泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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冒険者

救出

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「お母さんどうしよう?」
「任せて」

《遠隔視野》を使って森の中を見渡す。
まだそう遠くには行っていない筈だ。

暫く見渡していると七人を見つける事が出来た。

前を歩く少年少女三人。その後ろを付いていく男四人。男達は周囲を注意深く見渡して互いに頷くと剣を抜いた。

不味いわね。

「芽依、あの子達が襲われる」
「助けに行こう!どっち?」
「こっちよ」

二人で七人がいる所へと走る。

距離は百メートル位か。茂みをかき分けて全力で突き進んだ。

女の子の悲鳴が聞こえた。

遅かったか……

「何をするんですか!」
「セロ……しっかりして!」
「迂闊なお前らが悪いんだぜ。知らない野郎の話を信じてホイホイついて来るなんざぁ子供でもやらねぇよ」

少年が不意打ちを受けてしまった様だ。
少女二人の声が聞こえてくる。

「何をしているんですか!」

まだ姿は見えないが声が届くのなら牽制くらいにはなるだろう、大声で声を掛ける。

「お母さん、このまま突っ込むよ!」

芽依は既に二本の小剣を抜いて臨戦態勢だ。

「いいわ。私はあの子達を助けます。なるべく殺さない様に」

外道を生かしておく道理は無いけれど、後でギルドに殺人の罪を責められても困る。二度と悪さが出来ない様に腕や脚くらいは切り落として構わない。再生しないように傷口を塞ぐ事も出来る。

勿論一番は芽依の安全だ。それに比べたら男達の命など取るに足らない。
少しでも危険そうなら私が魔法で消し飛ばしてしまおう。

茂みから飛び出すと芽依は既に男達と戦っていた。一人に斬りつけると他の男の死角に入り別の男に斬り付ける。互いの距離が近過ぎた為にうまく反撃が出来ずに浮き足立つ男達。

私は倒れた少年を介抱する少女達の方へ向かう。

「あなた達大丈夫?」
「セロが私を庇って……」
「背中を斬られました。出血が酷くてどうしたらいいか……」

少女二人は泣きそうな顔をしていた。
少年の様子を見る。背中の傷は革の鎧を切り裂いて背中深くに入っていた。確かに出血が酷い。

「大丈夫よ。任せて」

泉の水を生成して背中にかける。傷はすぐに塞がった。

「す、すごい……」
「かなり血を失ったから暫くは動かさない方がいいわ。あなた達はこの子を見ていて」

少年を二人に任せて私は芽依の方を見る。
芽依は既に一人の男の両脚に深傷を負わせて戦闘不能にしていた。

「このっ……!すばしっこいガキだ!」
「おい、そっちだ!足止めしろ!」

男達は距離をとり始めていて芽依を包囲する様に動き始める。
こちらを全く見ていない。

それならば──

植物を操作してツタで二人を絡めとる。

「な、なんだ!?」
「く、くそっ……身動きが取れねえ!」

両腕に巻き付いたツタを外そうともがいているが無意味だ。二人は木に吊り上げられて身動きが取れなくなった。

芽依は最後の一人を二本の小剣の連撃と蹴り技の連打で倒した。

「お母さんありがとう!」
「芽依も四人相手に頑張ったわね」

芽依に労いの言葉を掛けて、吊るされた二人の方へ行く。

「さてあなた達、これはどういう事なのかしら?」
「どうって……何の事だかわからねぇな」

この期に及んで誤魔化そうというの?

「なあ、アンタらは誤解している。これを解いてくれよ」

ジタバタと踠きながら言う男。もう一人の男は身動きせずに喋りもしない。
男は目をしきりに動かしていた。

何をしている?

一瞬《遠隔視野》を使用して周囲を確認すると、私達を十人近い男達が取り囲んでいた。

「芽依!あの子達を守って!」

咄嗟に叫ぶと芽依は聞き返す事なく少女達のそばに向かった。

直後茂みから飛び出してくる男達。
どうやらこの者達の仲間の様だ。

長剣を振りかざして飛び込んでくる男を躱して腕を掴むと《栄養吸収》で生命力を全て吸い取る。
皺々のミイラの様になって地に転がる襲撃者。

「一度だけ警告するわ。今すぐ武器を捨てなさい。そうすれば死なずに済みます」
「ただの脅しだ!やれ!」

ぶら下がったままの男が叫ぶ。それに従い動き出す男達。

仕方がない。
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