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平穏

Aランク昇格試験

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ユーシアさんは初めから私達全員をAランクに上げる為にテュケ君とハナちゃんのランクを上げてくれたみたい。

「いよいよかー!腕がなるな!」
「え?マサキさんも?」
「ええ、私もよ。」

マサキさんとネネさんもBでランクを止めていたらしい。理由は「みんなでAランク試験を受けられたら楽しそう」だから。

本来ならルーティアさんと同じSランクの2人が一緒だなんて、本当にいいのかな?

「初めから計画していた事ですので大丈夫ですよ。」

ユーシアさんは「優秀な冒険者が多くてギルドマスターのやり甲斐があります」と笑っていた。

「それで試験って何をやるの?」
「はい。皆さんには難易度の高い依頼を1つやっていただきます。」

このパーティならどんな依頼でもこなせそうだよ。

「内容は違法奴隷取引の摘発です。」
「それは…国が動かなければならない事案では…?」

ユキさんがユーシアさんに聞く。

「この依頼は国王陛下からの依頼です。国内の自浄作用が働かない案件なので、信頼のおける冒険者にお願いしたいとの事でしたので皆さんを選ばせていただきました。」
「なるほどね、ついでにリアード国内の不安事を解消しようという事ね。」

まあ、それが冒険者だからどんな依頼でも受けるけどね。

「質問いいか?」
「なんでしょう?勇者にソックリさんのマサキさん。」

手を上げて質問をするマサキさんに微笑みながら聞くユーシアさん。

ユーシアさんはマサキさんが本物の勇者だって知っているんだろうなぁ。

「具体的なターゲットの指定がないけど、違法に奴隷取引を行なっている奴をしょっ引いてくればいいのか?」
「はい。ただし個人でやっている者ではなく組織的に行っている者達をお願いします。評価は摘発規模を見て行います。」
「じゃあ私も質問いいかしら。あくまで摘発?殲滅じゃダメなのよね?」

ネネさん…殲滅って。

「頭を押さえていただいて、殲滅した組織が違法である証明ができるなら構いません。」

いいんだ…。

「成る程…それだと完全な力技って訳にはいかないか。」

それを聞いたリオさんは腕を組みながら考えている。

あれ、これってリオさんとネネさんに頭脳労働を任せておけば簡単に済ませられるんじゃない…?

「みんなで良い知恵を出そうじゃないか。」

私の考えを察したかの様にハナちゃんが言う。

「そ、そうだね。みんなで頑張ろう!」
「おう!俺も頑張るよ!」

テュケ君も気合十分だ。

「今回の査定、監督はルーティアさんにお任せしようと思います。補佐にはウェスターも加わってください。期限は明日から1ヶ月間です。リアード国内の違法奴隷取引組織の摘発、宜しくお願いします。」

という訳で今日は解散。テュケ君とハナちゃんの冒険者証を受け取ってみんなでエリストの家に行く事になった。もう日は落ちていて晩ご飯の時間だ。

ユーシアさんは以前にルーティアさんにAランク試験の監督をお願いしていたそうで、明日からついてきてくれる事になった。

監督者って身内でも大丈夫なのかな?

「この試験自体あってない様なものだからいいんじゃない?」

そういえばレギウスさんも推挙できるって言ってたし、試験自体がいらないって事かな?
まあでも普通は試験を受けるものだし、普通にやった方がランクアップした気になれるよ。

家でご飯を食べる事にするけど、準備は万端で、ルーティアさん達エリストの先輩も一緒だ。

そういえばいつもいきなり家に戻ってきてもご飯がちゃんと用意されているのはなんでだろう?と思ったら、合間を見てリオさんが連絡を入れてくれていたそう。

「お前らもいよいよAランクか。」
「戦闘力ならSだもんねー。楽勝だよ。」
「ミナ達なら問題ないだろう。」

ダキアさん、アリソンさん、クロウさんにそれぞれ激励を受ける。

「今回の依頼はかなり広い範囲を動き回る事もあるだろうし、私とウェスターだけでは見きれないから3人にも手伝ってもらう事にした。身内だからって甘い評価はしないからな。」

ルーティアさんの宣言にみんな頷く。
ダキアさん達もついてきてくれるんだね。監督者だけど何か心強いよ。

「明日は何から調べる?」

リオさんが明日からの行動方針を聞いてくる。

「まずは違法取引の情報を仕入れないとですよね。奴隷商の人に聞いてみましょうか?」
「蛇の道は蛇ね。」
「今回は制限をつけられていないから全力でやって良いのですよね?」

ユキさんの言う通り、ウルちゃんもオル君も禁止されていないし能力の制限もない。それなら違法奴隷取引組織の尻尾さえ捕まえればオーバーブースト鑑定で一網打尽にできそうだ。

「リアードから違法取引を一掃できそうね。」
「それが目的だったりしてな。」

ネネさんとマサキさんは笑いながら言っているけど、事実その通りなんだろうね。

「それからこの依頼は監督者も協力していい事になっているから私達も実動部隊として扱っていいからな。」
「いよいよ試験の意味を成さなくなってきたわね。」

違法奴隷取引という事は人攫いとかが横行しているのだからこれは人命に関わる事だし、迅速に解決する事が大事だからだよね。とにかく確実に解決していこうと思う。

ーーーー

次の日。私達はリアード国王都アルスティルトに転移でやって来た。

目指すは奴隷商。複数の奴隷商から情報を入手するために手分けして聞き込みをする事にする。

私、ユキさん、リオさん、ソラちゃんのチームとマサキさん、ネネさん、ハナちゃん、テュケ君のチームに分かれる事に。

「こうして見ると子供だらけだな。」

ダキアさんが全員を見ながら不安そうに呟いた。
大人として扱われそうなのはユキさん、リオさん、ネネさんくらいかな。テュケ君も身長はあるし黙っていれば大丈夫そう。

「変な人に目をつけられない様にねー。」
「気をつけます。」

私達のチームにはダキアさんが、マサキさん達のチームにはクロウさんが一緒に来てくれるそう。

早速聞き込みを始める。

そういえば奴隷商なんて初めて行くね。普通は用事のない所だし、好んで行くような所じゃないから当然だけど。

アルスティルトには奴隷商は複数いるのでまずは適当に一番大きな所に行ってみた。

私達が入ったのはくすんだ赤色をしたサーカスのテントみたいな所だった。

「いらっしゃいませ。旦那、どういった者がご入用で?それともお売り頂けるのですかな?」

真っ先にダキアさんに話しかけてくる奴隷商のおじさん。

あ、私達って奴隷だと思われてる?
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