泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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勇者

遺跡の中のもの

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ガルムンドはまだ息があった。

「この遺跡には何があるの?」
『自分の目で確かめるがいい』

頭を伏したまま言うガルムンド。傷だらけでもはや頭を起こす体力も残っていないのだろう。

「トドメは必要かしら?」
『気遣い感謝する。我の遺骸は加工して武具にするが良い』

これ以上苦しみを長引かせない為にも終わらせてやろう。

この状態で泉の水を掛けたら回復するのだろうか?
回復させてしまっても生かしておくつもりはない。無辜の巨人達を殺めたのだ。ここで死ぬ事は道理。

実験をするのも躊躇われるが、《過剰分泌》を掛けた泉の水を圧縮して槍に変えて頭を貫いた。

そのまま息絶えるガルムンド。

これで多少は苦しみを和らげる事が出来ただろう。

ガルムンドの言う通り解体して素材として巨人達に使ってもらおうと思う。

さて……

遺跡の入り口は何処にあるか聞いていなかった。

「母さん、遺跡の中のものを確認するのかい?」
「ええ。この時代にあってはならないものなら破壊するわ。マイの作った剣の様な物ならいいのだけど」

『私、さがしてきます!』

エレはそう言って勢いよく飛び立った。
突風が巻き起こり思わず手で顔を覆うが、颯太が抱き寄せてくれて舞い上がる砂埃から守ってくれた。

『エレ!ハル様に砂埃がかかってしまうだろう!静かに飛べ!』

トコヤミが厳しい口調でエレに言う。

『ハル様ごめんなさい!』
「いいのよ。見つけたらすぐに戻ってきなさい」
『は~い!』

エレは元気に返事をして飛んでいった。

さて、ガルムンドの巨体を指輪の中にしまえるかを試してみる。

すんなりと入ったが、指輪から何か魔力を感じる。とても苦しそうな印象だ。
どうやら容積がほとんど一杯なのだろう。巨人に引き渡すまで保ってくれるかしら。

エレはすぐに戻ってきた。

『見つけました!』
「ご苦労様。案内して頂戴」

そう遠くはないのでエレには人間の姿で案内してもらう。
遺跡の中には身体の大きな者達は入れないだろうから、巨人の遺体の埋葬の準備をお願いしておく。

「ここです!」

正面は地球の神殿の様な柱が二本あり、その間には瓦礫が積み重なった様な物があるが、明らかに人工的に作られた大きな穴があった。

「行きましょう」
「はい!」

中に入るのは私、颯太、カナエ、エレだ。

穴は高さ四メートル、幅二メートル程のものでどう見ても巨人の出入りするサイズではなかった。
きっと彼らがここに住むよりも以前からこの遺跡は存在するのだろう。

しかしアインがここに来たのなら、中を確認したのではないだろうか?
巨人達はここに何があるかを聞かされていない。
アインならこの時代にあってはならないものなら破壊したのではないだろうか?

中にある物が既に破壊されている可能性もあるが、この目で確かめて見なければ分からない。

颯太が先頭に立ち掌に光球を浮かべて中に入る。

長く緩やかな下り坂を降りていく。
壁も床も石で造られているが凹凸が無い。相当な技術で掘削されたのだろう。

かなり歩いてようやく下り坂は終わり目の前には扉があるがノブの様なものはない。

どうやって開けるのだろうと近付いて扉に触れたらゆっくりと左右にスライドして開いた。

中は二十畳くらいの広間。
真ん中には十四、五歳位の少女が目を閉じて立っている。
銀色の長い髪をした人形の様な女の子。

あれがルドガイアの竜の王に不利益をもたらす者なのだろうか?

「母さん気を付けて、あれは生き物じゃないみたいだ」

前に出ようとした私を颯太が手で制す。
エレも大剣を抜いて前に出た。

『生命体を検知しました。データ照合中……該当無し。何者ですか?』

そう言ってゆっくりと目を開ける少女。
目は金色。無表情のままこちらを見て聞いてくる。

「私は泉の精霊のハル。あなたは何者ですか?」
『私はライブラ。裁定する者』

裁定する者?
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