとだよ?」
決勝戦、芽依はロイドを追い詰めていた。互いに消耗した中で繰り出したのは一番得意な技。
しかしロイドは芽依のその技に弱点があるのを知っていた。技に入るほんの僅かな動作でタイミングとどこを狙っているかを見抜き、見事なカウンターで芽依を負かした。
「それが実践剣術の恐ろしい所だぞ」
御者台からロイドの声が聞こえる。
「何が実践よ。ただのズルじゃない!」
「芽依、試合だからそう言えるけど、これが本当の命のやり取りだったら文句は言えないわよね?」
「う……そうだけど」
「ロイドに剣術指南をお願いしたのはより実践的な戦闘技術を身に付けたいからだったのよね?」
芽依はあの襲撃事件以降、更に武術の鍛錬にのめり込んでいった。一年目の大会の後、芽依は『実際に戦える様になりたい』と言い出して、護衛に雇われていたロイドから剣術を学ぶ事になった。
「いやしかしあれが無ければ負けていたのは俺の方だ。メイは本当に強くなった」
ロイドは笑いながら言っているが、芽依は国一番の剣士を負かす程の実力を付けたと言う事だ。
もうそろそろ頃合いかも知れない。
「芽依、帰ったら話があります」
「お母さん?」
「説教ではないわ。大切な話よ」
「うん……」
何の話があるのだろうと不安そうな顔をしている芽依。私は芽依に微笑み掛けて何も言わなかった。
屋敷に戻り自室に芽依と颯太、カナエにも来てもらった。
この数年で芽依とは別々の部屋で暮らす事にしていた。いつまでも母親離れ出来ないのは良くないから。
「芽依、今日の剣術大会凄かったわ」
「うん、ありがとうお母さん。でもまだまだだよ」
「あなたはロイドに負けない位の実力を身に付けたわね。剣術に限らず、何でもありの模擬戦ではロイドに圧勝だったもの」
芽依は剣術以外にも格闘術、槍術、弓術を修めていた。魔法の訓練も私と欠かさずにやって来た。
剣術一辺倒のロイドに勝ち目がある訳もなかった。
「学校での成績もトップ。もう教える事が無いって先生達も褒めていたわ」
「えへへ」
照れ笑いをする芽依。こう言うところはまだまだ子供だ。
「学校を卒業して、次のステップに行こうと思うのだけど、芽依はどう思う?」
「卒業!うん、卒業したい!」
「芽依は何になりたいの?」
「冒険者!」
即答だった。
ロイドに指南を頼んだ時点で大凡こうなるとは予想していた。
「分かりました。それからもう一つ、こちらの方が大切な話よ」
「何?お母さん」
「あなたは人間なの。この国ではなく人間の国に住みなさい」
「……え?」
キョトンとして聞いてくる芽依。
「あなたはいずれ人間の社会に戻そうと決めていたの。私達とは暮らせない」
「何で……?」
「私達とは寿命が違いすぎるのよ。あなたの限られた時間を、より良い形で過ごさせてあげたい」
「お母さんは私の事を嫌いなの……?」
芽依は目を伏せて聞いてくる。その声は震えていた。
「違うわ。芽依のこと大好きよ。愛してるからあなたには幸せになってもらいたいの」
「そんなの勝手だよ!私はお母さんとソータお兄ちゃんとカナエちゃんと……カクカミとメトとヤトとギョクリュウとトコヤミと……ずっと一緒にいたいのに!ずっと一緒ならそれだけでいいのに……!」
ポロポロと涙を溢しながら叫ぶ芽依。
「芽依、聞いて」
「イヤ!そんな事を言うお母さんは大嫌い!」
芽依は部屋を飛び出して行ってしまった。
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「そうね……少し焦りすぎたかしら」
あの子の気持ちも考えずに身勝手な事を言ってしまった。
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