267 / 453
勇者
遺跡の中のもの
しおりを挟む
ガルムンドはまだ息があった。
「この遺跡には何があるの?」
『自分の目で確かめるがいい』
頭を伏したまま言うガルムンド。傷だらけでもはや頭を起こす体力も残っていないのだろう。
「トドメは必要かしら?」
『気遣い感謝する。我の遺骸は加工して武具にするが良い』
これ以上苦しみを長引かせない為にも終わらせてやろう。
この状態で泉の水を掛けたら回復するのだろうか?
回復させてしまっても生かしておくつもりはない。無辜の巨人達を殺めたのだ。ここで死ぬ事は道理。
実験をするのも躊躇われるが、《過剰分泌》を掛けた泉の水を圧縮して槍に変えて頭を貫いた。
そのまま息絶えるガルムンド。
これで多少は苦しみを和らげる事が出来ただろう。
ガルムンドの言う通り解体して素材として巨人達に使ってもらおうと思う。
さて……
遺跡の入り口は何処にあるか聞いていなかった。
「母さん、遺跡の中のものを確認するのかい?」
「ええ。この時代にあってはならないものなら破壊するわ。マイの作った剣の様な物ならいいのだけど」
『私、さがしてきます!』
エレはそう言って勢いよく飛び立った。
突風が巻き起こり思わず手で顔を覆うが、颯太が抱き寄せてくれて舞い上がる砂埃から守ってくれた。
『エレ!ハル様に砂埃がかかってしまうだろう!静かに飛べ!』
トコヤミが厳しい口調でエレに言う。
『ハル様ごめんなさい!』
「いいのよ。見つけたらすぐに戻ってきなさい」
『は~い!』
エレは元気に返事をして飛んでいった。
さて、ガルムンドの巨体を指輪の中にしまえるかを試してみる。
すんなりと入ったが、指輪から何か魔力を感じる。とても苦しそうな印象だ。
どうやら容積がほとんど一杯なのだろう。巨人に引き渡すまで保ってくれるかしら。
エレはすぐに戻ってきた。
『見つけました!』
「ご苦労様。案内して頂戴」
そう遠くはないのでエレには人間の姿で案内してもらう。
遺跡の中には身体の大きな者達は入れないだろうから、巨人の遺体の埋葬の準備をお願いしておく。
「ここです!」
正面は地球の神殿の様な柱が二本あり、その間には瓦礫が積み重なった様な物があるが、明らかに人工的に作られた大きな穴があった。
「行きましょう」
「はい!」
中に入るのは私、颯太、カナエ、エレだ。
穴は高さ四メートル、幅二メートル程のものでどう見ても巨人の出入りするサイズではなかった。
きっと彼らがここに住むよりも以前からこの遺跡は存在するのだろう。
しかしアインがここに来たのなら、中を確認したのではないだろうか?
巨人達はここに何があるかを聞かされていない。
アインならこの時代にあってはならないものなら破壊したのではないだろうか?
中にある物が既に破壊されている可能性もあるが、この目で確かめて見なければ分からない。
颯太が先頭に立ち掌に光球を浮かべて中に入る。
長く緩やかな下り坂を降りていく。
壁も床も石で造られているが凹凸が無い。相当な技術で掘削されたのだろう。
かなり歩いてようやく下り坂は終わり目の前には扉があるがノブの様なものはない。
どうやって開けるのだろうと近付いて扉に触れたらゆっくりと左右にスライドして開いた。
中は二十畳くらいの広間。
真ん中には十四、五歳位の少女が目を閉じて立っている。
銀色の長い髪をした人形の様な女の子。
あれがルドガイアの竜の王に不利益をもたらす者なのだろうか?
「母さん気を付けて、あれは生き物じゃないみたいだ」
前に出ようとした私を颯太が手で制す。
エレも大剣を抜いて前に出た。
『生命体を検知しました。データ照合中……該当無し。何者ですか?』
そう言ってゆっくりと目を開ける少女。
目は金色。無表情のままこちらを見て聞いてくる。
「私は泉の精霊のハル。あなたは何者ですか?」
『私はライブラ。裁定する者』
裁定する者?
「この遺跡には何があるの?」
『自分の目で確かめるがいい』
頭を伏したまま言うガルムンド。傷だらけでもはや頭を起こす体力も残っていないのだろう。
「トドメは必要かしら?」
『気遣い感謝する。我の遺骸は加工して武具にするが良い』
これ以上苦しみを長引かせない為にも終わらせてやろう。
この状態で泉の水を掛けたら回復するのだろうか?
回復させてしまっても生かしておくつもりはない。無辜の巨人達を殺めたのだ。ここで死ぬ事は道理。
実験をするのも躊躇われるが、《過剰分泌》を掛けた泉の水を圧縮して槍に変えて頭を貫いた。
そのまま息絶えるガルムンド。
これで多少は苦しみを和らげる事が出来ただろう。
ガルムンドの言う通り解体して素材として巨人達に使ってもらおうと思う。
さて……
遺跡の入り口は何処にあるか聞いていなかった。
「母さん、遺跡の中のものを確認するのかい?」
「ええ。この時代にあってはならないものなら破壊するわ。マイの作った剣の様な物ならいいのだけど」
『私、さがしてきます!』
エレはそう言って勢いよく飛び立った。
突風が巻き起こり思わず手で顔を覆うが、颯太が抱き寄せてくれて舞い上がる砂埃から守ってくれた。
『エレ!ハル様に砂埃がかかってしまうだろう!静かに飛べ!』
トコヤミが厳しい口調でエレに言う。
『ハル様ごめんなさい!』
「いいのよ。見つけたらすぐに戻ってきなさい」
『は~い!』
エレは元気に返事をして飛んでいった。
さて、ガルムンドの巨体を指輪の中にしまえるかを試してみる。
すんなりと入ったが、指輪から何か魔力を感じる。とても苦しそうな印象だ。
どうやら容積がほとんど一杯なのだろう。巨人に引き渡すまで保ってくれるかしら。
エレはすぐに戻ってきた。
『見つけました!』
「ご苦労様。案内して頂戴」
そう遠くはないのでエレには人間の姿で案内してもらう。
遺跡の中には身体の大きな者達は入れないだろうから、巨人の遺体の埋葬の準備をお願いしておく。
「ここです!」
正面は地球の神殿の様な柱が二本あり、その間には瓦礫が積み重なった様な物があるが、明らかに人工的に作られた大きな穴があった。
「行きましょう」
「はい!」
中に入るのは私、颯太、カナエ、エレだ。
穴は高さ四メートル、幅二メートル程のものでどう見ても巨人の出入りするサイズではなかった。
きっと彼らがここに住むよりも以前からこの遺跡は存在するのだろう。
しかしアインがここに来たのなら、中を確認したのではないだろうか?
巨人達はここに何があるかを聞かされていない。
アインならこの時代にあってはならないものなら破壊したのではないだろうか?
中にある物が既に破壊されている可能性もあるが、この目で確かめて見なければ分からない。
颯太が先頭に立ち掌に光球を浮かべて中に入る。
長く緩やかな下り坂を降りていく。
壁も床も石で造られているが凹凸が無い。相当な技術で掘削されたのだろう。
かなり歩いてようやく下り坂は終わり目の前には扉があるがノブの様なものはない。
どうやって開けるのだろうと近付いて扉に触れたらゆっくりと左右にスライドして開いた。
中は二十畳くらいの広間。
真ん中には十四、五歳位の少女が目を閉じて立っている。
銀色の長い髪をした人形の様な女の子。
あれがルドガイアの竜の王に不利益をもたらす者なのだろうか?
「母さん気を付けて、あれは生き物じゃないみたいだ」
前に出ようとした私を颯太が手で制す。
エレも大剣を抜いて前に出た。
『生命体を検知しました。データ照合中……該当無し。何者ですか?』
そう言ってゆっくりと目を開ける少女。
目は金色。無表情のままこちらを見て聞いてくる。
「私は泉の精霊のハル。あなたは何者ですか?」
『私はライブラ。裁定する者』
裁定する者?
3
あなたにおすすめの小説
青い鳥と 日記 〜コウタとディック 幸せを詰め込んで〜
Yokoちー
ファンタジー
もふもふと優しい大人達に温かく見守られて育つコウタの幸せ日記です。コウタの成長を一緒に楽しみませんか?
(長編になります。閑話ですと登場人物が少なくて読みやすいかもしれません)
地球で生まれた小さな魂。あまりの輝きに見合った器(身体)が見つからない。そこで新米女神の星で生を受けることになる。
小さな身体に何でも吸収する大きな器。だが、運命の日を迎え、両親との幸せな日々はたった三年で終わりを告げる。
辺境伯に拾われたコウタ。神鳥ソラと温かな家族を巻き込んで今日もほのぼのマイペース。置かれた場所で精一杯に生きていく。
「小説家になろう」「カクヨム」でも投稿しています。
【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
逢生ありす
ファンタジー
女性向け異世界ファンタジー(逆ハーレム)です。ヤンデレ、ツンデレ、溺愛、嫉妬etc……。乙女ゲームのような恋物語をテーマに偉大な"五大国の王"や"人型聖獣"、"謎の美青年"たちと織り成す極甘長編ストーリー。ラストに待ち受ける物語の真実と彼女が選ぶ道は――?
――すべての女性に捧げる乙女ゲームのような恋物語――
『狂気の王と永遠の愛(接吻)を』
五大国から成る異世界の王と
たった一人の少女の織り成す恋愛ファンタジー
――この世界は強大な五大国と、各国に君臨する絶対的な『王』が存在している。彼らにはそれぞれを象徴する<力>と<神具>が授けられており、その生命も人間を遥かに凌駕するほど長いものだった。
この物語は悠久の王・キュリオの前に現れた幼い少女が主人公である。
――世界が"何か"を望んだ時、必ずその力を持った人物が生み出され……すべてが大きく変わるだろう。そして……
その"世界"自体が一個人の"誰か"かもしれない――
出会うはずのない者たちが出揃うとき……その先に待ち受けるものは?
最後に待つのは幸せか、残酷な運命か――
そして次第に明らかになる彼女の正体とは……?
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる