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神様の人形
神々
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目を覚ましたら真っ白な空間だった。
「また来ちゃった…。」
起き上がって周りを見渡す。誰もいない。
今度こそ死んじゃったかなぁ。
「やあやあお疲れさん。」
声のした方に振り返ると知らない人が立っていた。綺麗な銀髪の男性。線が細くて背も高くない。中性的な印象だ。
「神様、ですか?」
「そうだよ。僕の名前はアルメディオ。真実を司る神だよ。君の事はずっと見ていたよ。良く頑張ったね。」
「アルメディオ様、みんなは無事ですか?」
「うん。君のお陰で全員無事だよ。自分の事より仲間の事を心配するなんて、本当に君は優しい子だね。」
「いえ…でも、良かった…。」
安心したら気が抜けちゃった。その場に座り込んでしまう。その様子を見てアルメディオ様はニコリと笑った。
「自分の事は気にならないのかい?」
「やっぱり死んじゃいましたか…?」
「君は仮死状態だね。暫くは目を覚さないよ。」
「そうですか…。」
「嬉しくないのかい?」
「嬉しいですよ。死なないって約束しましたからね。」
いつか目を覚ますのならいいよ。みんなにまた会えるなら…。
「それで、ミナはどう思う?エンゲーラのこと。」
「え?…その前にあれは本物の神様だったんですか?」
「そうだよ。分身とはいえあれは本物。君達は創造主たる神様を殺しちゃったんだ。」
「それは……」
仕方がなかったと言って許してもらえるとは思えない。何か罰を受けるのかな…。
「これから君は裁判にかけられる。」
「裁判?」
「そう。神々の前で。今回の君の行いをどう受け止めるか。」
「それは私だけですか?」
「それもこれから話し合うんだよ。」
他のみんなに危害が及ぶ様な事だけは避けたい。もし私が有罪?でも他のみんなには何もしないで欲しい。
それから神様達には聞きたい事が沢山ある。
「アルメディオ様、アウレリア様はこちらに来られないのですか?」
「アウレリアはまだ暫く来れないかな。ミナを転生させた神だから、裁判にも出られない。何か聞きたい事があったのかな?僕で良ければ代わりに答えるよ。」
アウレリア様に直接聞きたかったけど、アルメディオ様に聞いてみることにする。
「エンゲーラ様は私達を神様同士が争う為の道具、駒と言っていましたけどそれは本当ですか?」
「だとしたらどうするのかな?」
「私は他の転生者と争う気はありません。そのつもりで転生させたのなら私はその役目を果たす事ができません。」
「ミナならそう言うよね。大丈夫、安心して。エンゲーラの言った事は彼の勝手な解釈だから。」
「そう…ですか。」
じゃあ私達は何の為に転生させてもらったのだろう?
初めてアウレリア様に会った時、生前に沢山の人を救ったからと言われたけど、何かして欲しいとは言われなかった。
「僕から言えるのはアウレリアを信じてあげてとだけ、かな。」
「はい。」
それはもちろん。今までも沢山助けてもらったし、アウレリア様が殺し合いをさせる為に転生させたなんて思いたくない。
「アルメディオ様は私達を転生させた本当の理由を知っているのですか?」
「まあ、ね。一応真実の神だから。」
私の横に座るアルメディオ様。
「僕はね、マサキを転生させた神なんだ。」
「そうだったんですか…。」
「マサキには辛い思いを沢山させてしまったけど、今は幸せにしているから転生させて良かったと思ってる。」
アルメディオ様は語る。
「僕達の思惑なんて君達は気にする必要は無いんだよ。君達はアスティアで好きな様に生きていけばいい。アウレリアもそう思っている筈だよ。」
「ありがとうございます。」
確かにあれこれ考えても仕方ない。
神様達にどんな思惑があったって地上で生きているのは私なんだ。
私は私のやりたい事をするんだ。
「よし、決意は固まった様だね。それじゃあ審議の間に行こうか。」
アルメディオ様が私の肩に手を置くと、フワリと一瞬の浮遊感の後に違う空間に転移していた。
周りに沢山の人の気配がする。見渡しても周りの人をしっかりと見る事ができない。朧げに誰かが居る気がするだけだ。
アルメディオ様の姿も見えない。
「この者は神を殺した。許される事ではない。」
声のした方を向いてみたけどよく分からない。
「しかしエンゲーラは禁忌を犯した。本来は人が神を殺めるなどできぬ事。地上に降りた彼奴の自業自得である。」
「本来ならば地上に干渉する事は禁じられている。」
「この者は危険だ。人の域を越えている。」
周りから一斉に声を浴びせられる。
声が私の体に突き刺さる度に全身が強張り身動きが出来なくなる。
周りを見渡そうとしても俯いてしまって顔を上げる事ができない。
物凄い力で押さえ付けられているみたい。
「いずれ我らをも脅かす存在になる。」
「これに与した者達にも厳正なる処分を。」
それは…ダメだ!!
「あ、あの!私の言い分も聞いてもらえませんか?」
体は動かなかったけど声は何とか出せた。
「何と…」
「我らの前で声を発するとは…」
「やはり危険だ。」
今反論しないとみんなにまで何かされるかもしれない。
神様だって意見がバラバラなんだ。私の味方になってくれる神様だっているはずだ。ここで何も言わずに俯いて、ただ言われた事を受け入れるだけなんて嫌だ!
「聞いてください!」
ふと体が軽くなった。物凄い力で押さえ付けられていた何かが急に、一切無くなった。
顔を上げて見渡す。今度は周りにいる人達の顔がはっきり見えた。容姿は人と変わらない。みんな一様に美形で、白い服を着ている。何十人いるのか、すごい数だ。全員驚きの表情で固まっている。
「まずは名前を名乗りなさい。」
嗄れた声がどこからか聞こえてきた。
「私はアウレリア様に転生させていただいたミナと言います。発言をお許しください。」
しん、と静まり返る神様達。
「続けなさい。」
さっきの声が話す事を許してくれた。
「私は何も分からずにアスティアに来ました。神様達が何の目的で私達を転生させたかは知りません。でも、折角ここで生きていく事ができる様になったのに理不尽に殺されるなんて嫌です。殺されそうになったから戦っただけです。それが人でも神でも私は同じ事をしたでしょう。」
できるなら殺したくはない。話し合いで解決できるならそれが一番いい。でもあの場合は仕方が無かったと思う。
「道理である。」
「正当な理由だ。」
私の言う事に賛同してくれる神様がいる。
「もし私がした事が罪なら、受け入れます。でも私以外の人達には何もしないでください。」
静まり返る神々。
「また来ちゃった…。」
起き上がって周りを見渡す。誰もいない。
今度こそ死んじゃったかなぁ。
「やあやあお疲れさん。」
声のした方に振り返ると知らない人が立っていた。綺麗な銀髪の男性。線が細くて背も高くない。中性的な印象だ。
「神様、ですか?」
「そうだよ。僕の名前はアルメディオ。真実を司る神だよ。君の事はずっと見ていたよ。良く頑張ったね。」
「アルメディオ様、みんなは無事ですか?」
「うん。君のお陰で全員無事だよ。自分の事より仲間の事を心配するなんて、本当に君は優しい子だね。」
「いえ…でも、良かった…。」
安心したら気が抜けちゃった。その場に座り込んでしまう。その様子を見てアルメディオ様はニコリと笑った。
「自分の事は気にならないのかい?」
「やっぱり死んじゃいましたか…?」
「君は仮死状態だね。暫くは目を覚さないよ。」
「そうですか…。」
「嬉しくないのかい?」
「嬉しいですよ。死なないって約束しましたからね。」
いつか目を覚ますのならいいよ。みんなにまた会えるなら…。
「それで、ミナはどう思う?エンゲーラのこと。」
「え?…その前にあれは本物の神様だったんですか?」
「そうだよ。分身とはいえあれは本物。君達は創造主たる神様を殺しちゃったんだ。」
「それは……」
仕方がなかったと言って許してもらえるとは思えない。何か罰を受けるのかな…。
「これから君は裁判にかけられる。」
「裁判?」
「そう。神々の前で。今回の君の行いをどう受け止めるか。」
「それは私だけですか?」
「それもこれから話し合うんだよ。」
他のみんなに危害が及ぶ様な事だけは避けたい。もし私が有罪?でも他のみんなには何もしないで欲しい。
それから神様達には聞きたい事が沢山ある。
「アルメディオ様、アウレリア様はこちらに来られないのですか?」
「アウレリアはまだ暫く来れないかな。ミナを転生させた神だから、裁判にも出られない。何か聞きたい事があったのかな?僕で良ければ代わりに答えるよ。」
アウレリア様に直接聞きたかったけど、アルメディオ様に聞いてみることにする。
「エンゲーラ様は私達を神様同士が争う為の道具、駒と言っていましたけどそれは本当ですか?」
「だとしたらどうするのかな?」
「私は他の転生者と争う気はありません。そのつもりで転生させたのなら私はその役目を果たす事ができません。」
「ミナならそう言うよね。大丈夫、安心して。エンゲーラの言った事は彼の勝手な解釈だから。」
「そう…ですか。」
じゃあ私達は何の為に転生させてもらったのだろう?
初めてアウレリア様に会った時、生前に沢山の人を救ったからと言われたけど、何かして欲しいとは言われなかった。
「僕から言えるのはアウレリアを信じてあげてとだけ、かな。」
「はい。」
それはもちろん。今までも沢山助けてもらったし、アウレリア様が殺し合いをさせる為に転生させたなんて思いたくない。
「アルメディオ様は私達を転生させた本当の理由を知っているのですか?」
「まあ、ね。一応真実の神だから。」
私の横に座るアルメディオ様。
「僕はね、マサキを転生させた神なんだ。」
「そうだったんですか…。」
「マサキには辛い思いを沢山させてしまったけど、今は幸せにしているから転生させて良かったと思ってる。」
アルメディオ様は語る。
「僕達の思惑なんて君達は気にする必要は無いんだよ。君達はアスティアで好きな様に生きていけばいい。アウレリアもそう思っている筈だよ。」
「ありがとうございます。」
確かにあれこれ考えても仕方ない。
神様達にどんな思惑があったって地上で生きているのは私なんだ。
私は私のやりたい事をするんだ。
「よし、決意は固まった様だね。それじゃあ審議の間に行こうか。」
アルメディオ様が私の肩に手を置くと、フワリと一瞬の浮遊感の後に違う空間に転移していた。
周りに沢山の人の気配がする。見渡しても周りの人をしっかりと見る事ができない。朧げに誰かが居る気がするだけだ。
アルメディオ様の姿も見えない。
「この者は神を殺した。許される事ではない。」
声のした方を向いてみたけどよく分からない。
「しかしエンゲーラは禁忌を犯した。本来は人が神を殺めるなどできぬ事。地上に降りた彼奴の自業自得である。」
「本来ならば地上に干渉する事は禁じられている。」
「この者は危険だ。人の域を越えている。」
周りから一斉に声を浴びせられる。
声が私の体に突き刺さる度に全身が強張り身動きが出来なくなる。
周りを見渡そうとしても俯いてしまって顔を上げる事ができない。
物凄い力で押さえ付けられているみたい。
「いずれ我らをも脅かす存在になる。」
「これに与した者達にも厳正なる処分を。」
それは…ダメだ!!
「あ、あの!私の言い分も聞いてもらえませんか?」
体は動かなかったけど声は何とか出せた。
「何と…」
「我らの前で声を発するとは…」
「やはり危険だ。」
今反論しないとみんなにまで何かされるかもしれない。
神様だって意見がバラバラなんだ。私の味方になってくれる神様だっているはずだ。ここで何も言わずに俯いて、ただ言われた事を受け入れるだけなんて嫌だ!
「聞いてください!」
ふと体が軽くなった。物凄い力で押さえ付けられていた何かが急に、一切無くなった。
顔を上げて見渡す。今度は周りにいる人達の顔がはっきり見えた。容姿は人と変わらない。みんな一様に美形で、白い服を着ている。何十人いるのか、すごい数だ。全員驚きの表情で固まっている。
「まずは名前を名乗りなさい。」
嗄れた声がどこからか聞こえてきた。
「私はアウレリア様に転生させていただいたミナと言います。発言をお許しください。」
しん、と静まり返る神様達。
「続けなさい。」
さっきの声が話す事を許してくれた。
「私は何も分からずにアスティアに来ました。神様達が何の目的で私達を転生させたかは知りません。でも、折角ここで生きていく事ができる様になったのに理不尽に殺されるなんて嫌です。殺されそうになったから戦っただけです。それが人でも神でも私は同じ事をしたでしょう。」
できるなら殺したくはない。話し合いで解決できるならそれが一番いい。でもあの場合は仕方が無かったと思う。
「道理である。」
「正当な理由だ。」
私の言う事に賛同してくれる神様がいる。
「もし私がした事が罪なら、受け入れます。でも私以外の人達には何もしないでください。」
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