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特別編3:異世界
代官の遣い
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玄関から外に出て話を聞こう。
私の他にはほのかさん、アニエスさん、アンネさん、リムちゃんが外に出る。
敷地の中に立っていたのは高そうな服を着たおじさん。
すぐ横にはローブ姿の青年。手に杖を持っているから魔法使いかも。
その後ろにはこの街の兵士かな、同じ装備の人達が20人程。
「お前達か、孤児院を破壊して勝手に建物を建てたのは!」
「孤児院って…あんなボロ小屋をよく孤児院なんて呼べるね。子供達は人買いに売り渡してもいたけど?」
「ほう…それは初耳だ」
ほのかさんが指摘すると遣いの人は大袈裟に驚いて見せる。
絶対嘘だよね。
「それよりも孤児院の土地で勝手を働いているお前達が問題だ。ここは教会の管理する土地で、お前達は不当占有の罪で捕縛命令が出ている。大人しく投降しろ」
「それよりもって…子供達を奴隷商人に売り渡している事の方が問題ですよ!」
思わず反論する。
「ええい!子供は黙っていろ!」
ムカ。
「この建物を建てたのは私です!見た目が子供だからって侮らないでください!」
「ならばお前も拘束する」
拘束拘束って、何でもいいから私達を捕まえたいだけなんじゃないの?
「お断りします。でも代官さんとは一度話す必要がありますね」
「代官殿は忙しい。お前達の処分は一任されている」
「私達をどうするつもりですか?」
「この街の法律では強制労働刑が妥当だろう」
とにかく私達を罪人にしたいらしい。
「待ってください。私は代官殿の密偵をしているシャーナです。彼女達は孤児院を再建しただけで占有など行っておりません」
「お前についても捕縛命令が出ているぞ。シャーナ、街に賊を誘引し不当に占拠する者達を支援。事実の偽装を行い男爵様へ虚偽の報告を行った罪だ。お前の罪が一番重い。覚悟しておけ」
代官さんはシャーナさんを切り捨てたって事でいいのかな?
「これはまた随分と力技で来たね」
「私達はこの街、この国の法律に明るくありません。それを振りかざされたら遅れをとってしまいますね」
アンネさんとアニエスさんは冷静に話をしている。
「私の報告を読んで男爵様の遣いがまもなくレギュイラに到着する。そうなればどちらが虚偽を言っているかはすぐに分かる」
シャーナさんは証明する自信があるみたい。
「残念だが遣いの者はレギュイラに来ない。こちらから使いを出して問題は解決したと報告する事になっている」
勝ち誇った様に言う代官の遣い。
「で?私達を拘束して連れていった後孤児院はどうするの?」
「取り壊すに決まっているだろう。その際に使える設備はこちらで管理する」
壊れないんだよなぁ。
でも設備を取っちゃうって事は魔道具や魔石を持っていくって事だよね。
そもそもここに住んでいる子達はどこに行けばいいの?
「子供の事など構っておれるか。元の暮らしに戻れば良いだろう」
何て言い草…子供達を何だと思ってるの?
「話にならないねー。どうしようか?」
ほのかさんはいつもの調子で聞いてくる。
「そこまで言うならこの建物と子供達ごと出ていきましょうか。そうすれば問題ないですよね」
「そんな事が出来るんですか…?」
驚きながら聞いてくるアニエスさん。
「はい。今すぐにでも出来ますよ」
瘴気対策が出来ているんだし、ショルカの街の側に孤児院ごと転移してしまうのもアリだよね。
「待て!何を言っているかは分からんが、逃亡は許さんぞ!魔石はこの街の為に使わせてもらう!」
本音が漏れてますよ。
「魔石が目当てなのは分かってますけど、あれはミナさんの物ですからお渡しできません」
アニエスさんが言ってアンネさんは頷いている。
確かに孤児院の物って言ったらややこしい事になりそうだからね。
「罪人に所有権は無い!」
「そんな無茶苦茶な…」
何が何でも魔石が欲しいみたい。
「やれ!」
隣にいたローブ姿の男性に指示をする。
何やら詠唱を始めたけど…。
「隙だらけだよ。やっちゃう?」
ほのかさんの周りには精霊達が集まって来ていた。
「一応相手が先に手を出して来たという事実が欲しいので魔法の完成を待ちましょう」
アニエスさんはそう言って武器も抜かずに立ったまま。アンネさんも腕を組んだまま動かない。
…詠唱が遅いよ。
用心棒的な魔法使いを連れてきたんだと思うけど、こんなお粗末な詠唱で何に勝てるんだろう?
「あの詠唱…幻惑系の魔法です。かなり念入りに詠唱していますが構築が不完全ですね。」
待っている間にアニエスさんが説明してくれた。
「詳しいんですね」
「一応講師をやるくらいなので。あと冒険者仲間で魔法の早撃ちという遊びをやっていまして」
詠唱をする側と妨害する側の2人でやる遊びだそうで、詠唱する側はフェイントを入れても良いから、とにかく魔法を完成させたら勝ち。
妨害側は魔法を読み取って逆詠唱を仕掛けて構築する魔法を分解したら勝ちという遊びらしい。
「詠唱側は《高速言語》と《暗号化》は必須。妨害側は《暗号化》を破って瞬時に構成式から何の魔法かを読み取って分解する。結構奥が深い遊び」
アンネさんが捕捉説明をしてくれたけど、それって遊びなの…?
「アニエスさんは得意なんですか?」
「まあそこそこですよ。1、2を争う2人には及びません」
1人は詠唱速度がとにかく早くて構成式を読み取るのが早い正当派で、もう1人は《暗号化》と《多重詠唱》を駆使して撹乱してくる技巧派だそう。
…興味が出てきた。
「くらえ!」
そう言って放ってきたのは《チャームパーソン》という魅了系の魔法だった。
あれだけ待たせてその魔法…?
しかも誰一人掛からなかった。リムちゃんでさえ。
「何ぃっ!?効かないだと!?」
いやいや…そんな大袈裟に驚く事じゃありませんよ。
「まず詠唱が遅すぎます。次に精度が悪いです。あれだけ待たせてその程度では戦闘では使えませんよ?」
アニエスさんは優しい口調で言っているけど的確にダメ出しをしていた。
「何を…!お前に今の魔法が使えると言うのか?」
「はい。《チャームパーソン》、今日は家に帰ってゆっくり休んでください」
「……分かりました」
魔法使いの男の人は回れ右をして帰って行った。
私の他にはほのかさん、アニエスさん、アンネさん、リムちゃんが外に出る。
敷地の中に立っていたのは高そうな服を着たおじさん。
すぐ横にはローブ姿の青年。手に杖を持っているから魔法使いかも。
その後ろにはこの街の兵士かな、同じ装備の人達が20人程。
「お前達か、孤児院を破壊して勝手に建物を建てたのは!」
「孤児院って…あんなボロ小屋をよく孤児院なんて呼べるね。子供達は人買いに売り渡してもいたけど?」
「ほう…それは初耳だ」
ほのかさんが指摘すると遣いの人は大袈裟に驚いて見せる。
絶対嘘だよね。
「それよりも孤児院の土地で勝手を働いているお前達が問題だ。ここは教会の管理する土地で、お前達は不当占有の罪で捕縛命令が出ている。大人しく投降しろ」
「それよりもって…子供達を奴隷商人に売り渡している事の方が問題ですよ!」
思わず反論する。
「ええい!子供は黙っていろ!」
ムカ。
「この建物を建てたのは私です!見た目が子供だからって侮らないでください!」
「ならばお前も拘束する」
拘束拘束って、何でもいいから私達を捕まえたいだけなんじゃないの?
「お断りします。でも代官さんとは一度話す必要がありますね」
「代官殿は忙しい。お前達の処分は一任されている」
「私達をどうするつもりですか?」
「この街の法律では強制労働刑が妥当だろう」
とにかく私達を罪人にしたいらしい。
「待ってください。私は代官殿の密偵をしているシャーナです。彼女達は孤児院を再建しただけで占有など行っておりません」
「お前についても捕縛命令が出ているぞ。シャーナ、街に賊を誘引し不当に占拠する者達を支援。事実の偽装を行い男爵様へ虚偽の報告を行った罪だ。お前の罪が一番重い。覚悟しておけ」
代官さんはシャーナさんを切り捨てたって事でいいのかな?
「これはまた随分と力技で来たね」
「私達はこの街、この国の法律に明るくありません。それを振りかざされたら遅れをとってしまいますね」
アンネさんとアニエスさんは冷静に話をしている。
「私の報告を読んで男爵様の遣いがまもなくレギュイラに到着する。そうなればどちらが虚偽を言っているかはすぐに分かる」
シャーナさんは証明する自信があるみたい。
「残念だが遣いの者はレギュイラに来ない。こちらから使いを出して問題は解決したと報告する事になっている」
勝ち誇った様に言う代官の遣い。
「で?私達を拘束して連れていった後孤児院はどうするの?」
「取り壊すに決まっているだろう。その際に使える設備はこちらで管理する」
壊れないんだよなぁ。
でも設備を取っちゃうって事は魔道具や魔石を持っていくって事だよね。
そもそもここに住んでいる子達はどこに行けばいいの?
「子供の事など構っておれるか。元の暮らしに戻れば良いだろう」
何て言い草…子供達を何だと思ってるの?
「話にならないねー。どうしようか?」
ほのかさんはいつもの調子で聞いてくる。
「そこまで言うならこの建物と子供達ごと出ていきましょうか。そうすれば問題ないですよね」
「そんな事が出来るんですか…?」
驚きながら聞いてくるアニエスさん。
「はい。今すぐにでも出来ますよ」
瘴気対策が出来ているんだし、ショルカの街の側に孤児院ごと転移してしまうのもアリだよね。
「待て!何を言っているかは分からんが、逃亡は許さんぞ!魔石はこの街の為に使わせてもらう!」
本音が漏れてますよ。
「魔石が目当てなのは分かってますけど、あれはミナさんの物ですからお渡しできません」
アニエスさんが言ってアンネさんは頷いている。
確かに孤児院の物って言ったらややこしい事になりそうだからね。
「罪人に所有権は無い!」
「そんな無茶苦茶な…」
何が何でも魔石が欲しいみたい。
「やれ!」
隣にいたローブ姿の男性に指示をする。
何やら詠唱を始めたけど…。
「隙だらけだよ。やっちゃう?」
ほのかさんの周りには精霊達が集まって来ていた。
「一応相手が先に手を出して来たという事実が欲しいので魔法の完成を待ちましょう」
アニエスさんはそう言って武器も抜かずに立ったまま。アンネさんも腕を組んだまま動かない。
…詠唱が遅いよ。
用心棒的な魔法使いを連れてきたんだと思うけど、こんなお粗末な詠唱で何に勝てるんだろう?
「あの詠唱…幻惑系の魔法です。かなり念入りに詠唱していますが構築が不完全ですね。」
待っている間にアニエスさんが説明してくれた。
「詳しいんですね」
「一応講師をやるくらいなので。あと冒険者仲間で魔法の早撃ちという遊びをやっていまして」
詠唱をする側と妨害する側の2人でやる遊びだそうで、詠唱する側はフェイントを入れても良いから、とにかく魔法を完成させたら勝ち。
妨害側は魔法を読み取って逆詠唱を仕掛けて構築する魔法を分解したら勝ちという遊びらしい。
「詠唱側は《高速言語》と《暗号化》は必須。妨害側は《暗号化》を破って瞬時に構成式から何の魔法かを読み取って分解する。結構奥が深い遊び」
アンネさんが捕捉説明をしてくれたけど、それって遊びなの…?
「アニエスさんは得意なんですか?」
「まあそこそこですよ。1、2を争う2人には及びません」
1人は詠唱速度がとにかく早くて構成式を読み取るのが早い正当派で、もう1人は《暗号化》と《多重詠唱》を駆使して撹乱してくる技巧派だそう。
…興味が出てきた。
「くらえ!」
そう言って放ってきたのは《チャームパーソン》という魅了系の魔法だった。
あれだけ待たせてその魔法…?
しかも誰一人掛からなかった。リムちゃんでさえ。
「何ぃっ!?効かないだと!?」
いやいや…そんな大袈裟に驚く事じゃありませんよ。
「まず詠唱が遅すぎます。次に精度が悪いです。あれだけ待たせてその程度では戦闘では使えませんよ?」
アニエスさんは優しい口調で言っているけど的確にダメ出しをしていた。
「何を…!お前に今の魔法が使えると言うのか?」
「はい。《チャームパーソン》、今日は家に帰ってゆっくり休んでください」
「……分かりました」
魔法使いの男の人は回れ右をして帰って行った。
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