泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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勇者

鉄槌

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後続のライアッド軍が到着したので状況を説明。子供達はギルバートが責任を持って保護すると約束してくれた。

彼らはここでの野営は困難なので少し進軍してから野営するそうだ。

私達は先を急ぐ事にした。

進軍速度を合わせていたらこの先にある街が同じ目に遭わされるかも知れない。
敵国とはいえ民間人には罪はない。そもそも私が倒すべき相手はシュウのみだ。迅速に彼を倒してしまいたい。

しかしシュウは未だに戦場に出てきていない。このまま逃げ続けて行方を晦ます可能性もある。

絶対に逃してはいけない。

あの様な事を平気で行える者を、この世界に近代兵器の技術を持ち込んで戦火を拡大する者を。

『ハル様、遥か前方に大きな土煙を上げながら走るものがあります』

オオトリが降りてきて教えてくれる。

「どんなものか分かる?」
『馬車の様なものです。生物ではない様に見えました。かなりの速さです』

車ね。という事はそれにシュウが乗っている可能性が高い。

「追撃します。オオトリは上空から監視して。トコヤミとエレは先行し過ぎないように。全力で走るので遅れても焦らないでついて来て」

カクカミの全力は凄まじく速い。ついて来られるのはマカミだけだ。メトとヤトは遅れての到着になるが、ヤトには地中から不意打ちを頼んでおいた。

「相手は破壊力のある武器を持っている可能性があるわ。全員くれぐれも注意して」

カクカミが全速力で走り出す。私達を振り落とさない様に気も遣ってくれているが物凄い速さだ。

途中初めの街よりも大きな都市の側を通るが焼け落ちていない。
《遠隔視野》で街の中を見ると、所々に人が倒れているのが見えた。既に死んでいる者もいるが苦しそうにもがいている者もいた。

今度は毒か細菌か?国民を私達の足止めの為に殺すなんて許し難い。

《拡張》を使って都市の上に泉の水の雨を降らせる。これで少しは助かる者も出るだろう。

「何であんな酷い事を平気で出来るの……?」

芽依は私の行動を見てあの街がどうなっているか察した様だ。

「これ以上犠牲者を出さない為にもここでシュウを討ちます」

カクカミは速度を落とさずに突き進む。丘を越え森を飛び越えてようやく《遠隔視野》で土煙を捉えることが出来た。

走っているのは大きなタイヤが前に二輪後ろに八輪もあるトラックの様な車だ。
屋根には人が持つ事が出来ない程大きな銃が備え付けられていて、車が揺れる度に銃身が上下に動いていた。

「見つけたわ」
「僕が魔法を撃つよ」
「いいえ、私がやるわ」

ウルゼイドの学校で開発した魔法を使ってあれを止める事にする。

距離はかなり離れているが術式を組み替えれば威力を下げずに命中させる事はできる筈だ。

詠唱を始める。

周囲に人の住んでいる様子はなく、多少地形が変わっても問題は無い。最大出力で良さそうだ。

あそこに乗っているのは大量殺人を何とも思わない者だ。
世界に再び兵器を持ち込んだ悪魔だ。

この世界に機械は要らない。魔法があるのだから。

思い知りなさい。これが魔法の力よ。

術式が完成して私の目の前には眩い光の球が浮かんでいる。《遠隔視野》を使って走る車に狙いを定め魔法を解き放つ。

「《フィルトルーク》!」

魔法の名を叫ぶと、光球は弾けて光の帯となって一直線に飛んでいく。
空気が燃え、大地を引き裂いて一点を目指す。
光線は背を見せて走る車を飲み込んでそのまま遥か彼方の山に命中。大爆発を起こして山を跡形もなく消し飛ばした。

『流石はハル様。お見事です』

カクカミが誇らしげに嘶く。

『我々の出番はありませんでしたね』

追いついてきたメトが息を弾ませながら言っている。

「しまった……」
「どうかしたの?母さん」
「これではシュウを仕留めたか分からないわ」

怒りに任せて車を消滅させてしまった。
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