泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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勇者

視察任務

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私が首輪をすると約束通りリフィナとバルドルの拘束を解いてくれた。

二人は私の所にやってくる。

「ハルさん……申し訳ありません」
「ハル……すまねぇ。お前にそんな物を着けさせちまって」

リフィナもバルドルもすまなさそうにしていた。

「私の為に危険な目に遭わせてしまったみたいですね。お二人を助けられて良かったです」

エリオットはその様子を笑みを浮かべて見ていた。

「そうそう、君は魔物を召喚できるらしいね。安全の為それは禁止させてもらうよ」
「分かりました」
「では明朝この屋敷に来てくれ。一人で来るんだよ?」
「はい」

エリオットからの話はそれで全てだった。

「ハルさん……本当に良かったのか?」
「ああするしか全員が無事でいる方法が思い付かなかったの。勝手に決めてごめんなさい」

リフィナ達と別れて、廊下を歩きながらセロが聞いてくる。

「謝らなければならないのは俺達の方だぜ。……そもそも俺はセロ達のパーティじゃないのにな」

ジェイドも申し訳なさそうにしていた。

「あんな男一発ビンタすればいいんだよ!」

芽依も何も言わずに良く耐えてくれたわね。偉いわ。

「ハル様、今からでもあの男を倒しませんか?私が竜に変身すれば注意を引く事が出来ます。事が済んだら全員で街を出れば……」
「ありがとうエレ。私は大丈夫だから無理をしては駄目よ」

エレも怒りを露わにしていた。何も言わなければ一人でエリオットを襲いそうだ。

「ハルさん、そんなものまで着けられて……私達何も出来なかった」

目に涙を溜めながらリンが言う。

「何とか外す事は出来ないのですか?」
「無理に外そうとすれば最悪死ぬ。ソイツは正に奴隷に使う為の物なんだ」

ミラの問いにジェイドが答える。

「みんな心配しないで。大丈夫よ」

そう、大丈夫な筈だ。
これを見た時私はそう確信した。
そもそも私のこの身体は《実体化》で作り出した仮初めのものだ。やろうと思えば今すぐ外す事もできる。

エリオットの出方を伺う為に敢えてこのままにしておく。

今日は遅くなってしまったので皆と別れて『白い蝙蝠亭』に戻る。

「ハルさん、それは従属の首輪ではありませんか。そんなものを着けられてしまったのですか?」
「はい」

駆け寄ってくるラティーシアとイシュリアに事情を説明する。

「酷い方ですね」
「関わってはいけない人種です。ハルさん大丈夫ですか?」
「ええ。監視しておいた方が良いと思ったので返って好都合です」

二人に説明して理解を求めるが私の事を心配してくれていた。

自室に戻って着替えて《洗浄》の魔法を掛けて休む。

芽依達は明日はセロ達と合流してギルドの訓練所場で戦闘訓練をする事にしたそうだ。

「お母さん本当に大丈夫?」
「大丈夫よ。あんな男に遅れをとる事はまずあり得ないわ。召喚は禁止されたけど、オオトリは空から見てくれているからいざと言う時は助けてもらうから」
「うん……気をつけてね」

心配そうにしている芽依の頭を撫でて微笑みかける。

「変なトコ触ってきたら思い切り引っ叩いてね?」
「ええ。そうするわ」

翌日。

三人で朝食をとり終えて、私は領主の屋敷に向かった。

塀の周りには昨日と同様に騎士達が立ってる。その顔には疲労が見え、夜通しここに立っていたのだと分かった。

人を何だと思っているのかしら。

門を開けてもらい中に入ると馬車が用意されていて、屋敷からエリオットとドルフが出てきた。

「やあおはよう。今日も美しいね」
「おはようございます。本日はどちらから行かれますか?」

世辞などどうでも良い。

「そうだなぁ……何処がいいと思う?」

エリオットは私に近付いてきて聞いてくる。

「では駐屯所から視察されては如何でしょうか?」
「そうだね。じゃあ出発しよう」

私の肩を抱いて馬車へと向かうエリオット。

……不愉快だわ。
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