泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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冒険者

不審者

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ロザリアに話を聞く為に彼女を捜す。
闇雲に捜しても見つけられる保証はなかったので『白い蝙蝠亭』に行ってラティーシアに聞いてみる事に決めた。

「ハル達は冒険者よりも街で働いている方が似合うかもな」
「それ褒めてくれてるんだよね?」

歩きながらジェイドと芽依が話をしている。

「褒めてるんだよ。ちょっと店で働くだけで客の入りが変わるんだ。将来は美人になるだろうし、危険な冒険者の仕事を無理してやる必要は無いんじゃないか?」
「無理なんてしてないし、冒険者はやりたくてやってるんですよ」

ジェイドの言葉にムッとしながら答える芽依。

ジェイドの言う事は正しい。
安全に、豊かに暮らせるのなら私はそちらの方がいいと思う。

しかし芽依は違う。
この子は冒険者に憧れを抱いてしまった。
今更町娘として生きていく事は出来ないだろう。

「このパーティの中でハルさんとメイさんが抜きに出て強いんだよね」
「マジか。じゃあバルドルの旦那に勝ったってのも本当なのか?」
「本当だよ」
「そりゃスゲェな……」

ジェイドは芽依を見ながら感心していた。

「今朝エレさんもバルドルさんを降参させてたよ」
「ウソだろ……」

エレをまじまじと見つめるジェイド。
エレはウォーハンマーを担いだまま小首を傾げている。

「みんな、アレを見て」

ミラの指さした方を見ると、白い外套の様なものにフードを被った人影が路地の方に入っていくのが見えた。

「追いかけるぞ」
「はい!」

ジェイドが追跡を判断したので皆で路地の方へと走る。

路地は薄暗かったが、かなり遠くに追跡対象が見えた。

「結構早いな。急ぐぞ」

走って追跡する。
入り組んだ路地を追い掛けて行くと、似た様な服装の者が二人になった。ついて行くと更に同じ服装のもう一人と合流して何やら話をしている。

「一人じゃないのか。どうします?」
「そうだな。隠れて様子を見ようか」

セロが聞くとジェイドが判断して、物陰に隠れる様にして様子を伺う。

小声で話しているのでやり取りをしている声はほとんど聞こえない。

ここは路地なので道幅が狭い。戦闘になった場合、一人が何とか戦える程度の広さしかない。

「出ていって何者か確かめてみるか」

相手が武器を持っていないのでジェイドも武器を抜かずに物陰から出る。皆それに倣い、セロ、芽依、リン、ミラ、私、エレの順番に出ていく。

「おい、あんたら。ちょいと訊きたい事があるんだが……」

努めて気さくに話しかけるジェイド。

三人はこちらを見てたじろぐ。

「まてまて、俺達は冒険者だ。ここで逃げるって事は自分達がやましい事をしているって認める事になるがいいか?」

ジェイドは首に掛けていた冒険者証を見せながら近付いていく。

「俺達は最近立て続けに起こっている変死事件を調べてるんだが、昨日見つかった遺体の側にアンタらみたいな格好の奴がいたそうなんだ。心当たりはないか?」

歩きながら話をするジェイド。
三人は逃げだした。

「ちっ……追うぞ!」
「はい!」

一列になって全速力で追いかける。逃げる三人はとても素早い。少しずつだが離されている。

少し走ると三人は十字路に差し掛かり、別々の方向に逃げて行った。

「別れるぞ。セロは俺と来い。メイ、リン、ミラは左。ハル、エレは右の奴を追ってくれ」
「分かりました!」「了解!」

エレと二人で追い掛けるが追いつけそうにない。
多少手荒だが足を止めよう。

逃げる者の目の前に石の壁を出して遮ろうとするも、軽々と飛び越えられてしまった。
壁を解除して自分達も通り抜ける。

攻撃するしかなさそうだ。

走りながら氷の矢を無数に作り出して逃亡者に放つ。攻撃に気付いて振り返ると素手で矢を弾いていた。

足が止まった事で私達は追いつく事ができた。

私達はフードを被った不審者と対峙する。
ここは先程の路地より少し広い。
ここならエレのハンマーも扱えるだろう。

やましい事が無ければ逃げない筈だ。そもそも私達の捜査している件とは違うかも知れない。
何にせよ捕らえて話を聞くだけだ。
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