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竜の国
強者
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「私は泉の精霊ハル。あなたはズロヴァストですね?」
『如何にも。名高き泉の精霊にお会いできて嬉しく思う』
丁寧に返してくるが敵意の様な感情は痛いほど伝わってくる。
「ギルディンを癒したのは私です」
『素晴らしい!あの傷を癒せるとは……やはり其方は期待通り、いやそれ以上だ‼︎』
そう言って天に向かって咆哮を上げる。
空気が、大地が激しく震える。トコヤミとエレネージュは地面押さえ付けられる様に伏せ、芽依は胸を押さえて蹲り、グラムは耳を塞ぐ様にしながら気を失ってしまう。ラーニは泡を吹いて気絶していた。クオンですら頭を抑えて膝を着いている。
彼は喜んでいるだけなのだろう。ただの一吠えでこれほどに威力がある者は初めて見る。
「それで、あなたは私と仲良くするつもりは無さそうだけど、どうするつもりかしら?」
私はトコヤミから降りて前に出ると、何ともない私を見下ろして口を歪めて笑う。
『戦を所望する』
「戦……」
その手合いか。
『我は最強を望んだ。故に今に至る。しかしそれを証明する術が無かったのだ。其方の様な強者がいなかった』
望んで得られた力?まさか……
『あなたは転生者?』
『ほう?懐かしい言語を……其方もか』
やっぱり。彼は私と同じだ。日本語で話したら同言語で返してきた。
『神に望んだのだからあなたが最強である事は間違い無いのでしょう。それを多くの生命を巻き込んでまで確認する事は無いわ』
『いいや。神は言っていた。自力にて強者に至った泉の精霊の力は未知数だと。我は全てにおいて最強である事を証明したいのだ』
つまり、個々人の力は勿論のこと、勢力としても最強である事を示したいのね。彼はその為には生命を奪う事を躊躇わない様だ。
『それを証明……あなたが満足する頃には多くの生命がこの世から無くなっているでしょう』
『だから何だというのだ?』
不敵に笑うズロヴァスト。強者は何をしても良いと考えているのか。自然界において強い者が弱い者を淘汰するのは普通な事だが彼の考えは少し違う。自身が生きていく事に関係の無い者を殺めると宣言している。これは認められない。
『私はあなたを止めなければいけない様ですね』
『望むところだ‼︎』
対話など不要と言いたげに語気を強めるズロヴァスト。口の中で魔力が膨れ上がっていく。
「皆、私の後ろに」
殆ど身動きの取れない全員を守る為に地面を隆起させて《硬質化》をかける。
城を跡形も無く消し飛ばした威力を見るにこれだけでは防ぎきれないだろう。何重にも重ねて展開する。
『見せてみよ!泉の精霊の力を‼︎』
膨れ上がった魔力が放たれ、硬質化された土壁は次々と破壊されていく。
このままではいけないわ。
壁が破壊される前に対抗しなければ……
フィルトルークであの魔力を少しでも弱めれば防ぎきれるか。
素早く詠唱を済ませて魔法を展開する。
両手を合わせて一点を貫き引き裂く様にイメージする。両断して魔力の奔流を逸らす事は出来た。しかし……
「くっ……」
二つに裂いた筈の片方が収束して私の腹部を貫いた。もう片方はそのまま最後の壁を吹き飛ばして軌道を変え後ろの皆の方へと飛んでいく。
マズい。まだみんな動けていない。
何とかしなければ。
更に壁を作ろうとしたのだが次の瞬間私を貫いていた魔力が広がり身体を引き裂く。
「お、お母さん……!」
芽依が悲鳴をあげる。
私は何も出来ずに……
──優しい風と穏やかな水の流れを感じた。
泉の中に居た。
「ここは……そんな……」
私は戻って来てしまった。つまり、死んだ。
芽依は、みんなは……?
「母さん?」
「颯太?大変、どうしよう……?すぐにみんなを助けに行かなくちゃ」
あの魔力を受けて無事であるかは分からない。いや、クオンが何とかしてくれている筈よ。早く助けに行かないと!
「みんなを集めて!すぐに行かないと!」
「母さん、落ち着いて」
泉から慌てて上がろうとするが颯太が入って来て抱き止める。
「大変なの!早くしないと!」
「まずは落ち着いて、状況を詳しく話して」
「えーと、お取り込み中悪いんだけどさ、みんなは無事だから安心して?」
聞いたことのある声が岸辺から聞こえてくる。
「アルシファーナ……?」
「うん。ボクだよ」
ここにいる筈のない幼き女神が苦笑を浮かべながらぎこちなく手を振っていた。
『如何にも。名高き泉の精霊にお会いできて嬉しく思う』
丁寧に返してくるが敵意の様な感情は痛いほど伝わってくる。
「ギルディンを癒したのは私です」
『素晴らしい!あの傷を癒せるとは……やはり其方は期待通り、いやそれ以上だ‼︎』
そう言って天に向かって咆哮を上げる。
空気が、大地が激しく震える。トコヤミとエレネージュは地面押さえ付けられる様に伏せ、芽依は胸を押さえて蹲り、グラムは耳を塞ぐ様にしながら気を失ってしまう。ラーニは泡を吹いて気絶していた。クオンですら頭を抑えて膝を着いている。
彼は喜んでいるだけなのだろう。ただの一吠えでこれほどに威力がある者は初めて見る。
「それで、あなたは私と仲良くするつもりは無さそうだけど、どうするつもりかしら?」
私はトコヤミから降りて前に出ると、何ともない私を見下ろして口を歪めて笑う。
『戦を所望する』
「戦……」
その手合いか。
『我は最強を望んだ。故に今に至る。しかしそれを証明する術が無かったのだ。其方の様な強者がいなかった』
望んで得られた力?まさか……
『あなたは転生者?』
『ほう?懐かしい言語を……其方もか』
やっぱり。彼は私と同じだ。日本語で話したら同言語で返してきた。
『神に望んだのだからあなたが最強である事は間違い無いのでしょう。それを多くの生命を巻き込んでまで確認する事は無いわ』
『いいや。神は言っていた。自力にて強者に至った泉の精霊の力は未知数だと。我は全てにおいて最強である事を証明したいのだ』
つまり、個々人の力は勿論のこと、勢力としても最強である事を示したいのね。彼はその為には生命を奪う事を躊躇わない様だ。
『それを証明……あなたが満足する頃には多くの生命がこの世から無くなっているでしょう』
『だから何だというのだ?』
不敵に笑うズロヴァスト。強者は何をしても良いと考えているのか。自然界において強い者が弱い者を淘汰するのは普通な事だが彼の考えは少し違う。自身が生きていく事に関係の無い者を殺めると宣言している。これは認められない。
『私はあなたを止めなければいけない様ですね』
『望むところだ‼︎』
対話など不要と言いたげに語気を強めるズロヴァスト。口の中で魔力が膨れ上がっていく。
「皆、私の後ろに」
殆ど身動きの取れない全員を守る為に地面を隆起させて《硬質化》をかける。
城を跡形も無く消し飛ばした威力を見るにこれだけでは防ぎきれないだろう。何重にも重ねて展開する。
『見せてみよ!泉の精霊の力を‼︎』
膨れ上がった魔力が放たれ、硬質化された土壁は次々と破壊されていく。
このままではいけないわ。
壁が破壊される前に対抗しなければ……
フィルトルークであの魔力を少しでも弱めれば防ぎきれるか。
素早く詠唱を済ませて魔法を展開する。
両手を合わせて一点を貫き引き裂く様にイメージする。両断して魔力の奔流を逸らす事は出来た。しかし……
「くっ……」
二つに裂いた筈の片方が収束して私の腹部を貫いた。もう片方はそのまま最後の壁を吹き飛ばして軌道を変え後ろの皆の方へと飛んでいく。
マズい。まだみんな動けていない。
何とかしなければ。
更に壁を作ろうとしたのだが次の瞬間私を貫いていた魔力が広がり身体を引き裂く。
「お、お母さん……!」
芽依が悲鳴をあげる。
私は何も出来ずに……
──優しい風と穏やかな水の流れを感じた。
泉の中に居た。
「ここは……そんな……」
私は戻って来てしまった。つまり、死んだ。
芽依は、みんなは……?
「母さん?」
「颯太?大変、どうしよう……?すぐにみんなを助けに行かなくちゃ」
あの魔力を受けて無事であるかは分からない。いや、クオンが何とかしてくれている筈よ。早く助けに行かないと!
「みんなを集めて!すぐに行かないと!」
「母さん、落ち着いて」
泉から慌てて上がろうとするが颯太が入って来て抱き止める。
「大変なの!早くしないと!」
「まずは落ち着いて、状況を詳しく話して」
「えーと、お取り込み中悪いんだけどさ、みんなは無事だから安心して?」
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「アルシファーナ……?」
「うん。ボクだよ」
ここにいる筈のない幼き女神が苦笑を浮かべながらぎこちなく手を振っていた。
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