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1巻
1-3
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その日の夕飯はキノコづくしで、香りが良くて凄く美味しかった!
驚いたのはキノコごはんが出てきた事。お米もあるんだね。
奥さんにお願いしてお湯を貰い、自室で体を拭いて干してあった服に着替え、ベッドに入る。
明日は寝巻きも買わなくちゃ。必要なものを思い浮かべていたらいつの間にか寝てしまっていた。
朝。今日も早く起きる事が出来た。裏庭で洗濯をしてごはんを食べたら買い物へ出発だ!
服屋さんへ行って服を購入。新品は物凄く高いけど、古着なら手頃な値段で買う事が出来る。外で着る動きやすそうな服を二着、部屋着を二着、あと新品の下着を四枚買い足しておいた。
それと冒険者証を首から下げるため紐も購入。早速通して首にかけて、冒険者証は服の中へしまった。次は金物屋さんで小さな鍋とかシャベル、ランプと燃料を購入。フォークやスプーン、薄い金属製の皿があったので、こちらも数枚買っておく。
どのお店も「お嬢ちゃん可愛いからサービスしてあげるよ」なんて言って値引きしてくれた。
商売上手!
一度宿に帰ってお昼ごはんを食べよう。お昼はキノコシチューとサラダとパン。しばらくキノコ祭りかな? お代を払おうとしたら、昨日のキノコ代だけでお釣りが来るって受け取ってもらえなかった。なくなったらまた採ってこよう。
ごはんを美味しくいただいたら一度自室に戻って狩りの準備。買ったものは全てインベントリに入れているので、防具を着けてショートソードを装備するだけ。あ、レベルってどうなったかな?
おお! 上がっている!
レベルの横に※がついているのは何だろうと思ったら、クラスチェンジが可能なのだそう。
よし、スカウトになろう! そう決めて念じる。
レベルが上がってステータスが増えた! スカウトになった事で伸び方が少し変わったみたい。筋力が十七、耐久力が一六、敏捷性が二十一、知力が二十、魅力が六十四になった!
技能は索敵と弓術が増えている。レベルは全部一。弓矢も使えるんだね。試してみたいし買いに行こう。
早速武器を扱っているお店に行ってみた。弓は長弓から短弓まで揃っている。私だと長弓はちょっと扱い難いかも。なので短弓と矢を二十本、矢を入れる矢筒を購入。ここのお店もサービスをしてくれて、矢筒がタダに。笑顔でお礼を言うと「またサービスするから買いに来てね」と言ってくれた。今日の買い物は全部で七万レクスで済んじゃった。大分値引きしてくれたんだろうなぁ。贔屓にしなくちゃ申し訳ない。
弓矢はすぐには使わないのでインベントリにしまっておいた。
お昼も結構過ぎちゃったけど、今からスライム退治に行こう。
門で衛兵のおじさんに挨拶をして森へ入る。少し歩くとすぐスライムを見つける事が出来た。
狩っても狩っても全然減らないね。私としては有難い。奥に進みながらスライムを十匹退治した。
気づけば木々の間隔が狭くなるギリギリまで来ていた。昨日あんな事があったからこれ以上は奥に行きたくないな。とりあえず覚えたての索敵を使用してみる。
大体直径百メートル内の大きな動物を感知出来るらしい。ただ、隠蔽や隠密などの技能で感知不能になっている事もあるそう。うん、大きな動物はいないみたいだ。
「おい、人間」
キョロキョロと周りを見回していると、ガサガサと近くの茂みから覆面にフードを被った小柄な人が出てきた。背中には弓を背負っている。早速感知出来なかったね。
「相変わらず間抜けだな」
相変わらずって、ひどい。ゴブリンさんは敵意がなく、警戒もしていなかった。
「昨日のゴブリンさんですか?」
「ああ、お前のくれた薬草のおかげで長は助かった。礼を言う」
「いえいえ、お役に立てて良かったです」
「今日はお前に渡すものがあってきた」
私に会うためにこんなところまで来てくれたんだ。
「危なくなかったんですか?」
「俺だけなら何とでもなる」
この人、じゃなかった。このゴブリンさんは他のみんなより強いのかな?
ゴブリンさんは腰の袋から腕輪とペンダントを取り出し、こちらに投げて寄こした。
「これは?」
「かなり前に拾ったものだ。人間を襲って奪ったものではない」
そうなんだ。ふと気になった事を聞いてみる。
「やっぱり人間を襲う事があるんですか?」
「俺達の部族では、襲われない限り人間とは戦わない。人間を殺すと復讐に来る。厄介だからだ」
なるほど。ちょっと安心した。
「それで、これは貰っていいのですか?」
「俺達じゃ使い道がわからない。人間のお前なら使えるだろう」
「じゃあ、頂いておきますね」
後で鑑定してみよう。
「お前、森を歩くのが下手だな。俺が教えてやる」
そりゃ、森の深くへ入ったのは昨日が初めてだからね。でもはっきり言われると傷つく。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
この際だから教えてもらおう。そうしてゴブリンさんから足跡を残さないように歩く方法や、他の生き物の痕跡の見分け方、気配を消して潜むコツを教えてもらった。実践をしながら少し歩いているとゴブリンさんが急に足を止めて伏せる。
「何かありましたか?」
「ヤツの気配がする。長を襲ったスライムだ」
私の質問に小声で答えるゴブリンさん。
「猛毒を持っている大きなスライムの事ですよね? すぐに離れた方がいいんじゃないですか?」
「誰かが襲われている。恐らく人間だ」
ゴブリンさんは地面に耳をつけながら言う。
「戦っているんですか?」
「足音に落ち着きがない。取り乱しているし、戦いになっていないな」
そんな事までわかるんだ。
「援護に行きます。ゴブリンさんは帰ってください」
「よせ、お前では勝てない」
「勝てなくても逃げる手助けは出来ます!」
人が襲われているのがわかった以上、放っておく事は出来なかった。
「仕方がない、俺も手伝ってやる。だが俺は遠くから援護するだけだ。無理をするなよ」
「ありがとうございます!」
無茶な真似をしようとしている私を見兼ねたのかもしれない。
本当にいい人……じゃなかった、いいゴブリンさんだ。
走りながらスライムの特徴を教えてもらう。スライムは黄色で随分と大きいらしく、こちらを認識したら体の一部を飛ばして攻撃してくるそうだ。動きは普通のスライムよりは速いけど、走れば逃げ切れるみたい。猛毒は体に触れるだけで重体に陥る可能性があり、その場合は仲間に担いで逃げてもらうしかない。
きっと身動きが取れなくなるほどの毒なんだろう。気をつけなくちゃ。
ほどなくしてそこに辿り着いた。山のように見える黄色いゼリー状の物体がゆっくり動いている。
えぇ……大きすぎない? 森の木が七、八メートルくらいだとして、その一・五倍はあるんだけど。
スライムのすぐ近くには剣を振り回している十四、五歳くらいの少年が二人。その後ろにはグッタリと横たわるローブ姿の女の子。女の子は猛毒にやられているみたいだ。早く助けないと!
私は近くにあった大きめの石を抱えて走る。目指すはスライムの手前数メートルにある岩だ。
「私が引きつけますから、倒れている子を連れて逃げてください!」
少年達にそう言うと、抱えていた石を思い切り岩に打ちつけた。
岩に石を打ちつけたのは咄嗟に思いついたからだ。この方が振動が伝わるかもしれない。
何度か繰り返しているとスライムはこちらに向かってきた。何とか釣れたらしい。
「だめだ! 君一人置いて逃げられないよ!」
金髪のツンツンヘアーの少年が拒否する。
「大丈夫! 皆さんが逃げたら私も逃げます。その間、注意を引くだけだから!」
「でも――」
「あの子の言う通りにしよう。早くニアを医者に診せないとヤバい」
茶髪の少年が金髪の少年を制して言う。
「すまない! 君も気をつけて!」
そう叫ぶと二人は女の子を抱え上げ、街の方へ走っていった。
スライムも一度動きを止めたかと思ったら、こちらに向かって近づき始める。私は持っていた石を捨てて身構えた。あとは上手く引きつけつつ、逃げ――
突然、スライムからバスケットボールくらいの弾が撃ち出される! ビックリして岩の陰に隠れた。撃ち出されたのは体の一部。岩に衝突してベシャリと音が聞こえたので岩を見たら、ジュワジュワと音を立てて崩れていく。嘘! 毒だけじゃないの⁉
こんなものをまともに喰らったら、あっという間に溶かされて即死だろう。
我ながらなんて無茶な事をしてしまったんだろう。もう盾になる岩はない。体の一部を飛ばす予備動作は全然なかったし、躱せる自信がなくて足がすくむ。こんなところで死ぬなんて……嫌だ! 絶対生き残ってやるんだ!
私の武器ではコアを狙うのは無理。でも倒す必要はない。動きもそう速くないから撃ち出してくる弾と体の一部に注意して逃げ切ればいいんだ。
と、すぐに次の弾が撃ち出されるけど、身構えていたおかげで反応出来た。余裕をもって回避に成功。警戒したままジリジリと後退する。命を懸けたドッジボールだ。集中、集中。
木の陰から矢が飛んできてスライムの体に突き刺さるものの、あっという間に吸収されてしまう。
ゴブリンさんの矢はダメージにならない。きっとわかっていて、注意を引くためにやってくれている。
巨大なスライムだけあってコアもかなり大きい。五十センチくらいあるんじゃないかな。集中して様子を見ていると、コアの様子がおかしい事に気づく。小刻みに震えていたかと思ったら二つに分裂した。いや、正確にはまだ分裂してなくて、二つはくっついている状態だ。そしてまた小刻みに震え出した。あのコア、この状態で鑑定出来ないかな?
【ヒュージヴェノムゼリー】レベル:二十 生命力:二千五百/二千五百 ポイゾナススライムの変異種。巨大化しており分裂間近。
ひょっとして鑑定って生き物にも出来るの? と、それは置いておいて。今はスライムの生命力をどうやって削ればいいのか、だ。コアを直接攻撃するには物凄く長い武器が必要になる。そんなもの用意出来るわけがない。
じゃあ地道にゲルの部分を剥がしていくか――いや、分裂間近って、もしかして?
スライムが体の一部を飛ばしてくる。今度はさっきよりも小さな速い弾だ! 何とか避けられたけど、間髪容れずに二発目として大きな弾を撃ってくる!
避けきれない! 思わず両腕を交差して防御の姿勢をとったものの、二発目の攻撃はこなかった。飛んできたスライム弾に、飛来した矢が衝突したのだ。スライム弾は粉々に吹き飛んで、スライム本体を削り取った。頭の中でキンコンとチャイム音が鳴り響く。今のが武技ってヤツかな? もしかして今のチャイムはゴブリンさんの武技を習得しちゃったって事だろうか。
「おい、ボサッとするな。もっと距離を取れ」
ゴブリンさんは二本目の矢を番えながら近づいてきた。
「ありがとうございます! 今の技って、何回くらい使えそうですか?」
「あと二発がやっとだ。奴を仕留めるには全然足らない」
「それで森の木を倒せたりしますか?」
「やれるぞ。何を狙っている?」
「このスライムは分裂しようとしています。削るのではなく、大きくして分裂させちゃいましょう」
「わかった」
「なるべく大きな木を倒してください。スライムの誘導にもなります!」
私はジリジリと下がり続けて十メートルくらい距離をとった。近くの木の枝や投げやすそうな石を拾い集める。ゴブリンさんは音もなく後退すると、一番近くにあった大きめの木の根元に向かって先程の技を放つ。矢が衝突すると幹の半分が吹き飛び、メキメキと凄い音を立てて木が倒れた。
とんでもない威力だ。ゴブリンさんって実はメチャクチャ強いんじゃない?
スライムはその木に向かって移動を開始した。私も拾った木や石を投げつけて成長を少しでも早める。木に取りついたスライムはあっという間に木を呑み込んで消化を始めた。
私とゴブリンさんはやや離れた木の陰で様子を見る。コアが小刻みに震えながら無数のコアに分裂を始めた。半分になるんじゃなくていっぺんに数多く分裂するみたい。
小さくなってくれればコアを狙いやすい。
私は長めの枝を拾ってきてお手製ショートスピアを二本作っておいた。
スライムが木を完全に消化すると、分裂して小さくなったコアがバラバラに散っていき、体から分離を始めた。
「小さくなって動きが速くなっているかもしれない。気をつけろ」
ゴブリンさんが矢を番えつつ言う。私は頷き、スライムとの距離を詰める。
手にはショートスピア。地面にベッタリとくっついているスライムのコアに向かって軽く突きを繰り出す。スライムはブルリと震えて絶命した。よし! いける!
周りを確認して、飛びかかってきたりスライム弾を飛ばしてきたりする個体がいないか警戒する。
あれ? スライムの様子がおかしい。
ゲルがダラリと地面にくっついていてコアが殆ど露出した状態だ。何これ? 鑑定してみた。
【ヴェノムスライム】レベル:十 生命力:五/百 状態:瀕死 分裂に失敗したスライム。
あー失敗しちゃったか~。
スライムは殆ど動かず、ゲルでコアを覆う事も出来ずにグッタリしている。
ラッキーだ! さっさと全部倒してしまおう!
木の槍でスライムコアをどんどん突いていく。二十匹倒したところで槍が溶けて使えなくなったのでもう一本を持ってきて再開。全部で三十五匹もいた。
「おい! 一匹動いているのがいるぞ」
ゴブリンさんが指す方を見ると、素早く這いずりこちらへ向かってくる小さな個体の姿が。
右へ左へ動きつつ私に飛びかかってくる! 私は何とかそれを躱したけど体勢を崩してしまう。
ゴブリンさんが矢を放ちスライムを牽制してくれたおかげで、追撃される事はなかった。
槍を突き出してスライムを攻撃するものの、ギリギリでコアが蠢き、避けられる。
動きが良すぎる! 目が見えているのかもしれない。
【ヴェノムゼリー】レベル:十五 生命力:二百/二百
ゼリーはスライムの上位個体かな。ヤバイかも。
「距離をとれ! お前が近くにいたら狙えない」
ゴブリンさんの武技なら一撃かもしれない。でも私が距離を取るよりスライムの方が速い!
スライムは右へ左へ動いたと思ったら、突進はせず、スライム弾を飛ばしてきた!
ビー玉くらいの弾を四、いや五発。弾速はさっきの小さな弾よりもずっと速い。
身を翻して躱そうとしたけど、二発が服の袖をかすめて溶かした。続いて三発、追い撃ちがくる。
身を投げ出して避ける! 頭の中でチャイム音が聞こえて、お腹に当たるところだった弾が槍の柄に命中し、槍が真ん中から折れた。幸運が発動したんだ! 助かった!
私はすぐに起き上がろうとしたけど、足に激痛が走って動けない。
右太ももに小石が突き刺さっていた。
「痛っ……」
スライム弾の中に石のかけらを交ぜていたのだろう。傷口からジワリと血が広がる。足が少しずつ紫に変色していく。これは毒……? 痛みで他の事が考えられない。気絶しそう。
ゴブリンさんが矢を放ってスライムを牽制してくれるものの、スライムは難なくそれを躱すとトドメとばかりに私へ飛びかかってくる。
ダメだ……やられちゃう。
飛びかかってくるスライムがスローモーションのように見える。
この世界にきてまだ三日、もう死んじゃうのかな。
せっかく女神様が転生させてくれたのに、ステキな体を造ってくれたのに、溶かされて……
――イヤだ。こんなところで死んでたまるか!
無我夢中で腰の鞘からショートソードを引き抜くと、胸の前で剣を構えて狙いをつける。
そして、スライムのコアに狙いを定め、渾身の力を込めて剣を突き出す‼
腕までスライムの中に入ってしまった。でも手応えはある。コアは剣が突き刺さり、真っ二つに割れていた。
直後ドロリとスライムが溶け出して、私の上半身に降りかかる。結構重くて、仰向けに倒れた。
ゴブリンさんが駆けつけてきて顔の周りのゲルを取り除いてくれたおかげで、窒息する事はなさそう。
「おい! おい! 大丈夫か?」
返事をしたいけど呼吸するのでやっとだ。足も腕も凄く痛い。腕は火傷のように爛れていた。
「人間の助けが来た! 俺は森に戻る。コレを飲め。解毒薬だ!」
そう言って葉っぱに包んだ何かを私の胸の上に置いたゴブリンさんが、足早に森の奥へ消えていく。あぁ、お礼も言えてないのに、もうお別れなんて。せめて一言――
手を伸ばそうとしても体が動かない。
ふわりと風が舞う。空から何かが降りてきた。小柄な影だけど、目が霞んでよく見えない。
「よく頑張ったね。もう大丈夫だよ」
聞こえてきたのは女の子の声だ。
「穏やかなる風の精霊よ、清らかなる水の精霊よ。彼女を癒し護る力となれ」
足と腕の痛みが引いていく。痛みがなくなったら急激に気が遠くなってきた。
自分の手や足の状態を確かめる元気もない。やっぱり傷跡が残っちゃうかなぁ。
ダキアさんみたいに傷だらけな女の子ってちょっとヤダな。女神様にも謝らなくちゃ……
頭の中で連続で鳴り響くチャイム音を聞きながら、私は意識を失った。
優しい風が頬を撫でる。私は、目を開けた。
真っ白な天井、窓は開いておりカーテンが風でなびいている。私はふかふかのベッドに寝かされていた。部屋には椅子が二脚に机が一脚と、私が寝ているベッドがあるだけ。十畳くらいの部屋だ。
ここはどこだろう? キョロキョロと辺りを見回す。
そうだ、手と足の怪我は? 手を上げてみる。傷一つ残ってない。足は?
起き上がる。痛みはない。私は昨日買った部屋着とそっくりな服を着ていた。上は半袖のシャツ、下はカプリパンツ、どちらも白色で、古着ではなく新品のようだ。
足の状態がわかりにくいので下を脱いで確認する。良かった。痕も残ってない。
石が突き刺さっていたのを思い出し身震いしつつ、恐る恐る触ってみる。さすったり押してみたり。うん、何ともない。
ふと、いくつもの足音が近づいてきて扉が開かれる。
「あ」
「お、おう……も、もう大丈夫なのか?」
「は、はい」
扉を開けたのはダキアさんだった。アリソンさんと受付のお兄さんもいる。
慌てて手で前を隠す。
「あーー! もうっ女の子の部屋に入る時はノックしなさいよー!」
アリソンさんがダキアさんとお兄さんを外に押し出す。
「ようやく目覚めたみたいだね。体に違和感はないかい?」
大人達の陰からひょっこり現れたのは、意識を失う前に現れた女の子だった。
青みがかった長い銀髪、小柄な体型、声も顔も幼いけど堂々としている。
歳は私より少し下かな。それよりも気になったのはツンと尖った耳。
「エルフ?」
「ん? ああ、そうだよ。私はエルフ。名をルーティアという。こう見えて六十八歳、冒険者ギルドのマスターをやっている」
「え、ええ⁉ し、失礼しました。ミナといいます。冒険者になったばかりの新人ですっ!」
私の反応が面白かったのか、笑みを浮かべながらルーティアさんは言った。
「君の事はよく知っているよ。それよりもまずは下、穿こうか」
「はい~」
身嗜みを整えてベッドに座った。努めて冷静に、うん、冷静に。
ほら、冒険者ってそういうのは気にしないんだよ。異性の前で着替えたりは当たり前なんだよ。下着を見られただけだし、だから大丈夫! ダイジョーブ!
「あー、悪かったな」
「ホントだよ! デリカシーのカケラもないんだから! ゴメンねミナちゃん」
腰に手を当てながらダキアさんとお兄さんを叱るアリソンさん。
「い、いえ。私もちょっと不注意でした」
よく考えたら傷の状態より、自分がどこにいるか確認する方が先だよね。
「ありがとうございまし、ぐふぅっ⁉」
お兄さんの脇腹にルーティアさんの肘がめり込む。えぇ……何でお礼を言われたの。
「あー、それで、君に何があったのか詳しく説明をしてもらいたいんだ。ここは冒険者ギルドの別室で、君は二日間眠り続けていた。少しずつでいい、聞かせてもらえるかな?」
ルーティアさんは真面目な顔で私に聞いてくる。
「はい」
私はゴブリンさんの事を伏せて、冒険者の三人を助けた事、ヒュージヴェノムゼリーと戦い、分裂させてコアに攻撃出来るようにしようとした事、分裂は一匹以外は失敗して難なく倒せた事、最後の一匹と刺し違えて倒した事を、覚えている限り話した。
「無茶をしやがる」
ダキアさんが腕を組んであきれ顔で言っている。でも、どこか安心した様子だった。
「ってか、スライムの変異上位個体じゃない。よく無事だったねー」
アリソンさんは驚きの表情をした後、私を見てニコリと笑う。
「無事で良かった」
お兄さんは胸を撫で下ろす。心配してくれていたんだね。皆さんに迷惑をかけてしまった。本当にごめんなさい。
「話を戻そう。君は魔物の鑑定が出来るのだな」
ルーティアさんはうむうむと頷きながら言う。
「はい」
冒険者登録した時に調べられているからお兄さんは知っているはずだし、嘘をつく理由もない。
「今から話す事はここにいる者だけの秘密にしてほしい。ミナ、ダキアには君を守ってくれるように頼んでいた。アリソンはそのパートナーだ。二人に君のステータスに関する情報の一部開示をしたい。構わないか?」
「はい。大丈夫です」
お二人にはお世話になったし、こんなに心配してくれているのだ。ステータスの開示くらいぜんぜん構わないと思う。
「彼女は鑑定持ちだ」
「ほう、生物鑑定か。そりゃスゲェな」
ダキアさんは感心したように言った。生物鑑定? 私が持っているのは鑑定なのだけど。
「違う、鑑定だ。生物も物品も両方出来る。そうだな、ミナ?」
「え? はい。生物を鑑定出来るのに気づいたのは戦闘中でしたけど」
そう、ルーティアさんの言う通り、生物でも物品でも鑑定は出来た。生き物も鑑定出来るのには私も驚いたよ。
「そうか。それについて説明しなかったのはイクスの不手際だ。謝罪しよう」
頭を下げるルーティアさん。お兄さんはイクスさんっていうんだ。一緒に頭を下げている。
「そんな、頭を上げてください」
「部下の教育不足だ。それに私もイクスが話す事を真面目に聞いておくべきだった。その点については言い訳のしようがない」
見た目が小さな女の子なので、頭を下げられると何だかこっちが悪い気がしてくる。
「まあ、アンタが面倒臭がりなのは今に始まった事じゃねぇからな。んな事より鑑定について詳しく聞かせてくれ」
ダキアさんが取りなしてくれて、やっとルーティアさんとイクスさんは頭を上げた。
「確認をするが、君の鑑定はどこまでわかるんだ?」
「えーと、魔物と人とでは見え方が違いますね。魔物は名前とレベル、生命力、精神力、気力と状態と簡単な説明。人は受付で触った石みたいに見えますけど、ギフトと技能は見えません」
鑑定を使用した時の見え方を出来るだけ正確に説明する。これまで人を見た事がなかったので、今この場で確かめた。
「ほう、それだとレベルは十くらいか」
「ギフトにレベルってあるんですか?」
私に表示されているギフトにはレベルの表記はない。ルーティアさんは話を続ける。
「あるとも。推測するに君は能力の使い方がわかっていないせいで半端に見えるのだろう」
そうだったんだね。誰にも聞いてなかったから知らなかったよ。
「マスター、私達にもわかるように説明してよー」
アリソンさんが不満そうに頬を膨らませている。美人のお姉さんだけど子供っぽい仕草も可愛いなぁ。隣でダキアさんも腕を組んで頷いてる。こちらはいつも通り渋い顔。
「ああ、スマン。つまりだ、ミナは鑑定が物品と生物両方に出来て、レベルがカンストしているって事だ」
「マジかよ」
「ミナちゃん凄ーい! ギフトカンストなんて初めて聞いたよー」
ルーティアさんの説明に二人は凄く驚いていた。
「え、じゃあアイテムボックスも?」
「おおっと、言ってしまって良かったのかい?」
そう指摘されても、言ってしまったのでどうしようもない。
「アイテムボックスも持っていて、そいつもカンストかよ。こいつぁ他の奴には言えねえな」
ダキアさんは深く頷きながら呟いている。
女神様から貰った隠蔽していない方の能力も、とんでもないものみたい。
「君は基礎が全くなってないからね。本来の性能を発揮出来ていないのだよ。今後のために私達が色々教えていこうと思うのだが、どうだろうか?」
「はい! 凄く助かります」
ルーティアさんの提案はありがたい。正直私は何も知らないせいで危険な目に遭っているのだと思う。ここに来てたった三日で死にかけたんだから、しっかり先輩に基礎を教わって一人前の冒険者になろう!
「じゃあ決まりだ。三日後から午前中は訓練、午後は自由という予定で一週間行う事にする。ダキアとアリソンには新人教育で指名依頼を出しておく」
「おう」
「はーい」
笑顔で言うルーティアさん。ダキアさんとアリソンさんも当然といった顔で頷いていた。
「あの~、二日空くのは何ででしょうか?」
「静養に決まっているだろう。宿には伝えてあるから、あと二日ここに泊まる事。いいね?」
「は、はい。お世話になります」
強引とはいえ、私の事を思って言ってくれているんだ。素直に従おう。
驚いたのはキノコごはんが出てきた事。お米もあるんだね。
奥さんにお願いしてお湯を貰い、自室で体を拭いて干してあった服に着替え、ベッドに入る。
明日は寝巻きも買わなくちゃ。必要なものを思い浮かべていたらいつの間にか寝てしまっていた。
朝。今日も早く起きる事が出来た。裏庭で洗濯をしてごはんを食べたら買い物へ出発だ!
服屋さんへ行って服を購入。新品は物凄く高いけど、古着なら手頃な値段で買う事が出来る。外で着る動きやすそうな服を二着、部屋着を二着、あと新品の下着を四枚買い足しておいた。
それと冒険者証を首から下げるため紐も購入。早速通して首にかけて、冒険者証は服の中へしまった。次は金物屋さんで小さな鍋とかシャベル、ランプと燃料を購入。フォークやスプーン、薄い金属製の皿があったので、こちらも数枚買っておく。
どのお店も「お嬢ちゃん可愛いからサービスしてあげるよ」なんて言って値引きしてくれた。
商売上手!
一度宿に帰ってお昼ごはんを食べよう。お昼はキノコシチューとサラダとパン。しばらくキノコ祭りかな? お代を払おうとしたら、昨日のキノコ代だけでお釣りが来るって受け取ってもらえなかった。なくなったらまた採ってこよう。
ごはんを美味しくいただいたら一度自室に戻って狩りの準備。買ったものは全てインベントリに入れているので、防具を着けてショートソードを装備するだけ。あ、レベルってどうなったかな?
おお! 上がっている!
レベルの横に※がついているのは何だろうと思ったら、クラスチェンジが可能なのだそう。
よし、スカウトになろう! そう決めて念じる。
レベルが上がってステータスが増えた! スカウトになった事で伸び方が少し変わったみたい。筋力が十七、耐久力が一六、敏捷性が二十一、知力が二十、魅力が六十四になった!
技能は索敵と弓術が増えている。レベルは全部一。弓矢も使えるんだね。試してみたいし買いに行こう。
早速武器を扱っているお店に行ってみた。弓は長弓から短弓まで揃っている。私だと長弓はちょっと扱い難いかも。なので短弓と矢を二十本、矢を入れる矢筒を購入。ここのお店もサービスをしてくれて、矢筒がタダに。笑顔でお礼を言うと「またサービスするから買いに来てね」と言ってくれた。今日の買い物は全部で七万レクスで済んじゃった。大分値引きしてくれたんだろうなぁ。贔屓にしなくちゃ申し訳ない。
弓矢はすぐには使わないのでインベントリにしまっておいた。
お昼も結構過ぎちゃったけど、今からスライム退治に行こう。
門で衛兵のおじさんに挨拶をして森へ入る。少し歩くとすぐスライムを見つける事が出来た。
狩っても狩っても全然減らないね。私としては有難い。奥に進みながらスライムを十匹退治した。
気づけば木々の間隔が狭くなるギリギリまで来ていた。昨日あんな事があったからこれ以上は奥に行きたくないな。とりあえず覚えたての索敵を使用してみる。
大体直径百メートル内の大きな動物を感知出来るらしい。ただ、隠蔽や隠密などの技能で感知不能になっている事もあるそう。うん、大きな動物はいないみたいだ。
「おい、人間」
キョロキョロと周りを見回していると、ガサガサと近くの茂みから覆面にフードを被った小柄な人が出てきた。背中には弓を背負っている。早速感知出来なかったね。
「相変わらず間抜けだな」
相変わらずって、ひどい。ゴブリンさんは敵意がなく、警戒もしていなかった。
「昨日のゴブリンさんですか?」
「ああ、お前のくれた薬草のおかげで長は助かった。礼を言う」
「いえいえ、お役に立てて良かったです」
「今日はお前に渡すものがあってきた」
私に会うためにこんなところまで来てくれたんだ。
「危なくなかったんですか?」
「俺だけなら何とでもなる」
この人、じゃなかった。このゴブリンさんは他のみんなより強いのかな?
ゴブリンさんは腰の袋から腕輪とペンダントを取り出し、こちらに投げて寄こした。
「これは?」
「かなり前に拾ったものだ。人間を襲って奪ったものではない」
そうなんだ。ふと気になった事を聞いてみる。
「やっぱり人間を襲う事があるんですか?」
「俺達の部族では、襲われない限り人間とは戦わない。人間を殺すと復讐に来る。厄介だからだ」
なるほど。ちょっと安心した。
「それで、これは貰っていいのですか?」
「俺達じゃ使い道がわからない。人間のお前なら使えるだろう」
「じゃあ、頂いておきますね」
後で鑑定してみよう。
「お前、森を歩くのが下手だな。俺が教えてやる」
そりゃ、森の深くへ入ったのは昨日が初めてだからね。でもはっきり言われると傷つく。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
この際だから教えてもらおう。そうしてゴブリンさんから足跡を残さないように歩く方法や、他の生き物の痕跡の見分け方、気配を消して潜むコツを教えてもらった。実践をしながら少し歩いているとゴブリンさんが急に足を止めて伏せる。
「何かありましたか?」
「ヤツの気配がする。長を襲ったスライムだ」
私の質問に小声で答えるゴブリンさん。
「猛毒を持っている大きなスライムの事ですよね? すぐに離れた方がいいんじゃないですか?」
「誰かが襲われている。恐らく人間だ」
ゴブリンさんは地面に耳をつけながら言う。
「戦っているんですか?」
「足音に落ち着きがない。取り乱しているし、戦いになっていないな」
そんな事までわかるんだ。
「援護に行きます。ゴブリンさんは帰ってください」
「よせ、お前では勝てない」
「勝てなくても逃げる手助けは出来ます!」
人が襲われているのがわかった以上、放っておく事は出来なかった。
「仕方がない、俺も手伝ってやる。だが俺は遠くから援護するだけだ。無理をするなよ」
「ありがとうございます!」
無茶な真似をしようとしている私を見兼ねたのかもしれない。
本当にいい人……じゃなかった、いいゴブリンさんだ。
走りながらスライムの特徴を教えてもらう。スライムは黄色で随分と大きいらしく、こちらを認識したら体の一部を飛ばして攻撃してくるそうだ。動きは普通のスライムよりは速いけど、走れば逃げ切れるみたい。猛毒は体に触れるだけで重体に陥る可能性があり、その場合は仲間に担いで逃げてもらうしかない。
きっと身動きが取れなくなるほどの毒なんだろう。気をつけなくちゃ。
ほどなくしてそこに辿り着いた。山のように見える黄色いゼリー状の物体がゆっくり動いている。
えぇ……大きすぎない? 森の木が七、八メートルくらいだとして、その一・五倍はあるんだけど。
スライムのすぐ近くには剣を振り回している十四、五歳くらいの少年が二人。その後ろにはグッタリと横たわるローブ姿の女の子。女の子は猛毒にやられているみたいだ。早く助けないと!
私は近くにあった大きめの石を抱えて走る。目指すはスライムの手前数メートルにある岩だ。
「私が引きつけますから、倒れている子を連れて逃げてください!」
少年達にそう言うと、抱えていた石を思い切り岩に打ちつけた。
岩に石を打ちつけたのは咄嗟に思いついたからだ。この方が振動が伝わるかもしれない。
何度か繰り返しているとスライムはこちらに向かってきた。何とか釣れたらしい。
「だめだ! 君一人置いて逃げられないよ!」
金髪のツンツンヘアーの少年が拒否する。
「大丈夫! 皆さんが逃げたら私も逃げます。その間、注意を引くだけだから!」
「でも――」
「あの子の言う通りにしよう。早くニアを医者に診せないとヤバい」
茶髪の少年が金髪の少年を制して言う。
「すまない! 君も気をつけて!」
そう叫ぶと二人は女の子を抱え上げ、街の方へ走っていった。
スライムも一度動きを止めたかと思ったら、こちらに向かって近づき始める。私は持っていた石を捨てて身構えた。あとは上手く引きつけつつ、逃げ――
突然、スライムからバスケットボールくらいの弾が撃ち出される! ビックリして岩の陰に隠れた。撃ち出されたのは体の一部。岩に衝突してベシャリと音が聞こえたので岩を見たら、ジュワジュワと音を立てて崩れていく。嘘! 毒だけじゃないの⁉
こんなものをまともに喰らったら、あっという間に溶かされて即死だろう。
我ながらなんて無茶な事をしてしまったんだろう。もう盾になる岩はない。体の一部を飛ばす予備動作は全然なかったし、躱せる自信がなくて足がすくむ。こんなところで死ぬなんて……嫌だ! 絶対生き残ってやるんだ!
私の武器ではコアを狙うのは無理。でも倒す必要はない。動きもそう速くないから撃ち出してくる弾と体の一部に注意して逃げ切ればいいんだ。
と、すぐに次の弾が撃ち出されるけど、身構えていたおかげで反応出来た。余裕をもって回避に成功。警戒したままジリジリと後退する。命を懸けたドッジボールだ。集中、集中。
木の陰から矢が飛んできてスライムの体に突き刺さるものの、あっという間に吸収されてしまう。
ゴブリンさんの矢はダメージにならない。きっとわかっていて、注意を引くためにやってくれている。
巨大なスライムだけあってコアもかなり大きい。五十センチくらいあるんじゃないかな。集中して様子を見ていると、コアの様子がおかしい事に気づく。小刻みに震えていたかと思ったら二つに分裂した。いや、正確にはまだ分裂してなくて、二つはくっついている状態だ。そしてまた小刻みに震え出した。あのコア、この状態で鑑定出来ないかな?
【ヒュージヴェノムゼリー】レベル:二十 生命力:二千五百/二千五百 ポイゾナススライムの変異種。巨大化しており分裂間近。
ひょっとして鑑定って生き物にも出来るの? と、それは置いておいて。今はスライムの生命力をどうやって削ればいいのか、だ。コアを直接攻撃するには物凄く長い武器が必要になる。そんなもの用意出来るわけがない。
じゃあ地道にゲルの部分を剥がしていくか――いや、分裂間近って、もしかして?
スライムが体の一部を飛ばしてくる。今度はさっきよりも小さな速い弾だ! 何とか避けられたけど、間髪容れずに二発目として大きな弾を撃ってくる!
避けきれない! 思わず両腕を交差して防御の姿勢をとったものの、二発目の攻撃はこなかった。飛んできたスライム弾に、飛来した矢が衝突したのだ。スライム弾は粉々に吹き飛んで、スライム本体を削り取った。頭の中でキンコンとチャイム音が鳴り響く。今のが武技ってヤツかな? もしかして今のチャイムはゴブリンさんの武技を習得しちゃったって事だろうか。
「おい、ボサッとするな。もっと距離を取れ」
ゴブリンさんは二本目の矢を番えながら近づいてきた。
「ありがとうございます! 今の技って、何回くらい使えそうですか?」
「あと二発がやっとだ。奴を仕留めるには全然足らない」
「それで森の木を倒せたりしますか?」
「やれるぞ。何を狙っている?」
「このスライムは分裂しようとしています。削るのではなく、大きくして分裂させちゃいましょう」
「わかった」
「なるべく大きな木を倒してください。スライムの誘導にもなります!」
私はジリジリと下がり続けて十メートルくらい距離をとった。近くの木の枝や投げやすそうな石を拾い集める。ゴブリンさんは音もなく後退すると、一番近くにあった大きめの木の根元に向かって先程の技を放つ。矢が衝突すると幹の半分が吹き飛び、メキメキと凄い音を立てて木が倒れた。
とんでもない威力だ。ゴブリンさんって実はメチャクチャ強いんじゃない?
スライムはその木に向かって移動を開始した。私も拾った木や石を投げつけて成長を少しでも早める。木に取りついたスライムはあっという間に木を呑み込んで消化を始めた。
私とゴブリンさんはやや離れた木の陰で様子を見る。コアが小刻みに震えながら無数のコアに分裂を始めた。半分になるんじゃなくていっぺんに数多く分裂するみたい。
小さくなってくれればコアを狙いやすい。
私は長めの枝を拾ってきてお手製ショートスピアを二本作っておいた。
スライムが木を完全に消化すると、分裂して小さくなったコアがバラバラに散っていき、体から分離を始めた。
「小さくなって動きが速くなっているかもしれない。気をつけろ」
ゴブリンさんが矢を番えつつ言う。私は頷き、スライムとの距離を詰める。
手にはショートスピア。地面にベッタリとくっついているスライムのコアに向かって軽く突きを繰り出す。スライムはブルリと震えて絶命した。よし! いける!
周りを確認して、飛びかかってきたりスライム弾を飛ばしてきたりする個体がいないか警戒する。
あれ? スライムの様子がおかしい。
ゲルがダラリと地面にくっついていてコアが殆ど露出した状態だ。何これ? 鑑定してみた。
【ヴェノムスライム】レベル:十 生命力:五/百 状態:瀕死 分裂に失敗したスライム。
あー失敗しちゃったか~。
スライムは殆ど動かず、ゲルでコアを覆う事も出来ずにグッタリしている。
ラッキーだ! さっさと全部倒してしまおう!
木の槍でスライムコアをどんどん突いていく。二十匹倒したところで槍が溶けて使えなくなったのでもう一本を持ってきて再開。全部で三十五匹もいた。
「おい! 一匹動いているのがいるぞ」
ゴブリンさんが指す方を見ると、素早く這いずりこちらへ向かってくる小さな個体の姿が。
右へ左へ動きつつ私に飛びかかってくる! 私は何とかそれを躱したけど体勢を崩してしまう。
ゴブリンさんが矢を放ちスライムを牽制してくれたおかげで、追撃される事はなかった。
槍を突き出してスライムを攻撃するものの、ギリギリでコアが蠢き、避けられる。
動きが良すぎる! 目が見えているのかもしれない。
【ヴェノムゼリー】レベル:十五 生命力:二百/二百
ゼリーはスライムの上位個体かな。ヤバイかも。
「距離をとれ! お前が近くにいたら狙えない」
ゴブリンさんの武技なら一撃かもしれない。でも私が距離を取るよりスライムの方が速い!
スライムは右へ左へ動いたと思ったら、突進はせず、スライム弾を飛ばしてきた!
ビー玉くらいの弾を四、いや五発。弾速はさっきの小さな弾よりもずっと速い。
身を翻して躱そうとしたけど、二発が服の袖をかすめて溶かした。続いて三発、追い撃ちがくる。
身を投げ出して避ける! 頭の中でチャイム音が聞こえて、お腹に当たるところだった弾が槍の柄に命中し、槍が真ん中から折れた。幸運が発動したんだ! 助かった!
私はすぐに起き上がろうとしたけど、足に激痛が走って動けない。
右太ももに小石が突き刺さっていた。
「痛っ……」
スライム弾の中に石のかけらを交ぜていたのだろう。傷口からジワリと血が広がる。足が少しずつ紫に変色していく。これは毒……? 痛みで他の事が考えられない。気絶しそう。
ゴブリンさんが矢を放ってスライムを牽制してくれるものの、スライムは難なくそれを躱すとトドメとばかりに私へ飛びかかってくる。
ダメだ……やられちゃう。
飛びかかってくるスライムがスローモーションのように見える。
この世界にきてまだ三日、もう死んじゃうのかな。
せっかく女神様が転生させてくれたのに、ステキな体を造ってくれたのに、溶かされて……
――イヤだ。こんなところで死んでたまるか!
無我夢中で腰の鞘からショートソードを引き抜くと、胸の前で剣を構えて狙いをつける。
そして、スライムのコアに狙いを定め、渾身の力を込めて剣を突き出す‼
腕までスライムの中に入ってしまった。でも手応えはある。コアは剣が突き刺さり、真っ二つに割れていた。
直後ドロリとスライムが溶け出して、私の上半身に降りかかる。結構重くて、仰向けに倒れた。
ゴブリンさんが駆けつけてきて顔の周りのゲルを取り除いてくれたおかげで、窒息する事はなさそう。
「おい! おい! 大丈夫か?」
返事をしたいけど呼吸するのでやっとだ。足も腕も凄く痛い。腕は火傷のように爛れていた。
「人間の助けが来た! 俺は森に戻る。コレを飲め。解毒薬だ!」
そう言って葉っぱに包んだ何かを私の胸の上に置いたゴブリンさんが、足早に森の奥へ消えていく。あぁ、お礼も言えてないのに、もうお別れなんて。せめて一言――
手を伸ばそうとしても体が動かない。
ふわりと風が舞う。空から何かが降りてきた。小柄な影だけど、目が霞んでよく見えない。
「よく頑張ったね。もう大丈夫だよ」
聞こえてきたのは女の子の声だ。
「穏やかなる風の精霊よ、清らかなる水の精霊よ。彼女を癒し護る力となれ」
足と腕の痛みが引いていく。痛みがなくなったら急激に気が遠くなってきた。
自分の手や足の状態を確かめる元気もない。やっぱり傷跡が残っちゃうかなぁ。
ダキアさんみたいに傷だらけな女の子ってちょっとヤダな。女神様にも謝らなくちゃ……
頭の中で連続で鳴り響くチャイム音を聞きながら、私は意識を失った。
優しい風が頬を撫でる。私は、目を開けた。
真っ白な天井、窓は開いておりカーテンが風でなびいている。私はふかふかのベッドに寝かされていた。部屋には椅子が二脚に机が一脚と、私が寝ているベッドがあるだけ。十畳くらいの部屋だ。
ここはどこだろう? キョロキョロと辺りを見回す。
そうだ、手と足の怪我は? 手を上げてみる。傷一つ残ってない。足は?
起き上がる。痛みはない。私は昨日買った部屋着とそっくりな服を着ていた。上は半袖のシャツ、下はカプリパンツ、どちらも白色で、古着ではなく新品のようだ。
足の状態がわかりにくいので下を脱いで確認する。良かった。痕も残ってない。
石が突き刺さっていたのを思い出し身震いしつつ、恐る恐る触ってみる。さすったり押してみたり。うん、何ともない。
ふと、いくつもの足音が近づいてきて扉が開かれる。
「あ」
「お、おう……も、もう大丈夫なのか?」
「は、はい」
扉を開けたのはダキアさんだった。アリソンさんと受付のお兄さんもいる。
慌てて手で前を隠す。
「あーー! もうっ女の子の部屋に入る時はノックしなさいよー!」
アリソンさんがダキアさんとお兄さんを外に押し出す。
「ようやく目覚めたみたいだね。体に違和感はないかい?」
大人達の陰からひょっこり現れたのは、意識を失う前に現れた女の子だった。
青みがかった長い銀髪、小柄な体型、声も顔も幼いけど堂々としている。
歳は私より少し下かな。それよりも気になったのはツンと尖った耳。
「エルフ?」
「ん? ああ、そうだよ。私はエルフ。名をルーティアという。こう見えて六十八歳、冒険者ギルドのマスターをやっている」
「え、ええ⁉ し、失礼しました。ミナといいます。冒険者になったばかりの新人ですっ!」
私の反応が面白かったのか、笑みを浮かべながらルーティアさんは言った。
「君の事はよく知っているよ。それよりもまずは下、穿こうか」
「はい~」
身嗜みを整えてベッドに座った。努めて冷静に、うん、冷静に。
ほら、冒険者ってそういうのは気にしないんだよ。異性の前で着替えたりは当たり前なんだよ。下着を見られただけだし、だから大丈夫! ダイジョーブ!
「あー、悪かったな」
「ホントだよ! デリカシーのカケラもないんだから! ゴメンねミナちゃん」
腰に手を当てながらダキアさんとお兄さんを叱るアリソンさん。
「い、いえ。私もちょっと不注意でした」
よく考えたら傷の状態より、自分がどこにいるか確認する方が先だよね。
「ありがとうございまし、ぐふぅっ⁉」
お兄さんの脇腹にルーティアさんの肘がめり込む。えぇ……何でお礼を言われたの。
「あー、それで、君に何があったのか詳しく説明をしてもらいたいんだ。ここは冒険者ギルドの別室で、君は二日間眠り続けていた。少しずつでいい、聞かせてもらえるかな?」
ルーティアさんは真面目な顔で私に聞いてくる。
「はい」
私はゴブリンさんの事を伏せて、冒険者の三人を助けた事、ヒュージヴェノムゼリーと戦い、分裂させてコアに攻撃出来るようにしようとした事、分裂は一匹以外は失敗して難なく倒せた事、最後の一匹と刺し違えて倒した事を、覚えている限り話した。
「無茶をしやがる」
ダキアさんが腕を組んであきれ顔で言っている。でも、どこか安心した様子だった。
「ってか、スライムの変異上位個体じゃない。よく無事だったねー」
アリソンさんは驚きの表情をした後、私を見てニコリと笑う。
「無事で良かった」
お兄さんは胸を撫で下ろす。心配してくれていたんだね。皆さんに迷惑をかけてしまった。本当にごめんなさい。
「話を戻そう。君は魔物の鑑定が出来るのだな」
ルーティアさんはうむうむと頷きながら言う。
「はい」
冒険者登録した時に調べられているからお兄さんは知っているはずだし、嘘をつく理由もない。
「今から話す事はここにいる者だけの秘密にしてほしい。ミナ、ダキアには君を守ってくれるように頼んでいた。アリソンはそのパートナーだ。二人に君のステータスに関する情報の一部開示をしたい。構わないか?」
「はい。大丈夫です」
お二人にはお世話になったし、こんなに心配してくれているのだ。ステータスの開示くらいぜんぜん構わないと思う。
「彼女は鑑定持ちだ」
「ほう、生物鑑定か。そりゃスゲェな」
ダキアさんは感心したように言った。生物鑑定? 私が持っているのは鑑定なのだけど。
「違う、鑑定だ。生物も物品も両方出来る。そうだな、ミナ?」
「え? はい。生物を鑑定出来るのに気づいたのは戦闘中でしたけど」
そう、ルーティアさんの言う通り、生物でも物品でも鑑定は出来た。生き物も鑑定出来るのには私も驚いたよ。
「そうか。それについて説明しなかったのはイクスの不手際だ。謝罪しよう」
頭を下げるルーティアさん。お兄さんはイクスさんっていうんだ。一緒に頭を下げている。
「そんな、頭を上げてください」
「部下の教育不足だ。それに私もイクスが話す事を真面目に聞いておくべきだった。その点については言い訳のしようがない」
見た目が小さな女の子なので、頭を下げられると何だかこっちが悪い気がしてくる。
「まあ、アンタが面倒臭がりなのは今に始まった事じゃねぇからな。んな事より鑑定について詳しく聞かせてくれ」
ダキアさんが取りなしてくれて、やっとルーティアさんとイクスさんは頭を上げた。
「確認をするが、君の鑑定はどこまでわかるんだ?」
「えーと、魔物と人とでは見え方が違いますね。魔物は名前とレベル、生命力、精神力、気力と状態と簡単な説明。人は受付で触った石みたいに見えますけど、ギフトと技能は見えません」
鑑定を使用した時の見え方を出来るだけ正確に説明する。これまで人を見た事がなかったので、今この場で確かめた。
「ほう、それだとレベルは十くらいか」
「ギフトにレベルってあるんですか?」
私に表示されているギフトにはレベルの表記はない。ルーティアさんは話を続ける。
「あるとも。推測するに君は能力の使い方がわかっていないせいで半端に見えるのだろう」
そうだったんだね。誰にも聞いてなかったから知らなかったよ。
「マスター、私達にもわかるように説明してよー」
アリソンさんが不満そうに頬を膨らませている。美人のお姉さんだけど子供っぽい仕草も可愛いなぁ。隣でダキアさんも腕を組んで頷いてる。こちらはいつも通り渋い顔。
「ああ、スマン。つまりだ、ミナは鑑定が物品と生物両方に出来て、レベルがカンストしているって事だ」
「マジかよ」
「ミナちゃん凄ーい! ギフトカンストなんて初めて聞いたよー」
ルーティアさんの説明に二人は凄く驚いていた。
「え、じゃあアイテムボックスも?」
「おおっと、言ってしまって良かったのかい?」
そう指摘されても、言ってしまったのでどうしようもない。
「アイテムボックスも持っていて、そいつもカンストかよ。こいつぁ他の奴には言えねえな」
ダキアさんは深く頷きながら呟いている。
女神様から貰った隠蔽していない方の能力も、とんでもないものみたい。
「君は基礎が全くなってないからね。本来の性能を発揮出来ていないのだよ。今後のために私達が色々教えていこうと思うのだが、どうだろうか?」
「はい! 凄く助かります」
ルーティアさんの提案はありがたい。正直私は何も知らないせいで危険な目に遭っているのだと思う。ここに来てたった三日で死にかけたんだから、しっかり先輩に基礎を教わって一人前の冒険者になろう!
「じゃあ決まりだ。三日後から午前中は訓練、午後は自由という予定で一週間行う事にする。ダキアとアリソンには新人教育で指名依頼を出しておく」
「おう」
「はーい」
笑顔で言うルーティアさん。ダキアさんとアリソンさんも当然といった顔で頷いていた。
「あの~、二日空くのは何ででしょうか?」
「静養に決まっているだろう。宿には伝えてあるから、あと二日ここに泊まる事。いいね?」
「は、はい。お世話になります」
強引とはいえ、私の事を思って言ってくれているんだ。素直に従おう。
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