197 / 453
勇者
視察任務
しおりを挟む
私が首輪をすると約束通りリフィナとバルドルの拘束を解いてくれた。
二人は私の所にやってくる。
「ハルさん……申し訳ありません」
「ハル……すまねぇ。お前にそんな物を着けさせちまって」
リフィナもバルドルもすまなさそうにしていた。
「私の為に危険な目に遭わせてしまったみたいですね。お二人を助けられて良かったです」
エリオットはその様子を笑みを浮かべて見ていた。
「そうそう、君は魔物を召喚できるらしいね。安全の為それは禁止させてもらうよ」
「分かりました」
「では明朝この屋敷に来てくれ。一人で来るんだよ?」
「はい」
エリオットからの話はそれで全てだった。
「ハルさん……本当に良かったのか?」
「ああするしか全員が無事でいる方法が思い付かなかったの。勝手に決めてごめんなさい」
リフィナ達と別れて、廊下を歩きながらセロが聞いてくる。
「謝らなければならないのは俺達の方だぜ。……そもそも俺はセロ達のパーティじゃないのにな」
ジェイドも申し訳なさそうにしていた。
「あんな男一発ビンタすればいいんだよ!」
芽依も何も言わずに良く耐えてくれたわね。偉いわ。
「ハル様、今からでもあの男を倒しませんか?私が竜に変身すれば注意を引く事が出来ます。事が済んだら全員で街を出れば……」
「ありがとうエレ。私は大丈夫だから無理をしては駄目よ」
エレも怒りを露わにしていた。何も言わなければ一人でエリオットを襲いそうだ。
「ハルさん、そんなものまで着けられて……私達何も出来なかった」
目に涙を溜めながらリンが言う。
「何とか外す事は出来ないのですか?」
「無理に外そうとすれば最悪死ぬ。ソイツは正に奴隷に使う為の物なんだ」
ミラの問いにジェイドが答える。
「みんな心配しないで。大丈夫よ」
そう、大丈夫な筈だ。
これを見た時私はそう確信した。
そもそも私のこの身体は《実体化》で作り出した仮初めのものだ。やろうと思えば今すぐ外す事もできる。
エリオットの出方を伺う為に敢えてこのままにしておく。
今日は遅くなってしまったので皆と別れて『白い蝙蝠亭』に戻る。
「ハルさん、それは従属の首輪ではありませんか。そんなものを着けられてしまったのですか?」
「はい」
駆け寄ってくるラティーシアとイシュリアに事情を説明する。
「酷い方ですね」
「関わってはいけない人種です。ハルさん大丈夫ですか?」
「ええ。監視しておいた方が良いと思ったので返って好都合です」
二人に説明して理解を求めるが私の事を心配してくれていた。
自室に戻って着替えて《洗浄》の魔法を掛けて休む。
芽依達は明日はセロ達と合流してギルドの訓練所場で戦闘訓練をする事にしたそうだ。
「お母さん本当に大丈夫?」
「大丈夫よ。あんな男に遅れをとる事はまずあり得ないわ。召喚は禁止されたけど、オオトリは空から見てくれているからいざと言う時は助けてもらうから」
「うん……気をつけてね」
心配そうにしている芽依の頭を撫でて微笑みかける。
「変なトコ触ってきたら思い切り引っ叩いてね?」
「ええ。そうするわ」
翌日。
三人で朝食をとり終えて、私は領主の屋敷に向かった。
塀の周りには昨日と同様に騎士達が立ってる。その顔には疲労が見え、夜通しここに立っていたのだと分かった。
人を何だと思っているのかしら。
門を開けてもらい中に入ると馬車が用意されていて、屋敷からエリオットとドルフが出てきた。
「やあおはよう。今日も美しいね」
「おはようございます。本日はどちらから行かれますか?」
世辞などどうでも良い。
「そうだなぁ……何処がいいと思う?」
エリオットは私に近付いてきて聞いてくる。
「では駐屯所から視察されては如何でしょうか?」
「そうだね。じゃあ出発しよう」
私の肩を抱いて馬車へと向かうエリオット。
……不愉快だわ。
二人は私の所にやってくる。
「ハルさん……申し訳ありません」
「ハル……すまねぇ。お前にそんな物を着けさせちまって」
リフィナもバルドルもすまなさそうにしていた。
「私の為に危険な目に遭わせてしまったみたいですね。お二人を助けられて良かったです」
エリオットはその様子を笑みを浮かべて見ていた。
「そうそう、君は魔物を召喚できるらしいね。安全の為それは禁止させてもらうよ」
「分かりました」
「では明朝この屋敷に来てくれ。一人で来るんだよ?」
「はい」
エリオットからの話はそれで全てだった。
「ハルさん……本当に良かったのか?」
「ああするしか全員が無事でいる方法が思い付かなかったの。勝手に決めてごめんなさい」
リフィナ達と別れて、廊下を歩きながらセロが聞いてくる。
「謝らなければならないのは俺達の方だぜ。……そもそも俺はセロ達のパーティじゃないのにな」
ジェイドも申し訳なさそうにしていた。
「あんな男一発ビンタすればいいんだよ!」
芽依も何も言わずに良く耐えてくれたわね。偉いわ。
「ハル様、今からでもあの男を倒しませんか?私が竜に変身すれば注意を引く事が出来ます。事が済んだら全員で街を出れば……」
「ありがとうエレ。私は大丈夫だから無理をしては駄目よ」
エレも怒りを露わにしていた。何も言わなければ一人でエリオットを襲いそうだ。
「ハルさん、そんなものまで着けられて……私達何も出来なかった」
目に涙を溜めながらリンが言う。
「何とか外す事は出来ないのですか?」
「無理に外そうとすれば最悪死ぬ。ソイツは正に奴隷に使う為の物なんだ」
ミラの問いにジェイドが答える。
「みんな心配しないで。大丈夫よ」
そう、大丈夫な筈だ。
これを見た時私はそう確信した。
そもそも私のこの身体は《実体化》で作り出した仮初めのものだ。やろうと思えば今すぐ外す事もできる。
エリオットの出方を伺う為に敢えてこのままにしておく。
今日は遅くなってしまったので皆と別れて『白い蝙蝠亭』に戻る。
「ハルさん、それは従属の首輪ではありませんか。そんなものを着けられてしまったのですか?」
「はい」
駆け寄ってくるラティーシアとイシュリアに事情を説明する。
「酷い方ですね」
「関わってはいけない人種です。ハルさん大丈夫ですか?」
「ええ。監視しておいた方が良いと思ったので返って好都合です」
二人に説明して理解を求めるが私の事を心配してくれていた。
自室に戻って着替えて《洗浄》の魔法を掛けて休む。
芽依達は明日はセロ達と合流してギルドの訓練所場で戦闘訓練をする事にしたそうだ。
「お母さん本当に大丈夫?」
「大丈夫よ。あんな男に遅れをとる事はまずあり得ないわ。召喚は禁止されたけど、オオトリは空から見てくれているからいざと言う時は助けてもらうから」
「うん……気をつけてね」
心配そうにしている芽依の頭を撫でて微笑みかける。
「変なトコ触ってきたら思い切り引っ叩いてね?」
「ええ。そうするわ」
翌日。
三人で朝食をとり終えて、私は領主の屋敷に向かった。
塀の周りには昨日と同様に騎士達が立ってる。その顔には疲労が見え、夜通しここに立っていたのだと分かった。
人を何だと思っているのかしら。
門を開けてもらい中に入ると馬車が用意されていて、屋敷からエリオットとドルフが出てきた。
「やあおはよう。今日も美しいね」
「おはようございます。本日はどちらから行かれますか?」
世辞などどうでも良い。
「そうだなぁ……何処がいいと思う?」
エリオットは私に近付いてきて聞いてくる。
「では駐屯所から視察されては如何でしょうか?」
「そうだね。じゃあ出発しよう」
私の肩を抱いて馬車へと向かうエリオット。
……不愉快だわ。
0
あなたにおすすめの小説
青い鳥と 日記 〜コウタとディック 幸せを詰め込んで〜
Yokoちー
ファンタジー
もふもふと優しい大人達に温かく見守られて育つコウタの幸せ日記です。コウタの成長を一緒に楽しみませんか?
(長編になります。閑話ですと登場人物が少なくて読みやすいかもしれません)
地球で生まれた小さな魂。あまりの輝きに見合った器(身体)が見つからない。そこで新米女神の星で生を受けることになる。
小さな身体に何でも吸収する大きな器。だが、運命の日を迎え、両親との幸せな日々はたった三年で終わりを告げる。
辺境伯に拾われたコウタ。神鳥ソラと温かな家族を巻き込んで今日もほのぼのマイペース。置かれた場所で精一杯に生きていく。
「小説家になろう」「カクヨム」でも投稿しています。
【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
逢生ありす
ファンタジー
女性向け異世界ファンタジー(逆ハーレム)です。ヤンデレ、ツンデレ、溺愛、嫉妬etc……。乙女ゲームのような恋物語をテーマに偉大な"五大国の王"や"人型聖獣"、"謎の美青年"たちと織り成す極甘長編ストーリー。ラストに待ち受ける物語の真実と彼女が選ぶ道は――?
――すべての女性に捧げる乙女ゲームのような恋物語――
『狂気の王と永遠の愛(接吻)を』
五大国から成る異世界の王と
たった一人の少女の織り成す恋愛ファンタジー
――この世界は強大な五大国と、各国に君臨する絶対的な『王』が存在している。彼らにはそれぞれを象徴する<力>と<神具>が授けられており、その生命も人間を遥かに凌駕するほど長いものだった。
この物語は悠久の王・キュリオの前に現れた幼い少女が主人公である。
――世界が"何か"を望んだ時、必ずその力を持った人物が生み出され……すべてが大きく変わるだろう。そして……
その"世界"自体が一個人の"誰か"かもしれない――
出会うはずのない者たちが出揃うとき……その先に待ち受けるものは?
最後に待つのは幸せか、残酷な運命か――
そして次第に明らかになる彼女の正体とは……?
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる